第631回:ポスト・コロナ時代を技術の力で切り開け! 先進技術の総合展示会「CEATEC 2020」取材記(前編)
2020.10.21 エディターから一言 拡大 |
“ポスト・コロナ”の時代に向けた、さまざまな技術を提案。オンラインイベントとして開催されている最先端技術の展示会「CEATEC(シーテック)2020」より、自動車の進化に関連するさまざまなアイデアを紹介。自動車の未来を探る。
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“ニューノーマル”時代を象徴する技術がずらり
IT・エレクトロニクスの総合見本市「CEATEC」(主催:CEATEC 実施協議会)が開幕。今年は「CEATEC 2020 ONLINE」として史上初の完全オンラインで開催されることとなった。その理由が新型コロナウイルス感染症の影響であることは周知のとおりだが、10月23日の閉会後も12月31日までコンテンツの閲覧が可能であるなど、時間や距離による制約のなさはオンラインイベントならでは。皮肉にも、端々にコロナ禍がもたらした見本市の進化を感じる結果となった。
出展申込者数を見ても、このような特殊な環境ながら前年とほぼ同水準の356社/団体。そのうち新規出展者数の占める割合は46%と、前年の39%から増加している。4日間での来場者数は20万人を見込むが、開幕早々にアクセス集中で利用制限がかかるというトラブルが発生。そのため、開会式など一部コンテンツは21日夕方に再配信されることとなった。
開会に先立って発表された「CEATEC AWARD 2020」の各賞には、まさにコロナ禍を象徴するような技術や製品・サービスが選ばれた。総務大臣賞はスーパーコンピューター「富岳」(富士通/理化学研究所)。「京」の後継機として開発されたもので、スパコンの世界ランキングでトップの性能を誇るが、一般には、「おしゃべりやくしゃみでどのくらいの飛沫(しぶき)が飛ぶのかというシミュレーションを行ったマシン」と言うほうがわかりやすいかもしれない。
ADASの進化に欠かせないセンシング技術
また、今年はイベント全体を通して「ニューノーマル」(新たな常態、新たな常識)がテーマに据えられていることから、部門賞にニューノーマル枠が加えられた。「ニューノーマル ソリューションズ部門賞」グランプリの「透明ディスプレイ パーティション」(シャープ)と、「ニューノーマル社会を支える要素技術・デバイス部門賞」グランプリの「タッチレス操作パネル」(アルプスアルパイン)は、いますぐにでも商品化を望む声が多いのではないだろうか。
そして、「ニューノーマル時代のデジタルまちづくり部門賞」グランプリに輝いたのが「ピエゾ環境発電によるホイール完結型センシング」(TDK)だ。ホイール(とタイヤ)は路面と直接触れるものだけに、そこから得られる情報はADAS(先進運転支援システム)の性能向上に欠かせないと言われているが、常に動き続けるタイヤをセンシングすることは容易ではなく、ブリヂストンの「CAIS」などの限られた例を除くと、広く実用化されているのはタイヤ空気圧監視システムくらいである。
今回、受賞したTDKのシステムの肝は、水晶や特定のセラミックなどの圧電体に加えられた力を電力に変換する電子部品「ピエゾ素子」を使った独自のセンシングソリューションだ。ピエゾ素子の圧電効果を活用することで、タイヤが回転するたびにデバイスに加わる車体の荷重を利用して発電することができるので、バッテリーが不要。速度変化や車体の旋回、タイヤのスリップなど、車両の状況変化に応じてデバイスの起電力も変化するため、走行状態をリアルタイムでセンシングすることができる。自動運転車の実現に必要な車両の状態や路面状態の検知、運転状況の検知をはじめ、タイヤメンテナンスサービスへの活用、タイヤやホイールの動的特性の評価などに応用できるという。
先進技術満載のコンセプトカー「Moeye」
今年は完全オンラインゆえにイベントの全体感や出展規模・迫力といったものを感じ取ることは難しいが、そうしたなかで、目玉のひとつと言えそうなのが京セラのコンセプトカー「Moeye(モアイ)」だ。京セラといえば2018年発表の電気自動車が思い起こされるが、今回はより一層インパクトのある仕上がりになっている。
クラシカルな丸みを帯びたスタイリングながら、メタリックな質感やフロントマスクの個性が醸し出す未来感が目を引く車体デザインは、Fortmarei(フォートマーレイ)社長でカーデザイナーの石丸竜平氏の手になるもの。デザインのテーマは「時間」。内装も最先端のディスプレイが並びながらも、ぬくもりの感じられるテクスチャーになっており、センターコンソールに置かれた京セラ製の人工オパールが豪華さを演出する。
技術的な見どころは人間の五感のうち味覚以外の「視覚・触覚・聴覚・嗅覚」を楽しませるデバイスがちりばめられている点だ。ダッシュボード上部にオリジナルキャラクターの"モビすけ"が浮かんでいるように見える空中ディスプレイ、ダッシュボードがあたかも透明であるかのように風景を映し出す光学迷彩技術、自然光に近い光を再現するLED照明「CERAPHIC(セラフィック)」などはぜひ実際に体験してみたいところ。
バーチャルな技術でリアルを感じさせる
さらにモアイでは、触覚に訴えるものとして、独自開発の「HAPTIVITY(ハプティビティ)」を採用。ユーザーがパネルに触れると微細な振動が返ってくるため、ユーザーは自分自身の行った操作を瞬時に確認することができる。聴覚についてはスピーカーピエゾ素子を用いた振動スピーカーを、嗅覚についてはアロマ芳香機をそれぞれ採用した。
これらをフルに生かすと、例えば緑豊かな道をドライブしているときに木漏れ日や風に揺れる木の葉の音、草の香りのようなものを感じる空間演出が可能だ。あるいは、コロナ禍で注目を集めたドライブインシアターがより一層楽しめるようになるかもしれない。
先行きが見えにくい社会環境のなかで、さまざまなものがダウンサイジング傾向だが、未来への提案に限っては縮こまることなく、思い切り想像の翼を広げたものであってほしい。オンライン会場はその可能性を秘めた技術を発掘する絶好の場だと言えるだろう。
(文=林 愛子/写真=CEATEC、TDK、京セラ、シャープ、理化学研究所/編集=堀田剛資)

林 愛子
技術ジャーナリスト 東京理科大学理学部卒、事業構想大学院大学修了(事業構想修士)。先進サイエンス領域を中心に取材・原稿執筆を行っており、2006年の日経BP社『ECO JAPAN』の立ち上げ以降、環境問題やエコカーの分野にも活躍の幅を広げている。株式会社サイエンスデザイン代表。
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