第673回:【Movie】大矢アキオ、ゴジラの捕獲に成功す!
2020.09.17 マッキナ あらモーダ!突如OTAKU襲来
2年ほど前から筆者の住む街シエナで、「ゴジラ」をたびたび見かけるようになった。
映画ではない。ゴジラのラッピングを全周囲に施したクルマである。その姿については、2018年9月に本連載の第573回でも記した。
ベース車が2代目「フォード・フォーカス」の「ワゴン」ゆえ、最初はおもちゃ店か何かが使う商用車と想像した。だが、それにしてはPR臭が薄い。
いつも駐車中だったため、オーナーの姿を見ることなく時は過ぎていった。
2020年8月の、ある暑い朝のことである。商店街の駐車場で筆者がクルマに乗り込もうしていたときだった。あの“ゴジラ・フォーカス”が襲来する姿がドアミラーに映った。
たとえイタリアでも、駐車場で見知らぬ人に声をかけたら警戒される。それでも勇気を出して、オーナーに声をかけてみた。
ゴジラの主(あるじ)は、意外にもフレンドリーだった。そればかりか、いきなり「一度、家に遊びに来なよ」と提案する。なんという展開。
「僕はOTAKU(オタク)だ」と自称するとおり、彼は大の日本ファンだったのだ。
例の「特別定額給付金」が海外邦人にも適用されるか今もって結論が出ないなか、出身国にいささか誇りを失いかけていた筆者である。なんともうれしい邂逅(かいこう)であった。
彼の名は、ヴァルテル・ベルタッツォ氏。1965年生まれである。兵役ののち、工場従業員を経て、現在は地域産品の輸出業を営んでいる。
動画内には登場しないが、ヴァルテル氏はもともとクルマ好きで、かつては「アルファ・ロメオ75ツインスパーク」や「アウディTT」も所有していたという。前者のときにはあまりにアグレッシブな走りを演じすぎて「2カ月で後輪がツルツルになってしまった」のだそうだ。
いっぽう、ゴジラ号に乗るようになってからは「追い越したがるヤツがいたら、いつも『どうぞお先に』って譲るようになった」と語る。彼の言葉どおりに記せば「ZEN(禅)の境地に達した」のだそうだが、日本が世界に誇る怪獣の余裕が、すでに彼に乗り移っているに違いない。
彼がゴジラ号を実現するに至るまでの、興味深く、そして情熱を感じるストーリーをご覧いただこう。
【ゴジラ号の主に話を聞いた】
(文と写真と動画=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/動画=大矢麻里<Mari OYA>/編集=藤沢 勝)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの 2025.10.16 イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。
-
第931回:幻ですカー 主要ブランド製なのにめったに見ないあのクルマ 2025.10.9 確かにラインナップされているはずなのに、路上でほとんど見かけない! そんな不思議な「幻ですカー」を、イタリア在住の大矢アキオ氏が紹介。幻のクルマが誕生する背景を考察しつつ、人気車種にはない風情に思いをはせた。
-
第930回:日本未上陸ブランドも見逃すな! 追報「IAAモビリティー2025」 2025.10.2 コラムニストの大矢アキオが、欧州最大規模の自動車ショー「IAAモビリティー2025」をリポート。そこで感じた、欧州の、世界の自動車マーケットの趨勢(すうせい)とは? 新興の電気自動車メーカーの勢いを肌で感じ、日本の自動車メーカーに警鐘を鳴らす。
-
第929回:販売終了後も大人気! 「あのアルファ・ロメオ」が暗示するもの 2025.9.25 何年も前に生産を終えているのに、今でも人気は健在! ちょっと古い“あのアルファ・ロメオ”が、依然イタリアで愛されている理由とは? ちょっと不思議な人気の理由と、それが暗示する今日のクルマづくりの難しさを、イタリア在住の大矢アキオが考察する。
-
第928回:「IAAモビリティー2025」見聞録 ―新デザイン言語、現実派、そしてチャイナパワー― 2025.9.18 ドイツ・ミュンヘンで開催された「IAAモビリティー」を、コラムニストの大矢アキオが取材。欧州屈指の規模を誇る自動車ショーで感じた、トレンドの変化と新たな潮流とは? 進出を強める中国勢の動向は? 会場で感じた欧州の今をリポートする。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。