第667回:かつてのアルファ・ロメオの生産拠点 イタリア・アレーゼの“いま”
2020.08.07 マッキナ あらモーダ!イタリア繁栄の象徴
読者諸氏は「Arese(アレーゼ)」と聞いて、何を連想するだろうか。
長年のアルファ・ロメオ愛好家にとっては、どこか甘美な響きに違いない。少し前まで日本のアルファ・ロメオ販売店にアレーゼの名が冠されていたことを記憶している方も少なくないだろう。
アレーゼとは、イタリア・ミラノの北西にある町の名である。そのアレーゼが、近年驚くべき変容を遂げていた、というのが今回の話題だ。
まず、アレーゼとアルファ・ロメオの関係を振り返っておこう。
今からちょうど110年前の1910年、ミラノでA.L.F.A.(Anonima Lombarda Fabbrica Automobili:ロンバルディア自動車製造有限会社)が地元起業家の有志によって設立された。彼らは、その前身であるダラック社が使っていた市内ポルテッロ地区の工場を拠点としてスタートした。
やがてA.L.F.A.はナポリ出身の企業家、ニコラ・ロメオのものとなり、「アルファ・ロメオ」のブランド名を冠するようになった。
しかし世界恐慌のあおりを受けて経営は傾き、ムッソリーニ政権下の1932年には産業復興公社(IRI)に組み入れられた。
第2次大戦後の1948年にはIRIの持ち株会社フィンメッカニカの傘下企業に再編される。
事実上、公営の状態が続いたアルファ・ロメオだが、戦後経済成長の波に乗ることができた。米国による欧州復興計画「マーシャル・プラン」の恩恵により、ドルも稼いだ。
そうしたなか、創業以来の主力生産拠点であったポルテッロ工場の生産能力は限界に達していた。
1960年、IRIからアルファ・ロメオ会長の職に就いたジュゼッペ・エウジェニオ・ルラーギ(1905-1991年)は、ポルテッロから北西15kmの郊外にあるアレーゼ町に新拠点の建設を決める。総面積約200万平方メートルに及ぶ、イタリア屈指の大工場計画だった。
これぞアレーゼとアルファ・ロメオの関係の始まりであった。
アレーゼ工場は1963年に操業を開始。ポルテッロから生産を移管された初代「ジュリア」は警察などの官公庁需要にも支えられ、最盛期のアレーゼを代表する車種となった。
工場に続いて、建築家のイグナツィオ・ガルデッラによる近代的な技術開発センター棟も計画された。

大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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