はじまりは1992年
「東京オートサロン2020」にて世界初公開された改良型「ホンダ・シビック タイプR」。その情報の一部が解禁され、2020年夏発売予定の“20スペック”の進化点が見えてきた。詳細は既に公開済みのニュース を参考にしてほしいが、その中身は実にストイック。すべての進化は走りのためという“タイプRスピリット”が、今も受け継がれていることを感じさせた。
そんなタイプRの歴史を振り返ると、起源は1992年までさかのぼる。発売から2年が経過したミドシップスーパースポーツ「NSX」に、ノーマルでは物足りないエンスージアストに向けたサーキット重視のピュアモデルとして、タイプRが追加されたのだ。レカロ製軽量バケットシートやMOMO製ステアリングなどといったスポーツ走行向けのパーツの装着に加え、足まわりやパワートレインにも独自のチューニングを実施。さらに、ベース車に備わる豪華装備・快適装備を徹底的に排除することで、120kgもの軽量化を実現していた。オーディオどころか、エアコンすらオプションという超スパルタンモデルだったのだ。ホテルやレストランではなく、サーキットに乗りつけるためのNSXは、その象徴となる赤のホンダエンブレムとともに、ファンにとって憧れの的となった。しかしながら、その価格はおよそ970万円。誰にでも手が出せるものではなかった。
そこでホンダは、タイプRの魅力をより多くのファンに味わってもらうべく、身近なモデルを第2弾として企画する。それが1995年に登場した「インテグラ タイプR」だ。四輪車用の自然吸気エンジンとしては世界最高レベルである、リッターあたり111PSの高出力を発生する「B18C」エンジンの採用に加え、ボディーやシャシーにも専用のチューニングと徹底した軽量化を実施。その文法はまさにNSXタイプRと同じものだった。
当時、他のグレードがおおむね200万円以下だったインテグラのラインナップにおいて、タイプRはクーペで222万8000円、4ドアハードトップで226万8000円(税抜き、東京価格)と高めのプライスを掲げていたものの、その内容を考慮すればバーゲンプライスといえた。
このたび概要が発表された「ホンダ・シビック タイプR」の改良モデル。左奥の黄色い車両は限定車の「リミテッドエディション」だ。
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1992年に登場した「NSXタイプR」。サーキット走行向けの軽量モデルで、足まわりやエンジンなどにも専用のチューニングが施された。
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「NSX」は2001年12月にマイナーチェンジ。翌年5月には、従来型でいう「NSXタイプR」が「NSX-R」と名を変えて設定された。
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1995年に登場した「インテグラ タイプR」。最高出力200PS/8000rpmという高回転型の1.8リッター直4エンジンが搭載された。
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初代「インテグラ タイプR」には4ドアハードトップも用意された。
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