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第26回:日本にもいよいよEVを導入! “EV専業”を宣言したボルボの覚悟を問う

2021.11.30 カーテク未来招来
ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長と「ボルボC40リチャージ」。
ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長と「ボルボC40リチャージ」。拡大

ボルボ・カー・ジャパンが、日本では初となるEVモデル「C40リチャージ」(以下C40)の導入を発表した。2030年までに100%EVメーカーになると宣言したボルボの試金石は、どのようなクルマに仕上がっているのか。ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長が語った、“脱エンジン”へ向けた覚悟とともにリポートする。

ボルボブランド初のEV専用車である「C40リチャージ」。同社の製品としては、ファストバックスタイルを持つ初の“SUVクーペ”でもある。
ボルボブランド初のEV専用車である「C40リチャージ」。同社の製品としては、ファストバックスタイルを持つ初の“SUVクーペ”でもある。拡大
欧州では「C40リチャージ」(左)と基本コンポーネンツを共有する「XC40リチャージ」(右)も販売されている。
欧州では「C40リチャージ」(左)と基本コンポーネンツを共有する「XC40リチャージ」(右)も販売されている。拡大
インストゥルメントパネルまわりの造形は「XC40」と基本的に共通。スタートスイッチはなく、キーを所持してブレーキを踏むだけでシステムが起動する。
インストゥルメントパネルまわりの造形は「XC40」と基本的に共通。スタートスイッチはなく、キーを所持してブレーキを踏むだけでシステムが起動する。拡大
まったく新しいデザインとなった液晶メーターの表示。指針式の速度計はデフォルトでは表示されず、今まで以上にデジタル感の強い意匠となっている。
まったく新しいデザインとなった液晶メーターの表示。指針式の速度計はデフォルトでは表示されず、今まで以上にデジタル感の強い意匠となっている。拡大
「C40リチャージ」のシート。一見レザーに見えるサイドサポートの表皮は、実は合成皮革である。
「C40リチャージ」のシート。一見レザーに見えるサイドサポートの表皮は、実は合成皮革である。拡大

パッケージに見る「CMA」プラットフォームの恩恵

ボルボは2025年までにグローバル販売の50%をEVに、そして2030年には販売するクルマをすべてEVにすると表明している。すでに欧州では、C40に先立ってSUVの「XC40」をベースにした「XC40リチャージ」が販売されているが、C40はボルボで初めてのEV専用車(EV以外のパワートレインがラインナップされないモデル)であることが特徴だ。ボルボ・カー・ジャパンがあえてC40を先に導入したのも、まずはボルボのEV戦略を象徴する専用車を導入することで、戦略を際立たせることが狙いのようだ。

そのC40だが、基本骨格はXC40から採用が始まった「CMA」(Compact Modular Architecture)プラットフォームをベースにしている。CMAプラットフォームは開発の当初から電動化を考慮して設計されており、EV化にあたっても室内の広さや荷室スペースはまったく犠牲になっていないという。

C40はまた、ボルボにとって初めての“SUVクーペ”であり、XC40に比べて全高は低められ、リアウィンドウも緩やかな傾斜を描いている。フロントまわりの形状はXC40と似ているが、(当然ながら)ラジエーターグリルはない。ヘッドランプも「トールハンマー」と呼ばれるT字型の車幅灯で上下に2分割されたデザインはXC40と共通するものの、C40では内部に小型LEDを多数配置した独自のデザインを採用する。

内装は、インストゥルメントパネルまわりの造形はXC40とほぼ共通だが、液晶メーターの表示デザインが目新しい。ただ、今後はXC40もこのデザインに変更される見通しとのことで、見かけ上の差はそれほど大きくなさそうだ。一方、両者の違いとして目立つのは青いファブリックが多用されていることで、これはペットボトルからリサイクルされた繊維を使ったものだという。

また、ボルボとしては初めてレザー(本革)をまったく使わない“レザーフリー”のインテリアを採用している。シート表皮は一見本革のような見た目・風合いを実現しているが、実際には合成皮革なのだ。ボルボは今後投入するすべてのEVに本革を使わない予定であり、2022年にも登場するとみられる高級EV(最上級SUV「XC90」の後継車種である)を、どのような内装とするのかも注目される。

実は最高出力400PSオーバーの快速EV

車内におけるもうひとつの注目点は、米グーグルと共同開発した「Android OS」をベースとする新しいインフォテインメントシステムだ。これを簡単に説明すると、グーグルの音声認識システムを使って、車内のさまざまな機能が利用できるというものである。例えば空調の温度調節や音楽再生、ナビゲーションシステムの目的地設定などが、走行中に音声で操作できる。

こうした機能は、技術的にはすぐできそうに思うのだが、残念ながら国内の完成車メーカーの製品ではなかなか採用されない。グーグルに顧客の利用データを独占されたくないという理由なのだろうが、このあたり、会場の説明員は「ユーザーの利便性を第一に考えて採用した」と話していた。

肝心の動力性能はどうか。それほど「速そう!」という印象は与えないC40の外観だが、そのパワートレインはなかなかすごい。というのも、前輪と後輪にそれぞれモーターを備えたAWD(全輪駆動)システムの採用により、システム全体での最高出力は408PS(300kW)、最大トルクは660N・m(67.3kgf・m)に達するのである。この動力性能については、ぜひ試乗で確かめてみたい。

バッテリー容量も78kWhとかなり大容量で、WLTCモードの一充電走行距離は約485km(国土交通省申請値)となる見込みだ。また150kWの高出力充電に対応しており、充電量ゼロの状態から、約40分で80%までの充電が可能なのも特徴である。もっとも、国内にはまだ出力150kWという高速充電器は存在しないので(ポルシェやテスラの専用急速充電器は除く)、しばらくは宝の持ち腐れになる可能性が高いのが残念なところだ。

米グーグルと共同開発したインフォテインメントシステムの採用もトピック。グーグル関連の話題としては、最近ではホンダも同社の車載向けコネクテッドサービスを採用すると発表している。
米グーグルと共同開発したインフォテインメントシステムの採用もトピック。グーグル関連の話題としては、最近ではホンダも同社の車載向けコネクテッドサービスを採用すると発表している。拡大
当初から電動車の展開が想定されていた「CMA」プラットフォームだけに、電動化によるパッケージへの干渉は最小限。一目で「XC40」との違いとして挙げられるのは、フロントシートの座席下の“すき間”が埋まったことぐらいだ(XC40では床面がフラットで、座席と床の間に空間があった)。後席も“体育座り”を強いられるようなことはなく、前席の下にはちゃんと足先を差し入れるスペースが確保されている。
当初から電動車の展開が想定されていた「CMA」プラットフォームだけに、電動化によるパッケージへの干渉は最小限。一目で「XC40」との違いとして挙げられるのは、フロントシートの座席下の“すき間”が埋まったことぐらいだ(XC40では床面がフラットで、座席と床の間に空間があった)。後席も“体育座り”を強いられるようなことはなく、前席の下にはちゃんと足先を差し入れるスペースが確保されている。拡大
エンジンがなくなったフロントには、充電用ケーブルなどを積むのに好適な、小ぶりなトランクが設けられた。
エンジンがなくなったフロントには、充電用ケーブルなどを積むのに好適な、小ぶりなトランクが設けられた。拡大

「EV化宣言」の背景にある高級車の潮流

販売方法についても新たな試みを導入している。ボルボはEVの販売をグローバルでオンラインのみとしているのだが、今回、C40の日本導入にあたっても、同様にオンラインのみで販売することとしたのだ。さらに最初の100台はサブスクリプションで提供し、オンラインだけで契約まで完結できるという。その後は、2022年1月に開設する予定のオンラインサイトを通じて、一般的な販売を開始するとしている。

今回、C40の国内発表に合わせて、ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン社長にグループインタビューする機会があったので、日ごろ筆者がボルボのEV戦略について聞いてみたいと思っていた質問をぶつけてみた。

ひとつは「2030年時点でも火力発電が主流の地域が残ると予想されるなかで、ボルボがあえて同年までに製品ラインナップのすべてをEV化すると宣言したのはなぜか?」だ。これについてのパーソン社長の回答は、次のようなものだった。

――われわれも、2030年に世界の新車販売のすべてがEVになるとは考えていない。われわれの販売台数は世界市場のわずか0.7%にすぎず、たとえ2030年にすべて全車EV化しても、マーケット全体に占める比率は低い。一方で、われわれが属するプレミアムセグメントでは、日本も含め世界的にEV化がより速く進むと予想されている。われわれはこうしたなかで、立ち位置を明確化する意味で、2030年に新車販売のすべてをEV化することを決断した。

ボルボは世界的にオンラインのみでEVの販売を行っており、それは日本における「C40リチャージ」の取り扱いでも同様となる。オンラインサイトの開設は2022年1月の予定だ。
ボルボは世界的にオンラインのみでEVの販売を行っており、それは日本における「C40リチャージ」の取り扱いでも同様となる。オンラインサイトの開設は2022年1月の予定だ。拡大
ボルボは2025年までのグローバル販売台数を120万台に高めるとともに、その半分をEVにするとしている。それと並行して、2020年代半ばに第3世代のEVを市場投入。2030年までに、全ラインナップをEV化する予定だ。
ボルボは2025年までのグローバル販売台数を120万台に高めるとともに、その半分をEVにするとしている。それと並行して、2020年代半ばに第3世代のEVを市場投入。2030年までに、全ラインナップをEV化する予定だ。拡大
ボルボのおひざ元であるスウェーデン出身のマーティン・パーソン氏。1996年に交換留学で来日し、1999年にボルボ・ジャパン(当時)に入社したという日本通である。2008年にボルボ・カー・コーポレーション(当時)のグローバルCRM責任者に就任。ボルボ・カー・ロシア社長などを経て、2020年10月に現職に就任した。
ボルボのおひざ元であるスウェーデン出身のマーティン・パーソン氏。1996年に交換留学で来日し、1999年にボルボ・ジャパン(当時)に入社したという日本通である。2008年にボルボ・カー・コーポレーション(当時)のグローバルCRM責任者に就任。ボルボ・カー・ロシア社長などを経て、2020年10月に現職に就任した。拡大

摩擦を恐れるより現状維持を恐れる

もうひとつ、筆者が尋ねたのは「EV化に伴う摩擦はないのか?」ということだ。というのも、ドイツなどでは電動化に伴う完成車工場や部品メーカーの工場閉鎖、従業員解雇が現実になっており、それに対するデモなども起きている。こうした問題をボルボがどう考えているのかを聞きたかったのだ。

――もちろん摩擦はある。しかし、現状維持か、新たな道を進むのかという2つの選択肢があるなかで、われわれは迷うことなく新たな道を進むことを選んだ。もしそうでなければ、世のなかの動きに取り残されると考えたからだ。大きな変革期には、受け身ではなく自らが新たな道を切り開く必要がある。失われる雇用も確かにあるかもしれないが、それと同時に、車載バッテリーの新興企業であるスウェーデンのノースボルトでは、新たな雇用が生まれている。さらに言えば、ボルボは中国吉利汽車と共同で、エンジンやハイブリッドパワートレインの開発を担う新会社を設立し、ここに開発を移管する。すぐにエンジン開発をやめてしまうわけではない。

この発言で印象的だったのは、自らが進む道は自らが決める、という強烈な意志だ。市場の動向に合わせていかようにも対応できるよう準備する、というトヨタなどの対応はクレバーだと思うし、なんら非難されるべきものでもない。しかし、どちらのほうがより企業の姿勢をクリアにアピールできるかといえば、それは明らかに前者だ。そしてまた、次世代の自動車ユーザーである若い世代は、こうした企業姿勢にことさら敏感である。商品の差異化が難しいといわれるEVでは、消費者が製品を選ぶ際の指標として、ブランドイメージのウェイトが大きくなることは間違いない。それを考えれば、あえてリスクを負いながらも自らの旗を高く掲げるボルボの姿勢は示唆に富む。

(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=webCG、ボルボ・カーズ/編集=堀田剛資)

製品のEV化について「摩擦もあるが、新しい雇用の創出にもつながっている」と語るパーソン氏。
製品のEV化について「摩擦もあるが、新しい雇用の創出にもつながっている」と語るパーソン氏。拡大
ボルボは次世代バッテリーの開発と調達に関し、同じスウェーデンのノースボルトと協業。同社はフォルクスワーゲンなどとも提携しており、北欧に巨大なバッテリーサプライヤーが生まれようとしている。
ボルボは次世代バッテリーの開発と調達に関し、同じスウェーデンのノースボルトと協業。同社はフォルクスワーゲンなどとも提携しており、北欧に巨大なバッテリーサプライヤーが生まれようとしている。拡大
ボルボと吉利は、2019年にエンジンやハイブリッドパワートレインの開発・生産を担う合弁会社の設立で合意。新会社ではボルボの社員3000人、吉利の社員5000人が働き、吉利、プロトン、ロータス、LEVC、LYNK&CO.にパワートレインを供給するという。
ボルボと吉利は、2019年にエンジンやハイブリッドパワートレインの開発・生産を担う合弁会社の設立で合意。新会社ではボルボの社員3000人、吉利の社員5000人が働き、吉利、プロトン、ロータス、LEVC、LYNK&CO.にパワートレインを供給するという。拡大
自動車の電動化について、あえて挑戦的な目標を掲げたボルボ。ゼロエミッション車が普及した時代に、彼らがどのようなポジションを築いているか注目である。
自動車の電動化について、あえて挑戦的な目標を掲げたボルボ。ゼロエミッション車が普及した時代に、彼らがどのようなポジションを築いているか注目である。拡大
鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

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