ボルボS60 T6 Twin Engine AWDインスクリプション(4WD/8AT)/トヨタ・クラウン2.5 G(FR/CVT)
うれしい勘違い 2020.01.09 試乗記 国産セダンユーザーの取り込みを狙う「ボルボS60」と、日本を代表するセダン「トヨタ・クラウン」を比較試乗。後編ではパワートレインとシャシー性能に注目し、SUV全盛期にあえてセダンを選ぶ理由を考える。キャビンの静粛性は互角
「トヨタ・クラウン2.5 G」と「ボルボS60 T6 Twin Engine AWDインスクリプション」を比べると、市街地での乗り心地はクラウンが勝る。といってもクラウンがふわふわしているというわけではない。しっかりと路面の状況をドライバーに伝えながら、アシが正確かつ精緻に伸びたり縮んだりして衝撃を和らげている。
ボディーのガッチリとした感じも印象的で、トヨタのFR車の弱点だった、フロアがブルブルと震える現象が霧散している。従来型に比べると車両のねじり剛性が1.5倍になっているとのことで、その効果はしっかりと感じられる。しっかりとした箱を、4本のアシがしなやかに動きながら姿勢を水平に保っている。
一方、ボルボS60はそれ単体で見れば不満はないものの、クラウンと比べるとタウンスピードでの路面からの突き上げが気になる。クラウンが厚底のブーツだとしたらS60はソールの薄いスニーカーといった趣で、カツカツと地面に接する。ただし、だからといって不快に感じるわけではないから、軽快に地面を蹴っている、ということでもある。走行感覚が若々しい。
感心したのは両車ともに非常に静かなことで、クラウンの静粛性の高さは知っていたものの、比べてみるとボルボS60もほぼ同等の静かさで驚く。上級仕様のインスクリプションにはBowers & Wilkinsのオーディオシステムがオプションで用意されるけれど、標準装備のharman/kardonもすばらしい音で、つい聞き入ってしまった。
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パワートレインの新しさではボルボに軍配
2.5リッター直4エンジンとハイブリッドシステムを組み合わせたクラウン2.5 Gのパワートレインは、「カムリ」に採用したものをFR車向けに仕立て直したもの。ハイブリッドシステムの滑らかさは名人芸の域で、市街地から高速道路まで、パワーに不満を覚えることもない。
一方、ターボとスーパーチャージャーで過給した2リッター直4エンジンで前輪を、電気モーターで後輪を駆動するプラグインハイブリッドのS60 T6 Twin Engine AWDは、クラウンよりもスペシャルな感じがする。エンジンとモーターをバランスよく駆動する標準モードのほかに、「BEV(電気自動車)」モード、エンジンとモーターが力を合わせてガツンと加速する「パワー」モードなど、さまざまな表情を見せるのだ。
低回転域をスーパーチャージャーが、高回転域をターボチャージャーが受け持ち、あらゆる回転域で力強さを感じさせる「T6」というパワートレインは、ファン・トゥ・ドライブである。同時に、モーターだけで125km/hまで加速するあたりに、新しいテクノロジーに触れる喜びがある。
クラウンに不満はないと書いたが、直接比較するには、パワートレインのスペックに少し差がありすぎたようだ。ここはクラウンも、回転フィールやパワー感に華やかさを感じさせる3.5リッターのハイブリッドで対抗させたほうがよかったかもしれない。
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上質に曲がるクラウン
ワインディングロードでは、クラウンのアジリティー(敏しょう性)の高さに驚かされる。といってもホットハッチのように、キュキュッと曲がるわけではない。手応えのいいステアリングホイールを操作すると素直にインを向いて、外側のタイヤがスーッと沈み込んで、程よくロールしながらノーズが路面をなめるようにきれいにコーナーをクリアする。こんなに上品で気持ちのいいコーナリングをするとは、正直、期待以上だった。
これには、前述したボディー剛性アップのほか、サスペンションのチューニングが功を奏しているようだ。クラウンのフロントサスペンションの形式は、従来型と同じダブルウイッシュボーン。ただし従来はシングルジョイントであったのに対して、現行モデルはダブルジョイントだ。
ダブル、すなわちサスペンションを2本のアームで支えるようになったことで、1本のアームを乗り心地に、もう1本を安定性に、と役割分担させることができたのだ。だからクラウンは、おだやかな乗り心地と思いのままに曲がれるハンドリングが両立している。
対するボルボS60は、クラウンよりも軽くて乾いた印象のコーナリングを見せる。ステアリングホイールを操作すると、クラウンが一瞬のタメを感じさせてから曲がり始めるのに対して、ボルボS60はパキッと曲がる。
これはもう好みの問題でしかないけれど、個人的にはクラウンの大人っぽくて上質に感じるコーナリングが気に入った。
あえてセダンを選ぶ理由
今回の試乗車で言えば、ボルボS60 T6 Twin Engine AWDインスクリプションは先に考えたようにプラグインハイブリッドシステムにアドバンテージがあり、トヨタ・クラウン2.5 Gはコネクティッド機能で分がある。クラウンは、というよりトヨタ車は、ということだけれど、「T-Connect」に接続すれば、オペレーターがホテルやレストランを予約してくれたり、万が一の事故の時にサポートしてくれたりする。
「どうしてもプラグインハイブリッド車が欲しい」という人や、「T-Connectが付いていないクルマには乗りたくない」という方は別として、ここは1勝1敗というところか。
で、日欧2台のセダンを乗り比べて、いまセダンに乗る意味は「気取ること」だと感じた。もちろんクラウンの乗り心地のよさと好ハンドリングを両立した点はすばらしいけれど、それを理由にセダンを選ぶのは一部のマニアだけだろう。クラウンはものすごくよくできているけれど、生活を変えるほどのパワーはない。
一方、外観のデザインでハッとさせ、運転席に収まるとモダンなデザインでウットリとさせるボルボS60は、自分がすてきな人間になったと勘違いができる。だからわざわざ高いお金を出す意味が見いだせる。いまのセダンに求められるのは単にいいクルマというだけでなく、自分をすてきに演出してくれることだ。そういう力では、ボルボS60が少し上回る。
もしクラウンが平均年齢66歳以上のこれまでのオーナーに支持されながら、30代や40代の顧客も呼び込みたいというのなら、「クラウン クロスオーバー」にチャレンジしてセダンのクラウンと併売するのはどうか。「トヨタC-HR」や「レクサスUX」など、背が高くてカッコいいクルマをつくっているのだから、きっとできるはずだ。
(文=サトータケシ/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ボルボS60 T6 Twin Engine AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4760×1850×1435mm
ホイールベース:2780mm
車重:2010kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:253PS(186kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1700-5000rpm
フロントモーター最高出力:46PS(34kW)/2500rpm
フロントモーター最大トルク:160N・m(16.3kgf・m)/0-2500rpm
リアモーター最高出力:87PS(65kW)/7000rpm
リアモーター最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/0-3000rpm
タイヤ:(前)235/40R19 96W XL/(後)235/40R19 96W XL(コンチネンタル・プレミアムコンタクト6)
ハイブリッド燃料消費率:13.7km/リッター(WLTCモード)
価格:779万円/テスト車=829万2000円
オプション装備:ボディーカラー<ペブルグレーメタリック>(9万2000円)/プラスパッケージ<チルトアップ機構付き電動パノラマアガラスサンルーフ+ステアリングホイールヒーター+リアシートヒーター+テイラードダッシュボード[人工皮革仕上げ]+アルミホイール[19インチ 5ダブルスポーク 8.0J×19 ダイヤモンドカット/ブラック]>(41万円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1386km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・クラウン2.5 G
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4910×1800×1455mm
ホイールベース:2920mm
車重:1750kg
駆動方式:FR
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:184PS(135kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/3800-5400rpm
モーター最高出力:143PS(105kW)
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)
システム総合出力:226PS(166kW)
タイヤ:(前)215/55R17 94V/(後)215/55R17 94V(ヨコハマ・ブルーアースGT AE51)
燃費:24.0km/リッター(JC08モード)/20.0km/リッター(WLTCモード)
価格:572万5500円/テスト車=622万5450円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスガレナ>(5万5000円)/ITS Connect(2万7500円)/パーキングサポートブレーキ<後方歩行者>+リアカメラディテクション+パノラミックビューモニター&インテリジェントパーキングアシスト2(12万7600円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/T-Connect SDナビゲーションシステム+トヨタプレミアムサウンドシステム<16スピーカー+12chオーディオアンプ>(10万3400円)/ETC2.0ユニット<VICS機能付き>(1万6500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(4万3450円)/フロアマット<エクセレントタイプ>(8万2500円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:8226km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:310.8km
使用燃料:22.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:14.1km/リッター(満タン法)/14.4km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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