ダイハツ・タフトGターボ(FF/CVT)
遅れてきた挑戦者 2020.07.29 試乗記 ダイハツが満を持して市場投入した新型軽クロスオーバー「タフト」。カクカクとしたデザインや開放的なガラスルーフなどが注目を集める同車だが、ライバルに対する真のアドバンテージはどこにあるのか? ターボ付きの最上級グレードに試乗し、その実力を確かめた。好調なスタートを切った“ハスラー対抗”の大本命
2020年6月10日の発売から1カ月で、月販目標(4000台)の4.5倍となる約1万8000台を受注し、好調な立ち上がりを見せたダイハツ・タフト。“軽のクロスオーバーSUV”といえばこれまでは「スズキ・ハスラー」の独壇場。今年(2020年)1~6月の販売台数は3万7413台(月平均6166台)と軽乗用車で7位の実績を上げているが、少なくとも初期受注の段階では、タフトも大いに健闘しているわけだ。
2014年発売の初代ハスラーへの対抗馬として翌年に発売された「ダイハツ・キャスト アクティバ」は、「トールワゴンである『キャスト』シリーズの中のいちモデル」ということでキャラクターが分かりづらかったのか、あまり人気が出ないまま2020年3月に生産終了。タフトに後を任せることになった。タフトという車名は1974~1984年に存在した本格オフローダー(登録車)でも用いられていたので(後継は「ラガー/ロッキー」)、今回の2代目タフトも「もしかしたら『スズキ・ジムニー』のようなマニアックなクロカンなのか!?」と淡い期待もしていたが、フタをあけてみればはっきりとした“ハスラー対抗”。SUVらしい最低地上高やアプローチアングル/デパーチャーアングル、グリップサポート制御などによって、それなりの悪路走破性は備えているものの、あくまで普段使いを重視したクロスオーバーSUVだ。
全長と全幅が軽自動車の規格上限なのはあたりまえだが、全高は1630mmでハスラーよりも50mmほど低くなっている。これによって、サイドから見たときにショルダーライン下のボディーに対し、上のガラスエリアのボリュームが小さく、“分厚いボディーと薄いキャビン”となってスタイリッシュさが強調されている。スクエアフォルムながら丸目2灯のヘッドランプや各部を丸めた処理などで愛嬌(あいきょう)を感じさせるハスラーに対し、ブロックを積み重ねたようにカクカクとしていてなんだか男前。タフトはSUVらしいタフさや頼もしさを、徹底して貫いているのだ。
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普段使いで感じられる新世代パワートレインの恩恵
全高がそれほど高くないから室内高は余裕たっぷりというわけではないものの、前席の頭上にはタフトの目玉のひとつである「スカイフィールトップ」が広がる。大きなガラスルーフによって開放感が得られるので、室内高の低さがまったく気にならない。フロントシートのフィット感も軽自動車としては最上の部類で、走りだす前から好印象を抱かせた。
今回の試乗車は「Gターボ」のFF。パワートレインは「タント」から採用されている、最大トルク100N・mの新エンジン+「D-CVT(デュアルモードCVT)」の組み合わせとなる。車両重量がタントよりも80kgほど軽いこともあって動力性能は余裕たっぷりだ。発進から軽やかで、あまりエンジンを回さなくても楽に交通の流れに乗っていける。3000rpm台になるとモリモリとトルクが湧き出てきて登りのワインディングロードなどでも力強い。
ただし、最高出力は自主規制値の64PSに抑えられているから、いざアクセルを全開にしてみると、それまでの走行で感じた頼もしさから想像するほどには速度が伸びていかない。いったんはエンジンを6300rpmに当て、その後は6000rpmに張り付かせて加速していくが、60km/hまでははっきりと速く、80km/hまでもそこそこには速いものの、そこを超えるとだんだんと“頭打ち感”が強くなる。とはいえ、日本の道路事情ならばほとんどの場面が“頼もしさ”を感じる範囲内に収まることだろう。
D-CVTは、発進時や低速域ではベルト式CVTのみで駆動し、中速以上では伝達効率の高い遊星ギアも介入するが、その制御に違和感はない。レシオカバレッジ(変速比幅)が大きく広がっているので、高速道路での巡航でも室内が静かに保たれるのが大きなメリットとして体感できる。
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ACCのアドバンテージと“要改善ポイント”
車両の基礎にはタントやロッキーに続き、ダイハツ最新のDNGAプラットフォームを採用。そのシャシーのポテンシャルは高く、今回のタフトでもバランスのよさが光っていた。
クロカンのジムニーを除くと、軽乗用車の中では最大サイズのタイヤを履いているのに、乗り心地には硬さがなく、たいていの場面で快適だ。それでいてワインディングロードでは侮れないハンドリング性能をみせつける。背の高さを意識させず、軽自動車らしからぬどっしりとした安定感とともにコーナーを駆け抜けていく。それも、いやな硬さや突っ張り感などはないままだ。惜しむらくは、大きめの凹凸などで跳ね気味になること。もう少しストローク感があってスムーズに衝撃を吸収してくれるとうれしい。
ダイハツとしては初めて電動パーキングブレーキを採用したこともトピックだ。これによって、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)に停止保持機能(3分間)を持たせることができた。タントやロッキーは機械式パーキングブレーキなので停止保持機能がなく、ACC作動中に渋滞などで前車に合わせて停止した場合、ドライバーがブレーキペダルを踏まないとクリープで走りだしてしまったのだ。
今回もタフトのACCを高速道路で使用してみたが、その制御はおおむね満足できるものだった。ただし、ステアリングのクルーズスイッチを押すことでACCと同時に作動するLKC(レーンキープコントロール)は、機能的には問題ないもののフィーリングは今ひとつだ。車線中央付近を走るようアシストするのだが、ステアリングがカクッカクッと左右にせわしなく動き、それが煩わしく感じるのだ。他車の同様のシステムも同じような制御をしているのだが、軽自動車用の一般的なパワーステアリングは制御がきめ細かくはないからか、動きが粗くて気になってしまう。慣れの問題かとも思い、しばらく使い続けたが、「自分には合わない」と判断し、カスタマイズ機能でLKCをオフにしてACCのみを作動させるようにした。ちなみに、「日産デイズ」などは「プロパイロット」のために、「より上級なパワーステアリングをおごった」のだそうだ。
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長足の進化を遂げた「スマートアシスト」にも注目
予防安全機能の「スマートアシスト(スマアシ)」はタントで次世代型へと進化したが、今回のタフトでは、ステレオカメラを3年半ぶりに一新。撮像性能が向上したことで、衝突回避支援ブレーキは対応速度が引き上げられ、夜間の歩行者検知機能も追加。そのほか、路側逸脱警報機能、ふらつき警報機能、標識認識種類増加(従来の進入禁止に加え最高速度、一時停止)などの新機能が加わった。
軽自動車の中でもハイスペックな機能が自慢のスマアシ。ブレーキ制御付き誤発進抑制機能も、他のほとんどのメーカーがソナーセンサーのみで障害物を検知しているのに対し、こちらはステレオカメラも併用している(前方のみ)。強い雨のときなどは、雨粒が路面をたたく音が超音波に似ていてソナーセンサーが機能しないときがあるので、スマアシのセンサーフュージョンは大いに有効なのだ。コンパクトなステレオカメラを採用するスマアシは超高速対応には向いていないが、日本の道路事情にはこれでおおむね対応できて、かつコストは抑えられる。“欧州で市場展開していないスモールカー専門メーカー”のダイハツにはぴったりのシステムとなっているのだ。
まだまだ成長しそうな軽クロスオーバーSUV市場を、ハスラーとともにけん引していくであろうタフト。リアシートとラゲッジスペースのアレンジ機能はハスラーのほうが上回っているように思えるが、こちらも快適で安心感の高い走りやスカイフィールトップの開放感、スマアシの満足度などで人気をキープしていくことだろう。
(文=石井昌道/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ダイハツ・タフトGターボ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1630mm
ホイールベース:2460mm
車重:840kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
最高出力:64PS(47kW)/6400rpm
最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/3600rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81S/(後)165/65R15 81S(ヨコハマ・ブル―アースFE AE30)
燃費:25.4km/リッター(JC08モード)/20.2km/リッター(WLTCモード)
価格:160万6000円/テスト車=209万0198円
オプション装備:スマートパノラマパーキングパック(12万6500円) ※以下、販売店オプション 9インチスタイリッシュナビ(22万6776円)/ETC車載器<エントリーモデル>(1万7600円)/ドライブレコーダー<スタンドアローン>(3万4760円)/カーペットマット<高機能タイプ・グレー>(2万6026円)/ダークブラックメッキパック(5万2536円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:1816km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:338.8km
使用燃料:19.4リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:17.5km/リッター(満タン法)/17.0km/リッター(車載燃費計計測値)

石井 昌道
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