ポルシェ911カレラ(RR/8AT)
刺激はたっぷり 2020.05.12 試乗記 高性能スポーツカー「ポルシェ911」シリーズの中で最もベーシックな「911カレラ」に試乗。その走りは、先行発売された上位モデル「911カレラS」とどう違うのか? ワインディングロードで確かめた。最新モデルはボディーが決め手
第8世代のポルシェ911“タイプ992”は、まずハイパフォーマンス仕様の「カレラS」(と4WDの「カレラ4S」)がデビューし、続いてここに紹介するベーシック仕様の「カレラ」が登場した。
このため、タイプ992として最初に実施されたテクニカルワークショップと国際試乗会はいずれも911カレラSと911カレラ4Sがテーマとされたのだが、スペインで行われた試乗会では新型911の乗り心地とスタビリティーが大きく進化したことに大いに驚かされた。スポーツカーゆえ、サスペンションストロークは決して長くないのに、そのなかで効率よく路面からの衝撃を吸収してしまう足まわりのしなやかさにまず衝撃を受け、RWDのカレラSでも4WDのカレラ4Sとほとんど遜色のない安定感をもたらすことにぐうの音も出ないほど打ちのめされたのである。
それでいて911が伝統的に備えてきたバリュー、つまり機械としての精度感や豊富なインフォメーションなどはそのまま継承。しかもスポーツカーを操ったときに味わえる高揚感もしっかり残されていたのだ。
なぜ、タイプ992はこうも全方位的な進化を遂げることができたかといえば、その主たる理由はボディーのワイド化にあったといっていい。これまでは4WD系や上級グレードだけに与えられていたワイドボディー、つまりリアタイヤが左右に大きく張り出したワイドトレッド仕様を全モデルで採用するとともに、同じく全モデルでフロントトレッドを46mm拡大。こうして、4本のタイヤがぐっと大地に踏ん張ったレイアウトとすることで基本となるシャシーパフォーマンスを向上させ、そのうえで快適性を改善するチューニングを施したのである。フロントタイヤより1インチ大きい内径のリアタイヤを採用したことも、リアのグリップ向上という点で大きな役割を果たしたはずだ。