キャデラックCT6プラチナム(4WD/10AT)
ロックンロールを聴きながら 2019.08.01 試乗記 1960年代から洋楽の歌詞に登場し、かの地の若者の心情を代弁してきたキャデラック。最上級セダン「CT6」のオーディオで懐かしのロックを鳴らし、ドイツ車にも日本車にもまねできない、アメリカンラグジュアリーならではの贅沢(ぜいたく)に浸った。ボ・ディドリーもアリアナ・グランデも
キャデラックという名前がなぜ自分の気持ちの中に深く刻み込まれているのかといえば、若かりし頃に聴いた洋楽の影響なのだと思う。
イギリスのモッズムーブメントを支えたキンクスはその名もズバリの『Cadillac』という曲を1964年にリリースしている。その原曲はロックの始祖ともいわれるアメリカのボ・ディドリーが60年に書いたもので、これはそのままCMにも使えそうなくらい憧憬(しょうけい)がつづられたものだ。同じくイギリスのパンクムーブメントを代表するザ・クラッシュのアルバム『London Calling』といえばロック史に残る名盤とされているが、その中に収まる『Brand New Cadillac』は、ここで書くのもはばかられるほどしょうもない歌詞の中に、自らの殻を破るという類いの意思が込められている。ちなみにこれも元ネタはあり、イギリス初のロッカーといわれているヴィンス・テイラーが59年に歌っていた。
九州の片田舎で原曲を聴くことは到底かなわず、上京するや西新宿や駿河台で音源を血眼で探したものだが、今やYouTube等でそれは簡単に再生できる。いい時代になった……では片付けられないような何かを感じることも多い。
かようにキャデラックは欲求をはじめとしたさまざまな心情を代弁する比喩的な存在として重用(ちょうよう)されてきた。ちなみに小林 旭の『自動車ショー歌』にキャデラックの出番はなかったが、アリアナ・グランデは『Cadillac Song』でティーンにぶっ刺さりそうな甘ったるいラブソングをつづっている。今に至るまで、キャデラックという名前はかの国において特別なものなのだろう。
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