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ホンダ・シビックLXプロトタイプ(FF/6MT)/シビックEXプロトタイプ(FF/CVT)【試乗記】

乗るほどに染みる 2021.08.08 試乗記 フルモデルチェンジで11代目となった、ホンダのビッグネーム「シビック」に試乗。“爽快CIVIC”をコンセプトに掲げる新型は、素性の良さがしっかりと感じられる、洗練度の高い一台に仕上がっていた。

世界を相手に半世紀

シビックは2022年、誕生から半世紀の節目を迎える。生まれ年の1972年に一体何があったのかと調べてみたら、あさま山荘事件に田中角栄内閣誕生、上野動物園にパンダのカンカンとランランが来園とか、『太陽にほえろ!』が放送開始など、へぇーっと思うような出来事が連ねられていた。ちなみにマツコ・デラックスや堀江貴文はシビックと同じ歳のようだ。

それほどの長きにわたってつくり続けられてくると、同じシビックという名前であっても、人それぞれのシビックがあっても全然おかしくはない。例えば僕にとってど真ん中のシビックは「ZC」や「B16」を積んだ“ワンダー”から“スポーツ”あたりになるけれども、僕よりも上の世代なら富士のマイナーツーリングを走る初代に思いをはせるのかもしれないし、下の世代ならテンロクを卒業した「EP」から「FD2」の「タイプR」を推したくなるだろう。

販売される国と地域は170以上。世界の10拠点で生産され、年間約68万台を販売する。トヨタで言うなら「カローラ」に相当するグローバルカーとなったシビックは、年間販売600万台を目指し仕向け地での企画や生産を重視する6極体制のなか、母国である日本市場を留守にすることもあった。いや、正確にはタイプR専用銘柄の如きものというべきだろうか。

が、その6極体制が開発の疲弊や生産能力余剰といったひずみを生み、経営戦略が見直されるなかで、シビックは再び日本に戻ってきた。それが直近まで販売されていた10代目だ。バリエーションは寄居工場で製造される「セダン」、先日操業を停止した英スウィンドン工場で製造される「ハッチバック」およびタイプRとなる。

2021年9月3日に発売される、新型「ホンダ・シビック」(写真右)。今回はそれに先立ち、ホンダのテストコースにおいて、先代モデル(同左)と乗り比べつつプロトタイプに試乗した。
2021年9月3日に発売される、新型「ホンダ・シビック」(写真右)。今回はそれに先立ち、ホンダのテストコースにおいて、先代モデル(同左)と乗り比べつつプロトタイプに試乗した。拡大
海外ではセダンも展開される新型「シビック」だが、国内ではまず5ドアハッチバックのみラインナップされる。
海外ではセダンも展開される新型「シビック」だが、国内ではまず5ドアハッチバックのみラインナップされる。拡大
コースへと向かう、先代モデル(写真手前)とニューモデル(同奥)。同じハッチバックながら、リアのデザインは大きく異なる。
コースへと向かう、先代モデル(写真手前)とニューモデル(同奥)。同じハッチバックながら、リアのデザインは大きく異なる。拡大
フロントまわりのデザインは、精悍(せいかん)さと親しみやすさがテーマ。軽量なアルミ製ボンネットフードを採用するなど、機能性も追求されている。
フロントまわりのデザインは、精悍(せいかん)さと親しみやすさがテーマ。軽量なアルミ製ボンネットフードを採用するなど、機能性も追求されている。拡大

若い人たちもターゲット

こと日本では、ニュルを舞台に派手なドンパチを繰り広げていたタイプRばかりがクローズアップされがちだが、実は10代目シビック、普通のモデルも他銘柄に比べると30代以下の若いお客さんが多く、ハッチバックの約3割がMTと、興味深い動向が表れていたという。シビックという名前に対して先入観のないユーザー層が、純粋に肌なじみの良さで選んでいるとすれば、それはホンダにとってもありがたい話だろう。

それを受けて……というわけでもないだろうが、11代目となる新型シビックのターゲットは“ジェネレーションZ”と呼ばれる世代、つまり1990年代中盤から2000年代中盤に生まれた若者たちだ。生まれた時からMac&Windowsがあり、物心ついたころには携帯電話がネットにつながり写メを送受信していたデジタルネイティブ……といっても、新しいシビックはそっち方面に特別な仕掛けを用意しているわけではない。ジェネレーションZが抱く高い社会意識や、それがもたらす「シンプルで上質なものを長く使う」という価値観、そういうところに響くものをという狙いで開発されている。車型はハッチバックのみ。日本での販売分は寄居工場が生産する。

デザインは前型に対して無駄なアクセント要素が大幅に整理され、水平や垂直といったセオリーをきちんと踏まえた形状となっている。路面と平行になるように引かれたベルトライン、根元を50mm後方へ引いたAピラーや高さを25mm落としたフード後端などによって実現した自然な視界特性や高い視認性は新型の大きな美点だ。車体の厚み感を抑える役割も果たしているグラッシーなキャビンは3代目、つまりワンダーシビックから着想を得たものだという。また、すっきりした外観印象には、前型ではスポイラー的なアクセントでカバーしていたリアゲートヒンジを小型化してフラッシュサーフェス化したことも寄与している。

視界の良さを意識しつつすっきりとデザインされたコックピットまわり。エアコンの吹き出し口は、インストゥルメントパネルの内側におさめられている。
視界の良さを意識しつつすっきりとデザインされたコックピットまわり。エアコンの吹き出し口は、インストゥルメントパネルの内側におさめられている。拡大
上級グレード「EX」のシートは、プライムスムースと呼ばれる合皮とウルトラスエードのコンビタイプ。「LX」のものはプライムスムース×ファブリックとなる。
上級グレード「EX」のシートは、プライムスムースと呼ばれる合皮とウルトラスエードのコンビタイプ。「LX」のものはプライムスムース×ファブリックとなる。拡大
新型「シビック」のトランスミッションは、CVTのほかに6段MTも選べる。シフトレバー(写真)のショートストローク化と高剛性化による、スポーティーな操作感がウリ。
新型「シビック」のトランスミッションは、CVTのほかに6段MTも選べる。シフトレバー(写真)のショートストローク化と高剛性化による、スポーティーな操作感がウリ。拡大
後席については、先代比で前席との座席間距離が35mm延長され、快適性の向上が図られている。
後席については、先代比で前席との座席間距離が35mm延長され、快適性の向上が図られている。拡大
大きな開口部を持つ荷室は、5人乗車時で容量452リッター(「LX」の場合。「EX」は446リッター)。後席の背もたれを倒すことでキャパシティーを拡大できる。
大きな開口部を持つ荷室は、5人乗車時で容量452リッター(「LX」の場合。「EX」は446リッター)。後席の背もたれを倒すことでキャパシティーを拡大できる。拡大

先代との差は歴然

アーキテクチャーは完全刷新された前型からのそれを継承しているが、ディメンションは見直され、ホイールベースは35mm、リアトレッドは12mm拡大。アルミ材やハイテン材などの材料置換による軽量化と並行して、フロントカウル部やリアバルクヘッド部の環状構造化や部位補強、構造用接着剤使用長を従来比で9.5倍に増加するなどして、前型に対して19%のねじり剛性向上を図った。

加えてシャシー部はブッシュ類の全面見直しやフロントアルミサブフレームの高剛性化、前後ハブベアリングやボールジョイントの低フリクション化など細部を全面的に見直している。車内の快適性を重視して遮音にも気遣われているが、制振材の大量投入に頼ることなく、エンジンマウントの剛性向上や制振用のトルクロッド採用、ダッシュボード下部の剛性向上など振動伝達特性を根本から見直していることも特徴だ。

エンジンは前型と同じ「L15C」型の1.5リッター4気筒直噴ターボだが、骨格から吸排気、制御と全面的なリファインによりMTでもCVTでもアウトプットは最高出力182PS、最大トルク240N・mに統一された。加えて、出力特性はより低回転域からトルクが立ち上がり、より高回転域までパワーの伸びが続く性格へと改善されている。CVTはトルコンの性能向上やアッブダウンシフト制御の変更により、ラバー感を抑え回転上下にリニアに応答するフィーリングを実現。MTはギアレシオを見直しワイド化するとともに、縦側の動きを5mm縮小、横ピッチもタイト化するなど現行タイプRと同等のシフトフィールとしている。

「インプレッサ」やカローラ、「マツダ3」と日本のCセグメントの動的質感がぐんぐん上がるなか、先代のシビックはそれらと十分伍(ご)せるか、場合によってはそれ以上の動的質感を誇っていた。実感としては今でも十分ワールドクラスで勝負ができる水準にあると思う。

が、先代から新型へと乗り換えてみると、やはりその差は歴然だった。走り始めからの静粛性の高さとともに伝わってくるのは、入力減衰の濁りのなさや精度の高い転がり感だ。骨格の高剛性化や軸部の再チューニングが効いているのだろう。操舵フィールについても、応答確度や情報密度といった面で確かな向上がみられる。

先代に対して、全長は30mm、ホイールベースは35mm延長。ショルダーラインを低めにとることで、後席における開放感にも配慮した。
先代に対して、全長は30mm、ホイールベースは35mm延長。ショルダーラインを低めにとることで、後席における開放感にも配慮した。拡大
エンジンサウンドにもこだわったという1.5リッター直4ターボエンジン。燃料はハイオク指定で、燃費はWLTCモードで16.3km/リッター。
エンジンサウンドにもこだわったという1.5リッター直4ターボエンジン。燃料はハイオク指定で、燃費はWLTCモードで16.3km/リッター。拡大
「EX」グレードの「10.2インチ デジタルグラフィックメーター」。「LX」には7インチサイズのものが搭載される。
「EX」グレードの「10.2インチ デジタルグラフィックメーター」。「LX」には7インチサイズのものが搭載される。拡大
CVT車のドライブモードセレクター。「ECON」「ノーマル」「スポーツ」の3モードが選べる。
CVT車のドライブモードセレクター。「ECON」「ノーマル」「スポーツ」の3モードが選べる。拡大
操舵の応答性や路面からのインフォメーションについては、先代よりも新型のほうが明らかに上。静粛性の高さも印象的だった。
操舵の応答性や路面からのインフォメーションについては、先代よりも新型のほうが明らかに上。静粛性の高さも印象的だった。拡大

総じてスマートな優等生

今回は発売前の最終プロトタイプという位置づけもあって、試乗はテストコースに限られたため、人工的な段差や舗装の荒れなどが多い実路での乗り心地は推測するしかない。が、微小入力の受け流しの良さや大入力のダンピングの収束感をみるに、かなり期待してもよさそうだ。現行「フィット」から展開されている新たなフレーム設計によって面支持力が向上したシートの掛け心地も他銘柄に対する美点となるだろう。

ハンドリングは限界値そのものも確実に高めているが、むしろパワートレインを含めた応答の機敏さや、定常的なロール推移や接地変化の少なさといった安心面での進化には感心させられた。トップエンドまで気持ちよく吹け上がるエンジンや、細かなアクセルのオンオフにもしっかり追従するCVTの反応の良さも、新型の走りの気持ちよさに確実にプラスとなっている。MTはちょっと操作のトラベルを攻めすぎた感はあるものの、3ペダルを駆使して走るに値するスポーティーさもまた、シビックの個性といえるだろう。

「インサイト」「アコード」「ヴェゼル」そしてフィット……と、実は昨今のホンダ車は、走りの総合力が相当に高い。一芸に秀でれば乗り心地なんか二の次でよし、ミニバンでも鷹栖全開アブソルート的な昔のはっちゃけイメージには程遠い、その良識的なまとめ上げはマツダのようでもある。でもマツダのような哲学語りがなさすぎて気づいてもらえていないのが現状だ。あるいは僕のようなオッサン世代から、ホンダがそんなにお利口でどうすると窘(たしな)められることを嫌っているのだろうか。ともあれ、ホンダというブランドの立ち位置の難しさを察してしまう。

新型シビックも然(しか)りだが、ひたすら謎だったデザインがフィットやヴェゼルとの連続性が感じられるすっきりしたものとなり、清廉ぶりがイメージしやすくなったのも朗報だろう。走りは間違いなく今の世界水準にあり、運転しやすさや扱いやすさはライバルを上回る。車格は全長側に大きいが、その利は後席や荷室にきちんともたらされており、Cセグメント+αの価値もある。あるべきものがあるべきところにある内装など、その実直さは乗るほどに染みるのではないだろうか。ちなみに2022年はハイブリッドとタイプRも加わる予定というが、意外や本丸はこのコンベンショナルなグレードかなとも、個人的には思っている。

(文=渡辺敏史/写真=本田技研工業、webCG/編集=関 顕也)

新型「シビック」は全グレードが「アジャイルハンドリングアシスト」を搭載。コーナリング時にブレーキを制御し、ステアリング切り始めの回頭性や旋回中のライントレース性を向上させる。
新型「シビック」は全グレードが「アジャイルハンドリングアシスト」を搭載。コーナリング時にブレーキを制御し、ステアリング切り始めの回頭性や旋回中のライントレース性を向上させる。拡大
サスペンションの形式は、フロントがマクファーソンストラット式で、リアがマルチリンク式。タイヤサイズはいずれのグレードも235/40R18となっている。
サスペンションの形式は、フロントがマクファーソンストラット式で、リアがマルチリンク式。タイヤサイズはいずれのグレードも235/40R18となっている。拡大
安全装備については、最新世代の運転支援システム「Honda SENSING」を搭載。周囲の眩惑(げんわく)を防ぎつつ遠方視界が確保できるライティングシステムも備わる。
安全装備については、最新世代の運転支援システム「Honda SENSING」を搭載。周囲の眩惑(げんわく)を防ぎつつ遠方視界が確保できるライティングシステムも備わる。拡大
センターモニターは、9インチの静電タッチパネル式。最新の通信サービス「Honda CONNECT」に対応する。
センターモニターは、9インチの静電タッチパネル式。最新の通信サービス「Honda CONNECT」に対応する。拡大
スマートフォンの非接触充電トレーは上級グレード「EX」のみに備わる。
スマートフォンの非接触充電トレーは上級グレード「EX」のみに備わる。拡大
ラインナップについては、ハイブリッドモデルと、高性能モデル「タイプR」が2022年に追加される予定だ。
ラインナップについては、ハイブリッドモデルと、高性能モデル「タイプR」が2022年に追加される予定だ。拡大
ホンダ・シビックLXプロトタイプ
ホンダ・シビックLXプロトタイプ拡大

テスト車のデータ

ホンダ・シビックLXプロトタイプ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4550×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:182PS(134kW)/6000rpm
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1700-4500rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95Y/(後)235/40R18 95Y(グッドイヤー・イーグルF1)
燃費:16.3km/リッター(WLTCモード)
価格:319万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
(※スペックと価格は市販車両のもの)

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ホンダ・シビックEXプロトタイプ
ホンダ・シビックEXプロトタイプ拡大

ホンダ・シビックEXプロトタイプ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4550×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:182PS(134kW)/6000rpm
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1700-4500rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95Y/(後)235/40R18 95Y(グッドイヤー・イーグルF1)
燃費:16.3km/リッター(WLTCモード)
価格:353万9800円/テスト車=--万円
オプション装備:--
(※スペックと価格は市販車両のもの)

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

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