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ボルボC40リチャージ(4WD)

チャレンジのはじまり 2021.11.18 試乗記 大谷 達也 ボルボでは初となるEV専用のクロスオーバーモデル「C40リチャージ」。上質なマナーをみせつつも活発さが印象的なその走りは、全ラインナップ電動化へと舵を切った、このブランドの今後を象徴するかのようだった。

大きな戦略の具体策

ボルボブランド初のEV専用モデルであるC40リチャージに、その生まれ故郷であるベルギーで試乗した。

2021年3月、ボルボが「2030年までに電気自動車のプレミアムカーブランドに移行する」と宣言したことは皆さんもご存じかもしれない。これは、世界的なCO2削減の枠組みであるパリ協定の実現に向けた実に意欲的かつ大胆な戦略だが、冷静に考えて「それって達成可能なの?」と思えなくもない。

ボルボは2020年に全世界で66万台ほどを販売したが、このなかに含まれるEVはごくわずか。裏を返せば、彼らはすでに手にしている66万台分の市場を投げ打って、まだ実績がないも同然のEVに社運を賭けようとしているのだ。

それでもボルボをはじめとする多くのヨーロッパ車メーカーがEVを販売の主力に据えようとして躍起になっている。なぜだろう?

「ボルボ程度の規模ではエンジン車とEVの両方を手がけるのは困難で、だったらすべてEVにシフトしたほうが経営の効率化が図れる」という見方はもちろん成り立つ。もしかすると、CAFE(企業別平均燃費基準)をはじめとする世界各国の排ガス規制に適合しようとすれば、ボルボにはEV以外に選択肢が残されていなかったのかもしれない。「いち早くオールEVメーカーに移行することでブランドイメージの向上が図れる」という邪(よこしま)な思いだってないわけではないだろう。

「C40リチャージ」はボルボブランド初のEV専用モデル。2021年3月に、デザインプロトタイプというかたちで世界初公開された。「XC40」ベースのEVとともに、ベルギーのゲントにある工場で生産される。
「C40リチャージ」はボルボブランド初のEV専用モデル。2021年3月に、デザインプロトタイプというかたちで世界初公開された。「XC40」ベースのEVとともに、ベルギーのゲントにある工場で生産される。拡大
インテリアの基本的なデザインは、既存モデル「XC40」のものを踏襲。センターコンソールはドライバー側に向かって角度がつけられている。
インテリアの基本的なデザインは、既存モデル「XC40」のものを踏襲。センターコンソールはドライバー側に向かって角度がつけられている。拡大
「XC40」に比べ全高が60mmも低い「C40リチャージ」だが、大きなグラスルーフのおかげで狭いという印象はない。
「XC40」に比べ全高が60mmも低い「C40リチャージ」だが、大きなグラスルーフのおかげで狭いという印象はない。拡大
助手席前方のダッシュボードやフロントドアパネルに見られる半透明のグラフィックは、スウェーデン国内にある山の風景をイメージしてデザインされたもの。
助手席前方のダッシュボードやフロントドアパネルに見られる半透明のグラフィックは、スウェーデン国内にある山の風景をイメージしてデザインされたもの。拡大
ボルボ の中古車

スペック的には「速いクルマ」

でも、日本人が思っている以上に、ヨーロッパの人たち、なかでも北に位置するヨーロッパの人たちは純粋にEVの将来に希望を寄せているようだ。今回の試乗会に参加した欧州駐在の某大手新聞記者は、先ごろ行われたドイツ総選挙でEV推進の立場をとらなかったのは極右政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」だけだと教えてくれた。しかも、AfDは今回の選挙で議席数を減らしている。これを、ドイツ人がEV推進を期待している証拠と受け止めるのは強引すぎるだろうか?

いずれにせよ、ヨーロッパの自動車メーカーはさまざまな思いを秘めながらEVシフトにまい進しようとしている。そして、その先頭を突っ走る自動車メーカーのひとつがスウェーデンのボルボであることは疑いのない事実である。

前置きがかなり長くなったが、ここでC40リチャージの概要を説明しよう。

ボルボは、同ブランド初のEVである「XC40リチャージP8 AWD」を2019年10月に発表したが、C40リチャージはハードウエアの大半をXC40リチャージP8 AWDと共有している。例えば、パワープラントは2基の電気モーターで、これで前後輪を駆動する4WDとされた点はXC40リチャージP8とまったく同じ。1基あたり最高出力204PSのモーターをフロントとリアに搭載する点も同様だ。LGから供給されるリチウムイオンバッテリーの総容量が78kWhとなる点もXC40リチャージP8と変わらない。

C40リチャージの航続距離は最長444km(WLTPモードの場合)。0-100km/h加速は4.7秒となかなか速く、最高速度は最新のボルボ各モデルと同じように180km/hに制限されている。対応可能な急速充電の最大出力は150KW。ちなみに、CHAdeMO対応の日本仕様も150KWとなるもようだ。

グリルレスのフロントまわりは、EVに完全シフトするボルボの新しい顔を表している。
グリルレスのフロントまわりは、EVに完全シフトするボルボの新しい顔を表している。拡大
“フランク”と呼ばれるフロントのトランクルーム。31リッターの容量が確保されている。
“フランク”と呼ばれるフロントのトランクルーム。31リッターの容量が確保されている。拡大
Z型のラインを描くリアコンビランプのデザインには「V60」や「XC60」との共通点もみられる。
Z型のラインを描くリアコンビランプのデザインには「V60」や「XC60」との共通点もみられる。拡大
特徴的な意匠のアルミホイール。2018年に発表されたコンセプトカー「360c」のものが元になっている。
特徴的な意匠のアルミホイール。2018年に発表されたコンセプトカー「360c」のものが元になっている。拡大

見た目の割に狭くない

いっぽう、XC40リチャージP8とC40リチャージの最大の違いはボディー形状にある。あくまでもSUVとしてデザインされたXC40とは異なり、C40はルーフの後半部分がなだらかに下降するファストバックとされているので、最近はやりのSUVクーペと呼んだほうがしっくりとくる。

ちなみに全高はXC40より60mmも低いが、シート高はXC40そのままという。したがって、このままではヘッドルームが決定的に不足しそうだが、そこは全車グラスルーフ仕様とすることでルーフライナー分の厚みを排除。身長171cmの私が腰掛けても過不足のないヘッドクリアランスを確保していた。

試乗会の舞台となったのは、ベルギーのブリュッセル空港からXC40やC40が生産されるボルボ・ゲント工場までを往復する200kmほどのコース。ルートは高速道路主体だが、一部、市街地も走行する。ちなみにゲント工場は操業開始が1965年と古く、当初は名車“アマゾン”のアッセンブリーを行っていたという。

システム最高出力408PS といえば、CセグメントのEVとしてはかなりパワフルだが、走りだしは至って滑らかで、過激な発進加速で鬼面人を驚かす一部のEVとはまったくの別物。この点、いい意味で常識的な設定であり、ドライバビリティーも良好といえるだろう。

車格のうえで近いのはコンパクトSUVの「XC40」。「C40リチャージ」は、クーペライクなルーフラインが最大の特徴となっている。
車格のうえで近いのはコンパクトSUVの「XC40」。「C40リチャージ」は、クーペライクなルーフラインが最大の特徴となっている。拡大
フロアやセンターコンソールの側面は、スカンジナビアの西海岸から着想を得たというフィヨルド・ブルーのカーペットで覆われる。
フロアやセンターコンソールの側面は、スカンジナビアの西海岸から着想を得たというフィヨルド・ブルーのカーペットで覆われる。拡大
「C40リチャージ」のインテリアには、皮革はいっさい使われていない。再生可能なウール素材やリサイクル材が多く採用されている。
「C40リチャージ」のインテリアには、皮革はいっさい使われていない。再生可能なウール素材やリサイクル材が多く採用されている。拡大
荷室の容量(VDA式)は5人乗車時で413リッター。3分割式の後席を倒すことで拡大できる。
荷室の容量(VDA式)は5人乗車時で413リッター。3分割式の後席を倒すことで拡大できる。拡大

総じて滑らか

ちなみにC40は、モード切り替えによってワンペダルドライブも可能。それも完全停止までできる本格的な仕様だが、一般的にEVが苦手とするゼロクロス(加速から減速、もしくは減速から加速に移行する過程の、前後Gがゼロとなる状態のこと。電気モーターに供給される電力が実質的にゼロとなるため、車両が前後にガクガクと揺れるスナッチが起きやすいとされる)の反応も滑らかで快適だった。しかも、ていねいなスロットルワークを心がければ停止直前のマナーも良好で、スムーズなブレーキングが苦手な向きにはむしろお薦めではないかと思えたほど。個人的にはワンペダルドライブでまったく不自由を感じなかったというか、このほうがブレーキペダルに足を踏み換える手間が不要で扱いやすいと感じた。

乗り心地も全般的にはソフトかつ滑らかで、最新のXC40に準じたキャラクターだが、足まわりに大入力が加わったときのみ、微振動がかすかに残るように感じられた。これは発売直後のXC40にも認められた傾向だが、その後の改良でいまや完全に解消されているので、C40の場合も徐々によくなっていくことだろう。

ステアリングから伝わってくる接地感は良好でインフォメーションも豊富。ハンドリングにも不自然なところは認められなかった。言い換えれば、最新ボルボとほとんど同じ感覚でドライブできるのだが、ひとつだけ意外だったのが高速道路での追い越し加速で、それまでの穏やかな身のこなしからは想像もできないほど鋭い加速性能を披露してくれた。408PSのパワーはだてではないようだ。

安心感や快適性だけでなく、活発な動力性能も手に入れたC40は、ボルボのEVが今後目指す方向性を示しているように思えた。

(文=大谷達也<Little Wing>/写真=ボルボ・カーズ/編集=関 顕也)

「C40リチャージ」が0-100km/h加速に要する時間は4.7秒。最高速は180km/hと公表される。
「C40リチャージ」が0-100km/h加速に要する時間は4.7秒。最高速は180km/hと公表される。拡大
メーターパネルは液晶表示。写真のようにカーナビゲーションのルートを映し出すこともできる。
メーターパネルは液晶表示。写真のようにカーナビゲーションのルートを映し出すこともできる。拡大
シフトはバイワイヤ式。リンク状にデザインされた特徴的なシフトノブが採用されている。
シフトはバイワイヤ式。リンク状にデザインされた特徴的なシフトノブが採用されている。拡大
「ボルボC40リチャージ」の国内価格は719万円。まず100台がサブスクリプションプログラムとして供給され、2021年11月18日~30日の期間限定で同プログラムの抽選受け付けが行われる。その後、2022年1月開設予定のウェブサイトを通じて、サブスクリプション以外のファイナンスプログラムを含めたオンライン販売が始まる見込み。
「ボルボC40リチャージ」の国内価格は719万円。まず100台がサブスクリプションプログラムとして供給され、2021年11月18日~30日の期間限定で同プログラムの抽選受け付けが行われる。その後、2022年1月開設予定のウェブサイトを通じて、サブスクリプション以外のファイナンスプログラムを含めたオンライン販売が始まる見込み。拡大

テスト車のデータ

ボルボC40リチャージ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1873×1591mm(※シャークフィンアンテナを含む)
ホイールベース:2702mm
車重:2207kg
駆動方式:4WD
モーター:交流同期電動機
システム最高出力:408PS(300kW)/1万3900rpm
システム最大トルク:660N・m(67.3kgf・m)/4350rpm
タイヤ:(前)235/45R20/(後)255/40R20(コンチネンタル・バイキングコンタクト7)
一充電走行距離:420km(WLTPおよびEPA走行サイクルによる欧州参考値)/444km(WLTPモード)
交流電力量消費率:20.7-22.3kWh/100km(207-223Wh/km、WLTPモード)
価格:719万円(※日本仕様車の本体価格)
オプション装備:--

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh(車載電費計計測値)
 

ボルボC40リチャージ
ボルボC40リチャージ拡大
インストゥルメントパネルの中央には、現代のボルボ車ではおなじみとなった大きな縦型ディスプレイが備わる。「C40リチャージ」にはボルボがGoogleと共同開発したAndroidベースのインフォテインメントシステムが搭載される。
インストゥルメントパネルの中央には、現代のボルボ車ではおなじみとなった大きな縦型ディスプレイが備わる。「C40リチャージ」にはボルボがGoogleと共同開発したAndroidベースのインフォテインメントシステムが搭載される。拡大
センターコンソールの非接触充電トレー。アクセサリーソケットやUSBコネクターも備わる。
センターコンソールの非接触充電トレー。アクセサリーソケットやUSBコネクターも備わる。拡大
後席を倒し、荷室を最大化した状態。写真のようにフラットな積載スペースが得られる。
後席を倒し、荷室を最大化した状態。写真のようにフラットな積載スペースが得られる。拡大
大谷 達也

大谷 達也

自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。

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