第581回:初代「TT」と「A6」の開発秘話を和田 智が披露
アウディ主催の「bauhaus 100 japan Talk Live」をリポート
2019.08.08
エディターから一言
拡大 |
「アウディTT」日本導入20周年を記念するイベント、「bauhaus 100 japan Talk Live(バウハウス100 ジャパン トーク ライブ)」が2019年7月29日に東京・二子玉川で開催された。元アウディのカーデザイナー・和田 智氏が登壇、「A6」開発時の秘話や、初代TTへの思いを語った。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
バウハウスとは何か?
2019年、バウハウスは開校100周年を迎える。
バウハウスとは1919年に設立され、1932年までの14年間にわたり存在した、ドイツの造形芸術学校のこと。近代建築を代表する2人の巨匠が校長を務め、有名画家たちが講師を務めたことでも知られるが、このバウハウスが世に与えた功績は大きい。なぜなら、芸術と産業を統合した総合的なデザイン教育はここから始まったといってよく、機能的で普遍的なデザインは、今もなお多くの製品に影響を与え続けているからだ。
20世紀に誕生したこの美術学校の100周年を祝う行事は大きな広がりを見せ、2019年9月からは、日本国内の5カ所の美術館を巡る、記念企画展「開校100年 きたれ、バウハウス -造形教育の基礎-」がスタートする。
アウディ ジャパンも、その企画展を協賛する企業のひとつ。同時に、ドイツ発祥のブランドであり、初代アウディTTが日本導入から20周年を迎えたこととも相まって、今回のトークイベントが開催される運びとなった。
登壇するのは、デザイン評論家で武蔵野美術大学名誉教授の柏木 博氏と、元アウディのカーデザイナーである和田 智氏。
まず、「バウハウスとは何か」について、その歴史やプロダクトについて柏木氏からレクチャーが行われたあと、和田氏から、アウディTTとアウディブランド、そしてバウハウスとのつながりについて語られた。
デザインとは「継承」の上に成り立つもの
バウハウスの功績をひとつのきっかけとしながら、柏木氏と和田氏がデザインについて語りあう中で、ともに大切なテーマとして導きだされたのが、「継承」という2文字である。
中でも興味深かったのが、和田氏によって語られた、あるエピソードだ。彼は、アウディ デザイン在籍時代にA6を手がけているが、その開発時に、当時の上司であったワルター・デ・シルヴァ氏から、以下のような言葉を投げかけられ心底驚いたという。
「デザインミュージアムに机を持って、絵を描け! そこで一番声を響かせたものを探し出して、継承しろ」
なぜ驚いたのか。それは、以前在籍していた国産メーカーでは、「新しいもの、他とは違ったものをデザインしろ」と言われていたし、ずっと“新しいもの”を作ることに疑いを持たなかったからだ。
これまでとは真逆の指示に戸惑いつつも、実際にミュージアムで過去のクルマと向き合っていると、不思議と語りかけてくる声が聞こえてきた。そして最終的には、ポルシェのレースカーからの語りかけが、A6のシングルフレームのヒントを与えてくれたのだという。
和田氏は、その後、同社のゴールデンエイジを築くひとりとなっていくが、デ・シルヴァ氏のひとことから、歴史や伝統を継承することが、新しい発想を生み出すうえで欠かせないことに気づかされたと語る。
初代アウディTTが「継承」するものとは
初代アウディTTに関連するものとしては、こんなエピソードも飛び出した。
和田氏いわく、このモデルも過去の伝統を継承するモデルだという。表向きには「アウディDKW MONZA」がモデルになったとアナウンスされているが、実は、フェルディナント・ポルシェが手がけたポルシェの第1号機がモチーフとなっているのではないかというのだ。
初代アウディTTのデザイン案は、フォルクスワーゲン・アウディのアメリカのデザインチームがオリジナルを作り、一度ポルシェに提案されたものが不採用となっていたが、それをアウディのフェルディナント・ピエヒに提案したところ、受け入れられたものである、と。
和田氏はこのいきさつについて、「あくまでも推論にとどまる」と言うが、「ピエヒは、TTのデザイン案に“ポルシェの血”を感じたのだろう」と力を込める。アウディに在籍していた人物の話だけに、確度は高いのではないだろうか。
プログラムの最後には、先人の声に耳を傾け、未来へとつなげていくことがデザイナーとしての使命である。そして、バウハウスが育んできた精神についても、今のデザイナーたちがどう解釈し、継承していくかによって、それが持つ意味も変わってくるのではないか、と2人は結ぶ。
開始から1時間半に及ぶイベントだったが、2人の専門家による講演内容はとても熱のこもったもので、会場のそこかしこから、時折相づちを打つ声が聞こえてくるなど、来場者の反応の良さがうかがえた。
2019年8月3日にスタートする巡回展では、バウハウスの歴史や思想について、より知識を深めることができそうだ。新潟美術館を皮切りに国内5カ所で開催されるので、足を運んでみてはいかがだろう。
(文と写真=スーザン史子)

スーザン史子
-
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す 2026.3.3 電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。
-
第862回:北極圏の氷上コースでマクラーレンの走りを堪能 「Pure McLaren Arctic Experience」に参加して 2026.2.25 マクラーレンがフィンランド北部で「Pure McLaren Arctic Experience」を開催。ほかでは得られない、北極圏のドライビングエクスペリエンスならではの特別な体験とは? 氷上の広大な特設コースで、スーパースポーツ「アルトゥーラ」の秘めた実力に触れた。
-
第861回:冬道性能やいかに ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を北の大地で試す 2026.2.18 2025年9月に日本ミシュランタイヤが発表した最新のオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」の冬道性能を確かめるために、北海道に飛んだ。ドライやウエット路面に続き、ウインターシーンでの印象を報告する。
-
第860回:ブリヂストンの設計基盤技術「エンライトン」を用いて進化 SUV向けタイヤ「アレンザLX200」を試す 2026.2.13 ブリヂストンのプレミアムSUV向けコンフォートタイヤ「アレンザLX100」の後継となるのが、2026年2月に発売された「アレンザLX200」。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて開発された最新タイヤの特徴を報告する。
-
第859回:トーヨーのSUV向け冬タイヤを北海道で試す! アナタのベストマッチはどれ?
2026.2.10 トーヨータイヤが擁するSUV向けの冬タイヤに、北海道で試乗! スタンダードなスタッドレスタイヤから「スノーフレークマーク」付きのオールテレインタイヤまで、個性豊かな4商品の実力に触れた。アナタのクルマにマッチする商品が、きっとある?
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。








