マツダ3セダン プロトタイプ(FF/6AT)
雪も溶かすパッション 2019.03.09 試乗記 もうすぐ国内での販売がスタートする新型「マツダ3」。その走りを支えるマツダの新世代技術とはどのようなものなのか。同社のテストコースで開発車両に試乗して確かめた。特別な場所で初対面
いま日本のクルマ好きから最も注目を集めているクルマといえばマツダ3だろう。
スポーツカーや高級車ならいざ知らず、普通のハッチバック/セダンがこれだけ注目されるのは不思議な気もするが、最近のマツダのクルマづくりを見れば、それもむべなるかな。なるほどいまのマツダのラインナップは、どのモデルを選んでも“ハズレくじなし”の充実ぶりだ。
その屋台骨を支えるマツダ3(日本名:アクセラ)の新型が2018年秋のロサンゼルスモーターショーで発表され、年明けの東京オートサロン2019で日本初披露された。多くのクルマ好きが待望するそのマツダ3に、日本国内で初めて試乗することができた。
とはいえ、今回の試乗は北海道北部の剣淵町にあるマツダの試験場コース内という限定されたシチュエーションで行われた。毎冬、マツダがここで行っている雪上取材会に、新型マツダ3のプロトタイプが用意されたのである。
旭川から貸し切りバスに揺られて1時間半。剣淵試験場に到着すると、おや、覚悟していたほど寒くない。この日の天気は快晴で、予報によれば最高気温は4度に達するだろうとのことだ。
「0度以上になると雪が溶けてしまうので、基本的にはテストを行わないんですよ」と、マツダのスタッフが教えてくれたが、どうやらこの日は特別暖かい日だったようだ。
歩いているように運転させたい
マツダ3には5ドアハッチバックと4ドアセダンがあるが、用意されたのは基本的にセダンのみ。クルマにはラッピングによる擬装が施されていた。あくまでプロトタイプであり、市販車そのものではありませんよ、ということである。
試乗前のプレゼンテーションでは、「人間中心のクルマ開発」という言葉が繰り返された。「人間の持つ身体能力を最大限に生かし、クルマと一体化するように」というのがその趣旨で、マツダが初代「ロードスター」以降唱える“人馬一体”をさらに進化させた、と説明された。
興味深かったのは、開発者が述べた「人間の歩行について研究した」という言葉だ。「歩いているような自然な状態をクルマの運転においても再現する」ことを目指し、そのために個々のシステムがバラバラに存在するのではなく“クルマ全体のコーディネート”ができることを重視したという。
クルマに乗り込んでそれを実感したのは、シートのつくりだ。ドライバーの体を“面”で受け止めるような形状でかけ心地がよく、座面の先端部分を上下させられるなど、細かな調整機構が備わる。
開発者いわく、“歩くように運転する”ために一番大事なのは「骨盤を立てて座れるシート」なのだという。確かに昔から、欧州車と日本車の一番の違いは「シートのつくり」だと言われてきた。そう考えるとマツダがシートに着目し、そこに力を注いだというのは納得できる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
姿勢制御の効果は絶大
試乗は試験場ならではの内容で、雪上でのダブルレーンチェンジ、定常円旋回、峠道を模したコースの走行など、さまざまなモードを体験することができた。そのすべてのシチュエーションで恩恵を感じたのは、「G-ベクタリングコントロール プラス(GVCプラス)」という技術だ。
「G-ベクタリングコントロール(GVC)」はマツダ独自の技術で、簡単に言えば、コーナーに進入するとき、ハンドル操作に応じてエンジンのトルクを微妙に絞り、“前輪の荷重”を増やすことで曲がりやすくするというもの。
GVCプラスでは、さらにコーナーから立ち上がるとき、ハンドルを戻す操作に合わせてコーナー外側の前輪にほんのちょっとブレーキを利かせる。これによりクルマを直進状態に戻そうという力が生まれ、車体が安定する。
特に雪の上ではこのGVCプラスの効果は絶大だった。試乗ではGVCプラスをオン/オフ両方のモードで試すことができたが、オフの状態ではカーブで「すわスピンか?」という状態に陥ってしまう場面でも、オンにすればクルマがさりげなくキュッと進路に戻してくれ、安定した姿勢でカーブを脱出できる。
大事なのは、この制御があくまで“自然に”行われることだ。いかにも「クルマが助けてくれた」ではなく、よくよく注意していなければわからないぐらいのさりげなさで介入してくれる。これがマツダの言う「人間中心」ということなのだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スムーズで静かで心地いい
一般道から試験場に至るアプローチ道路を使って、数kmではあるが通常の使用に近い状況での走行を試すこともできた。
まず、走りだした瞬間のスムーズさが印象的だ。まあ、スタートがスムーズなんていうのは当たり前だと思うかもしれないが、アクセルの踏み込み量と、それに対する加速のバランスが絶妙というか、気持ちいいのだ。
試乗したクルマは2.5リッターのガソリンエンジンを積んでいた。左ハンドルの北米向け仕様だ。新型マツダ3の“目玉”と伝えられる、ガソリンとディーゼルのハイブリッド的特徴を持つ次世代エンジン「スカイアクティブX」は、残念ながら試すことができなかった。エンジン自体の性能やフィーリングは、現行モデルとそれほど変わらない印象だったが、6段ATの滑らかさや乗り心地のよさ、そして室内の静粛性の向上は、新旧を乗り比べながらの試乗でしっかり感じられた。
2012年に登場した「CX-5」が、「スカイアクティブテクノロジー」と「鼓動デザイン」を採用した“新しいマツダ”のクルマづくりの起点だったとすれば、エンジンやシャシーに関する新技術が“全部盛り”になったこの新型マツダ3は、いわばその第2章のスタートとなるモデルだ。
今回試乗したのは擬装が施されたプロトタイプであり、内外装の質感やディテールまでは確認できなかったが、クルマの“中身”については隅々に至るまで妥協のない作り込みが行われていることがわかった。
今回の取材会では、この新型にかけるマツダ開発陣の真摯(しんし)な思いと気合が感じられた。参加した総勢16人の開発スタッフが、われわれ取材メディアに対し入れ代わり立ち代わり熱い言葉を語るのだから。
これだけの熱意で「人間中心のクルマ開発をしました」と言うならば、いいクルマができないワケはないだろうと、そう思ってしまったのは、僕がすっかり“マツダの魔法”にかかってしまったからだろうか。
(文=河西啓介/写真=ダン・アオキ、webCG/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
マツダ3セダン プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4662×1797×1445mm
ホイールベース:2725mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:189ps(139kW)/6000rpm
最大トルク:252Nm(25.7kgm)/4000rpm
タイヤ:(前)215/45R18 89Q/(後)215/45R18 89Q(ブリヂストン・ブリザックVRX2)
燃費:シティー=27mpg(約11.5km/リッター)、ハイウェイ=36mpg(約15.3km/リッター)、複合=30mpg(約12.8km/リッター)(米国EPA値)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は北米仕様のもの。
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1425km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
マツダ3セダン プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4662×1797×1445mm
ホイールベース:2725mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:189ps(139kW)/6000rpm
最大トルク:252Nm(25.7kgm)/4000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92Q/(後)205/60R16 92Q(ブリヂストン・ブリザックVRX2)
燃費:シティー=27mpg(約11.5km/リッター)、ハイウェイ=36mpg(約15.3km/リッター)、複合=30mpg(約12.8km/リッター)(米国EPA値)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は北米仕様のもの。
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:2377km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河西 啓介
-
ディフェンダー110オクタP635(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.29 「ディフェンダー」シリーズの旗艦「オクタ」が2026年モデルへとアップデート。メカニズム面での変更はごくわずかのようだが、その速さと快適さは相変わらず圧倒的で、それはオンロードでもオフロードでも変わらない。300km余りをドライブした印象をリポートする。
-
ケータハム・スーパーセブン2000(FR/5MT)【試乗記】 2026.4.28 往年のスポーツカーの姿を今日に受け継ぐケータハム。そのラインナップのなかでも、スパルタンな走りとクラシックな趣を同時に楽しめるのが「スーパーセブン2000」だ。ほかでは味わえない、このクルマならではの体験と走りの楽しさを報告する。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.27 「ランボルギーニ・テメラリオ」がいよいよ日本の道を走り始めた。その電動パワートレインはまさに融通無碍(むげ)。普段は極めて紳士的な振る舞いを見せる一方で、ひとたび踏み込めばその先には最高出力920PSという途方もない世界が広がっている。公道での印象をリポートする。
-
アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ プレミアム(FF/6AT)【試乗記】 2026.4.25 世界的に好調な販売を記録している、昨今のアルファ・ロメオ。その人気をけん引しているのが、コンパクトSUV「ジュニア」だ。箱根のワインディングロードでの試乗を通し、その魅力をあらためて確かめた。これが新時代のアルファの生きる道だ。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS プロトタイプ(FF)【試乗記】 2026.4.23 一部情報が先行公開され、正式な発表・発売を2026年6月に控えた「ホンダ・シビックe:HEV RS」のプロトタイプにクローズドコースで試乗。2ドアクーペ「プレリュード」と同じ制御技術「ホンダS+シフト」が移植された、新たな2ペダルハイブリッドスポーツの走りやいかに。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――フォルクスワーゲンID. Buzzプロ ロングホイールベース編
2026.5.1webCG Movies現在の自動車界では珍しい、100%電動ミニバン「フォルクスワーゲンID. Buzz」。トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんが、実車に初めて試乗した感想をお伝えします。 -
NEW
2026年7月に開催する1泊2日の特別なドライビング体験への参加者を募集
2026.5.1九州・熊本でランボルギーニとともに極上の夏を味わう<AD>ランボルギーニが無料招待制となる1泊2日の特別ツアー「Lamborghini Summer Days 2026」を、九州・熊本で開催する。上天草の美しい海を望み、豊かな自然とともに最新モデルの走りを味わう、45組90名に贈られる特別なドライビング体験とは? -
NEW
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】
2026.5.1試乗記英国の名門アストンマーティンのスポーツモデル「ヴァンテージ」が、「ヴァンテージS」に進化。より高出力なエンジンと進化した足まわりを得たことで、その走りはどのように変わったのか? パフォーマンスを存分に解放できる、クローズドコースで確かめた。 -
NEW
世紀の英断か 狂気の博打か 「日産サクラ」の値下げに踏み切った日産の決断を考える
2026.5.1デイリーコラム日産の軽乗用電気自動車「サクラ」が、180kmの航続距離はそのままに値下げを断行! デビューから4年がたつというのに、性能はそのままで大丈夫? お手ごろ価格というだけでお客は戻ってくるのか? 電気自動車のパイオニアが下した、決断の成否を考える。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ編
2026.4.30webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也が、アルファ・ロメオの新型SUV「ジュニア」に試乗。実際に見て、触れて、乗って、印象に残った点について、アツく語ります -
第959回:「うすらデカいフィアット」がもたらしてくれたもの
2026.4.30マッキナ あらモーダ!11年にわたりモデルライフを重ねてきた、フィアットのCセグメント車「ティーポ」が、ついに生産終了に……。知る人ぞ知る一台の終売の報を受け、イタリア在住の大矢アキオが、“ちょっと大きなフィアット”の歴史を振り返り、かつての愛車の思い出を語る。
















































