アウディA6セダン55 TFSIクワトロ(前編)

2019.06.13 谷口信輝の新車試乗 谷口 信輝 アウディの基幹モデル「A6セダン」にレーシングドライバー谷口信輝が試乗。新設計のシャシーにハイテク装備を満載した優等生を前に、さすがのプロも言葉を探している様子だが……。その特筆すべき美点とは?
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悔しくなるほどいいクルマ

アウディに関して、谷口信輝と私オオタニは常に微妙な関係にある。アウディの走りを高く評価しているという点で谷口と私は同じ立場にあるが、なぜか彼はアウディのよさを素直に認めることができない。そんな谷口に対して「本当は好きなんでしょ、アウディのことが……」とチクチク攻め立てるのが、この連載が始まって以来の私の役回りとなっている。

しかし、「アウディA6セダン55 TFSIクワトロ」に試乗してもらった今回は、この関係に見逃せない進展があったので、順に紹介していくことにしたい。

谷口の心境に大きな変化が起きていることは、試乗を終えた直後の彼のコメントにも表れていた。例えば、クルマから降り立った谷口に「A6、どうでしたか?」といつものように尋ねると、谷口は笑みを浮かべながらも、軽くイラ立った調子で「そりゃあもう、いいに決まっているじゃないですか!」と語り始めたのである。
「なんか、もう、余裕が感じられますよね。ステアリングは、わざと軽い遊びを設けてあるんですが、切れば切った分だけ曲がっていくし、エンジンは速くもないけれど遅くもなく、本当にうっとりするほどいいクルマだと思います」

この辺りで谷口のイラ立ちは頂点に達する。
「ああッ! もう!! 本当は文句言いたい。文句言いたいんですけど、正直、ないですよ。なんか、すっごく悔しいなあ、もう!」

正直言って、これは谷口と私の間で繰り広げられるゲームのようなものだ。谷口がアウディのよさを認めれば、それは私への屈服を意味する。つまり、谷口はアウディのよさを認めるのがイヤなのではなく、私に敗北宣言をするのが悔しくて仕方ないのだ。それでも、どんなクルマにも真摯(しんし)に向き合う谷口は、アウディの美点を次々と指摘していった。
「ハンドルはそれほどたくさん回らないですね。僕なりの計測方法で1時間5分です。ただ、それでも最小回転半径は小さくて小回りが利きます」

それは試乗車に4WSの「ダイナミック・オールホイール・ステアリング」を含む「ドライビング・パッケージ」というオプションが装着されていたからだろう。

 
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