BMW X7 xDrive40d Mスポーツ(4WD/8AT)
こう見えて家族思い 2021.07.27 試乗記 「BMW X7」に、3リッター直6ディーゼルエンジンと48Vのマイルドハイブリッド機構を組み合わせた「xDrive40d」が登場。新しいパワートレインを積んだBMWの3列・フルサイズSUVは、そのコワモテとは裏腹に、フレンドリーで家族思いなクルマに仕上がっていた。オーソドックスで実用的
反省しなければならないことがいくつかある。BMW X7というクルマについて、間違った先入観を持っていたのだ。試乗車を見て拍子抜けしたのは、恐れていたほど大きくなかったから。街なかでBMWのSUVに遭遇すると、いつもその立派な体格にたじろいでいた。「X1」や「X3」でも結構な迫力だったわけで、フルサイズSUVのX7はとんでもない大きさだと思い込んでいたのだ。
数字を見ると、確かに規格外である。全長は5m超えで、全幅はちょうど2m。日本の道路事情を考慮したとは思えず、コインパーキングでは駐車に苦労するだろう。ただ、それでも全幅は弟分の「X5」より5mm狭い。ずんぐりむっくりではなく、ディメンションとしてはスレンダーなのだ。
BMWのSUVは“SAV”(Sport Activity Vehicle )と“SAC”(Sports Activity Coupe)の2種類があり、奇数の名を持つX7はSAV。偶数のSACがクーペライクなフォルムを持つのに対し、SAVは角が張ったオーソドックスなスタイルだ。X7はルーフが後方に向かって下がることはなく、水平基調を保つ。見た目が立派なだけでなく、居住性や積載性を重視した実用性の高いモデルである。
大ぶりなキドニーグリルと薄型ヘッドランプの組み合わせは、最近のBMWに共通するデザインだ。他メーカーがグリルの巨大化を一段落させているように見えるタイミングで、あえて逆を行く攻めの姿勢である。主張の強さは威圧的にも見えるようで、「X4」に乗った時は前を行くクルマに次々に道を譲られて閉口した。でも、今回そういったことは一切なし。X7は全高も高くて前面投影面積が大きいため、グリルの大きさが目立たなかったのだろうか。
快適性を優先した走り
着座位置が高いうえにボディーがボクシーだから、運転席からの見切りは悪くない。住宅地の路地を通りたいとは思わないが、普通の道なら不安感を抱かずに走ることができる。ただし、最小回転半径は6.2m。ホイールベースは3mを超えているのだ。よほど広い道でなければ、Uターンはしないほうがいい。
ホイールベースが長いことは、乗り心地にはプラスに働く。特に高速道路では、まさに巡航という言葉がふさわしいなめらかな走りを提供する。エアサスペンションはオートレベリング機能付きで、荷重の大きさにかかわらず車高を一定に保つ。さらに快適性を高めているのが「エグゼクティブドライブプロ」というサスペンションコントロールシステム。ステレオカメラで前方の路面状況を見極め、ダンパーの働きを調整するというのだ。
荒れた路面の道も走ってみたが、凹凸を巧みに吸収して振動を抑え込む。これほどまでに快適性が高いとは想像していなかった。前に試乗したBMWのSUVは、いくぶん硬い乗り心地だったと記憶している。俊敏な走りを実現することが優先されていて、快適性はその次という印象だった。X7は上質でなめらかな走りに重きを置いているように感じる。
だからといって、走りが鈍重だということではない。むしろ、逆だ。ハンドリングは意外なほど軽快である。大きくて重いSUVであることをほとんど感じさせない。それは、シャープであるということとも違う。X4はワインディングロードでも機敏な動きを見せていたが、X7はいい意味で普通の走り。好んでスポーツ走行をしようとは思わなかった。
地味に働くマイルドハイブリッド
エンジンは、3リッター直6ディーゼルターボ。新たに48Vマイルドハイブリッドシステムが採用されている。BMWもご多分に漏れず電動化を加速させており、他のヨーロッパメーカーと同様に48Vのシステムを積極的に取り入れている。スタータージェネレーターとバッテリーを組み合わせ、制動エネルギーを電力に変換して蓄電。モーターは電気駆動システムとしても作動する。
エンジンの最高出力が340PSでさらに電気の力も加わるのだ。パワーは十分、と言いたいところだが、車両重量は2.5tを超えている。爆発的な加速を期待するのは酷である。運転していて、モーターの恩恵を明確に感じることはできなかった。あくまでマイルドハイブリッドであり、電気ターボのような働きはない。見えないところで地味に機能し、燃費には貢献しているようだ。300kmほど走って約10km/リッターという数字だったから、重量級としては健闘していると言っていい。
発進でもたつくようなことはなく、低速でのコントロールは容易だ。目覚ましい走りではなくても、ジェントルな動きはこのクルマに似つかわしいように思える。オーセンティックなSUVとディーゼルの悠揚たる感覚の組み合わせは相性がいい。X7にもガソリンエンジンは用意されているが、ダイレクト感を味わいたいならX4などのSACを選んだほうがいいと思う。
「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援システム」が備えられているが、作動条件の渋滞に出会わなかったので試すことはできなかった。一方、通常のアダプティブクルーズコントロール(ACC)は出来のよさを実感。レーンキープ機能はかなり強力で、横から手を出してぐいっとハンドルをつかまれたような感覚である。
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使い勝手のいい3列目シート
試乗したX7は6人乗り(7人乗り仕様もある)だった。3列目シートがあるのだ。X5にも3列シート仕様が用意されているが、全長を考えればX7が圧倒的に有利なのは間違いない。実際に乗り込んでみると、想像以上に広いスペースが確保されていた。着座しても、いわゆる体育座りにはならない。ニースペース、ヘッドルームはともに十分で、閉塞(へいそく)感は薄かった。
シートの折り畳みは、荷室側からのボタン操作で行える。ヘッドレストは手動だが、面倒というほどではない。乗り込みも比較的楽だった。同クラスのライバルと比べて、実用的で使いやすい。3列シートのSUVは増えてきたが、お座なりなつくりのものもあった。実際には2列で使うことがほとんどだから、エマージェンシーシートでいいという考え方もある。一方で、X7は3列目にも最大限の配慮を示した。ここまできちんとつくり込んできたことは、素直に評価すべきだろう。
2列目の快適さは言うまでもない。試乗車はオプションのコンフォートシートだったので、前後に加えて左右にも余裕がある。パノラマガラスサンルーフからの眺めも心地よい。運転するのも楽しいが、X7は2列目でゆったりくつろぐのも魅力的である。
試乗して、先入観が覆された。BMWのフラッグシップSUVということで、ハンドリングはいいが乗り心地は期待できないと思っていたのだ。大きくて重いから、燃費は悪いに違いないとも考えていた。“俺さまキャラ”だと勘違いしていたが、実際にはまったく違う。X7はラグジュアリーだがユーザーフレンドリーで、気負うことなく普通に乗れる。なんなら、ファミリーカーとしても使えそうだ。車両価格を考えると、ユーザーは限られてしまうと思うけれど。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
BMW X7 xDrive40d Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5165×2000×1835mm
ホイールベース:3105mm
車重:2570kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:340PS(250kW)/4400rpm
エンジン最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1750-2250rpm
モーター最高出力:11PS(8kW)/1万rpm
モーター最大トルク:53N・m(5.4kgf・m)/500rpm
タイヤ:(前)285/45R21 113Y/(後)285/45R21 113Y(ピレリPゼロ PZ4)※ランフラットタイヤ
燃費:11.9km/リッター(WLTCモード)/14.3km/リッター(JC08モード)
価格:1286万円/テスト車=1520万8000円
オプション装備:ボディーカラー<ミネラルホワイト>(11万円)/BMW Individualフルレザーメリノ アイボリーホワイト/ミッドナイトブルー(50万1000円)/エグゼクティブドライブプロフェッショナル+インテグレイテッドアクティブステアリング<前後輪統合制御ステアリングシステム>(35万6000円)/BMW Individualピアノフィニッシュブラックインテリアトリム(6万2000円)/5ゾーンオートマチックエアコンディショナー(13万1000円)/2列目コンフォートシート<6人乗り>(9万1000円)/スカイラウンジパノラマガラスサンルーフ(11万7000円)/リアシートエンターテインメントシステム<プロフェッショナル>(36万3000円)/Bowers&Wilkinsダイヤモンドサラウンドサウンドシステム(61万7000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1670km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:317.7km
使用燃料:32.2リッター(軽油)
参考燃費:9.9km/リッター(満タン法)/10.8km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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