ジャガーIペース ファーストエディション(4WD)/IペースSE(4WD)
オススメ! まであと一歩 2019.04.04 試乗記 いよいよ日本に導入された、ジャガーの100%電気自動車(EV)「Iペース」。エンジンを搭載しないEVならではのスタイリングをまとうニューモデルは、スポーツカーを出自とするジャガーの名に恥じないクルマに仕上がっていた。自動車の電動化を推し進める背景
ふと気が付けば、このところ多くのニューモデルで共通して聞かれる「電動化」というキーワード。この勢いだと、“純エンジン車”が姿を消すのも時間の問題か……と、もはや冗談抜きでそう思えるようになってきたのが、今という時代の雰囲気だ。
かような空気感を盛り上げる大きな要因のひとつが、欧州で厳しさを増す乗用車のCO2排出量規制にあることは間違いない。2015年に走行1km当たり130g、2021年には95g。そして、昨2018年末には「2030年に60g以下にする」という衝撃的内容が欧州連合(EU)加盟国と欧州議会によって合意に至った。ちなみに、これは“企業平均目標値”というもので、そこに規制値を下回るモデルが含まれていれば、平均値を超えるモデルがあっても直ちにペナルティーとはならない。けれども、現実には世界きっての低燃費モデル「トヨタ・プリウス」の最新型でも「75g/kmから」というデータである。現状では燃費自慢のハイブリッドモデルすら、2030年規制はクリアできないということだ。
さらに、乗用車の電動化が「待ったナシ」であるもうひとつの理由が、中国政府が進める新エネルギー車(NEV)の推進である。この国では欧州とは異なり、主に都市圏での大気汚染を低減させる目的で、特にピュアEVやプラグインハイブリッド車に対して多額の補助金を給付するなどの優遇策をとってきた。それゆえに急増した電動車両に対する充電インフラ整備の遅れや、補助金に対する過度な依存などから、この先はそうした補助金給付額を減らしたり、航続距離や搭載バッテリーのエネルギー密度などに対する基準を厳格化したりするという声も聞こえてくる。が、それでも“電動化”を推進する基本方針には変わりない。今や圧倒的な世界最大の自動車マーケットとなっているこの国の意向は、当然無視できない。
かくして世界の自動車メーカーは、それが本来自らが求める方向であるか否かに関わりなく、「もはや電動化に突き進む以外に道がない」という状況にある。昨今の急進的な電動化への動きの背景には、こうした事情があるのだ。