ホンダ・ヴェゼル ハイブリッド モデューロX Honda SENSING(4WD/7AT)
趣味のクルマにはいいけれど 2020.03.02 試乗記 ホンダの純正アクセサリーメーカー、ホンダアクセスが手がけるコンプリートカー「Modulo X(モデューロX)」シリーズに、第6弾モデル「ヴェゼル モデューロX」が登場。シリーズ初となるSUVは、いささか得手不得手のはっきりしたクルマとなっていた。ホンダの純正カスタマイズブランド
「モデューロ」はホンダアクセスが手がけるブランドのひとつである。
そもそもホンダアクセスは、モデューロのようなパーツだけでなく、ドアバイザーやフロアマットなどの車種別アクセサリー、オイル添加剤やフラッシング剤、そして正規販売店で使う整備・洗車用品など、ホンダにまつわる純正用品を一手に引き受けるホンダ(=本田技研工業)の100%子会社だ。
モデューロブランドは1994年にアルミホイールからはじまり、その後に対象をエアロパーツやスポーツサスペンションに拡大。2013年にはホンダアクセスが企画開発して、ベース車と同じ生産ラインで組み立てられるコンプリートカー、モデューロXが登場し、その象徴的な存在となっている。同じくホンダアクセスが手がける「ギャザズ」がオーディオやナビのインフォテイメント用品ブランドだとすれば、モデューロは前記のような走り系用品(とコンプリートカー)の“カスタマイズブランド”ということができる。
ところで、同様にホンダ直系のイメージが強いスポーツブランドに「無限」がある。無限ブランドの部品やコンプリートカーも、基本的にはホンダの正規販売店で購入可能だ。
ただ、無限はもともとホンダ創業者の本田宗一郎の長男である本田博俊氏がつくった会社である。同社はホンダの二輪・四輪用アフターパーツやホンダ車を使ったモータースポーツ活動、独自のレーシングエンジンの開発・供給をなりわいとしてきたが、あくまでホンダとは別会社だった。現在の同ブランドでの活動はすべて以前の無限とは異なる「株式会社M-TEC」が手がけているが、いずれにしてもホンダとは、あえて資本関係をもっていない。
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足まわりと空力で走りを高める
ハナシが横道にそれてしまったが、今回のヴェゼルはモデューロXとしては通算で第6弾にして2019年11月に市場導入された最新作だ。現在販売中のモデューロXは、ヴェゼルに加えて「ステップワゴン」と「S660」の計3車種。「フリード」のモデューロXは2019年10月の同車のマイナーチェンジを機に、現在はお休みとなっている。
モデューロX化のための内容や流儀は“いつもどおり”である。外装はモデューロの起源ともいえるアルミホイールに専用バンパーやエアロパーツ、内装は専用シートや加飾パネルなどで固められる。パワートレインに手がつけられないのもいつものお約束だ。
その独自の乗り味はサペンションと空力による……という手技も、歴代モデューロXに共通する。ヴェゼルの純正アクセサリーカタログにも、モデューロ名義のエクステリアパーツにサスペンション、ホイールが用意されているが、モデューロXに装着されるものはすべて、これらとは別の専用品である。
1.5リッターターボの「ツーリング」にも用意されるモデューロXだが、今回の試乗車は「ハイブリッド」である。ヴェゼル ハイブリッドのモデューロXもベース車同様にFFと4WDがあり、試乗車は4WDだった。聞けば、4WDのモデューロXは史上初だそうである。
インフォテインメント装備がオプションになる以外、ほぼフル装備なのは標準ヴェゼルの上級グレード「ハイブリッドZ」や「RS」に準じる。同じ4WDということで、たとえばハイブリッドZ(4WD)の本体価格と比較すると、モデューロXのそれは63万円強高い。
カタログの装備表を見ていて、他グレードではメーカーオプションでも用意される純正ナビが、モデューロXは販売店オプションのみ……となっているのが最初は引っかかった。ただ、考えてみればホンダアクセスはホンダ車の販売店オプションの元締めなのだから、これはある意味で当然(?)の処置だろう。
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スイートスポットが見当たらない
「X」を模したグラフィックが目立つ専用フロントバンパーは、普通のヴェゼルとはまったく異なる。フェイス部分の大面積をブラックアウトする意匠は、いかにも最近のスポーツモデル風である。内装でもっとも目立つのはフレームまで専用化したというフロントスポーツシートだが、これはとてもデキがいい。体を快適に包みこむ柔らかさがありつつも、公道で少しばかり張り切ったときのホールド性にも不足はない。
リアシートは、フロント同様のスエードと合皮のコンビ表皮となる以外、モデューロXだからと特別なものはなにもない。だが、外観からは想像もできないほどの余裕にあらためて驚く。今回は4WDなので、荷室もFFよりフロアがわずかに高くなっているはずだが、こちらもあぜんとするほど広大である。発売から6年以上経過してもヴェゼルが売れ続ける理由の一端が、これでよく分かる。少なくとも空間効率ではこれに代わりうるBセグメントSUVはなかなかない。
それはともかく、このクルマで走りだして最初に気づくのは、以前に河村康彦さんも指摘していたように、正直あまり褒めらたものではない乗り心地である。アクセルやブレーキ操作では、スッとすみやか、かつ滑らかに荷重移動してくれるので、バネレートや減衰力が、単純にギチギチと固めてあるわけではなさそうだ。しかし、街中や高速道路を問わずに、ちょっとした路面不整やワダチでズンズン、あるいはユサユサと揺すられるのだ。
まあ、これが手ごろ価格のコンパクトSUVであることや、スポーツモデルという商品の性格を考えれば、多少の得手不得手があるのはしかたない。ただ、20~30km/hでズルズルと転がす住宅地から最高速度120km/hの一部高速まで、ずっと揺すられ続けて、ピタリとフラットにおさまるスイートスポットが見つけられないのは、ちょっと骨がおれる。
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見事な直進安定性とハンドリングのキレ
そのかわり、高速直進性はキツネにつままれたかと思うくらいに優秀だ。その乗り心地からは想像しがたいほど、ビターッと(路面ではなく)車線に吸いつくように巡航する。
高速道でアダプティブクルーズコントロール(ACC)を決め込むと、レーンキープアシスト機能(LKAS)によるヴェゼルのステアリング制御は最新のそれと比較すると明らかにぎこちない。しかし、実際にはそれがあまり気にならないのは、基本的な直進性がすこぶる高いからだ。ワダチでクルマ全体は揺られても、走行ラインは乱れない。おそらくフットワークそのものは乗り心地から得る感覚よりしなやかに動いており、また「実走行によってつくり込んだ最適な空力バランス」もかなりの割合で奏功していると思われる。
ワインディングロードに乗り入れて、めりはりをきかせた加減速でアシにカツを入れると、モデューロXの利点はさらに明確になる。前記のように絶対的な設定は硬すぎることなく、荷重移動はしなやかで、その際の接地感も濃厚。それでいて余分な姿勢変化を抑制するハリもちゃんとある。ヴェゼルのステアリングはもともと正確でキレがあり、それはマイナーチェンジやモデル追加ごとにレベルアップしてきたが、このモデューロXではさらに輪をかけて正確になった。
でも、本当に感心するのは、特別な強化が施されていないのに相変わらずミシリともいわない車体の剛性感だ。あらためてヴェゼルの基本フィジカルの高度さがうかがえるいっぽうで、そこには車体に組みつけられたパフォーマンスダンパーの恩恵もあるかもしれない。装備表によると、モデューロX(のFF)は他グレードで自慢のパフォーマンスダンパーが省略されているが、生産システムや設計上の都合なのか、このハイブリッド4WDのみパフォーマンスダンパーが残されているのだ。
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端々に感じられる“6年”という時間
ヴェゼルのモデューロXは、ベース比で明らかに良くなった部分と、手ばなしで歓迎しきれない部分が同居するクルマである。クセのある乗り心地は好き嫌いが分かれそうないっぽうで、それ相応の走りをしたときの操縦性には光るものがあるので、購入したい向きは、ぜひとも自分で試乗すべきである。
それゆえ、ハイブリッドZに対して63万円強というエクストラコストをどう捉えるかも人それぞれだろうが、専用バンパーによるエクステリアには特別感もそれなりにある。この種のクルマが好きなら、エクステリアデザイン(と優秀なスポーツシート)だけでも数十万円の価値を認められる人はいるだろう。
先に試乗した河村康彦さんによると、この乗り心地はダンパーの構造によるものらしい。ただ、すでに発売から6年以上が経過したヴェゼルというクルマそのものの設計年次も無関係ではない気がする。
すこぶる優秀な空間効率や車体剛性感にはいまだに感心するほかないヴェゼルだが、30km/h以下になると解除されてしまうACCやぎこちないLKASなどの運転支援システムには、さすがに時代を感じる。現行ヴェゼルはモデューロX以外のグレードでも、操縦安定性はまだまだハイレベルで現役感たっぷりだが、逆にいうと、熟成きまわった今の(標準車の)姿が、ギリギリの完成形なのかもしれない。「あちらを立てると、こちらが立たず」の感が明確なモデューロXに乗ると、趣味グルマならこれもアリかな……と思いつつ、なんとなく限界も感じてしまう。
(文=佐野弘宗/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ホンダ・ヴェゼル ハイブリッド モデューロX Honda SENSING
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4335×1790×1605mm
ホイールベース:2610mm
車重:1390kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:132PS(97kW)/6600rpm
エンジン最大トルク:156N・m(15.9kgf・m)/4600rpm
モーター最高出力:29.5PS(22kW)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:160N・m(16.3kgf・m)/0-1313rpm
タイヤ:(前)215/35R17 94V/(後)215/35R17 94V(ヨコハマ・アドバンA10)
燃費:--km/リッター
価格:361万7900円/テスト車=389万7300円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムクリスタルブルー・メタリック>(6万0500円) ※以下、販売店オプション 8インチプレミアムインターナビ<VXM-207VFEi>(20万9000円)/取り付けアタッチメント(4400円)/フェイスパネルキット(5500円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:851km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2)
テスト距離:551.3km
使用燃料:37.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:14.5km/リッター(満タン法)/15.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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