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プジョー508SWアリュール(FF/8AT)

みんなが納得 2019.09.30 試乗記 塩見 智 「プジョー508」のステーションワゴン版「SW」に試乗。新型ではプジョー車から一時失われつつあったフランス車らしい美点が復活! さらに、かつては望むべくもなかったフランス車らしからぬ(?)先進性までもが備わっていたのだった。

ダメ押しの508シリーズ

ここのところライオンが元気だ。最初に結論を申し上げると、プジョーのフラッグシップセダンの508と、今回試乗したそのステーションワゴン版である508SWは傑作だ。ヘッドランプ両端から下に伸びるLEDデイタイムランニングランプに代表されるアグレッシブなスタイリングは、これまでプジョーが持っていた優しい世界系スタイリングとは一線を画すが、乗って内容を知れば、昨日今日のにわかではない古いプジョー好きも、きっと納得するはずだ。

今思えば端緒は2017年の現行「プジョー308」のマイナーチェンジだった。その出来がよかったことで皆「おっ、もしや?」と感じた。それと前後してフルモデルチェンジした「3008」の走りや乗り心地がよかっただけでなく、グッドルッキングでもあったので、多くの人がプジョー復活間違いなしと判断した。そして今年508のセダン、SWが相次いで登場し、ダメ押しのようによかった。

まるでそれ以前がダメだったかのように書いたが、僕に言わせればその通りだ。そのさらに前の世代に比べて輝きを失っていたと思う。具体的には先代の308と508、3008、そして「5008」にはイマイチ魅力を感じなかった。ソフトで快適な乗り心地、地味なスペックのわりによく走るエンジン、ユニークなスタイリングと優れたパッケージングといった、いわゆるフランス車らしさを感じられなかった。

5ドアハッチバックの「508」から遅れること3カ月、2019年6月末に日本に上陸した新型「508SW」。テスト車はモデルラインナップの中で最も安価なグレード「アリュール」で、車両本体価格は442万円。
5ドアハッチバックの「508」から遅れること3カ月、2019年6月末に日本に上陸した新型「508SW」。テスト車はモデルラインナップの中で最も安価なグレード「アリュール」で、車両本体価格は442万円。拡大
ヘッドランプの端から下に伸びるLEDデイタイムランニングランプがアグレッシブな印象を与える。ヘッドランプはフロントグリルよりも大きく後方にオフセットして搭載されている。
ヘッドランプの端から下に伸びるLEDデイタイムランニングランプがアグレッシブな印象を与える。ヘッドランプはフロントグリルよりも大きく後方にオフセットして搭載されている。拡大
ボディーの全長は5ドアハッチバック車よりも40mm長い4790mm。延長分はすべてリアオーバーハングの拡大に充てられている。
ボディーの全長は5ドアハッチバック車よりも40mm長い4790mm。延長分はすべてリアオーバーハングの拡大に充てられている。拡大
プジョー 508SW の中古車

新世代プラットフォームのチカラ

潮目が変わったのは、プラットフォームを新しくしてからだ。新型508SWが採用したのは「EMP2(エフィシェンシー・モジュラー・プラットフォーム2)」。2013年にモデルチェンジした「シトロエンC4ピカソ」が初出しで、日本に関係する現行モデルに限れば、プジョーの308、508、3008、5008のほかに「シトロエンC5エアクロスSUV」と「DS 7クロスバック」がこれを使う。これらすべてが主に乗り心地の面で好印象だ。ちなみにEMP2の2はサイズを意味していて、より小さなクルマ用に「EMP1」、別名「CMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)」がある。

やはりクルマの肝はプラットフォームということなのだろう。508SWの走りはどうよいか。まず直進安定性がすこぶる高い。高速道路を矢のようにまっすぐ走らせることができる。ステアリングホイールに軽く手を添えてさえいれば、道路のうねりや不整部分に進路を乱されることなく、抜群の安定感で直進する。巡航中の車内がすごく静かなので乗員は“よいモノ感”に包まれる。乗り心地は決してハードではなく、かといってソフト過ぎずちょうどいい塩梅(あんばい)だ。

前:ストラット、後ろ:マルチリンクのサスペンションは、別段凝った仕組みのスプリング&ダンパーと組み合わせられるわけではないが、適切なチューニングが施されている。ワインディングロードでは高速巡航時ほどの気持ちよさは感じられないが、無難にこなす。ステアリング操作に対してクルマが過敏に反応するわけではなく、切り方なりに素直に向きを変える挙動は昔ながらのフランス車の美点だが、きちんとそれを感じられる。

プラットフォームにはプジョー・シトロエングループで広く使われている「EMP2」を採用。従来型プラットフォームに比べると、平均で70kgの軽量化が可能だという。
プラットフォームにはプジョー・シトロエングループで広く使われている「EMP2」を採用。従来型プラットフォームに比べると、平均で70kgの軽量化が可能だという。拡大
ステアリングの上にメーターパネルを見る、プジョー車ではおなじみの「i-Cockpit」。ダッシュボードまわりの構成は5ドアハッチバック車と変わらない。
ステアリングの上にメーターパネルを見る、プジョー車ではおなじみの「i-Cockpit」。ダッシュボードまわりの構成は5ドアハッチバック車と変わらない。拡大
「アリュール」ではファブリックとテップレザー(合皮)のコンビシートが標準装備。高級ではないが、掛け心地は良好だ。
「アリュール」ではファブリックとテップレザー(合皮)のコンビシートが標準装備。高級ではないが、掛け心地は良好だ。拡大
ステーションワゴン化により、5ドアハッチバック車よりも後席のヘッドクリアランスが40mm拡大している。
ステーションワゴン化により、5ドアハッチバック車よりも後席のヘッドクリアランスが40mm拡大している。拡大

ガソリンか? ディーゼルか?

今回試乗した「アリュール」のタイヤサイズは215/55R17と、ガソリンモデルの豪華版「GTライン」の235/45ZR18に比べて細いが、以前GTラインに乗った際の記憶と比べる限り、受ける印象はほとんど変わらない。だとしたら大径でカッコいいほうがいいと考えるか、交換時に安いほうがいいと考えるかはあなた次第だ。

アリュールとGTラインには1.6リッター直4ガソリンターボエンジンが搭載される。価格やスペックを見れば、2リッター直4ディーゼルターボエンジン搭載モデルに対する廉価版的位置づけだが、このパワーユニットの選択は迷う。同じモデルにディーゼルとガソリンがあれば、たいていディーゼルを推す僕だが、508の場合、ガソリンも悪くない。ディーゼルほどではないもののガソリンもなかなかトルキーだからだ。1.6リッターで大きなクルマを一生懸命動かしているという感覚はなく、余裕すら感じられる。

より静かで振動が少ないガソリンのほうが、前述したこのクルマの静粛性の高さを際立たせる気もするが……ま、お好みで。こう書くと仕事放棄のようだが、どっちを選んでも失敗しないということ。ディーゼルかガソリンのうちどっちかしか薦めたくない(たいていディーゼル)クルマもある中で、508ならどっちを選んでも幸せになれますよということが言いたい。

サスペンション形式はフロントがストラットでリアがマルチリンク。路面状況に応じてダンパーの減衰力を連続的に変化させる電子制御アクティブサスペンションが全車に標準装備となる。
サスペンション形式はフロントがストラットでリアがマルチリンク。路面状況に応じてダンパーの減衰力を連続的に変化させる電子制御アクティブサスペンションが全車に標準装備となる。拡大
「アリュール」のパワーユニットは最高出力180PS、最大トルク250N・mの1.6リッター直4ターボエンジン。搭載するエンジンに応じてサスペンションのセッティングも変更される。
「アリュール」のパワーユニットは最高出力180PS、最大トルク250N・mの1.6リッター直4ターボエンジン。搭載するエンジンに応じてサスペンションのセッティングも変更される。拡大
「アリュール」のタイヤサイズは215/55R17。テスト車にはミシュランのコンフォートタイヤ「プライマシー3」が装着されていた。
「アリュール」のタイヤサイズは215/55R17。テスト車にはミシュランのコンフォートタイヤ「プライマシー3」が装着されていた。拡大

ADASだって、やればできるじゃん!

最近またプジョーが悪くないと感じる理由はプラットフォームの刷新だけではない。数年前にディーゼルエンジンを得てパワートレインの幅が広がったのもそのひとつだろう。さらに、興味がなさそうなふりをしていた先進運転支援システム(ADAS)に真面目に取り組んだことも大きいはずだ。やっぱりあると便利だもの。

508SWには全車速対応のアダプティブクルーズコントロール(ACC)のみならず、車線中央維持装置も備わる。中央維持と書いたが、正確には右寄りでも左寄りでもドライバーが選んだ車線内の任意の場所を維持させることができる。前述したもともとの高速道路での直進安定性の高さに加え、こうしたステアリングアシスト機能のおかげで、長時間走行時の疲労の少なさは顕著だ。休憩なしでどこまででも行けそうな気がする。少なくとも腹が減ったりトイレに行きたくなったりするよりも前に、疲労を理由にSAPAに立ち寄りたくなることはない。

このほかアクティブブラインドスポットモニターシステム(斜め後方から接近する車両の存在を知らせる)やトラフィックサインインフォメーション(道路標識を読んでメーターに表示させる)が標準装備される。オプションでナイトビジョンやフルパークアシストも設定されるなど、やればこの分野もできるじゃん、フランス車!

ラゲッジスペースはリアシートを起こした状態で530リッター、倒せば1780リッターと十分広く、形状も凹凸が少なく使いやすい。本当に今度の508SWには死角がない。同クラスのドイツ車にあって508SWにないのはハイパワーバージョンの存在くらい。古くからのプジョーファンを逃さず、あるいは戻ってこさせることができ、さらに新たなファンも獲得できるクルマだと思う。

(文=塩見 智/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

ADASの充実も最近のプジョー車の大きな魅力のひとつ。新型「508」には全車速対応のACCや車線中央維持装置などが全車に標準装備となる。
ADASの充実も最近のプジョー車の大きな魅力のひとつ。新型「508」には全車速対応のACCや車線中央維持装置などが全車に標準装備となる。拡大
ACCや車線中央維持装置の起動/設定はステアリングポストから生えたレバーで操作する。
ACCや車線中央維持装置の起動/設定はステアリングポストから生えたレバーで操作する。拡大
プジョーが“ヘッドアップディスプレイ”と呼ぶメーターパネル。写真はボビン式のエンジン回転計を表示したところ。
プジョーが“ヘッドアップディスプレイ”と呼ぶメーターパネル。写真はボビン式のエンジン回転計を表示したところ。拡大
ラゲッジスペースの容量は5人乗車時が530リッターで、リアシートの背もたれを倒した場合が1780リッター。開口部は5ドアハッチバック車よりも30mm低く、24mm幅広くなっている。
ラゲッジスペースの容量は5人乗車時が530リッターで、リアシートの背もたれを倒した場合が1780リッター。開口部は5ドアハッチバック車よりも30mm低く、24mm幅広くなっている。拡大

テスト車のデータ

プジョー508SWアリュール

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4790×1860×1420mm
ホイールベース:2800mm
車重:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:180PS(133kW)/5500rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1650rpm
タイヤ:(前)215/55R17 98V/(後)215/55R17 98V(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:14.1km/リッター(WLTCモード)/14.7km/リッター(JC08モード)
価格:442万円/テスト車=451万1800円
オプション装備:パールペイント<アルティメットレッド>(9万1800円)

テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2558km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:312.0km
使用燃料:25.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.1km/リッター(満タン法)/12.3km/リッター(車載燃費計計測値)

プジョー508SWアリュール
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