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レクサスUX300eバージョンL(FF)

トヨタはこう考える 2021.03.31 試乗記 トヨタ自動車がかねて「クルマの電動化=電気自動車(BEV)化」という考え方に対して異を唱えてきたのはご承知の通り。「UX300e」はそんなさなかに導入されたレクサスブランド初のBEVである。その仕上がりやいかに?

誰得のごり押し

このところ、欧州や中国方面からはBEV関連の話がわらわらと毎日のように舞い込んでくる。クルマ関係の片隅にいると、それはさながらBEV禍の様相……、そんな書き方をするものだから嫌電派と呼ばれてしまう。

テスラの「モデルS」やら「モデルX」やらが上陸したころに、試乗記事を書いてくれないかとの依頼をいただき、悪口ばかりになっちゃいますけど、それでもよければ……と、お断りを入れ続けていたら、いつの間にやらそんな話になってしまっていた。

別にBEVが嫌いではないし、モデルなにがしにも罪はない。が、修理やらリコールやら海外での事故状況の説明やら、あるいは先進運転支援システム(ADAS)アップデートやらと安全にまつわる諸対応が目に見えて雑なテスラの所業がクルマ屋としてどうよという点には触れないわけにはいかないだろう。と、彼らに対して抱くその懸念は今でも進行形なのだが、それとは別のベクトルの疑念が、このBEV禍であらわになりつつある。

バッテリーの原材料調達やサプライチェーンへの影響、なにより電力調達うんぬんと随所にひずみを伴いながらもこれほど拙速にBEV化を押し込み、進んでハードランディングさせる意味は何なのか。受益者負担ではまかないきれない補助金をじゃぶじゃぶ投入してまで不便を強いるBEVを売りまくれとの号令は果たして誰得なのか。金融的駆け引きや政争の具として、ここまで環境問題をもてあそんでもいいものか。

もろもろの話をここで膨らませるまでもなく、折につけての日本自動車工業会(自工会)会長の会見では、京都の人のようにやんわりだけどぐっさりと「BEVシフトへの覚悟はおありか?」と関係各所に課題を突きつけているようにもうかがえる。

2020年10月22日に国内導入が始まった「レクサスUX300e」。2020年分の国内割り当ては135台のみで、2021年2月から通常販売が始まった。
2020年10月22日に国内導入が始まった「レクサスUX300e」。2020年分の国内割り当ては135台のみで、2021年2月から通常販売が始まった。拡大
ボディーサイドにあしらわれた「ELECTRIC」のバッジ。上の「UX300e」バッジと合わせて、ガソリン車/ハイブリッド車との外観上の数少ない識別ポイントだ。
ボディーサイドにあしらわれた「ELECTRIC」のバッジ。上の「UX300e」バッジと合わせて、ガソリン車/ハイブリッド車との外観上の数少ない識別ポイントだ。拡大
試乗車は2グレードあるうちの上級グレード“バージョンL”。3眼式のフルLEDヘッドランプを装備する。駆動用バッテリーの温度を最適化するグリルシャッターも付いている。
試乗車は2グレードあるうちの上級グレード“バージョンL”。3眼式のフルLEDヘッドランプを装備する。駆動用バッテリーの温度を最適化するグリルシャッターも付いている。拡大
“バージョンL”には18インチアルミホイールが標準装備。試乗車は「ミシュラン・プライマシー3」を履いていた。
“バージョンL”には18インチアルミホイールが標準装備。試乗車は「ミシュラン・プライマシー3」を履いていた。拡大

なぜUXだったのか

と、そんなタイミングでやってきたのがUX300e、レクサス初となるBEVのデリバリー開始の報だ。2020年秋の販売開始に際しては、「ホンダe」や「マツダMX-30 EVモデル」も用いるパナソニック製バッテリーの調達能力の問題から限定135台の抽選販売という体を採っていたが、現在は2021年4月以降販売分の店舗商談が始まっている。つまり購入にまつわる制限はない。

とはいえ、相変わらずバッテリーの国内生産能力には余剰がなく、世間で言われるBEV普及のロードマップに歩を合わせると増設は喫緊の課題、かつやるとなればその投資は間違いなく1000億円単位の莫大(ばくだい)なものとなる。しかもバッテリー本体の技術革新がどう進むかによっては、その投資が水泡に帰す可能性もある。そこまで危ない橋は渡れないという電池メーカーと、その意を理解する日本の自動車メーカーにとっては、外部投資を糧とする欧中のパワープレイに巻き込まれたくないというのが本音だろう。

さながら『三匹の子ぶた』のような話だが、日本の自動車産業がウーちゃんだとすれば、ただ臆病だったり慎重だったりするわけではない。それは現状、どう考えてもBEVより実効性に優れ、電源構成によっては実効率でも勝り、何なら自ら電気をつくって供給する側にも回れるハイブリッド車(HEV)を育て続けてきたからだ。

レクサスUXは熱効率40%の内燃機関(ICE)とそのエンジンを用いたHEV、そしてこのBEVと3つのパワートレインをそろえて、TNGA系プラットフォームの拡張性を証明したうえでパワートレインの多様性は今後も続くというトヨタの意志を日本においては最も明快に映し出すモデルとなった。本格的に販売するBEVのベースに選ばれた理由は、バッテリー質量と航続距離との最大効率を導き出せる上限的寸法がCセグメント級と考えたこと、バッテリー搭載による地上高低下をカバーできること、そしてブランド力が価格正当化の一助になるからということではないかと個人的には推している。ちなみに販売の主たるところであろう中国では、既に同級のSUVであるトヨタの「C-HR」もBEV化を果たしている。

駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は54.4kWh。満充電からの航続可能距離は367kmと公表されている(WLTCモード)。
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は54.4kWh。満充電からの航続可能距離は367kmと公表されている(WLTCモード)。拡大
“バージョンL”はダッシュボードにヘアライン加工が施されたオーナメントパネルを装備。EV化による高い静粛性を生かすマークレビンソンのプレミアムサウンドシステムは全車標準装備となっている。
“バージョンL”はダッシュボードにヘアライン加工が施されたオーナメントパネルを装備。EV化による高い静粛性を生かすマークレビンソンのプレミアムサウンドシステムは全車標準装備となっている。拡大
中央に大きな速度計をレイアウトした「UX300e」専用のメーターパネル。速度計の盤面はフル液晶表示となっており、残りの航続可能距離が大きく表示される。
中央に大きな速度計をレイアウトした「UX300e」専用のメーターパネル。速度計の盤面はフル液晶表示となっており、残りの航続可能距離が大きく表示される。拡大
メーターバイザーから飛び出したレクサスではおなじみのドライブモードセレクター。モードは「スポーツ」「ノーマル」「エコ」の3種類。
メーターバイザーから飛び出したレクサスではおなじみのドライブモードセレクター。モードは「スポーツ」「ノーマル」「エコ」の3種類。拡大

実航続距離は250km程度

UX300eの駆動用バッテリー容量は54.4kWh。先述の通り、車載前提で開発されたパナソニックの最新型リチウムイオン電池を床下一面に搭載している。その割にはキャビンは数値上、ベースモデルと同等のスペースを有していることになっているが、後席に座ってみると床面が持ち上がっていて、前席下につま先を置いておく隙間がない。前席をアップライト気味に設定してスペースをつくるとか、足の小さな子供の指定席にするとか、そういった工夫が求められる。「プジョーe-208」などもしかりで、既存のパワートレインとのプラットフォーム兼用型BEVには現れがちな課題だ。幸いなのは先の年次改良で若干天地に広がった荷室に影響が出ていないことだろう。

前軸に置かれるモーターのスペックは最高出力203PS/最大トルク300N・m。「4KM」という型式呼称から、エンジン縦置きのハイブリッドや新型「ミライ」にも用いられる高出力系のファミリーであることがわかる。動力性能的には最高速が160km/h、0-100km/h加速が7.5秒と公表されており、多くの人が気になるだろう満充電からの航続可能距離はWLTCモードで367km。ごく普通の走り方でも250kmくらい、つまり東京~御殿場の往復くらいはなんとかもつかなといった感じだと思う。

一方の充電時間は付属の200V・16Aケーブルで14時間、定置型の200V・30Aスタンドで7.5時間、急速充電では普及している125A・50kWのCHAdeMO規格のチャージャーを使った場合、50分で75%、80分で満充電と発表されている。今回は山梨県の河口湖周辺でのロケだったこともあり、撮影用にたっぷり電気があったほうがいいかなと途中のPAで50kWの急速充電器を利用したが、30分での充電量は約14kWhと、3月の早朝の気温の割には入りはいまいちかなぁという印象だった。と同時に、高速巡航という連続負荷の下でのサーマルマネジメントは相変わらずBEVの課題であることも思い知る。

フロア下に搭載された駆動用バッテリーが相応に張り出していることがわかる。全高はガソリン車/ハイブリッド車と同じ1540mmながら最低地上高は20mm低い140mmとなっている。
フロア下に搭載された駆動用バッテリーが相応に張り出していることがわかる。全高はガソリン車/ハイブリッド車と同じ1540mmながら最低地上高は20mm低い140mmとなっている。拡大
“バージョンL”には本革シートが標準装備。合皮の「L tex」シートを装備する“バージョンC”も合わせてヒーターおよびベンチレーション機能は全車標準となっている。
“バージョンL”には本革シートが標準装備。合皮の「L tex」シートを装備する“バージョンC”も合わせてヒーターおよびベンチレーション機能は全車標準となっている。拡大
リアシートにもシートヒーターを完備。同じ「GA-C」プラットフォーム車でも「C-HR」にはない後席用エアコン吹き出し口が備わっている。
リアシートにもシートヒーターを完備。同じ「GA-C」プラットフォーム車でも「C-HR」にはない後席用エアコン吹き出し口が備わっている。拡大
床下にリチウムイオンバッテリーを搭載した影響はリアシートの足元空間にも及ぶ。床面が2~3cmほど盛り上がっており、つま先を入れられるはずの前席下スペースが極端に狭くなっている(場合によってはつま先が入らない)。
床下にリチウムイオンバッテリーを搭載した影響はリアシートの足元空間にも及ぶ。床面が2~3cmほど盛り上がっており、つま先を入れられるはずの前席下スペースが極端に狭くなっている(場合によってはつま先が入らない)。拡大

高速域での振る舞いに難あり

UX300eはICEモデルの「UX200」に比べると、同じ“バージョンL”で300kg重い。無論その大半は床下一面に敷き詰められたバッテリーによるものだが、フロアパネルにはそれを取り囲む広面積の井桁組み補強材を追加し、さらにクロスメンバーを2本追加するなど、万一の衝突時にセルやハーネス類を保護する構造を採って安全に万全を期している。あわせて、前後クロスメンバーやバンパーレインフォース、ステアリングギアボックス等の強化に加えて、サスメンバーには新たなブレースを追加するなど、剛性面の向上もあらたかだ。もちろんサスはオリジナルのセットアップとなり、オイルシールやピストンバンドの摩擦特性を最適化して上屋の無駄な動きを抑えた、新しい減衰特性の専用ダンパーも用意している。

試乗車はそのダンパーを装着したバージョンLだったが、低中速域では重量増&低重心化による上屋の据わりのよさがしっかり表れている一方で、高速域ではわだちやうねりなどの外乱を受けての上屋の動きの収まりがちょっとだらしないかなという印象だった。剛性感はあふれんばかりにありありと感じられるだけに、サスレートをもう少し引き締めてもいいのかなとも思うが、平時の乗り心地のよさがトレードオフされてしまうとしたら惜しい。どっちを立てるかの選択は悩ましいところだ。

遮音材の最適配置やバッテリーユニットの隔壁効果、フラットフロア化なども相まって、静粛性という点では高速域までなかなかアラを見せない。目立つのはタイヤ由来のロードノイズや大きなミラーの風切り音くらいのものだ。機械的なノイズリダクションに頼っていないのは立派だと思う。が、BEV化による動力源の静音化は他銘柄にも等しくもたらされる長所であり、レクサスがその優位を堅守することは以前よりも大変になってくることも間違いない。この先、各社がBEV化を進めるにあたっては、タイヤ屋さんも巻き込んでの音消し活動がより重要化することになるだろう。

“バージョンL”はフラット感向上とリニアなステアリングフィールを目指したというEV専用ショックアブソーバーを標準装備。今回の試乗では高速域でのロールの収まり方がちょっと気になった。
“バージョンL”はフラット感向上とリニアなステアリングフィールを目指したというEV専用ショックアブソーバーを標準装備。今回の試乗では高速域でのロールの収まり方がちょっと気になった。拡大
フロントアクスルに積まれる駆動用モーターは最高出力203PSと最大トルク300N・mを発生。過度な加速力よりもドライバーの意図に呼応する自然なフィーリングを目指している。
フロントアクスルに積まれる駆動用モーターは最高出力203PSと最大トルク300N・mを発生。過度な加速力よりもドライバーの意図に呼応する自然なフィーリングを目指している。拡大
本革とサテンメッキ調ベゼルを組み合わせたシフトセレクター。トランスミッションは備えておらず1速の固定式。
本革とサテンメッキ調ベゼルを組み合わせたシフトセレクター。トランスミッションは備えておらず1速の固定式。拡大
シフトセレクター前方にレイアウトされた「おくだけ充電」(スマートフォンの無接点充電器)は2万4200円のオプション装備。
シフトセレクター前方にレイアウトされた「おくだけ充電」(スマートフォンの無接点充電器)は2万4200円のオプション装備。拡大

次世代BEVも間もなくデビュー

人間感覚に忠実なキャリブレーションを意識したというUX300eの動力性能は、操作に対するリニアさが光る。発進からの駆動力の立ち上がりはじわりと優しく、中間域ではドライバーの意図的な踏み込みに応じて内燃機ではかなわないドスの利いた加速も見せるが、駆動トルク変動によるピッチングモーションは努めて抑えられており、乗員にはまずまず優しい。ただし減速側はペダル操作による回生制動の立ち上がりが早く、ちょっとカックン気味のタッチになっているのが残念だった。また、持ち前の低重心をもってコーナリング性能はしっかり担保されているが、あえて意地悪な舵角でアクセルを深く踏み込めばトルクステアがやや気にかかる。ともあれ、せっかく蓄えた電力を威勢よくまき散らしながらバカ加速をひけらかすような、本末転倒なまねをしていないところには冷静な見識を感じた。

個人的には先述のような、トルク変動による車体挙動や操舵感触のつくり込みの難しさをみるに、BEVこそ後輪駆動が向いているのではないかと思うところもある。居抜きの前輪駆動系車台でその辺りの課題を克服しつつあるのはMX-30 EVモデルだが、マツダ自ら「G-ベクタリングコントロール」の研究が増幅的に生きたというように、この域に達するには相当緻密な駆動制御を探求する必要があるだろう。あるいはBEVの票田がプレミアム的なところにも十分あるならば、前輪駆動はトヨタに任せ、レクサスは立ち位置を生かして後輪駆動、あるいは全輪駆動にリソースを寄せていけばいい。

もとより、既にレクサスとしては電動化時代のキーテクノロジーとして、各輪の駆動制御を詳密化して今までとは次元の異なる運動性能を実現する「DIRECT4」の採用を2020年に発表している。間もなく発表されるという新しいコンセプトカーが、その技術を一歩現実化した方向で見せてくれることは想像に難くない。要は時期尚早すぎてデマンドさえ見えないなか、UX300eからは、今やれることはこれですよというトヨタの反論にも似た意志が端々からにじみ出ている……そんな気がした。

(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

ステアリングヒーターは全車標準装備。シフトパドルによって回生ブレーキの強さを上下2段階で調整できる。
ステアリングヒーターは全車標準装備。シフトパドルによって回生ブレーキの強さを上下2段階で調整できる。拡大
センターアームレストの前端には「UX」専用のインフォテインメントシステムコントローラーが備わっている。
センターアームレストの前端には「UX」専用のインフォテインメントシステムコントローラーが備わっている。拡大
荷室の容量はガソリンモデルと同じ310リッター(ハイブリッド車は268リッター)。リアシートの背もたれを倒せばゴルフバッグを縦に積める。
荷室の容量はガソリンモデルと同じ310リッター(ハイブリッド車は268リッター)。リアシートの背もたれを倒せばゴルフバッグを縦に積める。拡大
急速充電ポートは車両の左側面にレイアウトされる(反対側は普通充電用)。50kWのチャージャーを使った場合、50分で0%から75%まで充電できる。
急速充電ポートは車両の左側面にレイアウトされる(反対側は普通充電用)。50kWのチャージャーを使った場合、50分で0%から75%まで充電できる。拡大

テスト車のデータ

レクサスUX300eバージョンL

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4495×1840×1540mm
ホイールベース:2640mm
車重:1800kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:203PS(150kW)
最大トルク:300N・m(30.5kgf・m)
タイヤ:(前)225/50R18 95V/(後)225/50R18 95V(ミシュラン・プライマシー3)
一充電最大走行可能距離:367km(WLTCモード)
交流電力量消費率:140Wh/km(WLTCモード)
価格:635万円/テスト車=659万2000円
オプション装備:普通充電用ケーブル<AC200V・15m>(8800円)/カラーヘッドアップディスプレイ(8万8000円)/ブラインドスポットモニター+パーキングサポートブレーキ<静止物+後方接近車両>+パノラミックビューモニター(12万1000円)/おくだけ充電(2万4200円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:2769km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:269.5km
参考電力消費率:5.0km/kWh(車載電費計計測値)

レクサスUX300eバージョンL
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