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第196回:すべり台になったカウンタック

2020.12.21 カーマニア人間国宝への道 清水 草一

カウンタックはお買い得

「ランボルギーニ・カウンタック25thアニバーサリー」を、半分(2人の共同所有)買ったばかりの私ですが、3000万円(半分なので÷2ですが)という価格は、高いのか安いのか。

私は10年前に、同じくアニバーサリーを1500万円で1台まるごと(フツーです)買ったので、「同じモデルが10年後に2倍かよ!」と思えば、高い。ウルトラ非常に高い。

しかし周囲を見回せば、カウンタックが3000万円で買えるのはかなり安い! と確信する。

共同所有者の榎本 修氏(コーナーストーンズ代表)は、「清水さんが半分買われた影響で(笑)、すでに500万円くらい(価格が)上がってます。いまはもうアニバーサリーは3000万円じゃ到底買えません!」と言うが、取りあえず3000万円は高いか安いかというテーマで話を進めたい。

私が直接比較したのは、同じコーナーストーンズ店内に置いてあった「フェラーリF40」だった。価格は1億5000万円。F40とカウンタックとは、オーラ的にはほとんど変わらないので、つまりアニバーサリーはF40の5倍お買い得だと感じ、強く背中を押され購入を決断した。

そりゃまあ、F40とカウンタックとでは、元値(新車価格)が違う。F40は4500万円だったので、現在その3倍だが、アニバーサリーは……。いくらだったんだろう? たぶん2800万円くらいでしょうか。

つまり3000万円という現在の相場は、だいたい元値に戻っただけ! これは、30年落ちのスーパーカーとしては、現状決して高くない。

2020年7月、中古フェラーリ専門店コーナーストーンズで3000万円の「ランボルギーニ・カウンタック25thアニバーサリー」に出会う。その時から「F40」に比べると3000万円という価格は安い! と思っていた。
2020年7月、中古フェラーリ専門店コーナーストーンズで3000万円の「ランボルギーニ・カウンタック25thアニバーサリー」に出会う。その時から「F40」に比べると3000万円という価格は安い! と思っていた。拡大
今から10年ほど前に購入し、半年ぐらい乗った「カウンタック25thアニバーサリー」。当時の購入価格は1500万円で、現在コナストのエノテンこと榎本 修氏と共同所有するカウンタックの半額だった。単純に、同じモデルが10年後に2倍なったという計算だ。(写真=池之平昌信)
今から10年ほど前に購入し、半年ぐらい乗った「カウンタック25thアニバーサリー」。当時の購入価格は1500万円で、現在コナストのエノテンこと榎本 修氏と共同所有するカウンタックの半額だった。単純に、同じモデルが10年後に2倍なったという計算だ。(写真=池之平昌信)拡大
コーナーストーンズで「カウンタック25thアニバーサリー」と同時期に販売されていた「フェラーリF40」の価格は、1億5000万円だった。F40とカウンタックとでは、オーラ的にほとんど変わらないので、カウンタックのほうが5倍はお得だ!
コーナーストーンズで「カウンタック25thアニバーサリー」と同時期に販売されていた「フェラーリF40」の価格は、1億5000万円だった。F40とカウンタックとでは、オーラ的にほとんど変わらないので、カウンタックのほうが5倍はお得だ!拡大

カウンタックの新車価格は?

例えば、私がまるまる1台(フツーです)所有する「フェラーリ328GTS」は、ちょうど1年前の購入時で1180万円だった。新車価格は1280万円くらいだったと記憶しているので、それを思うと、これくらいのネオクラシックスーパーカーが元値に戻るのはアタリマエである。相場を大きく左右する生産台数(≒希少性)を見ても、328の7412台に対して、カウンタックは約2000台。ほぼ元値で買えるアニバーサリーは明らかに割安である。

ところで、カウンタックの新車価格はいくらだったのか? 

取りあえず自分の書いたものを調べてみたら、「1975年にシーサイドモーターが輸入したカウンタック日本輸入第1号車の価格が1750万円」という記述を発見した。証言したのは、当時シーサイドモーターの営業マンで、現キャステルオート代表の鞍 和彦氏である。

「LP400」は現在、億を超えている。つまり新車価格の5倍以上だ。

その後カウンタックの新車価格は、バージョンアップごとにじわじわ上昇したようで、84年にランボルギーニの正規輸入元だったJAXが販売した新車の「LP500S」は、テレビCMで「2750万円」とうたっている。

じゃアニバーサリーはいくらだったのかというと、「その頃はもうバブルでしたから、アニバーサリーの新車は、並行輸入で8000万円から1億2000万円くらいで売られてました」(榎本氏)

当時はF40も最高で2億6000万円までいった。つまり近年高騰したといっても、まだその半分ちょいであることに気づく。

思えば日経平均株価も、現状でピーク時(89年12月末)の6割強だ。まさに神の見えざる手。

「カウンタック」の前で最近撮影した3ショット。中央がスーパーカーブームの当時、シーサイドモーターの営業マンであった鞍 和彦氏、左がエノテン。カウンタックの日本輸入第1号車の価格は1750万円であったという。
「カウンタック」の前で最近撮影した3ショット。中央がスーパーカーブームの当時、シーサイドモーターの営業マンであった鞍 和彦氏、左がエノテン。カウンタックの日本輸入第1号車の価格は1750万円であったという。拡大
「ランボルギーニ・カウンタック」シリーズにおいて初の市販モデルとなった「LP400」は、1974年に登場。現在は新車価格の5倍以上となる、いわゆる“億超え”のプライスで取り引きされているようだ。これに比べれば生産台数の多い「25thアニバーサリー」は、最もリーズナブルなカウンタックといえる。
「ランボルギーニ・カウンタック」シリーズにおいて初の市販モデルとなった「LP400」は、1974年に登場。現在は新車価格の5倍以上となる、いわゆる“億超え”のプライスで取り引きされているようだ。これに比べれば生産台数の多い「25thアニバーサリー」は、最もリーズナブルなカウンタックといえる。拡大

衝撃! ヨンキュッパのカウンタック

神の見えざる手は、時としてステキないたずらをする。

私は20年ほど前、『ROSSO』誌で、「ボロボロのカウンタックが子供たちのすべり台になっていた」という記事を読んだ記憶があった。それについて、当時のROSSO編集長にして現・当連載の担当者である櫻井君に確認したところ、版元(ネコ・パブリッシング)で2001年のバックナンバーを発掘してくれた。

さらにこの記事を書いたハッサンこと自動車ライターの高桑秀典君に電話で確認したところ、こういうことだった。

「ちょうど20年前の冬、カウンタックLP400が498万円という広告をROSSOの姉妹中古車雑誌で見て、さすがにものすごく安かったので取材に行ったんです(笑)。そしたらお店の方が、『このクルマ、実は土に半分埋まった状態で、子供たちのすべり台になっていたんですよ。だからこんなに安いんです』って言うんですよ~。実際にすべり台になっているところを見たわけではないですが、フロントガラスは割れて、塗装も内装もボロボロだったのは確かです」(ハッサン)

いかに状態が悪いとはいえ、LP400が498万円! というより、今じゃ億のLP400がそんな状態で放置されていたこと自体がすごすぎる!

アニバーサリーの3000万円は、現状、確かに割安だ。しかしそれはあくまで「現状」の話。経済状況によっては、すべり台になることだってある。それは覚悟の上である。それでもカウンタックが欲しかったのだ! 買わずには死ねなかったんだよおぉぉぉぉぉ!

(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

「カウンタック」の共同オーナーとなるコナストのエノテン(左)は、「清水さんが半分買われた影響で、すでにカウンタックの値上がりが始まっていますウフフフフ~」という。ホントか(笑)。
「カウンタック」の共同オーナーとなるコナストのエノテン(左)は、「清水さんが半分買われた影響で、すでにカウンタックの値上がりが始まっていますウフフフフ~」という。ホントか(笑)。拡大
誰もが驚きそうな498万円の「カウンタックLP400」を紹介する『ROSSO』誌(ネコ・パブリッシング刊)の記事。オーバーフェンダーやリアウイング、一般的に「ブラボーホイール」と呼ばれるOZ製の純正15インチホイールなどによって「LP400S」風にカスタマイズされていたのだそう。「後にも先にもホンモノのカウンタックで、これよりも安い車両を見たことはありません」とは、当時このクルマを取材したハッサンこと高桑秀典君のコメント。
誰もが驚きそうな498万円の「カウンタックLP400」を紹介する『ROSSO』誌(ネコ・パブリッシング刊)の記事。オーバーフェンダーやリアウイング、一般的に「ブラボーホイール」と呼ばれるOZ製の純正15インチホイールなどによって「LP400S」風にカスタマイズされていたのだそう。「後にも先にもホンモノのカウンタックで、これよりも安い車両を見たことはありません」とは、当時このクルマを取材したハッサンこと高桑秀典君のコメント。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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