ポルシェ718ボクスターGTS 4.0(MR/6MT)/718ケイマンGTS 4.0(MR/6MT)
“濃いめ”がお好きな人へ 2020.05.13 試乗記 2.5リッターターボから4リッターの自然吸気へとエンジンが変更された「ポルシェ718ボクスター/ケイマンGTS」。まさかの“アップサイジング”を図ったポルシェの思惑とは? 新エンジンを得た新型GTSの走りとともに、ポルトガル・エストリルより報告する。新しい4リッター自然吸気エンジンの出自
世のダウンサイジングの流れに沿ってフラット4ターボを搭載した718ボクスター&ケイマン。この世代に自然吸気のフラット6が戻ってきたのは昨年(2019年)の話だ。カタログモデルとなったトップパフォーマンスモデル、「スパイダー」と「ケイマンGT4」に搭載されたのは、それまでポルシェにおいては唯一の自然吸気フラット6だった「911 GT3」の「9A1」ではなく、「9A2」の開発コードとなっている。これは991後期に搭載された3リッターのフラット6ターボからの系譜を示すもので、それをベースに自然吸気と改変したまったく新しいエンジンが718に与えられたというわけだ。
現状では最新世代のGT3となる、991後期型の9A1系4リッターに対して、新しい9A2系4リッターは当然ながらスペックが全然異なっていた。例えばパワーは前者が500PS/8250rpmに対して、後者は420PS/7600rpm、レブリミットは前者が9000rpmなのに対して後者は8000rpmだ。ボア×ストロークはまったく同じ、でも中身はまるで別物。911と718、GT3とGT4、その名前が示す通りのヒエラルキーは厳然と存在した。
そんな9A2系4リッターフラット6を搭載する2番目のモデルが、新しいボクスター&ケイマンのGTSだ。718世代では既に2.5リッターフラット4ターボをベースとしたGTSがリリースされているが、その第2弾ということになる。搭載されるそれは、スパイダー&ケイマンGT4のものよりも若干デチューンされて400PS/7600rpmを発生。レブリミットは7800rpmに設定された。ちなみにこのユニット、開発エンジニアによるとハードウエア的にはスパイダー&ケイマンGT4のそれと同一というから、パフォーマンスの差はプログラムによって表現されているということだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
自然吸気ユニットの採用に見るポルシェの意図
ところで、新型GTSの動力性能はケイマン、ボクスターともに0-100km/h加速が4.5秒、最高速が293km/hとなる。前型のMT仕様(0-100km/h加速4.6秒、最高速290km/h)と比較すると、加速・最高速ともに勝ってはいるものの、その差は意外なほどに小さい。
ポルシェにとっては間違いなく重要で明快な商品価値である、数値化された速さが狙いではないとしたら、それでもわざわざ自然吸気ユニットをつくった理由はなにか。開発エンジニアに話を聞くと、WLTPに代表される、より実地に近い燃費や排出ガスの測定方法が標準化されるにつれ、「過給エンジンよりも自然吸気エンジンのほうが安定して期待値が望める」という見直しがなされていることをそのひとつに挙げた。確かにダウンサイジングターボは巡航など定地的なパターンに入った時は好結果を出すが、過給を多用する加減速の多い状況では、2000rpm以下のトルクがリニアな自然吸気のほうが燃費は荒れにくい。
そこに効率の解答を見い出すということになれば、現状911が搭載する3リッターフラット6ターボも後々は自然吸気ユニットに置き換えられるということだろうか。数値的なパフォーマンスを思えばターボの恩恵は決して小さくはなく、その判断は難しいところだろう。ちなみに開発エンジニアはその点について、先々のモデル展開計画については答えられないとするものの、同じ9A2の系統ゆえ、搭載することは難しくはないだろうと答えてくれた。
新しいGTSの試乗は前半に公道でボクスターに、後半にクローズドコースでケイマンにという順番になり、まずは日常的な用途での柔軟性などを主にチェックしようとボクスターに乗り込んだ。トランスミッションは後にPDKが追加されることは明言されているが、今回は6段MTのみが用意されていた。
運転をしているという実感が濃い
軽いタッチで扱いやすくつながりにクセもないクラッチ、ストロークはやや大きめながらリンケージ感はきちっと伝わるシフトレバー。インターフェイスは標準的なポルシェのスポーツモデルと相違ない。フラット4ターボが苦手とするアイドリングから1500rpm以下での柔軟性は抜群で、特に細街路や交差点などで歩くように進む時などは、1000rpmを下回る回転域でもアクセルワークのみでじわじわと速度を加減できる粘り強さを備えている。
年々厳しくなる騒音規制も鑑みてだろう、低回転域では気持ち控えめに聞こえてくるエキゾーストノートも、中高回転域に至るにつれて臨場感あふれるものになる。7800rpmのレブリミットまでの吹け上がりはまったくよどみがなく、そのレスポンスの鋭さもポルシェのスポーツユニットに対する期待に十分に応えてくれるものだ。GT3の9A1ユニットは、MTで操ることを躊躇(ちゅうちょ)させるほどのカミソリレスポンスを誇るが、個人的にはこの9A2ユニットであれば、ポルシェをMTで操る喜びをあらゆるシーンで体験させてくれると思う。
現に、クローズドコースで試したケイマンGTSのドライブでは、自然吸気のフラット6を伸び伸びとぶん回せる喜びに頰を緩めるばかりだった。タイヤが標準的なサイズ設定となっている点や、エンジン単体重量が2.5リッターのフラット4と比べると11kg重くなっている点などが影響してか、限界を超えてからのテールの滑り出しは同じ718の「ケイマンS」に比べるとややピーキーな印象はあるが、それさえ楽しみに変えてしまうような運転体験の濃さがある。
何より、サーキットを真剣に走り込む向きには、固められた足まわりや強化されたブレーキ、太いタイヤを持つケイマンGT4があるわけで、ケイマンGTSは日々の移動からして積極的にクルマと絡みたい人に向けたパッケージと言えるだろう。言うまでもなく、ボクスターGTSならばそこに屋根をしまう開放感も伴ってくる。
同じく自然吸気のフラット6を積んだ981世代のGTSに比べればお値段が上がってしまったのがなんだが、パフォーマンスも含めて鑑みれば、相変わらず稀有(けう)な存在であることは間違いない。
(文=渡辺敏史/写真=ポルシェ/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ポルシェ718ボクスターGTS 4.0
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4391×1801×1262mm
ホイールベース:2475mm
車重:1405kg
駆動方式:MR
エンジン:4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:400PS(294kW)/7000rpm
最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/5000-6500rpm
タイヤ:(前)235/35ZR20 88Y/(後)265/35ZR20 95Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.8リッター/100km(約9.2km/リッター、欧州複合モード)
価格:1111万円/テスト車=--円(※日本国内での販売価格)
オプション装備:--
※数値はすべて欧州仕様車の参考値
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
ポルシェ718ケイマンGTS 4.0
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4405×1801×1276mm
ホイールベース:2475mm
車重:1405kg
駆動方式:MR
エンジン:4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:400PS(294kW)/7000rpm
最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/5000-6500rpm
タイヤ:(前)235/35ZR20 88Y/(後)265/35ZR20 95Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.8リッター/100km(約9.2km/リッター、欧州複合モード)
価格:1072万円/テスト車=--円(※日本国内での販売価格)
オプション装備:--
※数値はすべて欧州仕様車の参考値
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
MINIクーパーSEポール・スミスエディション(FWD)【試乗記】 2026.8.3 人気のプレミアムコンパクト「MINI」に、特別なデザインが魅力の「ポール・スミスエディション」が登場。著名なファッションブランドがコーディネートしたMINIは、クルマに疎い人も、ブランドに疎い人も魅了する、説得力のある装いの一台に仕上がっていた。
-
トヨタRAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.8.1 いまやトヨタの最量販モデルへと上り詰めた「RAV4」の6代目モデルが登場。もちろんトヨタにとっては自信作のはずだが、後を追うライバル勢も着々と進化しており、カスタマーのチェックの目は厳しくなるばかりだ。国内向けでは最廉価の「アドベンチャー」でその仕上がりを試した。
-
ビモータKB998リミニ(6MT)【レビュー】 2026.7.31 ビモータのスーパースポーツ「KB998リミニ」にサーキットで試乗! イタリア職人の手によるフレームに、カワサキの強心臓を搭載した一台は、いかなる走りを見せてくれるのか? クローズドコースだからこそ体験できたマシンの真価に迫る。
-
ポルシェ・マカンGTS(4WD)【試乗記】 2026.7.29 ポルシェの擁する電動のハイパフォーマンスSUV「マカン エレクトリック」に、さらに走りを磨いた「GTS」が登場。エンジンを積まない電気自動車でも、ポルシェならでは、GTSシリーズならではの走りは楽しめるものなのか? 雨のなかの試乗を通して確かめた。
-
シトロエンë-C3マックス(FWD)【試乗記】 2026.7.28 シトロエンのコンパクトハッチバック「C3」に電気自動車版の「ë-C3」が登場。さすがはシトロエンらしく、操作系やスペック、装備の設定、さらには乗り心地にいたるまで、普通のBEVとはひと味違う。誰にでも勧められるクルマではないが、そもそもシトロエンとはそういうポジションだ。
-
NEW
アウディA6 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】
2026.8.5試乗記歴史的にも車格的にも、アウディの中核に位置している「A6」。その最新モデルが日本に導入された。往年の「100」から数えて9代目となる新型は、いかなる走りを備えているのか? 既存の車種とは一味違う、新時代のアウディのドライブフィールを報告する。 -
NEW
16年ぶりのフルモデルチェンジ 新型「日産エルグランド」の価格は妥当か?
2026.8.5デイリーコラム実に16年ぶりのフルモデルチェンジで登場した新型「日産エルグランド」。その価格は「X e-4ORCE」の689万7000円からとなっているが、はたしてこの設定は買い得なのだろうか。グレード間の装備差やライバル車との比較を通じて検証した。 -
NEW
第123回:新型「日産キックス」とゆかいな仲間たち(後編) ―ライバル比較で浮き彫りになる日産デザインの底力―
2026.8.5カーデザイン曼荼羅日産ひさびさの話題作となっている新型「キックス」だが、盛況なコンパクトSUV市場は競合ひしめくレッドオーシャン! ライバルと比較しても、キックスのデザインは埋もれない逸品と言えるのか? カーデザインの識者とともに、日産デザインの実力に迫る。 -
「売れるクルマ」と「いいクルマ」にズレがあるとき、開発者がつくりたいのはどっち?
2026.8.4あの多田哲哉のクルマQ&A「いいクルマが売れるとは限らない」などといわれるが、「売れるクルマ」と「いいクルマ」が一致しないとき、エンジニアが目指したいと思うのはどちらなのか? 元トヨタの車両開発者である多田哲哉さんに聞いてみた。 -
ホンダ・スーパーONE(FWD)【試乗記】
2026.8.4試乗記ホンダのスポーツハッチバック電気自動車「スーパーONE」がいよいよ公道を走り始めた。その愛らしいスタイリングと走りの楽しさはすでに各所で報告されているが、多くの方が不安に感じているのは“距離”に関してに違いない。幾度かの経路充電を挟みつつ300km余りをドライブした。 -
第341回:「スカイアクティブZ」は大丈夫か
2026.8.3カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「マツダCX-5」で出撃した。マイルドハイブリッドのパワートレインと進化したシャシーが織りなす走りを確かめつつ、ディーゼルエンジンがラインナップから消えた3代目CX-5について考えた。












































