第661回:1周目から全開で走れる! 「ランボルギーニ・ウラカンSTO」にサーキットで乗った
2021.10.22 エディターから一言 拡大 |
2013年にデビューした「ランボルギーニ・ウラカン」のフィナーレを飾るのは、レーシングカーのロードゴーイングバージョン「STO(スーパートロフェオ・オモロガータ)」だ。ド派手な空力パーツの効能を富士スピードウェイで味わってみた。
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ホンモノと同じ形のエアロパーツ
富士スピードウェイのホームストレッチで記録した283km/hは、自分の運転で記録した生涯最高速だった。そこから「BREAK」の立て札に合わせてブレーキペダルを踏めば、地面に張り付いたようにビターッと減速。すかさず1コーナーに向けてステアリングを切り込んでいくと、むずかることなく進路が変更され、いとも簡単にクルマの向きが変わる。ウラカンSTOがもたらしてくれるのは、この上ない万能感である。
ウラカンSTOはワンメイクレースを競う「ウラカン スーパートロフェオEVO」と、デイトナ24時間レースを3連覇、セブリング12時間レースを2連覇した「ウラカンGT3 EVO」の血を引くロードゴーイングレーシングカーである。資料によれば世界で最も厳しいサーキットにも完璧に対応できるばかりか、ラップレコードを狙えるという。
ウラカンSTOとスーパートロフェオEVO&GT3 EVOを見比べてみると、各種エアロパーツの形状がほとんど同じということが分かる。フロントアクスル上に強烈なダウンフォースを生み出すボンネットの2つのエアインテークは3モデルともおそろいだ。GT3 EVOの初期型である「GT3」ではエアインテークがひとつながりになっているので、STOにも最新のテクノロジーが流用されているのだ。
屋根の上のシュノーケルとリアウィンドウに貼り付けられた巨大なシャークフィンもまたおそろいだ。リアウイングの形はちょっとずつ違っていて、もちろんSTOのそれが一番穏当な形状である。しかしながらスワンネックスタイルであることは3モデルとも共通で、STOのウイングもサーキットの特性に合わせて3段階の手動調節が可能だ。
とにかく真っすぐに走る
大穴の空いたボンネットはルーバー付きのフロントフェンダーおよびフロントバンパーとともに一枚物として仕立てられ、CFRP素材の大量使用や軽量ウインドスクリーンおよびマグネシウムホイールの採用と合わせて、車両の軽量化に寄与している。「ウラカン ペルフォルマンテ」より43kgも軽く、パワーウェイトレシオは2.09だ(乾燥重量1339kg÷最高出力640PS)。
この一枚物のフロントセクションはイタリア語でボンネットを示す「cofano」とフェンダーを示す「parafango」を合わせて「Cofango(コファンゴ)」と名づけられている。バンパー(「paraurti」と呼ぶらしい)の名が省かれていることはともかくとして、一枚物だけあって前方にガバッと開くようになっている。「ミウラ」から使われているというこの手法は、軽量化だけでなくピット作業時の時間節約効果ももたらす。この日は開けることはかなわなかったが、内部にはヘルメットの収納スペースが用意されていて、律義にもその容量は38リッターと公表されている。
もちろん最初は恐る恐るコースインしたわけだが、冒頭に書いたような万能感は1ラップ目からしっかりと感じ取れる。例えばストレートでペダルを床まで踏みつけてみても、加速する過程でどこかがフワッとしたり進路が乱れたりということが一切ない。ひたすら真っすぐに走る。V10エンジンのサウンドがかき消している部分も大きいだろうが、200km/hを超えても風切り音の類いが全く聞こえてこない。最終コーナーをきちんと立ち上がれるドライバーであれば、310km/hの最高速が見えてくるだろう。
究極のRWDモデル
ブレンボ製のCCM-Rブレーキは普通のCCBの4倍の熱伝導率を誇るばかりか、ストレス耐性が60%、最大制動力が25%、減速性能は7%向上しており、200km/hからでも110mの制動距離で停止できるという。コファンゴにはブレーキ専用の冷却ダクトが設けられているほか、センタースクリーンを介してブレーキ温度をリアルタイムでチェックできるようにもなっている。ランボルギーニのチーフテクニカルオフィサー(CTO)であるマウリツィオ・レッジャーニ氏は「ウラカンSTOはパフォーマンスを一日中キープすることを重視している」と語っていたが、実際にフル加速からのフル制動を何度繰り返しても、モニター上でブレーキ温度の上昇はほとんど確認できなかった。
ステアリングのロックトゥロックは2回転ちょっとしかなく、後輪操舵も合わせて面白いように曲がる。マウリツィオ・レッジャーニCTOは「STOはウラカンシリーズのフィナーレだ」とも語っていた。最後を飾るのは究極の速さを持つ4WDマシンがふさわしいのではと思っていたが、そういうのは「ウラカンEVO」ですでに済ませていたということだろう。乗ってみればドライビングプレジャーを追求した後輪駆動車こそがフィナーレにふさわしいと納得だ。それにウラカンSTOは究極の4WDマシンではないが、究極のRWDマシンではあると思う。とにかく速く、何よりも楽しい。
ドライブには自分の腕前も大いに関係するので、すべてのコーナーをスムーズに曲がれたわけではないし、ペースカーに速度を落としてもらうようなシーンも多かった。それでも安全に楽しく走れたのは、ウラカンSTOの底知れないスタビリティーのおかげではないだろうか。蛇足かもしれないが、最後にウラカンSTOに感謝の意を込めてヒトコト申し上げたいと思う。
ああオモロガータ。やっぱり蛇足だったな。
(文=藤沢 勝/写真=ランボルギーニ・ジャパン、webCG/編集=藤沢 勝)

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
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