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第209回:国民車決戦

2021.06.21 カーマニア人間国宝への道 清水 草一

スイスポに強力なライバル出現

かつて私は当連載にて、「スズキの『スイフトスポーツ』を国民車に!」と書いた。極めて実用的なハッチバックボディーに、適度にパワフルな1.4リッター直4ターボを積み、ボディーは1t切りの超軽量、トランスミッションは6段MTと6段AT。MTはもちろんのこと、ATでも十分楽しいので、カーマニアから一般ピープルまで国民全員が満足できる! それでいてお値段は約200万円! 明日独裁者が現れて、「日本国民はスイスポ以外のクルマに乗ることを禁じる」と宣言しても「イエッサー!」と言える。そんなクルマである。

が、そんなスイスポに強力なライバルが現れていた。その名は「ヤリス」である(「GRヤリス」ではなくフツーのヤリス)。

「ヤリス ハイブリッド」の走りはすさまじくイイ。加速も十分だが燃費はまさに驚異的で、首都高をゆっくり流せばリッター40km近くいく。私はリッター38.8kmいきました。燃費計を見ているだけでウットリ。それでいてボディーはしっかり堅牢(けんろう)であり、足まわりはかなりスポーティー。狙ったラインを完璧にトレースできる。

ヤリスはスイスポと違って、第一義的に一般ピープル向けのクルマだが、カーマニアにも刺さりまくる! 旧「ヴィッツ」とは月とスッポン!

ただ、ヤリス ハイブリッドにはMTがない。カーマニア的にはそこが物足りないが、1.5リッターガソリン車に6MTが用意されている(ガソリンCVTはカーマニア的に論外)。先日、そちらにようやく試乗して、思わず絶叫してしまいました。

「メチャメチャいいじゃんかよ~~~コレ!」

真の国民車を(勝手に)決めるべく、あらためて夜の首都高で「スズキ・スイフトスポーツ」に試乗。ライバルとして立ちはだかるのは、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー2021に選ばれた「トヨタ・ヤリス」である。
真の国民車を(勝手に)決めるべく、あらためて夜の首都高で「スズキ・スイフトスポーツ」に試乗。ライバルとして立ちはだかるのは、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー2021に選ばれた「トヨタ・ヤリス」である。拡大
「ヤリス ハイブリッド」でいつもの首都高辰巳PAに出撃。最高出力91PS、最大トルク120N・mの新開発1.5リッター直3エンジンに、同80PS、同141N・mのモーターを組み合わせるハイブリッドパワーユニット(FF車)は、燃費の良さが自慢。しっかりしたボディーやスポーティーな足まわりもヤリスのセリングポイントだろう。
「ヤリス ハイブリッド」でいつもの首都高辰巳PAに出撃。最高出力91PS、最大トルク120N・mの新開発1.5リッター直3エンジンに、同80PS、同141N・mのモーターを組み合わせるハイブリッドパワーユニット(FF車)は、燃費の良さが自慢。しっかりしたボディーやスポーティーな足まわりもヤリスのセリングポイントだろう。拡大
「ヤリス ハイブリッド」の燃費は驚異的で、首都高をゆっくり流せばリッター40km近くはいく。この時の試乗では、リッター38.8kmを記録した。
「ヤリス ハイブリッド」の燃費は驚異的で、首都高をゆっくり流せばリッター40km近くはいく。この時の試乗では、リッター38.8kmを記録した。拡大
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オプション装備のコスパも最強

エンジンは下からトルクがあり、上まで何のストレスもなく気持ちよく回る。コロロロロ~という感じで、実に心地よく加速してくれるのである。これぞエンジニアが丹精込めてつくり込んだ快感エンジン! 6段MTの手応えにも適度な節度があり、専用開発の匂いがする。

「ヤリスX」(1.5リッター・6MT・2WD)で首都高を流せば、「これ以上のクルマは必要ない!」とすら思えてきた。こ、これはスイスポのライバルになりうる……。

以前、「GRヤリスRS」に乗った時は、「やっぱりスイスポ最高!」という結論になったが、GRじゃないフツーのヤリスなら、AT派はハイブリッド、MT派はこのXを選べばヨシ! 熱いぜ、ヤリス対スイスポの国民車対決!

そこで今回は、担当サクライ君にお願いして、あらためてスイスポに試乗することにした。目指すはもちろん、首都高辰巳PAだ。

夜8時。いつものようにサクライ君が、地味~な表情で迎えにきてくれた。乗り込んでエンジンをかけてビックリ。モニターの中で、わが家の車庫前のスイスポが回転している! こ、これは全方位モニター!?

サクライ:そうなんです。2020年5月の一部改良で周囲を立体的に360°確認できる3Dビューが付いたんですよ。
オレ:そうだったんだ! スッゲー!

以前乗ったのが3年半くらい前だったので全然知りませんでした。スッゲー!

オレ:こんなのが付いたってことは、さすがに値上がりしたんだろうね。
サクライ:かもしれませんね。

調べたら、スイスポの全方位モニター用カメラパッケージ装着車(6MT)は、207万0200円。ナシに対してたったの5万2800円しか高くな~い! スッゲー! このコスパ、相変わらずハンパねぇ!

最高出力120PS、最大トルク145N・mの1.5リッター直3エンジンに6段MTを組み合わせた「ヤリスX」(写真)にも日を変えて試乗。その走りにはメチャメチャ感動した。
最高出力120PS、最大トルク145N・mの1.5リッター直3エンジンに6段MTを組み合わせた「ヤリスX」(写真)にも日を変えて試乗。その走りにはメチャメチャ感動した。拡大
6段MTを搭載する「ヤリスX」のインテリア。ヤリスのインテリアは安っぽく質感もイマイチなれど、エクステリアは大いに個性的。デビュー当時は“わけあり毒虫”呼ばわりしていたが、あと数年たてば目が慣れるのだろうか。
6段MTを搭載する「ヤリスX」のインテリア。ヤリスのインテリアは安っぽく質感もイマイチなれど、エクステリアは大いに個性的。デビュー当時は“わけあり毒虫”呼ばわりしていたが、あと数年たてば目が慣れるのだろうか。拡大
現行型「スイフトスポーツ」は、2017年9月に登場。新型プラットフォームの採用やワイド化され3ナンバーとなったボディーなどが話題を呼んだ。2020年5月に一部改良を実施し、安全装備の充実などが図られている。
現行型「スイフトスポーツ」は、2017年9月に登場。新型プラットフォームの採用やワイド化され3ナンバーとなったボディーなどが話題を呼んだ。2020年5月に一部改良を実施し、安全装備の充実などが図られている。拡大
自宅ガレージ付近の路上で全方位モニターを試した様子。2020年5月の一部改良で、周囲を立体的に360°確認できる3Dビュー機能も加わった。全方位モニター用カメラパッケージはオプション価格5万2800円だが、16万5605円の8インチナビの装着が必要となる。
自宅ガレージ付近の路上で全方位モニターを試した様子。2020年5月の一部改良で、周囲を立体的に360°確認できる3Dビュー機能も加わった。全方位モニター用カメラパッケージはオプション価格5万2800円だが、16万5605円の8インチナビの装着が必要となる。拡大

しっかりクロスレシオ

首都高に乗り入れれば、それはまさに、「素晴らしきかなスイスポ」であった。

ヤリスX(1.5リッター・6MT・2WD)との比較で言えば、全域でラクチンだ。ヤリスの1.5リッター直3自然吸気エンジンも十分にトルクフルだが、さすがに2000rpmくらいは回しておきたいフィールだった。しかしスイスポなら1500rpmでオッケー! 夜の首都高だと、6速に入れっぱなしで全部走れてしまう! ヤリスでは細かくギアチェンジしまくってそれが楽しかったってのはあるが、中高年的にはスイスポのターボのトルクがゼイタクでステキ!

とは言うものの、スイスポは決して旦那グルマではない。6速での100km/h巡行時のエンジン回転は2700rpmあたり。しっかりクロスレシオなのである! さすがスイスポ、手抜かりはないぜ!

6速に入れっぱで夜の首都高を楽しみつつ、辰巳PAに到着。ふと見ると、ウリふたつの黄色いスイスポが止まっていた! しかも関西のナンバー! スバラシイ! オーナーさんと話したかったけど見当たらず。無念。

オレ:それにしてもスイスポって、黄色が多いよね。
サクライ:黄色以外、イメージにないですね。
オレ:黄色率がこんなに高いクルマって、スイスポだけだろうね。
サクライ:8割くらい黄色じゃないですか?

中古車サイトで検索したところ、黄色は372台中たったの74台で、一番多いのはシルバーでした! シルバーのスイスポなんて1台も見たことない気がするのにぃ! 2番目は白、黄色はようやく3番目だった!

しかし、3番でも十分スゴイ。とにかくスイスポはスゴイ。買うなら全方位モニター付きにしよっと。ACCも付いてるヨ!

そういえば、6MTのヤリスXにもACCが付いていたが、MTのACCってだけで、カーマニア的にちょっと感動。ACC作動中にギアチェンジもできるんだヨ!

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)

サイズよし、デザインよし、居住性よし、インテリアよしの「スイフトスポーツ」。トルクがあって、首都高では6速に入れっぱなしでもOKだ。全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールや車線逸脱抑制機能、標識認識機能といった運転支援システムが標準装備されて約200万円という価格設定はスゴイ。
サイズよし、デザインよし、居住性よし、インテリアよしの「スイフトスポーツ」。トルクがあって、首都高では6速に入れっぱなしでもOKだ。全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールや車線逸脱抑制機能、標識認識機能といった運転支援システムが標準装備されて約200万円という価格設定はスゴイ。拡大
最高出力140PS、最大トルク230N・mを発生する1.4リッター直4ターボエンジン。今回の試乗車は車両本体価格201万7400円の6段MT車だったが、同208万8900円の6段AT車もラインナップしている。
最高出力140PS、最大トルク230N・mを発生する1.4リッター直4ターボエンジン。今回の試乗車は車両本体価格201万7400円の6段MT車だったが、同208万8900円の6段AT車もラインナップしている。拡大
首都高辰巳PAで、関西方面のナンバーを付けた黄色の「スイフトスポーツ」(写真右)を発見。試乗車のスイスポ(写真左)を並べ、夜の辰巳PAらしく2台で勝手にオフ会をイメージしてみた。
首都高辰巳PAで、関西方面のナンバーを付けた黄色の「スイフトスポーツ」(写真右)を発見。試乗車のスイスポ(写真左)を並べ、夜の辰巳PAらしく2台で勝手にオフ会をイメージしてみた。拡大
「スイフトスポーツ」のインテリア。6段MTながら、ACC付き。ACCの作動中でもギアチェンジできるのが、カーマニア的には感動モノ。
「スイフトスポーツ」のインテリア。6段MTながら、ACC付き。ACCの作動中でもギアチェンジできるのが、カーマニア的には感動モノ。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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