第572回:「日産名車再生クラブ」2019年キックオフ式
第2回日本GP優勝車の走行シーンをもう一度サーキットで
2019.05.31
エディターから一言
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日産自動車の従業員および関連会社スタッフなどの有志で構成される「日産名車再生クラブ」が2019年5月20日、神奈川・厚木の日産テクニカルセンターで「FY19再生クラブキックオフ式」を開催。本年度は1964年の第2回日本GPに出場した「プリンス・グロリア スーパー6 T-VIレース仕様車」のレストアを行うと発表し、同車を公開した。
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日産名車再生クラブとは?
日産自動車の開発拠点である神奈川・厚木の日産テクニカルセンターの従業員や関連会社スタッフとともに、歴史的名車や記念碑的レーシングモデルのレストア活動を行っているのが日産名車再生クラブである。主に日産ヘリテージコレクション(座間記念庫)の所蔵車からレストアのベース車両が選ばれ、毎年1台のペースで作業が行われている。
レストアによって車両を当時の状態に戻すのはもちろんだが、作業の過程で、先達(せんだつ)の設計思想やアイデア、そこから生まれた当時の技術などを学ぶことも、同クラブの目的とされている。13人のコアメンバーを除き、同クラブのメンバーは毎年社内で公募によって集められる。したがって日産のヒストリックモデルが好きな従業員はもちろんのこと、その年のテーマカーに思い入れがある人々が参加するのだという。
レストアのベース車両が決まった後に公募を始めるため、「今年(2019年のテーマカー)はプリンス時代のグロリアでしたので(笑)、どれぐらい(メンバーが)集まってくれるのか不安もありましたが、結果、これまでと同じぐらいの有志が集まり、今日の日を迎えることができました」とは、キックオフ式の冒頭であいさつを行ったクラブ代表の木賀新一氏の言葉。名車再生クラブは業務ではなく、有志による活動であるため、作業は土日を中心とした就業時間外に実施されている。
第2回日本グランプリでワンツーフィニッシュ
いくつかのレストア候補車両の中から同クラブが選んだのは、前述の通りプリンス・グロリアである。その個体はといえば、1964年式のスーパー6で、第2回日本グランプリT-VIレース仕様車だ。ただし車両はレースに出場して優勝したマシンそのものではなく、後に展示用として39号車を模して作られたレプリカである。
木賀氏は「このクルマをベースにどこまで実際の39号車に近づけられるのかは、作業を行ってみないと分からない」としながらも、「日本グランプリは第1回、第2回とも映像が残っており、プリンス・グロリア スーパー6の雄姿もたくさん見ることができます。とてもいい音で走っていることが分かります。プリンスはご存じのように(戦前の)立川飛行機がルーツとなる会社です。当時の軍用機は非常に厳しい検査の後に納められたと聞いています。つまり、プリンスという会社は、決められた枠の中で最大限の性能を発揮することに長(た)けていたのではないかと思います。だからこそ、レースでも輝かしい成績を残せたのでしょう。今回の作業においては、そんな先人たちの努力や工夫も合わせて、みんなで学んでいきたいなと思っています」と抱負を語った。
プリンス・グロリアは当時のプリンス自動車工業が開発した乗用車。今回のモデルは、1962年にフルモデルチェンジされた2代目である。1963年に最高出力105psを誇る、国産初の2リッター直6エンジンを搭載するスーパー6と呼ばれるグレードを追加。このエンジンは、日本で初めて100psを超える性能を持った市販乗用車用エンジンとして歴史に残っている。
プリンス自動車工業は、1963年に鈴鹿サーキットで開催された第1回日本グランプリでの惨敗という結果を受け、翌年グロリア スーパー6の投入を決定。見事T-VIクラスで大石秀夫選手の39号車が優勝、杉田幸朗選手の38号車が2位というワンツーフィニッシュを決め、雪辱を果たした。
今回レストアされるのは、その39号車である。だたし、先に紹介したように残念ながら当時のマシンは残っておらず、日産ヘリテージコレクション所蔵のものは、レーシングパーツを使用した、当時の展示用レプリカだ。もちろん、今となってはそれでも貴重なモデルであることに変わりはない。
設計に携わった伊藤氏がアドバイザーに
後にプリンス自動車工業は日産自動車と合併する。グロリア スーパー6の鈴鹿での活躍から2年後の1966年のことである。
来賓として登壇した日産でグローバルブランドエンゲージメント部に所属し日産のヘリテージマーケティングを担当する中山竜二氏は、「プリンス・グロリア スーパー6は当時の最先端のデザイン、技術が盛り込まれたフラッグシップと呼べる存在でした。このクルマが出ていたクラスはツーリングカーレースの最高峰で、前年優勝の『トヨペット・クラウン』を破っての優勝でした。その頃のレースはナンバー付き車両で行われておりました。そうした普段ユーザーが乗っているクルマでレースを行うことで技術を高め、今に続く自動車大国日本の基礎を築いていったとも考えられます。そう思うと今回のクルマの再生は非常にワクワクいたします。日本グランプリは出来上がったばかりの鈴鹿サーキットで開催されたので、鈴鹿で再びグロリアの雄姿を見たいと思います」と語った。
続いて当時のプリンス自動車工業に在籍し、「スカイライン」の設計者として知られる櫻井眞一郎氏のもとで車両設計を行っていた伊藤修令氏が登壇。伊藤氏は「プリンスの上層部は“今考えられる最高のものを作れ”と言っていました。最高のものとは、他の人が思いつかないような奇抜なことではなく、(設計者として)同様の仕事をしている人が“これはすごいことをやったな”と認めてくれるようなものだと思っています。私は入社したての新人でしたが、いきなりエンジンやデフのマウントの設計をさせられました(笑)。さらにグロリアはホイールベースが長かったので3ジョイントのプロペラシャフトを作ることになり、その設計もやらせてもらいましたので、このクルマにはとても思い入れがあります」と、当時のエピソードを語った。伊藤氏はアドバイザーとして、このプロジェクトに参加するという。
完成車のお披露目は鈴鹿サーキットで?
最後に、日本モータースポーツ推進機構理事長の日置和夫氏がマイクを握った。日産OBである日置氏は、高校生の頃にテレビ中継されていた日本グランプリでグロリアの活躍を見ていたという。
日置氏は「当クラブはこれまで12月のNISMOフェスティバル(会場:富士スピードウェイ)で再生したクルマを走らせています。(グロリアの再生活動計画と題した)予定でも11月完成、12月にお披露目となっていますが、やはり日本グランプリで活躍したクルマなので、鈴鹿サーキットでも走らせてみたいと思いました。もしスケジュールの進みがよく完成が前倒しできたら、11月に鈴鹿サーキットで開催される鈴鹿サウンド・オブ・エンジンで走らせるのはどうでしょう。当時のドライバーの方々もお元気なので、来てくれると思います。先輩たちが築いてきた歴史を皆さんで再生し、スカイライン(S54A-1)とともに走らせ、『かつてこんなにすごいことが(鈴鹿で)あったんです』と世の人々に見ていただきたい」と夢を語り、大きな拍手で会場が沸いた。
予定にない提案であったが、FY19名車再生クラブキックオフ式に参加したメンバーや関係者の心は、その瞬間、きっと一つになったに違いない。
グロリアの設計図は残っており、パーツも同クラブのコネクションを活用し、手配がつきそうだという。さらにタイヤは英ダンロップから入手できるだろうという情報もアナウンスされた。
どうやら今回は、例年通り年末に富士スピードウェイで開催されるNISMOフェスティバルよりも1カ月早く、グロリアの雄姿が鈴鹿サーキットで、しかも「スカイライン」と並ぶ形で見ることができるかもしれない。伝説の再現が今から楽しみでしかたがない。
(文と写真と編集=櫻井健一)

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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