キャデラックXT4スポーツ(4WD/9AT)
経験のたまもの 2021.04.23 試乗記 キャデラック渾身(こんしん)のニューモデル「XT4」に試乗。はやりのSUVだからといって、ルックスだけの一台と思うなかれ。その仕立てや走りの質は、歴史あるアメリカンブランドのプライドを感じさせるものだった。イケてる人にウケている
「売れ筋のカテゴリーに進出したな」
キャデラックXT4がブランドとして初めてのコンパクトSUVだと聞いて、多くの人がそう感じたはずだ。キャデラックXT4の全長は4605mmで、レクサスなら「NX」、メルセデス・ベンツなら「GLB」にあたるサイズ。世界的にみても活況を呈するセグメントだ。キャデラックは、「シボレー・マリブ」などに用いるエンジン横置きレイアウト用のプラットフォームを活用して、小さなSUVを仕立てた。
ここまでだと、なるほど、よくあるFFベースのSUVかと思う。けれども、実際にハンドルを握ると、“お手軽SUV”という先入観は覆された。
キャデラックXT4のラインナップは、ラグジュアリーな「プレミアム」、トップグレードの「プラチナム」、そしてスポーティーな「スポーツ」の3グレードで、今回試乗したのは「スポーツ」。パワートレインは3グレード共通で、いずれも2リッター直列4気筒ターボエンジン+9段ATとなる。
キャデラックのフラッグシップSUVである「エスカレード」の弟であることがはっきりとわかるXT4のフロントマスクは、好き嫌いが分かれるだろう。
と書いてはみたものの、いまやアメリカのみならず世界中のヒップホップ愛好家たちの憧れのクルマは、キャデラック・エスカレード。しばしばラッパーたちのミュージックビデオに登場するからだ。「好き嫌いが分かれるだろう」なんて書くのは昭和のクルマ好きだけで、これこそモード最先端なのかもしれない。
ただし、インテリアは昭和のクルマ好きも納得のもの。キャデラックは伝統的に本物の素材にこだわっていて、レザーやウッドを使う一方で、アルミ調や木目調は使わない。キャデラックXT4のインテリアもこのルールにのっとり、色艶と手触りのいいレザーなどでドライバーをもてなしてくれる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
いわば高級車の凝縮版
ひとたび走りだせば、低回転域からたっぷりとしたトルクを発生するエンジンがドライバーをいい気持ちにさせてくれる。単に力持ちというだけでなく、アクセル操作にリニアに反応することが、いい気持ちにさせてくれる理由だ。100の力が欲しいという願いを込めたアクセル操作に対して、100の力を打ち返してくれる。
1760kgと、決して軽量とはいえないボディーをこれだけ滑らかに動かすのは、1500rpmという低回転域から最大トルクを発生するエンジンの特性とともに、自社製9段ATとのマッチングが練られていることも見逃せない。このあたり、長年にわたってSUVを走らせてきた経験のたまものか。
ルックスに関してエスカレードの弟っぽいと感じたけれど、乗り心地にも同じことを感じた。コンパクトSUVという言葉から想像するよりもはるかに重厚で、どっしりとしているのだ。旋回中に路面の不整を突破しても軽く受け流す懐の深さからは、「うちとこは昨日今日SUVを始めたぽっと出じゃありませんから」というプライドがにじみ出ている(気がした)。SUVはアメリカ製とイギリス製に限る。と断言するほどの度胸はありませんが、時々そんなことを思ったり思わなかったり。
市街地でのちょい乗り試乗だったので確認できなかったけれど、全モデルが後輪のトルクベクタリングを備えた4駆システムを採用していることや、BOSEサウンドシステムのノイズキャンセラーを活用した静かさ、あるいは高速クルーズ時の気筒休止システムなど、試したいことは山ほどある。
ただしちょい乗りでも、コンパクトなFF車をふくらませたSUVではなく、高級車をコンパクトSUVに凝縮する方向のアプローチで開発したクルマだということは理解できた。
(文=サトータケシ/写真=田村 弥、ゼネラルモーターズ・ジャパン/編集=関 顕也)
拡大 |
【スペック】
全長×全幅×全高=4605×1875×1625mm/ホイールベース=2775mm/車重=1760kg/駆動方式=4WD/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:230PS/5000rpm、最大トルク:350N・m/1500-4000rpm)/トランスミッション=9段AT/燃費=--km/リッター/価格=640万円

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。































