フォルクスワーゲン・ゴルフeTSIアクティブ/ゴルフeTSI Rライン【試乗記】
納得の進化 2021.06.15 試乗記 コンパクトカーのベンチマークたる「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の8代目モデルがついに日本の道を走り始めた。従来モデルよりも低く構えたフロントマスクが新型感を強く漂わせているが、果たして中身はどんな進化を遂げているのだろうか。ついにゴルフも1リッターの時代に
2019年10月のワールドプレミアから待つこと約1年7カ月、8代目となるゴルフが日本に上陸した。先代が輸入車として初めて「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど高い評価を得ていたのはご存じのとおりで、私自身も「ゴルフGTE」「ゴルフGTIクラブスポーツ」と乗り継ぎ、現在はピュアEVの「eゴルフ」に乗るなど、7代目とはがっつりと向きあってきた。それだけに、新型の進化には人一倍興味があった。
そのゴルフ8をついに試乗することができた。今回試したのは、1リッター直列3気筒ターボエンジンを搭載する「ゴルフeTSIアクティブ」と、1.5リッター直列4気筒ターボの「ゴルフeTSI Rライン」。先代では、エントリーグレードに1.2リッター直列4気筒ターボを搭載していたのに対して、新型は日本仕様としては過去最小の1リッターにまでダウンサイジングを進めてきた。自動車税だけを見ると、年間の金額が同社のスモールカー「up!」と同じ2万9500円とは、時代も変わったものだ。
しかし、単にエンジンの排気量を小さくして燃費を稼ぐのではなく、いま流行の“電動化”により運転のしやすさと燃費を両立したというのが新型の見どころである。このゴルフ8では、フォルクスワーゲンとして初めて48V電源とマイルドハイブリッドシステムを搭載し、これに1リッターエンジンを組み合わせたのがゴルフeTSIアクティブと「ゴルフeTSIアクティブ ベーシック」、1.5リッターエンジンがゴルフeTSI Rラインと「ゴルフeTSIスタイル」ということになる。
伝統の太いCピラーは健在
フルモデルチェンジということで、エクステリア、特にフロントマスクは一新された。ラジエーターグリルとヘッドライトが薄くなり、よりシャープな印象になっているが、フロントマスク中央の「VW」エンブレムのおかげで、ゴルフらしいデザインに仕上がっているのはさすがである。ゴルフを象徴する太いCピラーももちろん健在だ。斜め後方の視界を考えると、個人的には細いほうがいいのだが、改良という名のもとにCピラーを細くしない頑固さは嫌いではない。
エクステリア以上に大きく変わったのがインテリアのデザイン。ゴルフ8のテーマのひとつにデジタル化があるが、「デジタルコックピットプロ」と呼ばれる液晶メーターと、その横に置かれる10インチのタッチスクリーンにより、一気に今風のデザインになっている。シフトレバーも大幅に小型化され、センターコンソールがすっきりとした印象になった。ただ、そのへんのつくりがやや素っ気なく、どこか安っぽく見えてしまうのが惜しいところだ。
新型ゴルフではライトや空調の操作がタッチスイッチに変更されている。ライトに関してはこれまでよりも高い位置にあるため、操作性が向上した印象。空調はダッシュボードのタッチスクリーン手前にあるタッチスイッチで温度調節が可能だが、慣れの問題か、以前のダイヤル式のほうが扱いやすいように思える。3分割のタッチスイッチの中央は、オーディオの音量が変更できるだけでなく、2本指をスライドさせることで地図の縮尺が変更できるのはいいアイデアだと思う。
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3気筒っぽさはほぼ解消
前置きはこのくらいにして、まずは、1リッターエンジンのゴルフeTSIアクティブを試す。1リッター直列3気筒ターボエンジン自体は、スペック違いですでに同社の「Tクロス」や「ポロ」に搭載されているが、マイルドハイブリッドシステムが組み合わされる「1.0 eTSI」エンジンは走りだしからトルクが十分で、予想以上に軽々とした動きをもたらしている。アクセルペダルの操作に対するエンジンの反応もよく、最高出力13PS(9.4kW)の電気モーターがエンジンをアシストしているのがわかる。
3気筒エンジンだけに、加速時のノイズや振動を心配したが、前出のTクロスやポロと比べるとさほど気にならないレベルにまで低減されており、言われなければ3気筒であることに気づかない人が多いだろう。アクセルペダルを踏み込んでやれば、2500rpmあたりから力強さを増し、高速道路の追い越しや山道の登りといった場面でも不満のない加速をみせてくれた。
一方、走行中にアクセルペダルから足を離すと、エンジンが停止したまま惰力走行を続けるコースティングが頻繁に起こる。これにより燃費を稼いでいるわけだが、その頻度の高さや、エンジン停止状態から再始動する際のスムーズさなど、システムの完成度は高い。
205/55R16サイズのタイヤが装着されるゴルフeTSIアクティブは、マイルドな乗り心地を示し、走行時のフラットさや直進安定性もまずまず。ロードノイズが小さいのもうれしいところだ。
魅力が増したRライン
フォルクスワーゲンのRラインといえば、スポーティーな内外装が魅力のグレード。このゴルフeTSI Rラインの場合、専用のエクステリアに加えて、ヘッドレスト一体型のスポーツシートやタッチスイッチ搭載のレザーステアリングホイールなどが装着され、さらにスポーツサスペンションや、クイックなギア比を持つプログレッシブステアリングも装備するなど、これまで以上に濃い内容になっている。
1.5リッター直列4気筒エンジンは、マイルドハイブリッドシステムが組み合わされたことで1リッターエンジンにさらに輪をかけて、低回転から力強い加速をみせてくれる。アクセルペダルを強く踏み込めば3000rpm台半ばからさらに勢いを増し、レブリミットまで気持ちのいい加速が続く。
この1.5リッターには低負荷時に2気筒運転に変わる「アクティブシリンダーマネジメント」機構が備わり、アクセルペダルを軽く踏みながら巡航する場面などで、2気筒モードに切り替えることで燃料消費を抑えている。アクセルをオフにすれば1リッターと同様にコースティングを行い、これらをうまく利用すれば、かなりの低燃費が期待できそうだ。
Rラインは走りもスポーティーに
ゴルフeTSIアクティブがトーションビームリアサスペンションを搭載するのに対し、4リンクリアサスペンションを採用するゴルフeTSI Rラインは、クイックなステアリングや少し硬めのサスセッティングとあいまって、ハンドリングが軽快さを増し、動きにもキレがある。そのぶん乗り心地も少し硬めになるが、快適さは十分だ。
ところで、新型ゴルフでは先進運転支援システムの充実もウリのひとつだが、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープが全グレードに標準で搭載されているのはうれしいところ。この2つを組み合わせ、最大210km/hまで速度調整と車線維持を行う「トラベルアシスト」は、特に高速での渋滞時にドライバーの負担を軽減してくれる。車線を維持する際のステアリングへの介入も実に自然。ドライバーはステアリングホイールから手を放すことはできないものの、新型ではステアリングホイールに静電容量センサーを搭載しているので、軽くステアリングホイールに触れていれば確実にそれを検知してくれる。旧型ではステアリングホイールを握っていても、操作が少ないときに警告が発せられることがあり、それを面倒と思っていたのは私だけではないだろう。
ボディーサイズがほぼ旧型から変わっていないことから、後席やラゲッジスペースもほぼ同じレベルだが、このクラスの2ボックスカーとしては十分な広さ。走りや快適性、安全性など、コンパクトカーのベンチマークにふさわしい進化を遂げているのは確かで、今後登場予定のスポーツモデルやステーションワゴンにも期待できそうだ。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフeTSIアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1790×1475mm
ホイールベース:2620mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:110PS(81kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/2000-3000rpm
モーター最高出力:13PS(9.4kW)
モーター最大トルク:62N・m(6.3kgf・m)
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)205/55R16 91V(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンス)
燃費:18.6km/リッター(WLTCモード)
価格:312万5000円/テスト車=356万5000円
オプション装備:ディスカバープロパッケージ(19万8000円)/テクノロジーパッケージ(20万9000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万3000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1256km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
フォルクスワーゲン・ゴルフeTSI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1790×1475mm
ホイールベース:2620mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
モーター最高出力:13PS(9.4kW)
モーター最大トルク:62N・m(6.3kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R17 91W/(後)225/45R17 91W(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:17.3km/リッター(WLTCモード)
価格:375万5000円/テスト車=421万7000円
オプション装備:ボディーカラー<オリックスホワイトマザーオブパールエフェクト>(6万6000円)/ディスカバープロパッケージ(19万8000円)/テクノロジーパッケージ(16万5000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万3000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1468km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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