第613回:オールシーズンタイヤの本家はこちら! “老舗”グッドイヤーの実力を試す
2020.03.04 エディターから一言 拡大 |
世界で初めてオールシーズンタイヤを上市し、日本でも積極的にこのジャンルの商品をプロモーションしてきたグッドイヤー。彼らが日本でラインナップする2商品「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」と「アシュアランス ウェザーレディ」の実力を確かめた。
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1977年に初のオールシーズンタイヤを発表
ダンロップやトーヨー、さらにはミシュランやヨコハマタイヤなどもプロモーション活動を始めたことで、このところ、その話題を耳にする機会が増えているオールシーズンタイヤ。
ミシュランなどは、あえて「雪も走れる夏タイヤ」というフレーズを用いてスタッドレスタイヤとの差別化を図る工夫を行ったりもしているものの、基本的には冬でもさほど積雪のない非降雪地域で暮らすドライバーに対して、「四季を同じタイヤを履いたままで過ごせ、季節の変わり目ごとのタイヤ交換が不要」という点をアピールするのが、マーケティングにおけるこの種のアイテムの共通点だ。
一方、「オールシーズンなら、やっぱり『グッドイヤー』が老舗でしょ!」と、ちょっとタイヤに詳しい人からはそんな声も挙がりそう。確かに、こうしたタイヤをいち早く日本に導入し、ほとんど孤軍奮闘というカタチで古くから周知活動を行ってきたのはグッドイヤーである。
それもそのはずで、今をさかのぼること40年以上も前の1977年に、世界初となるオールシーズン・ラジアルタイヤをアメリカの地で問うたのがこのブランド。日本では、わずか8年前までは「オールシーズンタイヤを手がけるのはグッドイヤーのみ」という状態にあったという。
そんなグッドイヤーが展開する、最新オールシーズンタイヤのバリエーションが、「Vector 4Seasons Hybrid(ベクター4シーズンズ ハイブリッド、以下ベクター)」と、「Assurance WeatherReady(アシュアランス ウェザーレディ、以下ウェザーレディ)」の2タイプである。前者はヨーロッパ開発ながらも、2016年に国産化されたことで日本仕様のバリエーションが拡大。今や“おなじみ”の商品といえる。一方、そこに加えられるカタチで投入されたウェザーレディは、2018年の日本発売。北米開発によるこちらの商品は、より大きなサイズをメインとしたSUV用という位置づけだ。
トレッドパターンからタイヤの特性を読み解く
日本におけるオールシーズンタイヤの先駆けとして、これまで地道なプロモーション活動を続けてきたベクター。結果的に他社製品の参入をも促すことになったこのタイヤには、今や軽自動車やコンパクトカーから中型のセダン/ワゴン、そしてミニバンに至るまで、幅広い車種に適合するサイズがそろっている。
この商品がオーソドックスな夏タイヤと明らかに異なるのが、まずは大胆な回転方向性が与えられたそのトレッドパターンだ。「Vシャープドトレッド」と名付けられた、センターから左右へと斜めに伸びた太く深いグループが特徴的なこのデザインからは、多くのスタッドレスタイヤが苦手とする耐ハイドロプレーニング性(スタッドレスタイヤは高い氷上性能を得るべく接地面積を最大限にしたトレッドパターンを採用するため、排水が苦手なのだ)を改善すべく、高い排水性を狙ったことが読み取れる。
さらにこのタイヤのトレッド部分を詳しく観察すると、センター付近を中心にスタッドレスタイヤに見られるものと同様のサイプ(波打った細い溝)が多数刻まれていることが確認できる。その一方で、ショルダー付近にはそうした細かな溝は刻まれず、比較的大きなブロックが形成されているのも特徴だ。
端的に言えば、こうしたパターンのデザインは、「中央付近で“冬タイヤ”としての性能を、ショルダー付近で“夏タイヤ”としての性能を発揮することを狙ったもの」と読み解ける。さらに資料によると、そうした全天候性を「温度変化に強く低温下でも高いグリップ性能を発揮する、専用設計の“オールウェザーシリカコンパウンド”がサポートする」と付け加えられている。
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大豆油でウインター性能を強化
一方、こうしたベクターの認知度が高まるにつれて増してきた、「SUV用のサイズも欲しい」という声に押されるカタチで設定されたのがウェザーレディだ。先にも述べた通り、ベクターがヨーロッパを中心に開発された商品であるのに対し、こちらはアメリカ主導で開発された商品。こうして世界の各拠点で開発されたアイテムをタイムリーに導入できるのが、「われわれならではの強みのひとつ」と日本グッドイヤーはアピールしている。
そのウェザーレディだが、ベクターと比べてこちらがより一般的なタイヤに近いルックスの持ち主であるのは、そのトレッドパターンが回転方向性を備えていないため。SUVへの装着を意図したタイヤゆえ、「重量が大きなSUVであれば、そもそもハイドロプレーニング現象は起こしにくい」という判断があったとも考えられそうだ。とはいえ、それでも基本的にはこのタイヤがウエット性能の高さに視点を置いた設計であることは、アウト側のストレートグルーブに連続して「エボルビングトラクショングルーブ」と名付けられた斜め方向の太い溝が採用されている点などから推測できる。
中央寄りのブロックには細かなサイプが多数刻まれた一方で、ショルダー側のブロックが比較的大きな構成となっているのはベクターと同じ。やはり「冬タイヤとしての性能を中央付近で、夏タイヤとしての性能をショルダー部分でかせぐ」という思想が感じられる。
さらにこのタイヤで特徴的なのは、「環境への対応と低温時性能の向上を目的として」というフレーズとともに、新開発の添加剤が用いられていること。「ソイビーンオイルテクノロジー」と名付けられた技術を用い、石油系のオイルではなく大豆油を添加剤として配合したコンパウンドにより「氷上・雪上路面などの低温時に高いグリップ力を発揮」するとアナウンスされている。
多少の積雪程度であればこれで十分
そんな2タイプのオールシーズンタイヤを、同社の乗用車用スタッドレスタイヤ「アイスナビ7」、SUV用スタッドレスタイヤ「アイスナビSUV」との比較で、簡単にチェック走行してみた。ただし、テスト会場として用意された福島県裏磐梯のスキー場駐車場は、そもそも少なかった積雪も溶けだし“下地”が顔をのぞかせるという、半ばオフロードコースといった様相であったことをお断りしておきたい。
まずは、アイスナビ7とベクターを装着した2台の「スバル・インプレッサ」を乗り比べてみると、「わずかに残った積雪上では、ステアリングを切り込んだ際の応答性はアイスナビに軍配が上がり、それ以外の路面上では、双方のタイヤにほぼ差を感じない」という印象が得られることになった。
前述のような条件下ゆえ、これですべてを断じることはできないが、複数回トライして同様の印象が得られたことは確かだ。ただし、今回はなかった凍結路面上では、当然ながらそうした状況まで意識したコンパウンドを採用するスタッドレスタイヤの有利さが、より際立つことになりそうだ。
一方、2台の「トヨタRAV4」を用いての乗り比べでは、積雪上での印象もオールシーズンタイヤのウェザーレディに軍配が上がる結果に。ステアリング操作に対する追従性などにおいて「アイスナビより明確に上」と感じられたからだ。ただしそこには、アイスナビSUVの登場が2014年と、デビュー時期に小さくない差があったことも影響を及ぼしている可能性はある。また、こちらの場合も凍結路面に遭遇すれば、スタッドレスであるアイスナビSUVの優位性が目立ってくることは十分考えられるだろう。
いずれにしても、グッドイヤーの両商品が、“オールシーズン”という看板通り多少の積雪程度であれば十分に通用する冬性能の持ち主であることは確認できた。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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