第612回:接地を極めた「ポテンザRE-71RS」 ブリヂストンの最新スポーツタイヤを筑波サーキットで試す
2020.02.29 エディターから一言![]() |
1979年の誕生以来、世界のハイパフォーマンスカーに純正装着され、ブリヂストンを代表するスポーツタイヤとして進化を続けてきた「ポテンザ」に、“ストリート最速”を掲げる「RE-71RS」が登場。早速、筑波サーキットのコース1000でその実力を確かめた。
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熱いタイヤがさらに進化
ブリヂストン・ポテンザといえばわれわれ世代にとっては憧れの高性能タイヤだった。初の市販モデルたる「RE47」の登場は1979年、ちょうど運転免許が取れる年齢になった頃で、その後日本メーカーとして初めてポルシェの承認を受けた「RE91」や、同じく初めてポルシェの標準装着タイヤとなった「RE71」のニュースを興奮しながら読んだものだった。
もっとも、今や世界最大のタイヤメーカーとなったブリヂストンは、かつて席巻したF1GPやルマンなどの世界最高峰レースからも距離を取っており、スポーツというよりはプレミアムで優等生的なイメージが強いなあ、などと思い巡らしながら向かったのは筑波サーキットのコース1000。ブリヂストンの新製品のサーキット試乗会など近ごろとんと覚えがないが、ここで年初の東京オートサロンでお披露目された新製品「ポテンザRE-71RS」の試乗会が開催されるというのだ。
2015年には「RE-71R」が復活していたが、新しいRE-71RSはそれをさらに進化させ、ストリートラジアル史上最速を追求したリプレイス用のスポーツタイヤだという。13インチから19インチまで計63サイズのラインナップで2020年2月から順次発売される。
タイムアップに加えて耐摩耗性も向上
RE-71Rの2本から縦溝が3本に増えてはいるものの、RE-71RSの見た目はターマック用のラリータイヤにほとんど角度がついていない横方向のグルーブをハンドカットしたようなもので、初めはサーキット専用のSタイヤではないかとさえ思った。もちろん、一応は公道走行可能だが、ドライグリップに特化した上に寿命が短いSタイヤとはまったく違ってRE-71RSはあくまでストリートラジアル最速を目指したもの。ストリートからサーキットまで、ドライ/ウエットともにハイグリップを発揮するのが特徴といい(ドライの最速ラップは前型比2%向上)、しかも耐摩耗性も従来型RE-71Rに比べて5%向上しているという。
そのために採用されたのがコーナリング中の接地形状を最適化し、接地圧分布を均一化する新トレッドパターンと非対称トレッドプロファイル(アウト側のほうがなで肩形状)である。これによってコーナリング中の接地面積は6%増えたらしい。さらに接地を極めるトップコンパウンドを開発。トレッドゴムが路面の微細な凹凸に食い込んで高いグリップ性能を発揮するという。
このコンパウンドは幅広い温度域でヒステリシスロス(変形で消費されるエネルギー)を大きくすることで、ドライでもウエットでもグリップを向上させたとしているが、ヒステリシスロスをアップすれば当然早く減るのではないかと思ったら、接地圧や形状を最適化することで耐摩耗性も向上したのだという。さらに言えば、耐アクアプレーニング性にも優れているという。「いや本当です」とは開発ドライバーを務めたレジェンド山野哲也選手の言葉である。「タイムだけを考えれば溝は2本にしたかったのですが、あくまでストリート用ということで3本になりました。もちろん、水深や速度にもよりますが、RSは大きく向上しています」。
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粘るコントロール性が楽しい
筑波サーキットのコース1000を舞台にした試乗の順番が回ってくる頃には朝方の雨でぬれていたコース路面もすっかり乾き、さあ思い切ってどうぞと言わんばかりに、ドライバーが変わるごとに惜しげもなくまっさらのタイヤが装着される。
とはいえ、従来型RE-71Rと新しいRE-71RSをそれぞれ装着したキャロッセ・チューンの「トヨタ86」で各7ラップ(しかもインアウト含めて)のみというものだったから、果たして感じ取ることができるのか、と内心不安だったことは本当です。昔はいわゆるSタイヤの「RE71S」や「RE61S」の美味しい寿命の短さに四苦八苦しながらレースに参加していたもの、今やすっかりサーキットから足が遠のいているために、10分程度のサーキット試乗で両者の違いを見定めることができるのか、とビクビクしていた私だが、何とその差が分かるではないか。
「スイートスポットが狭い」(山野選手談)というRE-71Rよりも、明らかに柔らかく食いつく感触があり、たとえ突っ込みすぎても、あるいはスロットルオンが早すぎても、タイヤが何とかコントロールを取り戻してくれるようなフィーリングが伝わってくる。タイム自体は明確な違いが現れなかったが、グリップだけでなくコントロール性も高いタイヤを履いたクルマは楽しい。後は本当にあっという間に減らないのか、ノイズや乗り心地はどうなのかという点だが、それはまた別の機会に別の舞台で試してみたい。
(文=高平高輝/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
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