“走行データ”はカネになる!? タクシーから生まれる新ビジネスとは
2019.10.04 デイリーコラム本命は本業と別にある?
消費税率がアップした2019年10月。さまざまな販促サービスが展開される中、モビリティーの世界でも“お得なキャンペーン”の声が聞こえてきた。出どころは、タクシーの配車サービス「DiDi(ディディ)」である。
同年9月27日から10月31日まで、電子決済サービス「PayPay」と提携して、タクシー利用料金の割引キャンペーンを実施している。いまやタクシーは、乗り場に行ったり大通りで手を振ったりして乗るものじゃない。スマホのアプリで配車予約し、希望の場所まで来てもらい、運転手さんとはスマホの地図を共有、目的地まで運んでもらってピピっとスマホ決済、小銭のやりとりは一切しない……のがジョーシキだそう。で、キャンペーン期間中は、その料金が半額になるというわけだ。
DiDiを運営するDiDiモビリティジャパンは、配車ごとにタクシー会社から手数料を得ている。JapanTaxi(ジャパンタクシー)をはじめ、同様のサービスに取り組んでいるライバルはいるものの、目下、配車アプリについてはDiDiが利用率ナンバーワンをうたっている。アプリのダウンロード数も、ユーザーの満足度(同社調べ)も一番で、サービス開始から1年のうちに契約タクシー会社の数は17倍になったという。
実は筆者の身近なところにもタクシー関係の仕事を持つひとがチラホラいるのだが、景気のいい話はこれまで聞いたことがない。でも、DiDiの成功談に接すると、つくづくビジネスというものは着眼点や工夫、行動力次第であって、好機をものにする実業家や企業はすごいなぁ、と感心せざるを得ない。
が、この業界、将来的なビジネスの要は、どうもコレではないらしい。聞くところでは、彼らは別の、もっと大きな商売を視野に入れているというのだ。キモとなるのは、街を走るおびただしい数のタクシーから得られる“ビッグデータ”。つまり、情報の売買事業である。
情報こそが価値を持つ
DiDiモビリティジャパンは2019年9月末、同年度中に、過去のデータをもとに乗客の需要を予測する「需要予測ヒートマップ」をタクシー乗務員に提供すると発表した。このように、今ではタクシーの配車サービスを通して、需要と供給のほか、渋滞に関する情報などもわかるようになっている。ヒトとクルマの流れがどうなっているのか、そしてこれからどう変わるのか。そうした情報こそが価値を持つようになるのだ。
同社は新たに、地図データを扱うゼンリンおよびゼンリンデータコムとの提携も決めた。より精度の高い配車サービスを実現するため、というのが主たる目的だが、同時に「MaaS(サービスとしての移動)の領域における商業的なデータ活用」や「AI(人工知能)とビッグデータ、位置情報によるソリューションの開発」も目標に掲げられている。
そういえばDiDiは中国で、自動運転のテストを実施しているとか……? その点についてDiDiモビリティジャパンの菅野圭吾 取締役副社長は、「すぐに事業化することはない」と説明する。
「自動運転やMaaS領域の事業は、まだこれからの世界かなと思っています。今は足元のサービス(=タクシーの配車サービス)を着実なものにしたい。いずれはビッグデータの収集に基づくビジネスに取り組むことになるかもしれませんが……。ビジネスとしての比率が逆転するかどうか? いまはわかりませんね」
そう謙遜する菅野副社長だが、DiDiのポテンシャルに対する期待は極めて大きい。
「システム開発の驚異的な速さが、ライバル会社に対するDiDi最大のアドバンテージです。中国・日本に5000人ものエンジニアがいて、日々グローバルな市場の動きを見ながら技術開発を進めているんです」
となると、“その時”は意外に早くやってくるのかもしれない。業界には、走行中のタクシーから得られる気象データ(ワイパーの使い方で雨量がわかる)や花粉情報、ドライブレコーダーの映像も商材とする動きがあるといわれているし……。筆者も先行きを確実に言い当てることはできないが、こうしたビジョンをうかがっては「へぇ、そうなんですか」と驚く一方。彼らのような商才が自分にないことだけは、間違いない。
(文と写真と編集=関 顕也)
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関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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