BMW X5 xDrive35d(4WD/8AT)
その次のために 2021.08.02 試乗記 BMW自慢の直6ディーゼルに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせ、“電動化”された「X5」のエントリーモデルに試乗。ドライビングダイナミクスと燃費効率がいずれも向上したとうたわれるが、果たしてその走りやいかに。プレミアムSUVブームの火付け役
キャンバスの大きさゆえのデザイン的な自由度の高さや、高いアイポイントがもたらす運転視界の広さ、さらに、ラゲッジスペースを確保しやすいことによる大容量バッテリー搭載時の優位性=電動化のたやすさ、そして何よりも「高価でも売れる」ことによる利益率の高さなどなどから、最近では“売るほう”にも“買うほう”にもこぞって人気なのが、SUVと呼ばれるモデルたち。
そんなSUVに対してSAV(スポーツ・アクティビティー・ビークル)なる造語を当てはめ、「ウチのはそんじょそこらのモノとは違う」と独自性の高さをアピールしたBMWも、結局のところ“そうしたカテゴリー”への依存度を急速に高めたという点では、「同じ穴のむじな」ということか。
実際、最新のラインナップを眺めてみれば、「1」から「7」までのシリーズモデルを隙間なくズラリ並べるにとどまらず、新たなるフラッグシップとなる「8」の設定も確実視され、さらに盤石な構えへと挑む姿勢をあらわにするのがBMW Xシリーズの戦略だ。
ちなみにこのブランドでは、やはり昨今流行のクーペ流儀のルーフラインを備える作品など、より個性的なスタイリングを追求するモデルは、SAC(スポーツ・アクティビティー・クーペ)とまた新たな造語で区別している。
こうして、どのカテゴリーにおいても「ほかと同じはイヤ」と強い自我を通そうとするのは、BMWならではの面白さ。2000年に初代モデルが誕生したX5も、このブランドが「独自のカテゴリー」とうたうSAV/SACの原点という存在である。
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48Vマイルドハイブリッドで“電動化”
4代目となる現行X5のデビューは2018年の末で、日本での発売は翌2019年の2月。「となるとマイナーチェンジにはまだ早いし、バリエーションの追加かな?」と、編集部から今回の試乗依頼を受けた時点でそう感じられた最新X5ならではのトピックとは、実は今のご時世の欧州車には「あるある」のネタともいえる、“電動化”というニュースであった。
「BMW X5、X6、X7のディーゼルモデルに、48Vマイルドハイブリッドテクノロジーを搭載」というタイトルで、2021年2月にインポーターから発せられたプレスリリースがそれ。要はそんなニューモデルの登場を見逃していたことが前出の疑問につながったわけだが、内容自体も「搭載テクノロジーは48Vスタータージェネレーターとそれによって発電された電気を蓄積する追加のバッテリーで構成され……エンジンの負荷を軽減するとともに効率を最適化し、燃費はWLTCモードで最大1.1km/リッター向上……」と、モデル紹介を詳しく行うでもなく、いささか淡泊である。
そもそもこれだけではスタータージェネレーターの方式やバッテリーの詳細もわからず、どうにも情報が足りない。それならば……と、実車と対面の後にまず取説のページをめくることから始まったのが、今回のテストドライブだった。ところが、当初救世主と思えたそんな冊子では“世界中のX5”の仕様が取り上げられ、あらゆるオプションの内容にも触れられていて、これがまた何とも複雑で難儀するアイテムだったのだ。誤算である。
それでもハイブリッドシステムのバッテリーが、エンジンルームに向かって右奥のカウル際に搭載されているのを突き止め、そこには「LG Chem Li-Ion Battery 10Ah 440Wh 44V」とデータが記されたシールが貼られていることを発見した。そこでようやくにして、テストドライブへと出発することになったのだった。
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実用性の低い3列目シート
ベースグレードとBMWお得意の“Mスポーツ”の2グレードで構成される「X5 xDrive35d」だが、今回ステアリングを握った前者は、日本に導入されるX5シリーズで唯一本体価格が1000万円を切る存在となる。
もっともそこに、電動パノラマガラスサンルーフや、なぜか3列目シートやエアサスペンションがパッケージ化されたセットオプションなど、総額約170万円分の多彩な注文装備が加えられたことで、総額では1100万円をオーバーと、結局のところなかなかのお値段だったのが今回の試乗車だ。
ちなみに、3列目シートを採用するとはいえ、本来はラゲッジスペースである空間を一部切り取って据えつけられたそれはあくまでもテンポラリーなデザインだ。到底大人がくつろげるような空間ではないのはある意味予想通りで、2列目シート全体が前方へと傾く電動のウオークイン機構が備わるとはいえ、乗降性もすこぶるタイト。そのスローモーな動きもイラつきの原因になりそうで、明快な“末席”どころか小さな子供でも嫌がりそうと言わざるを得ないのが、X5の3列目ポジションである。
一方、それとは裏腹に2列目はゆったりしたつくりで、フロアもフラット。膝元に障害物も無いことから、たとえ横並び3人乗車時のセンター席でもさほどの悲壮感は抱かずに済みそうな仕上がりだ。
さらに、なにかにつけて「スポーティー」というフレーズが寄り添いそうなBMW車ではあるものの、さすがに高い位置にアップライトな姿勢で座るがゆえに、ドライビングポジションはスポーティーという感覚からはそれなりに遠いものであった。同時に「BMWならあって当然」と思っていたパドルシフトが用意されていないのも、ちょっと意外と思えるポイントだった。
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BMWの直6に電気の力が加わると?
ベース状態で2260kgという車両重量は、さまざまなアイテムを上乗せ装着したテスト車の状態では、100kg以上がプラスされる。それでも実際の加速感に少しも不足を感じなかったのは、やはり650N・mという“巨大なトルク”をわずか1500rpmから発するという直6エンジンの実力があってこそだろう。
その一方で、“外科手術”によってアドオンされた48Vモーターが発生する最高出力はわずかに8kW≒11PSにすぎない。正直、アシスト感などは明確には体感できなかったが、いずれにしてもクルマ全体としての動力性能は十分満足レベルに達している。
直6ユニットの音質からディーゼルであるとの認識は可能だが、キャビンの静粛性そのものはすこぶる高い。シーンによっては、むしろ空調のブロアー音のほうが気にかかったほどである。
アイドリングストップ状態から復帰に至る所作は、クラシカルな通常のスターターモーターを用いるモデルの挙動よりもずっとしとやか。スタータージェネレーターによって“プルン”と控えめに始動する。ユーザーにとって48Vマイルドハイブリッドシステムの恩恵を最も顕著に実感できるのは、実はこの瞬間であるかもしれないと思った。
変化の時代に求められる力
さまざまな走行モードを試した結果、最もリーズナブルかつユースフルな乗り味を提供してくれると感じたのは、取説で「バランス重視の走行モード。ナビゲーションシステムにより、この先の道路形状が考慮されます」と解説される「ADAPTIVE」のポジション。「BMW車なんだから」とステレオタイプな俊敏性への期待から「SPORT」あるいは「SPORT PLUS」を選んでも、乗り味に粗っぽさが加わるのみで、あまりいいことは起きなかったというのが個人的な感想だ。
「ECO PRO」モードにおいて「約25km/h~160km/hの範囲でエンジンの作動を止め、惰性で走行を続ける」という、いわゆるコースティングを行うのは48Vマイルドハイブリッドシステムを採用するモデルならでは。頻繁に繰り返すエンジンの休止と稼働が、まったく察知できないスムーズさには感心させられることになった。
そんな涙ぐましいまでの制御が行われつつも、今回の試乗における満タン法による燃費実測値が11.4km/リッターだったという結果をどう解釈するべきか。思い通りには動いてくれるが、されど特別な軽快感を受けるまでではないというフットワークの印象ともども、BMWというブランドにこだわって数あるSUVのなかからあえてこのモデルをチョイスしたという人の評価は分かれるのではないだろうか。
ちなみに電動化以前の同型モデルを持つ人から、「これは買い替えの対象になるか?」と問われれば、そこでの答えはやはり「NO!」。そんな結果は、目前に突きつけられた厳しい課題をまずクリアする必要がある、今の時代を生き抜くモデルの宿命なのかもしれない。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
BMW X5 xDrive35d
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4935×2005×1770mm
ホイールベース:2975mm
車重:2260kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:286PS(210kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/1500-2500rpm
モーター最高出力:11PS(8kW)/1万rpm
モーター最大トルク:35N・m(3.6kgf・m)/2500rpm
タイヤ:(前)265/50R19 110W/(後)265/50R19 110W(ピレリPゼロ)
燃費:12.4km/リッター(WLTCモード)
価格:945万円/テスト車=1114万8000円
オプション装備:メタリックカラー<ファイトニックブルー>(10万円)/ヴァーネスカレザーシート<キャンベラベージュ/ブラック>(22万6000円)/サードシートローパッケージ<4輪アダプティブエアサスペンション、サードローシート、ラゲッジコンパートメントパッケージ>(38万円)/プラスパッケージ<4ゾーンオートマチックエアコンディショナー、保冷・保温機能付きカップホルダー、ソフトクローズドア>(15万円)/ストライプブラウンファインウッドインテリアトリム(2万8000円)/アンビエントエアパッケージ(4万4000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(26万円)/リアサイドウィンドウローラーブラインド(4万1000円)/フロントランバーサポート(3万7000円)/リアエンターテインメントシステムプロフェッショナル(36万3000円)/harman/kardonサラウンドサウンドシステム(6万9000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1459km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:316.2km
使用燃料:27.6リッター(軽油)
参考燃費:11.4km/リッター(満タン法)/13.5km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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