第642回:フェラーリの今を知ってほしい 日本市場での展望をフェラーリ・ジャパンのトップに聞く
2021.03.25 エディターから一言![]() |
新型コロナウイルスによる影響がまだまだ収まりをみせない現在、高額なスーパースポーツブランドは、その影響をダイレクトに受けているのではないか。日本市場におけるフェラーリの現状や今後の動向を、2020年にフェラーリ・ジャパンの代表取締役社長に就任したフェデリコ・パストレッリ氏に伺った。
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生産は回復基調
伊フェラーリは2021年2月、昨2020年通期における決算の暫定結果を発表した。それによると、同年通期の純売上高は34億6000万ユーロ(邦貨にしておよそ4500億円)で、前年比で8.1%のマイナスに転じた。
2020年の出荷台数は合計9119台。同年上半期に行った7週間の生産停止とディーラーの一時的な閉鎖の影響もあり、前年比で1012台(10.0%)の減少となったが、下半期は段階的に生産が回復してきたという。
また、8気筒モデルと12気筒モデルを合わせた売上高は、前者が10.3%、後者が9.0%減少。車両においては、「モンツァSP1」と「SP2」が当初の予定通りに納車され、「F8」シリーズの立ち上げがライフサイクルの終わりに近づいていた「488」シリーズを填補(てんぽ)した。「812 GTS」は世界的な流通がスタートし、「ポルトフィーノ」は「ポルトフィーノM」に切り替わっている。
フェラーリ初のプラグインハイブリッドモデル「SF90ストラダーレ」のデリバリーは当初より遅れたが、2020年第4四半期に開始された。同じ時期に「ローマ」のデリバリーも始まり、こちらも順調に顧客の元へ届けられている。2021年は、これにオープンモデル「SF90スパイダー」が加わる見込みだ。
今回、そうしたグローバルでの動向を踏まえ、フェラーリ・ジャパンの代表取締役社長フェデリコ・パストレッリ氏に、日本市場におけるフェラーリの現状と2021年の展望をオンラインインタビュー形式で伺った。
「ローマ」は新たなチャレンジ
2020年はどのような変化が日本市場にありましたか?
「確かにコロナ禍の影響はありましたが、フェラーリにとって日本はすでに成熟した市場であり、同時にこれからもさらに成長の可能性がある市場と考えられます。セールスのコアとなる8気筒モデルは新型車のローマを含め、先日発表したポルトフィーノM、そしてSF90とさらに多彩なラインナップとなり、幅広いカスタマーの趣味や嗜好(しこう)に十分に対応できるようになったと思っています」
フェラーリは近年、ラインナップの拡充に積極的ですね。
「確かにラインナップは増えています。V8モデルやV12モデルはもちろんのこと、少量生産モデルに加え、フェラーリの伝統的な台数限定スペチアーレなどもフェラーリにとって重要です。なかでも昨年4月に発表したニューモデルのローマはフェラーリの新たなチャレンジであり、これまでお付き合いのなかったお客さまとのファーストタッチとなり得る重要なプロダクトです」
ローマはイタリア語で「La Nuova Dolce Vita(ラ・ヌオーヴァ・ドルチェヴィータ=新しい甘い生活)」と題されたテーマを掲げている。ほかの8気筒モデルと何が異なり、何を特徴としているのだろうか。
「まずはその美しいボディースタイルを見ていただきたいですね。ドルチェヴィータとは1950~1960年代にローマを中心に流行した自由なライフスタイルのことで、ローマのアイコニックなエクステリアデザインと優雅なプロポーションはそれを見事に表現していると思います」
デザインは、フェラーリ社内のスタイリングセンターが担当していますね。
「キーワードは“タイムレスなデザイン”です。実際にドルチェヴィータの時代に戻った時に存在したフェラーリのデザインを、巧みに再現しているということでしょうか。往年の『250GT』シリーズのディテールからインスピレーションを得て、それを現代的にアレンジし、美しいスタイルをつくり出しています」
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生活を彩るフェラーリ
滑らかな曲線が印象的なローマのエクステリア。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4656×1974×1301mmで、ポルトフィーノよりも若干拡大されている。パフォーマンスは0-100km/h加速が3.4秒、0-200km/h加速が9.3秒、最高速度が320km/hとなる。
走りについてはどんな特徴がありますか?
「もちろんパフォーマンスはミドシップモデルのF8シリーズやSF90、そしてポルトフィーノMと同様に、こちらも皆さまに十分ご満足いただけるものだと思っていますが、ローマの場合は少しキャラクターが異なるといえそうです」
どんなキャラクターになっているのでしょう?
「日本での発表時にもご紹介いたしましたが、開発コンセプトは“イブニングドレスに身を包んだF1マシン”です。美しいデザインに、日常使いもできる実用性と快適性、それに圧倒的なパフォーマンスを融合させました。最新のデジタル技術や運転支援システムも惜しみなく盛り込んでいます。速さにこだわるだけではなく、ローマで自由に、優雅なカーライフを楽しんでいただきたいと思っています。現在納車は順調です」
パストレッリ氏は、フェラーリに入社以来、リトラクタブルハードトップを採用するFRモデル「カリフォルニア」のシニアプロダクトマネージャー、パーソナライゼーション部門(アトリエ)などを経て、南アフリカのセールスマネージメントを経験した。
現在のフェラーリを知ってほしい
日本市場はパストレッリ氏にどのように映っているのだろうか。
「ひとことで言って、とてもチャレンジングな市場です。他のブランドと同じように最近では中国市場が話題になることが多いのですが、マーケットクオリティーは明らかに日本のほうが上と見るべきでしょう」
フェラーリが日本に正規導入されてから今年で55周年です。
「先ほどもお話したように、日本は成熟した市場であり、何十年もフェラーリに乗り続けてくださっているお客さまも多いですから、ブランドの価値や哲学というものを、すでに十分理解していただいていると思います。その意味ではさらなる将来の成長に、期待と大きなやりがいを持つことができます」
今後の展望をお教えください。
「新しいカスタマーの皆さまには最新のフェラーリを体験し、そこで特徴的な世界観や独自の価値を知っていただきたいのです。そのためにわれわれは、今後さまざまなツールを用いて体験の場を用意したいと考えています。これは長年のファンの皆さまも同様で、まずは現在のフェラーリを知っていただくことが、われわれの一番の希望です」
2021年は、フェラーリ初となるオープンプラグインハイブリッドモデルのSF90スパイダーやポルトフィーノMの上陸も見込まれているので、引き続き注目していきたい。
(文=山崎元裕/写真=フェラーリ、webCG/編集=櫻井健一)
