第608回:鈴鹿で新たな最強伝説始まる!? 密着「メガーヌR.S.トロフィーR」のタイムアタック
2019.12.03 エディターから一言 拡大 |
2019年7月にデビューした、ルノーの高性能ハッチバック「メガーヌR.S.トロフィーR」。日本導入に先駆けて、鈴鹿サーキットでタイムアタックに挑んだのはなぜなのか? 開発陣のねらいと、ニューマシンの到達点についてリポートする。
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ニュルだけじゃ満たせない
2分25秒454――
ピットの計時モニターにタイムが表示されると、周囲からどよめきが起こった。
2019年11月26日、三重・鈴鹿サーキットで、新型ルノー・メガーヌR.S.トロフィーRのタイムアタックが実施された。先代モデルを使って行われた前回は2014年11月だから、それからはちょうど5年。当時の2分28秒465という記録を、新型は3秒以上縮めたことになる。
このメガーヌR.S.トロフィーRが、ドイツ・ニュルブルクリンクで“FF車最速”のタイトルホルダーであることは、多くの自動車ファンが知るところ。でもなぜ鈴鹿にこだわるのかといえば、「ルノー・スポールにとって日本市場は極めて大事だから」なのだそうだ。
聞けばわが国はいま、ルノー・スポールが開発を手がける高性能モデルのセールスで母国フランスやドイツをもしのぎ(2019年9月末時点)、「メガーヌR.S.」に限っても世界3位のマーケットになっている。その日本の熱烈なファンのためにも、鈴鹿のコースでクルマを鍛え、日本に合ったクルマづくりの要素を盛り込むのは大事、というのが理由だ。「サーキットなんて、基本はどこもいっしょでしょ?」と言うなかれ。路面の摩擦抵抗が高く、カーブの多い鈴鹿のコースから得られるものは多く、その道を攻略できるような車両セッティングを施すことは、サーキットを走る機会の多い“R.S.オーナー”の期待に応えることにつながるのだ。
そんなメガーヌR.S.トロフィーRのステアリングを握るのは、前回と同様、“ルノー・スポールのトップガン”ロラン・ウルゴン氏。アタックに使われるトロフィーRは2020年1月の国内デビューが予定されている市販車そのもの。つまり右ハンドル仕様車である。最高出力300PS、最大トルク400N・mのパフォーマンスは“R”が付かない「メガーヌR.S.トロフィー」と同じだが、足まわりには車高調節機構付き専用サスペンションと専用の大型ブレーキキャリパーを採用。「4コントロール」と呼ばれる4輪操舵システムを廃し、デュアルクラッチトランスミッション「EDC」を6段MTに変更、さらに後席を取り外し、防音材を省き、リアサイドガラスとリアガラスを板厚の薄いものに替え、ボンネットの構成パーツをカーボン化するなどして、なんと130kgものダイエットに成功している。
今回のクルマは、さらに超軽量カーボンホイールとカーボンセラミックブレーキディスク(フロントのみ)をセットオプションとして備える、世界限定500台のトロフィーRの中でも30台しかつくられない、ハードコアな限定モデルである。
“つるし”のままでブッチギリ
加えて新型でのアタックには、アドバイザーとして現役レーシングドライバーの谷口信輝選手が迎えられた。第一級のプロとして鈴鹿での走行に実績があるのはもちろんだが、マシンのセットアップにたけていること、ルノー・スポールが「自分たちのクルマづくりを理解してくれるドライバー」と認識していたがゆえのオファーだったという。
しかし、実際にどれだけセットアップを工夫したのかウルゴン、谷口の両氏に聞いてみれば、「車両を欧州から空輸する際にズレたアライメントを補正して、車高やダンパーの減衰力、タイヤの空気圧を変えた」程度。それも最終的には工場出荷状態に近いセッティングに落ち着いたそうで、谷口選手は「もともと完成されているクルマをそのまま移して、われわれはそれを確認しただけ、というのが現実ですね」と笑う。
果たしてタイムは、1発目から2分25秒961で記録更新。さらにその先を求めてトライした2度目では2分25秒749に短縮された。もうトライは終わりかと思ったところで、やおらステアリングを譲られた谷口選手がさらに記録を更新(2分25秒656)、これでプロ根性に火がついたか、ウルゴン氏がさらにトライを重ねることになった。
しかし、カーボンホイールに装着されているタイヤは、だいぶ摩耗が進んでいる。新品タイヤももう1セット持ち込まれてはいたが、予備のノーマルホイールに装着されたまま。それをカーボンホイールに付け替える時間は、サーキットとの契約上もはや残されていない。結局、えいままよ! とノーマルホイール+ニュータイヤで最後のアタックに臨み、冒頭の「2分25秒454」をたたき出したのだった。
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みんなが楽しめるクルマ
仮に、カーボンホイールと新タイヤの組み合わせでトライを続けたら、もっとタイムは縮まったのか? その可能性についてはウルゴン氏本人も否定はしない。また、このトロフィーRは軽量化と引き換えに4コントロール(4輪操舵システム)とEDC(6段AT)を無くしているが、そのドライビングスキルからトップガンとたたえられる彼でも「もし130kgの軽量化を維持できるなら、4コントロールとEDCは備わっていたほうが速く走れる」という。
しかし、今回の一番の収穫は、必ずしもタイムではないとウルゴン氏は続ける。
「(自分と谷口選手とで)記録更新の繰り返しにはなりましたが、その中で、このクルマはどんなドライバーが走らせてもパフォーマンスを最大限に引き出せるということが証明できた。それこそがすばらしいことなのです」
もっとも、そうしたドライバビリティーについては、理想的だった先代モデルのよさを新型も受け継いでいるのであり、一貫して変わっていないという。見方を変えれば、タイムの大幅更新という結果は、純粋にエンジンのパフォーマンスアップによるところが大きいともいえる。
一方、タイムアタックに参画してきた谷口選手は「楽しい」という言葉を連発した。
「このクルマは本当に、基本がよくできた“素性のいいクルマ”なんだと思います。速さだけの話をするなら、もっと上はいくらでもいる。でも、走るのがこんなに楽しいクルマって、いまは少ないですね。電子デバイスに頼っていないのもいい。止まる、曲がる、加速するという動作にタイムラグがなく、これほど人馬一体感が味わえるクルマは、そうはないでしょう」
そんな新型メガーヌR.S.トロフィーRは、2020年1月に国内で正式にデビューする。デリバリーの開始時期は、同年の前半とのこと。プロが太鼓判を押す走りに、期待は高まるばかりだ。
(文と編集=関 顕也/写真=ルノー・ジャポン、webCG)
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webCG 編集部
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