第573回:過激化が加速する!?
自動車ステッカー最前線inイタリア
2018.09.28
マッキナ あらモーダ!
クルマ全体を「系図」が覆いつくす日も!?
今回はイタリアで筆者が発見した面白ステッカーの最新版を紹介しよう。
2016年の本稿第467回で紹介した家族全員の名前をプリントしてくれるステッカーのサービスは、その後さらなる発展をみせている。今やカントリー風装束や、愛犬が加わったデザインまで選べるようになった(写真1)。
家族を大切にするイタリアゆえ、このまま親族を次々と記し始めると、やがてリアウィンドウ全体が「系図」になってしまうのではないか? というのが前回の締めだった。それとは別に、水平方向に向かってボディー全周を飾るようになってしまうこともありうるだろう。
写真2の「フィアット500」に乗る家庭は、すでにソフィアという女児がいるとみたが、それらの右には「お母さん乗ってます」というステッカーも確認できる。ただしそのお腹の形状から、妊婦であるとも想像できる。ふたたび家族が増えるのか、それとも剥がし忘れか。
参考までにインターネット上では、こうしたカスタムメイドのステッカーが、サイズにより日本円換算で約360円から1800円で販売されている。「絵がうまい人が多い日本なら、もう少し写実的な似顔絵とかできるのに」と思うと惜しい気もする。
前回は子供の写真&実名入りまであることを紹介したが、それに関連する新作としては、「気をつけろ、トマーゾ乗車中!!!」だ(写真3)。
これ、よく考えてみると子供の名前ではなく、ドライバー名でもいいわけだ。日本では宅配便トラックの後部扉に運転者名が明記してあったりするが、さすがに「気をつけろ」とは書かれていないことからして、まねて作ったら、それなりにウケるだろう。
地味車とゴジラ
先日第570回の「アバルトのミーティング」動画の中で紹介した「Not sponsored by Mammy & Daddy」も傑作である(写真4)。親のスネをかじってクルマを買っている若者ユーザーが少なくないイタリアの現状を映し出してもいる。そうしたなかで「俺は自腹で買ったんだぜ」と訴えたいのだろう。
イタリア製3輪トラック「アペ」(写真5)の後部に貼られているステッカーもたびたび笑えるものがある。「できるものなら、ついて来い」(写真6)とは、通常は速いクルマがする挑発である。ただしこのアペの最高速は60~65km/h、チューニングを施しても70km/hがそこそこだ。つまり、上下1車線ずつの追い越し禁止道路で、後続車のドライバーの忍耐力を試しているのだ。
そのアペといえば熱烈なファンによる、こんな過激なステッカー(写真7)も見つけた。
いっぽう、写真8から10は大胆にも「ゴジラ」を貼ってしまった例である。サイドに回り込めば、都市を襲うゴジラの図が展開されている。さらに「Ford」の楕円(だえん)エンブレムも「ゴジラ」に替えられている。
「フォード・フォーカス」は、こちらでは極めて実直なクルマである。“ゴジラ・ラッピング”とのコントラストは、ネズミ色のスーツを着たサラリーマンによる一発宴会芸に通じるものがある。
アウトストラーダの「神田明神」
先日アウトストラーダA1号線「太陽の道」上で、隣国ナンバーの2代目「プリウス」を目撃した。
イタリアおよび周辺諸国でプリウスは、都市部以外で見かける機会が少ない。そのため、高速道路を走るプリウスという珍しい光景に、思わず感嘆の声を上げてしまった。ついでにいえば、どっしりと踏ん張ったフォルムをもつ欧州勢と比べて、全幅が狭く腰高に見えるのも、プリウスが異様なムードを放つ原因だ。
それはともかく、ボクがプリウス以上に驚いたのはテールゲートのステッカーだった(写真11)。右側には日本の国旗が。「JAPAN」という文字が付記されているところからして、外国で売られているもの、もしくは日本で外国人向けに販売されているものと察した。
そしてナンバープレートをはさんで左側には、なんと「神田明神」の交通安全ステッカーが貼られているではないか。
日本でも近年マイナーになりつつある「お守り系」ステッカーを今日イタリアで見るのは、なんとも不思議な印象であった。
残念なのは、ゴジラといい、神田明神といい、追いかけて行ってオーナーとお話できないことである。想像するに、どちらも日本ファンの、いい人だろう。
同時に、神田明神もゴジラもこちらでは知っている人が極めて限られる。日本ファン同士で見つけあっては、ムフフと笑っているに違いない。
最後にステッカーといえば気になるのは、イタリアで少し前までみられた「高速鉄道建設反対」「空港開港反対」といった政治ネタのステッカーが減っていることだ。議論好きで知られたイタリア人ゆえ、何らかのマインドの変化か。気になるところだ。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=藤沢 勝)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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