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第612回:接地を極めた「ポテンザRE-71RS」 ブリヂストンの最新スポーツタイヤを筑波サーキットで試す

2020.02.29 エディターから一言 高平 高輝
2020年1月10日、千葉・幕張メッセで開催された「東京オートサロン2020」において発表されたブリヂストンの最新モデル「ポテンザRE-71RS」。
2020年1月10日、千葉・幕張メッセで開催された「東京オートサロン2020」において発表されたブリヂストンの最新モデル「ポテンザRE-71RS」。拡大

1979年の誕生以来、世界のハイパフォーマンスカーに純正装着され、ブリヂストンを代表するスポーツタイヤとして進化を続けてきた「ポテンザ」に、“ストリート最速”を掲げる「RE-71RS」が登場。早速、筑波サーキットのコース1000でその実力を確かめた。

「ポテンザRE-71RS」は13インチから19インチまで全63サイズをラインナップ。2020年2月1日よりサイズ別に順次販売を開始している。価格は1万3640円~8万3160円。
「ポテンザRE-71RS」は13インチから19インチまで全63サイズをラインナップ。2020年2月1日よりサイズ別に順次販売を開始している。価格は1万3640円~8万3160円。拡大
筑波サーキットのコース1000において、現役レーシングドライバーによるレーシングマシンのデモンストレーション走行も行われた。写真は「ポテンザRE-71RS」が装着された430PSを発生するオート・プロデュース・ボスの「スバルBRZ改」。スーパー耐久などで活躍する井口卓人選手がステアリングを握った。
筑波サーキットのコース1000において、現役レーシングドライバーによるレーシングマシンのデモンストレーション走行も行われた。写真は「ポテンザRE-71RS」が装着された430PSを発生するオート・プロデュース・ボスの「スバルBRZ改」。スーパー耐久などで活躍する井口卓人選手がステアリングを握った。拡大
試乗後にホイールから外された「ポテンザRE-71RS」のトレッド面。サーキット試乗では、一回7周の試乗ごとに新品タイヤに交換された。
試乗後にホイールから外された「ポテンザRE-71RS」のトレッド面。サーキット試乗では、一回7周の試乗ごとに新品タイヤに交換された。拡大

熱いタイヤがさらに進化

ブリヂストン・ポテンザといえばわれわれ世代にとっては憧れの高性能タイヤだった。初の市販モデルたる「RE47」の登場は1979年、ちょうど運転免許が取れる年齢になった頃で、その後日本メーカーとして初めてポルシェの承認を受けた「RE91」や、同じく初めてポルシェの標準装着タイヤとなった「RE71」のニュースを興奮しながら読んだものだった。

もっとも、今や世界最大のタイヤメーカーとなったブリヂストンは、かつて席巻したF1GPやルマンなどの世界最高峰レースからも距離を取っており、スポーツというよりはプレミアムで優等生的なイメージが強いなあ、などと思い巡らしながら向かったのは筑波サーキットのコース1000。ブリヂストンの新製品のサーキット試乗会など近ごろとんと覚えがないが、ここで年初の東京オートサロンでお披露目された新製品「ポテンザRE-71RS」の試乗会が開催されるというのだ。

2015年には「RE-71R」が復活していたが、新しいRE-71RSはそれをさらに進化させ、ストリートラジアル史上最速を追求したリプレイス用のスポーツタイヤだという。13インチから19インチまで計63サイズのラインナップで2020年2月から順次発売される。

タイムアップに加えて耐摩耗性も向上

RE-71Rの2本から縦溝が3本に増えてはいるものの、RE-71RSの見た目はターマック用のラリータイヤにほとんど角度がついていない横方向のグルーブをハンドカットしたようなもので、初めはサーキット専用のSタイヤではないかとさえ思った。もちろん、一応は公道走行可能だが、ドライグリップに特化した上に寿命が短いSタイヤとはまったく違ってRE-71RSはあくまでストリートラジアル最速を目指したもの。ストリートからサーキットまで、ドライ/ウエットともにハイグリップを発揮するのが特徴といい(ドライの最速ラップは前型比2%向上)、しかも耐摩耗性も従来型RE-71Rに比べて5%向上しているという。

そのために採用されたのがコーナリング中の接地形状を最適化し、接地圧分布を均一化する新トレッドパターンと非対称トレッドプロファイル(アウト側のほうがなで肩形状)である。これによってコーナリング中の接地面積は6%増えたらしい。さらに接地を極めるトップコンパウンドを開発。トレッドゴムが路面の微細な凹凸に食い込んで高いグリップ性能を発揮するという。

このコンパウンドは幅広い温度域でヒステリシスロス(変形で消費されるエネルギー)を大きくすることで、ドライでもウエットでもグリップを向上させたとしているが、ヒステリシスロスをアップすれば当然早く減るのではないかと思ったら、接地圧や形状を最適化することで耐摩耗性も向上したのだという。さらに言えば、耐アクアプレーニング性にも優れているという。「いや本当です」とは開発ドライバーを務めたレジェンド山野哲也選手の言葉である。「タイムだけを考えれば溝は2本にしたかったのですが、あくまでストリート用ということで3本になりました。もちろん、水深や速度にもよりますが、RSは大きく向上しています」。

ポテンザ史上最速を誇った「RE-71R」の進化版モデルとなる「RE-71RS」。
ポテンザ史上最速を誇った「RE-71R」の進化版モデルとなる「RE-71RS」。拡大
非対称パターンや非対称トレッドプロファイル、新トップコンパウンドなどの採用により、サーキット走行で重視されるドライ路面でのグリップ力とコントロール性を高次元で両立するだけでなく、ロングライフを実現したという「RE-71RS」。
非対称パターンや非対称トレッドプロファイル、新トップコンパウンドなどの採用により、サーキット走行で重視されるドライ路面でのグリップ力とコントロール性を高次元で両立するだけでなく、ロングライフを実現したという「RE-71RS」。拡大
「RE-71RS」が装着されたオート・プロデュース・ボスのレーシングマシン。「トヨタ86改」(左)には前後265/35R18サイズが、「トヨタGRスープラ」(右)には前255/35R19、後ろ275/35R19サイズが装着されていた。
「RE-71RS」が装着されたオート・プロデュース・ボスのレーシングマシン。「トヨタ86改」(左)には前後265/35R18サイズが、「トヨタGRスープラ」(右)には前255/35R19、後ろ275/35R19サイズが装着されていた。拡大
先代モデル「RE-71R」比で、サーキット走行時の最速ラップタイムを2%短縮し、摩耗寿命も5%向上させているという「RE-71RS」。
先代モデル「RE-71R」比で、サーキット走行時の最速ラップタイムを2%短縮し、摩耗寿命も5%向上させているという「RE-71RS」。拡大

粘るコントロール性が楽しい

筑波サーキットのコース1000を舞台にした試乗の順番が回ってくる頃には朝方の雨でぬれていたコース路面もすっかり乾き、さあ思い切ってどうぞと言わんばかりに、ドライバーが変わるごとに惜しげもなくまっさらのタイヤが装着される。

とはいえ、従来型RE-71Rと新しいRE-71RSをそれぞれ装着したキャロッセ・チューンの「トヨタ86」で各7ラップ(しかもインアウト含めて)のみというものだったから、果たして感じ取ることができるのか、と内心不安だったことは本当です。昔はいわゆるSタイヤの「RE71S」や「RE61S」の美味しい寿命の短さに四苦八苦しながらレースに参加していたもの、今やすっかりサーキットから足が遠のいているために、10分程度のサーキット試乗で両者の違いを見定めることができるのか、とビクビクしていた私だが、何とその差が分かるではないか。

「スイートスポットが狭い」(山野選手談)というRE-71Rよりも、明らかに柔らかく食いつく感触があり、たとえ突っ込みすぎても、あるいはスロットルオンが早すぎても、タイヤが何とかコントロールを取り戻してくれるようなフィーリングが伝わってくる。タイム自体は明確な違いが現れなかったが、グリップだけでなくコントロール性も高いタイヤを履いたクルマは楽しい。後は本当にあっという間に減らないのか、ノイズや乗り心地はどうなのかという点だが、それはまた別の機会に別の舞台で試してみたい。

(文=高平高輝/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)

「ポテンザRE-71RS」では、新デザインのトレッドパターンと非対称トレッドプロファイルを採用。コーナリング中の接地形状を最適化し、接地圧分布を均一化するという。
「ポテンザRE-71RS」では、新デザインのトレッドパターンと非対称トレッドプロファイルを採用。コーナリング中の接地形状を最適化し、接地圧分布を均一化するという。拡大
筑波サーキットのコース1000での試乗は同一車両を使用し、「RE-71R」(写真)での走行後に、新しい「RE-71RS」に交換。同コースで両者を比較することができた。
筑波サーキットのコース1000での試乗は同一車両を使用し、「RE-71R」(写真)での走行後に、新しい「RE-71RS」に交換。同コースで両者を比較することができた。拡大
「RE-71RS」での走行シーン。開発に携わったレーシングドライバーの山野哲也選手のコース1000におけるテストでは、「RE-71R」が38秒24であるの対してRE-71RSでは37秒74というタイムであった。
「RE-71RS」での走行シーン。開発に携わったレーシングドライバーの山野哲也選手のコース1000におけるテストでは、「RE-71R」が38秒24であるの対してRE-71RSでは37秒74というタイムであった。拡大
新旧比較では「RE-71R」よりも「RE-71RS」のほうが明らかに柔らかく、路面に食いつく感触が確認できた。
新旧比較では「RE-71R」よりも「RE-71RS」のほうが明らかに柔らかく、路面に食いつく感触が確認できた。拡大
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