ボルボV60 T6 Twin Engine AWDインスクリプション(4WD/8AT)
シビれるワゴン 2019.07.01 試乗記 ワゴンとしての魅力を磨いた現行型「ボルボV60」。そのプラグインハイブリッドモデルが、いよいよ日本の道を走り始めた。ボルボの世界戦略を担う電動パワートレインと伝統的なエステートスタイルとの組み合わせを、中間グレードの「T6インスクリプション」で試す。再びエステートの本筋へ
「240」に「940」、「850」に「V70」。ボルボといえばやっぱりエステートでしょう。
……いささか残酷な話だが、そんなイメージを抱いているユーザーは、気づけば鏡の中に白髪のひとつやふたつも見受けられるようになった中年以上ということになるのかもしれない。
SUVが台頭する中、強くなりすぎた「ステーションワゴン屋さん」というキャラクターを果たしてどうすべきか。ボルボ自身、それに悩んでいた気配は先代のV60あたりから感じられた。それまでは荷室容量を優先してパッツンと垂直に落とされたテールまわりこそがボルボの象徴だったが、先代V60ではルーフ長を縮めリアウィンドウを寝かせたファストバック的なフォルムを採用。言ってみればスポーツワゴン寄りのたたずまいを示したわけだ。
そのV60が登場した2010年にボルボはジーリーの傘下となり、エンジニアリングの全面的な見直しを含むリブランディングに取り組むこととなった。その過程で、エンジンは4気筒以下に集約、2019年には全銘柄で電動化グレードを販売など、世間を驚かせるような目標設定が次々となされていく。デザインにおいては2015年に登場した「XC90」以降、4年をかけて新たなテーマを全銘柄に浸透させ、日本で言えばマツダに比するだろうダイナミックな変貌を遂げて今に至った。
その中で、V60の位置付けは先代のスポーツワゴン的なところから再びエステートの本筋に戻ろうとしているようにみえるのは僕だけではないだろう。上位モデルにあたる「V90」よりもしっかりと立てられたゲートまわりのデザインや、約30リッター少ないだけという529リッターの荷室容量はそれを物語っている。実際、日本市場でも導入直後は動きが悪かったものの、現車に触れるとその使い勝手に納得するユーザーが増えて販売は上向き、今では「XC40」や「XC60」と並ぶ国内販売の柱となっているそうだ。
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後輪をモーターで駆動する電動4WD
そのV60に設定されるグレード「T6」は、ボルボいわくの「Twin Engine(ツインエンジン)」……すなわちガソリンエンジンとモーターの混成となるプラグインハイブリッドパワートレインを搭載している。特徴的なのは後軸側にも駆動と回生を担うモーターを搭載している点で、通常の四駆(や後輪駆動車)ならドライブシャフトの通り道となるセンタートンネルに電池を収める、電動4WD的な駆動レイアウトを採用している。このシステムは、2017年に発表された全モデル電動化プランの、メカニズム面での中核を成すものだ。
T6の前軸側に搭載されるエンジンは2リッター4気筒直噴ユニットにターボとスーパーチャージャーを組み合わせたもので、同様のメカニズムをもつ「T8」に対して最高出力は65psダウンの253ps、最大トルクは50Nmダウンの350Nmとなる。これとアイシン・エィ・ダブリュ製8段ATの間には、スタータージェネレーターと“パワーサプリメント”的役割の両方を果たすモーターが挟み込まれており、そのアウトプットは46ps/160Nm。主に駆動用となる前述のリアモーターは87ps/240Nmと、T8と同様だ。
T6に搭載されるLGケム製リチウムイオンバッテリーのセル数は96。容量は直近の仕様変更によって30Ahから34Ahへと増え、EV走行可能距離も45.1 km から48.2kmに伸びた。充電は家庭用に設置できる200Vに対応、所要時間は2.5~3時間と、この辺りのスペックもT8と同じになっている。
T6のドライブモードセレクターには、EV走行を優先する「ピュア」、最適効率をマネジメントする「ハイブリッド」、モーターパワーもフル活用する「パワー」の3つを基本に、常時エンジンを稼働させて積極的に充電を促す「チャージ」モードなども用意されている。
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“充電ナシ”でも魅力的
異なる動力源と複雑な制御を背負っている割には、T6のドライブフィールは総じて滑らかだ。大トルクのモーターを使用することもあって、エンジン始動時のショックは皆無。リアモーターとの駆動連携がぎくしゃくすることもない。ごく低回転域からグイグイとトルクフルに車体を押し出す感覚に、モーターの加勢がしっかり効いていることを実感する。T6の0-100km/h加速は5.4秒。T8では4.9秒となるが、よほどのことを望まなければ動力性能的にはT6でも十分なはずだ。ただし、料金所ダッシュのようにアクセルを深く、素早く踏み込むような場面では、さまざまな連携のラグやメカニズム保護のためだろうか、ドライバビリティー的には若干の応答遅れ感がつきまとう。
EV走行については、日本での法定速度を超える125km/hまでの速度域で可能となっており、高速でも平坦路や下り坂では頻繁にEV感覚を体験できる。が、個人的にはそれとは真逆の低速域、街中を走るような場面での力強いモーターアシストに、T6の個性や気持ちよさを感じた。たとえ、メーター上のバッテリー残量計がゼロとなっても、走行用に蓄えたバッファを少しずつ持ち出すこともあって、走りの力感に変化はない。いよいよバッテリーが空になりそうになると強制的にエンジンがチャージモードに入るが、その間も必死に回生などを拾い集めているため、その状態に至るのは稀(まれ)だ。気になったのは回生協調の影響か、ブレーキの踏力と制動の関係にリニアさがないことだが、こればかりは経験がものをいう箇所だから、もうしばし作り込みに時間を要することだろう。
ちなみに、ボルボ・カー・ジャパンのスタッフが通勤などでじっくり試してみると、「T5」と“無充電T6”の燃費差は実地で約2割というから、プラグインハイブリッドのTwin Engineも「電池が切れればひたすら宝の持ち腐れ」というわけではない。仮に外部充電を用いずとも、ハイブリッドカーとして魅力的な運転体験をもたらしてくれるところにT6の魅力がある。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ボルボV60 T6 Twin Engine AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4760×1850×1435mm
ホイールベース:2780mm
車重:2050kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:253ps(186kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1700-5000rpm
フロントモーター最高出力:46ps(34kW)/2500rpm
フロントモーター最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-2500rpm
リアモーター最高出力:87ps(65kW)/7000rpm
リアモーター最大トルク:240Nm(24.5kgm)/0-3000rpm
システム最高出力:340ps
タイヤ:(前)235/40R19 96W XL/(後)235/40R19 96W XL(コンチネンタル・プレミアムコンタクト6)
ハイブリッド燃料消費率:12.3km/リッター(WLTCモード)
価格:749万円/テスト車=801万3000円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイトパール>(10万3000円)/アルミホイール<19インチ 5ダブルスポーク 8.0J×19 ダイヤモンドカット/ブラック>(10万円)/Bowers&Wilkinsプレミアムサウンド・オーディオシステム<1100W、15スピーカー>サブウーファー付き(32万円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2008km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6)/高速道路(4)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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