ランボルギーニ・ウラカンEVO(4WD/7AT)
その名に偽りなし 2019.07.19 試乗記 ランボルギーニV10史上最強と言われた、最高出力640psを誇る「ペルフォルマンテ」のエンジンと、全輪駆動、全輪操舵のドライブトレインが採用された「ウラカンEVO」に富士スピードウェイで試乗。ベビーランボの最終形態はどんな進化を遂げたのか?背徳の自然吸気V10エンジン
富士スピードウェイの最終コーナーを3速で脱出してフルスロットル。5.2リッターのV10自然吸気エンジンが盛大にファンファーレを奏でる。フォーン! 何百もの金管楽器の合奏がブ厚い音のトンネルを作り、その中をランボルギーニ・ウラカンEVOが疾走する。
そんな音といい、突き抜けるパワー感といい、“寄らば斬る”のレスポンスといい、いま新車で買える最も官能的なエンジンであると言って間違いはないだろう。
世界の平均気温が100年あたりで0.73度も上昇していることが問題となっているいま、「自然吸気(NA)ばんざ〜い!」「NA最高!」と叫ぶのは無責任な姿勢だと言われても仕方がない。けれども理性を吹き飛ばしてしまうほどの魅力を、このV10は備えている。背徳のエンジンだ。
ホームストレートでは先導車をドライブするインストラクターから、「取りあえず、トップスピードは220km/hで様子を見てください」という指示が車載の無線機に入る。
220km/h巡航の車内は、平和そのものだ。ステアリングホイールからは4本のタイヤが正しく地面に接しながら駆動力を伝えていることが伝わり、ぴたりと路面に吸い付いているように感じる。これくらいの速度だと、まるでベルトコンベヤーで移動しているかのように安定している。ドライバーは絶大なる安心感と自信に包まれるから、スピードメーターは200km/hを軽く超えているのに、100km/h巡航ぐらいに感じてしまう。
対前年で販売台数が51%増というランボルギーニ躍進の立役者、「ウラカン」が大がかりなマイナーチェンジを受け、ウラカンEVOとして登場した。カンエボ(と略してみた)のマイチェンの眼目は、以下の4点。
まず、空力性能の向上を実現するためのデザイン変更。4輪駆動、4輪操舵を一括でコントロールする制御システムの採用。そしてエンジンの高出力化。最後に最新のコネクティビティー機能を備えたインフォテインメントシステムへの刷新だ。
と、カンエボの中身のおさらいをしていると、あっという間に1コーナーが近づいてくる。ブレーキングでは、車体をグッと沈める安定した姿勢で速度を殺す。ブレーキはただ利くだけでなく、微妙な踏力のコントロールを反映する繊細さも持ち合わせる。
スポーツカーをスポーツカーらしく乗ると、ファミリーカーとは比べものにならないほどブレーキを踏む頻度が増える。だからスポーツカーにとって、ブレーキのフィールはエンジンと同じくらい重要だと思っている。このクルマのブレーキは制動力もタッチも素晴らしく、コントローラブルだ。
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爆音なのに美しいエキゾーストサウンド
2周目、先導車のペースが上がる。ドライブモードは「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」の3つから選べるが、無線でノーマルにあたるストラーダから、スポーツに切り替えるようにとの指示が入る。するとエンジンのレスポンスがさらに切れ味鋭くなる。
ヘアピンの立ち上がりで深く踏み込むと、濁りがないのに迫力がある、爆音なのに美しいという、相反する要素で構成された快音とともに、タコメーターの針が盤面(といっても液晶のデジタル画面だが)を駆け上がり、2速は瞬時に吹け切る。
背筋がゾクゾクして心拍がバクバクとアガるこのエンジンは、マイチェン前のウラカンに設定されたウラカン ペルフォルマンテと同じチューンを受けたもの。640psの最高出力に不足などあるはずがないけれど、動力性能に優れたアスリートというだけでなく、人の心を揺さぶるエンターテイナーでもある。
チタン製バルブを備えた軽量の排気システムは「スーパースポーツエキゾースト」と呼ばれ、高出力化だけでなくエキサイティングなサウンドをもたらすことにもひと役買っているという。
組み合わされる7段DCTとの連携もバッチリで、変速は素早く、滑らか。シフトパドルを操作してギアを選んでエンジンを操り、加速力とともにサウンドをコントロールする。演奏者に指示をしてシンフォニーを紡ぐ、オーケストラの指揮者の気分が味わえる。
富士スピードウェイ後半のテクニカルなくねくねセクションは、筆者程度のスピードだとウラカンEVOは涼しい顔でクリアしていく。ほとんどアンダーステアを感じさせずにタイトなコーナーをクルッと攻略するあたり、後輪操舵の効果ではないか、と予想する。果たして、続くハンドリングテストで予想は確信に変わった。
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アクセルだけでドリフトを維持
だだっ広い駐車場にはパイロンが置かれ、低速と中速の2つのスラロームコースと、ドリフト(!)のコースが用意されていた。
まずはスラロームで小手調べ。低速コースでは、予想をはるかに超えて小回りが利く、扱いやすさが確認できた。中低速域で回頭性を高めるために、後輪は前輪とは逆の方向にかじを切る逆位相となるが、この逆位相の角度は0.5度だという。
中速コースでも望外の小回り性能を確認。200km/hを超える速度域で巌(いわお)のような安定感を見せたウラカンEVOが、低速ではライトウェイトスポーツカーのように軽快に身を翻す。後輪操舵が効果的に作動していることは疑いようがない。同時に、タイトなコーナーで繊細な操作を受け付けて軽快に身を翻すのだから、日本サイズのワインディングロードでも楽しめるはずだと思った。
そしてお待ちかねのドリフト。一定の半径の円周上を周回する、いわゆる定常円旋回だ。
プレス資料に「遊び心に溢(あふ)れ極めてエキサイティングな」という記述があるスポーツモードは、お尻を滑らせることを楽しめる通称“ドリフトモード”。インストラクターのアドバイス通り、少しゆっくりと入ってからアクセルペダルを踏み込むと、ずりっとお尻が滑る。
普通の定常円旋回であれば、ここからカウンターステアでドリフトアングルを維持するところだ。けれどもウラカンEVOは、前後輪のトルク配分、左右輪のトルク配分、そして後輪操舵などを総動員して姿勢を制御、カウンターステアをあてずにステアリングホイールは直進状態のまま、アクセルのコントロールだけでドリフトを維持することができる。
電子制御システムすべてを統括するのがLDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)というシステムで、安定とエキサイティングを見事に両立している。そして、このふたつを両立させているだけでなく、LDVIはもう一歩、操縦に踏み込んでいる。
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240km/hはまだまだ序の口
LDVIは、ステアリングホイール、アクセル、ブレーキ、ドライブモードから、ドライバーがどんな操作をするのかを認識している。同時に、アクティブサスペンションや駆動輪がどれくらいグリップしているかを推定する機能によって、車両がどんな状態に置かれているかも把握する。
こうして、ドライバーと車両、両者の状況を的確につかんで、先回りして最も的確な車両セッティングを施すという、いわば“Amazonからのおすすめ”を超正確にしてドライビングで実現するかのような能力を備えているのだ。
スラロームとドリフトでLDVIの効果を知ってから、もう一度富士スピードウェイのレーシングコースに戻る。
コルサモードに入れて、さらに少しペースが上がる。ホームストレートでは240km/hに届くかというスピードに達するけれど、ビタッと安定している。ウラカンEVOの変更ポイントのひとつに空力性能の向上があげられ、ダウンフォースは5倍も向上しているという。とはいえ、最高速度325km/hに対して、これくらいの速度域はまだまだ序の口といったところか。
ウラカンEVOとは、対極にある2つの要素を見事に共存させたスーパーカーだった。エンジンの音は美しさとたけだけしさを両立し、操縦性はどっしりとした安定感と心がうきうきするような軽快感を両立する。エンジンは圧倒的なパワーとキメ細やかなフィールを両立し、ブレーキも同様にド級の制動力と繊細な操作性を両立した。
簡単に言えば先進技術によって、「アチラを立てればコチラが立たず」の二律背反を両立したということになる。そういえばランボは、1960年代から70年代にかけて、V12のDOHC化でもV12をミドシップすることでも他に先んじたという歴史がある。デザインだけでなく、技術的にも先鋭的なメーカーなのだ。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカンEVO
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4520×1933×1165mm
ホイールベース:2620mm
車重:1422kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:640ps(470kW)/8000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30ZR20 90Y/(後)305/30ZR20 103Y(ピレリPゼロ コルサ)
燃費:--リッター/100km
価格:2984万3274円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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