第574回:軽自動車にもADASの波が到来!
新型「ダイハツ・タント」の運転支援システムを試す
2019.06.07
エディターから一言
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先進運転支援システム(ADAS)の採用が急速に進む軽自動車。ダイハツの基幹車種である新型「タント」も、その例外ではない。同車に搭載されるアクティブクルーズコントロール(ACC)と、パーキングアシストの出来栄えに、軽自動車用ADASの“今”を見た。
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走りの進化も大事だけれど……
この5月にパシフィコ横浜で行われた「人とクルマのテクノロジー展2019」に行ったら、ダイハツのブースだけがほかとまったく違う展示をしていた。最先端の自動運転やコネクティッドサービスが紹介されている中で、ダイハツが展示していたのは1968年のレーシングカー「P-5」。レストアしてよみがえった勇姿に人気が集まっていたが、イベントの趣旨には合わない。
本当は、新型「タント」に搭載された一連の新技術、すなわち「DNGA」をお披露目したかったのだろう。発売前とあってそれがかなわず、代わりに51年前の最新技術を展示したのである。7月に名古屋で行われる際には、タントがブースに登場するらしい。
実は、一足先にサーキットで4代目のプロトタイプを試していた。タイトなコーナーが続くタフなコースだが、背の高いタントで不安を感じることなく周回できる。DNGAに基づいた新プラットフォームの恩恵だろう。今回は同時にエンジンも刷新されており、ダイハツが新型タントに懸ける意気込みが伝わってきた。
すべてを新しく作り直すことで、走りと燃費の両方を向上させることができたのだという。80kgの軽量化を果たし、装備増と相殺してもトータルで40kg軽くなった。エンジンとトランスミッションの進化で、40km/hから80km/hの加速時間は13%減少。約1秒だというから、キビキビ感が増したのは間違いない。内外装の質感も上がった。すべての面でブラッシュアップを図ったわけだが、分かりやすい商品力強化という意味では、もっと大切な機能がある。ACCと自動パーキングだ。
軽ユーザーからもACCが求められる時代に
今や先進安全装備は軽自動車でも当たり前に用意されることになった。ダイハツが「スマートアシスト」を採用したのは2012年の「ムーヴ」から。機能は着実に強化され、現在ではステレオカメラを使った「スマートアシストIII」となっている。これら“スマアシ”が搭載されたモデルは、すでに合計200万台以上が販売されたそうだ。
衝突回避支援ブレーキへの関心は高く、軽スーパーハイトワゴンのユーザーに多い子育てファミリー層や高齢者に支持されているらしい。車線逸脱警報や誤発進抑制制御機能も事故防止に大きな役割を果たす。燃費競争が一段落し、安全機能がどれだけ充実しているかが商品力を左右するようになった。
カメラやレーダーなどのセンサーで車線やまわりのクルマを認識することで、便利機能も付与されるようになった。特にありがたいのがACCである。レーンキープ機能と組み合わせれば、高速道路上でアクセル、ブレーキ、ステアリングの操作をクルマにある程度まかせることができる。
この機能をいち早く搭載したのが「ホンダN-BOX」などのNシリーズだった。「フィット」や「フリード」などに装備されている「ホンダセンシング」を2代目N-BOXにも与え、ACCを使えるようになった。当然価格は上昇したが、先代と変わらずに売れ続けている。ユーザーは少しお金をかけても安全と便利さを手に入れたいのだろう。
3月に発売された新型「日産デイズ」と「三菱eKワゴン/クロス」もACCが使える。日産が「セレナ」などに装備していた「プロパイロット」を軽自動車にも対応させた。三菱では「マイパイロット」という名称になる。先行したN-BOXより優れているのは、作動速度である。N-BOXが約30km/hを超えないと使えないのに対し、デイズとeKは0km/hからOK。渋滞の中で運転が楽になるというのが大きい。
ダイハツもこのジャンルに参戦する。ACCが付いてなければ買わないというユーザーはまだそれほど多くはなくても、将来の自動運転を見据えれば技術開発を怠るわけにはいかない。エンジニアの意地もあるだろう。
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“2秒”という時間に見るエンジニアの配慮
サーキットの一部を使っての体験で、高速走行はできなかった。40km/h以上になると設定できるようになり、速度は最大限115km/h。最近では日本車でも180km/hまで設定できるモデルがあるが、これがスタンダードだろう。ステアリングホイールのスイッチで操作するのも、ほかのシステムと変わらない。
前車を検知してついていき、停止もスムーズ。しっかりと状況を把握しているようだが、ここからは自動ではない。停止して2秒すると自動的にキャンセルされてしまうため、その間に自分でブレーキを踏む必要がある。再始動するには、レジュームボタンを押す。2秒以内に前車が動けば、何も操作しなくていい。クルマが自動で前車追尾を再開する。
2秒という長さにしたのは、ドライバーが外に出るのを防ぐためだそうだ。自動で停止したあと、せっかちな人がクルマを飛び出してしまうケースがまれにあるのだという。ちょっと想像がつかないが、万全を期すのが自動車メーカーの役目なのだろう。
続いて、自動パーキングを試す。装備されることがだんだん増えている機能だが、完成されたとは言いにくい技術である。白線を認識しているはずなのに、平気で2つのスペースの真ん中に止まってしまうぐらいはご愛嬌(あいきょう)。雨の日には他のクルマが駐車している場所に突っ込んでいこうとしたものもあった。欧州車では、隣にクルマがいないと作動しないタイプのシステムも。いずれにしても、役には立たない。いろいろ試して、満足できる出来だったのは「日産リーフ」ぐらいである。
「スマートパーキングアシスト」が正式名のタントの自動パーキングは、比較的機能がシンプルな簡易版である。並列駐車と縦列駐車の両方に対応していているが、システムが動かすのはステアリングのみ。ブレーキとギアは自分で操作しなくてはならない。
操舵支援で駐車時の操作をアシスト
まずは駐車スペースの横に来たらビデオボタンを長押し、「どこに駐車するか」を認識させる。推奨される駐車スペースとの距離は50cmから1mだが、多少離れていたり斜めになっていたりしても大丈夫だ。
次いで操作に用いるのは、モニターに真上から見た自車周辺の映像を映し出す「パノラマモニター」を利用したシステムで、これが直感的に使える。モニターに示された駐車スペースがOKなら「はい」のボタンを押してスタート。まずは駐車スペースへのアプローチに好適なポイントまで、クルマを移動させる。クルマが進む場所として青く示されたところに障害物がないことを確認し、再び「はい」のボタン。ギアをDに入れてブレーキを緩めると、自車とともにモニター上でもクルマが前進していく。
青く囲まれたスペースにクルマが入ると、「ブレーキを踏んでください」という音声案内が流れる。ギアをRに入れ、いよいよ駐車スペースへとクルマを入れていく。とはいえ、ステアリング操作はシステムにまかせればいい。バック駐車では枠の最先端、縦列駐車では右端に止まるのは、縁石やクルマ止めにぶつかるのを防ぐためだ。
縦列駐車では、何度も切り返しを行った。EPSが45アンペアとパワー不足なのが原因だそうだ。60アンペアならば一発で決まるというが、軽自動車だから過度にコストはかけられない。ブレーキやギアの操作が手動なのも、主にコストが理由である。慣れれば途中からはすべて自分の手で行ったほうが確実で早い。自動というより、半自動だと考えたほうがいいだろう。
タントに限らず、ACCや自動パーキングはあくまで“途上”の技術だ。遠い先には自動運転があるにしても、今時点でも補助的な役割である。そうであっても楽をできるというのは魅力的なので、軽自動車でもこれらの機能が浸透しつつあるのだ。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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