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ニッポンのハイブランド レクサスの中軸を担うグローバルSUVのすべて

【徹底解説】新型レクサスNX 2022.02.24 ニューモデルSHOWCASE 佐野 弘宗 ジャーマンスリーのライバルを完全にロックオン! フルモデルチェンジによって劇的な進化を遂げたレクサスの基幹SUV「NX」の実力を、装備の充実ぶりや新しいパワートレインの実力、燃費、価格設定など、多角的な見地からリポートする。

気合の入ったフルモデルチェンジ

NXはレクサスのDセグメントSUVである。2021年10月7日に公式デビューした新型で2代目となるが、初代は2014年発売だった。レクサスが仮想敵とするジャーマンスリーであげるなら、ライバルは「BMW X3」と「アウディQ5」、そして「メルセデス・ベンツGLC」……といえば、NXがいかに重要な位置づけにあるかが分かるだろう。NXは初代が担った約7年の間に、レクサスのグローバル販売のおよそ4分の1を占めて、「ES」と「RX」にならぶ3本柱の一角へと成長した。

新型の骨格構造はいわゆる「GA-K」プラットフォームである。それはレクサスでいうとES、トヨタブランドなら「カムリ」のほか、NXと同じSUVの「RAV4」や「ハリアー」も使うプラットフォームだ。2690mmのホイールベースはRAV4やハリアーと共通で、基本パッケージレイアウトもこれらと酷似する。

ただし、そこはレクサス。同じGA-Kプラットフォームでも、サスペンションメンバーなどに補強ブレースや補強パネルを追加し、カウル形状を見直して板厚を上げるなどの手が入っている。上屋構造でもボンネットキャッチを左右2つに増やしたツインフードロック構造をはじめ、リアゲート開口部の環状構造化と高剛性発泡剤を効果的に使い、さらにトヨタ自慢のレーザースクリューウェルディングや構造用接着剤、新開発のレーザーピーニング溶接などを採用。そしてホイールのハブボルト締結化と、車体や各部剛性へのこだわりはトヨタ版の比ではない。

内外装デザインも、この新型NXから新しいフェーズに入ったという。レクサスの代名詞であるスピンドルグリルは直立させるとともに、お約束のメッキフレームを排している。リアの「LEXUS」ロゴも字間の広い新タイプとなった。また、インテリアにも新しい「Tazuna(手綱)コンセプト」を初めて採用した。

今やレクサスの基幹車種に成長したSUV「NX」。新型は2代目のモデルにあたり、ブランド初のプラグインハイブリッド車の設定など、多数の新機軸によって話題を集めている。(写真:花村英典)
今やレクサスの基幹車種に成長したSUV「NX」。新型は2代目のモデルにあたり、ブランド初のプラグインハイブリッド車の設定など、多数の新機軸によって話題を集めている。(写真:花村英典)拡大
プラグインハイブリッドの「NX450h+」とならぶ注目モデル「NX350」。新開発の高出力ターボエンジンと専用の4WDシステムを組み合わせたスポーティーなモデルで、グレードも「Fスポーツ」のみとなる。(写真:花村英典)
プラグインハイブリッドの「NX450h+」とならぶ注目モデル「NX350」。新開発の高出力ターボエンジンと専用の4WDシステムを組み合わせたスポーティーなモデルで、グレードも「Fスポーツ」のみとなる。(写真:花村英典)拡大
インテリアには既存のレクサス車とは全く異なるデザインを採用。2019年発表のコンセプトモデル「LF-30エレクトリファイド」で提案したコンセプトを取り入れている。(写真:花村英典)
インテリアには既存のレクサス車とは全く異なるデザインを採用。2019年発表のコンセプトモデル「LF-30エレクトリファイド」で提案したコンセプトを取り入れている。(写真:花村英典)拡大
車体の基礎は既出の「GA-K」プラットフォームだが、各部に補強を追加し、組み立てに専用の工法を取り入れるなどして、プレミアムカーにふさわしい剛性を実現している。(写真:花村英典)
車体の基礎は既出の「GA-K」プラットフォームだが、各部に補強を追加し、組み立てに専用の工法を取り入れるなどして、プレミアムカーにふさわしい剛性を実現している。(写真:花村英典)拡大
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【ラインナップ】
プレミアムブランドならではの豊富なバリエーション

ジャーマンスリーを競合に定める高級ブランド車ゆえ、パワートレインの選択肢は豊富だ。基本となる動力システムは4種類あり、2.5リッター自然吸気エンジンの「NX250」、2.4リッターターボエンジンの「NX350」、2.5リッター自然吸気エンジン+ハイブリッドの「NX350h」、同プラグインハイブリッドの「NX450h+」となる。高性能モデルといえる「NX350」と「NX450h+」は4WDのみだが、NX250とNX350hにはFFと4WDが用意される。4WDの選択肢の充実ぶりが、いかにもSUVらしいところだ。

車格やキャラクターに応じて、標準グレードのほか「バージョンL」と「Fスポーツ」が用意されるのも、レクサスのお約束。バージョンLは大径20インチホイールや本革シート、大型14インチセンターディスプレイなどが標準装備となる豪華仕様。対するFスポーツはその名のとおり、走りまで特別仕立てのスポーツモデル。専用デザインの20インチホイールや14インチセンターディスプレイのほか、ブラックメッシュグリル、スポーツシート、さらには連続可変ダンパーの「NAVI・AI-AVS」や、剛性“感”や操縦安定性を高めるパフォーマンスダンパーを標準装備する。

【主要諸元】

グレード名   NX250(FF) NX250(4WD) NX250“バージョンL”(FF) NX250“バージョンL”(4WD) NX350“Fスポーツ”(4WD) NX350h(FF) NX350h(4WD) NX350h“バージョンL”(FF) NX350h“バージョンL”(4WD) NX350h“Fスポーツ”(FF) NX350h“Fスポーツ”(4WD) NX450h+“バージョンL”(4WD) NX450h+“Fスポーツ”(4WD)
基本情報 新車価格 455万円 482万円 543万円 570万円 599万円 520万円 547万円 608万円 635万円 608万円 635万円 714万円 738万円
駆動方式 FF 4WD FF 4WD 4WD FF 4WD FF 4WD FF 4WD 4WD 4WD
動力分類 エンジン エンジン エンジン エンジン エンジン ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド プラグインハイブリッド プラグインハイブリッド
トランスミッション 8AT 8AT 8AT 8AT 8AT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT CVT
乗車定員 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名 5名
WLTCモード燃費(km/リッター) 14.4 13.9 13.9 13.5 12.2 22.2 21.6 20.9 19.9 20.9 19.9 19.8 19.8
充電電力使用時走行距離                       88km 88km
最小回転半径 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m 5.8m
エンジン 形式 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC 直列4気筒DOHC
排気量 2487cc 2487cc 2487cc 2487cc 2393cc 2487cc 2487cc 2487cc 2487cc 2487cc 2487cc 2487cc 2487cc
最高出力 (kW[PS]/rpm) 148[201]/6600 148[201]/6600 148[201]/6600 148[201]/6600 205[279]/6000 60[82]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 140[190]/6000 136[185]/6000 136[185]/6000
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 241[24.5]/4400 241[24.5]/4400 241[24.5]/4400 241[24.5]/4400 430[43.8]/1700-3600 103[10.5]/4800 243[24.8]/4300-4500 243[24.8]/4300-4500 243[24.8]/4300-4500 243[24.8]/4300-4500 243[24.8]/4300-4500 228[23.2]/3600-3700 228[23.2]/3600-3700
過給機 なし なし なし なし ターボチャージャー なし なし なし なし なし なし なし なし
燃料 レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク ハイオク
フロントモーター 最高出力 (kW[PS])           134[182] 134[182] 134[182] 134[182] 134[182] 134[182] 134[182] 134[182]
最高トルク (N・m[kgf・m])           270[27.5] 270[27.5] 270[27.5] 270[27.5] 270[27.5] 270[27.5] 270[27.5] 270[27.5]
リアモーター 最高出力 (kW[PS])             40[54]   40[54]   40[54] 40[54] 40[54]
最高トルク (N・m[kgf・m])             121[12.3]   121[12.3]   121[12.3] 121[12.3] 121[12.3]
寸法・重量 全長 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm 4660mm
全幅 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm 1865mm
全高 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm 1660mm
ホイールベース 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm 2690mm
車両重量 1620kg 1680kg 1650kg 1710kg 1780kg 1730kg 1790kg 1760kg 1820kg 1750kg 1810kg 2010kg 2010kg
タイヤ 前輪サイズ 235/60R18 235/60R18 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20
後輪サイズ 235/60R18 235/60R18 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20 235/50R20
パワートレインが4種類。トリムや装備のちがいからくるグレードが3種類と、豊富なバリエーションはプレミアムブランドの製品ならでは。写真はパワートレイン、グレードともにもっともベーシックな「NX250」。
パワートレインが4種類。トリムや装備のちがいからくるグレードが3種類と、豊富なバリエーションはプレミアムブランドの製品ならでは。写真はパワートレイン、グレードともにもっともベーシックな「NX250」。拡大
充実した装備が特徴の「バージョンL」。各種快適装備に加え、20インチホイールや、3眼のフルLEDヘッドランプ(他のグレードでは基本的にオプション扱い)なども特徴だ。
充実した装備が特徴の「バージョンL」。各種快適装備に加え、20インチホイールや、3眼のフルLEDヘッドランプ(他のグレードでは基本的にオプション扱い)なども特徴だ。拡大
「バージョンL」専用の20インチアルミホイール。写真の標準仕様のものとは別に、ダークグレーメタリック塗装の5ツインスポークデザインのホイールも用意される。(写真:花村英典)
「バージョンL」専用の20インチアルミホイール。写真の標準仕様のものとは別に、ダークグレーメタリック塗装の5ツインスポークデザインのホイールも用意される。(写真:花村英典)拡大
シート表皮は、ベースグレードが合成皮革なのに対し、「バージョンL」では本革を採用。前後席ともにシートヒーターが装備される。内装色は、写真の「ヘーゼル」を含む4種類を用意。
シート表皮は、ベースグレードが合成皮革なのに対し、「バージョンL」では本革を採用。前後席ともにシートヒーターが装備される。内装色は、写真の「ヘーゼル」を含む4種類を用意。拡大
「Fスポーツ」は他グレードとは異なる外装も特徴。前後バンパーに高輝度シルバーの装飾が追加されるほか、フロントグリルがメッシュタイプとなる。
「Fスポーツ」は他グレードとは異なる外装も特徴。前後バンパーに高輝度シルバーの装飾が追加されるほか、フロントグリルがメッシュタイプとなる。拡大
専用デザインの20インチアルミホイールとオレンジ塗装のブレーキキャリパーも「Fスポーツ」の特徴。新型「NX」の20インチホイール装着車は、いずれもランフラットタイヤが組み合わされる。(写真:花村英典)
専用デザインの20インチアルミホイールとオレンジ塗装のブレーキキャリパーも「Fスポーツ」の特徴。新型「NX」の20インチホイール装着車は、いずれもランフラットタイヤが組み合わされる。(写真:花村英典)拡大
「Fスポーツ」専用の本革スポーツシート。色は写真のホワイトを含む3色が用意される。
「Fスポーツ」専用の本革スポーツシート。色は写真のホワイトを含む3色が用意される。拡大
走りに関する専用装備としては、電子制御ダンパー「NAVI・AI-AVS」や、車体のしなりや微振動を速やかに吸収する「パフォーマンスダンパー」(写真)が挙げられる。
走りに関する専用装備としては、電子制御ダンパー「NAVI・AI-AVS」や、車体のしなりや微振動を速やかに吸収する「パフォーマンスダンパー」(写真)が挙げられる。拡大
「NX250」に搭載される自然吸気の2.5リッター直4エンジン。新型「NX」では唯一、指定燃料がレギュラーガソリンとなる。
「NX250」に搭載される自然吸気の2.5リッター直4エンジン。新型「NX」では唯一、指定燃料がレギュラーガソリンとなる。拡大
「NX350h」のパワートレインは、2.5リッター直4自然吸気エンジンとハイブリッドシステム「THS II」の組み合わせ。駆動方式はFFと4WDから選択可能で、後者には前後輪の駆動力を100:0から20:80の間で制御するリアモーター方式の4WD「E-Four」が採用される。
「NX350h」のパワートレインは、2.5リッター直4自然吸気エンジンとハイブリッドシステム「THS II」の組み合わせ。駆動方式はFFと4WDから選択可能で、後者には前後輪の駆動力を100:0から20:80の間で制御するリアモーター方式の4WD「E-Four」が採用される。拡大
プラグインハイブリッド車「NX450h+」のパワートレイン。「トヨタRAV4 PHV」のエンジンをハイオク仕様化したものだ。4WDシステムの制御はHVの「NX350h」と基本的に共通で、状況に応じて前後輪の駆動力を100:0から20:80の間で制御する。
プラグインハイブリッド車「NX450h+」のパワートレイン。「トヨタRAV4 PHV」のエンジンをハイオク仕様化したものだ。4WDシステムの制御はHVの「NX350h」と基本的に共通で、状況に応じて前後輪の駆動力を100:0から20:80の間で制御する。拡大
「NX450h+」に搭載される容量18.1kWhの駆動用バッテリー。EVモードにおける走行可能距離は最大88kmとされているが、仕様によっては(ホイールが18インチで車重が1990kgの場合)92kmとなる。(ともに国土交通省審査値)
「NX450h+」に搭載される容量18.1kWhの駆動用バッテリー。EVモードにおける走行可能距離は最大88kmとされているが、仕様によっては(ホイールが18インチで車重が1990kgの場合)92kmとなる。(ともに国土交通省審査値)拡大
「NX350」に搭載される、新開発の2.4リッター直4ツインスクロールターボエンジン。最高出力279PS/6000rpm、最大トルク430N・m/1700-3600rpmを発生する。
「NX350」に搭載される、新開発の2.4リッター直4ツインスクロールターボエンジン。最高出力279PS/6000rpm、最大トルク430N・m/1700-3600rpmを発生する。拡大
「NX350」の駆動方式は4WDのみで、FFの設定はない。トランスミッションは「NX250」と同じ「Direct Shift-8AT」だが、低回転から高トルクを発生するターボエンジンの特性に合わせて制御が最適化されている。
「NX350」の駆動方式は4WDのみで、FFの設定はない。トランスミッションは「NX250」と同じ「Direct Shift-8AT」だが、低回転から高トルクを発生するターボエンジンの特性に合わせて制御が最適化されている。拡大
「NX350」の駆動システムは、後輪にも常時駆動力を配分するフルタイム4WDで、前後駆動力配分を75:25から50:50の間で制御。高い接地感とリニアなステアリングフィールを追求している。
「NX350」の駆動システムは、後輪にも常時駆動力を配分するフルタイム4WDで、前後駆動力配分を75:25から50:50の間で制御。高い接地感とリニアなステアリングフィールを追求している。拡大

【パワートレイン/ドライブトレイン】
キャラクターの異なる4つのパワートレインを用意

4種類あるパワートレインは、少なくとも国内では現時点ですべてNX専用となる。基本となるエンジンは「A系」の2.4~2.5リッター4気筒。そして、全パワートレインに用意される4WDもそれぞれ独自のものとなる。

もっとも手ごろなのは2.5リッター自然吸気(NX250)で、エンジン型式名は「A25A-FKS」。トヨタ/レクサスで主力の2.5リッターハイブリッドに使われる「A25A-FXS」のオットーサイクル版で、国内ではこの新型NXが初登場となる。最高出力/最大トルクは201PS/241N・mで、変速機は8段AT。組み合わせられる4WDは油圧多板クラッチのオンデマンド型で、状況に応じて100:0(FF状態)から50:50(前後直結)までシームレスに駆動配分する。

NX250の燃費はFFで13.9~14.4km/リッター、4WDで13.5~13.9km/リッター(ともにWLTCモード、以下同)とハイブリッドにはゆずるが、ラインナップ中唯一のレギュラーガソリン指定なのはメリットだ。

バリエーションがもっとも豊富で、おそらく主力となるのが2.5リッターハイブリッドのNX350hである。ESやカムリ、RAV4、ハリアーなど、GA-Kプラットフォーム車ではすっかりおなじみとなったパワートレインで、A25A-FXS型エンジンに182PSの駆動モーターを追加したシリーズパラレル式ハイブリッドである。

ただ、エンジンがハイオク化されたのはこのNXが初めてである。これまでより最高出力/最大トルクは12PS/22N・m引き上げられて、同時にモーターやバッテリーも強化されたことで、システム出力も243PS(従来型は218PS)まで高められている。4WD版が、そこに54PSのリアモーターを追加した「E-Four」となるのは従来と同様。ハイオクガソリン仕様となるのはデメリットだが、FFで20.9~22.2km/リッター、4WDで19.9~21.6km/リッターと、NXでもっとも低燃費なパワートレインである。

続いて、シリーズ最強のプラグインハイブリッドモデルであるNX450h+だが、これは「RAV4 PHV」と同時開発されたもので、182PS/54PSの前後モーターや容量18.1kWhのリチウムイオン電池などといった電動部分はRAV4 PHVと共通である。ただ、エンジンはNX350hと同じく専用にハイオク化されており、最高出力/最大トルクはRAV4 PHVより8PS/9N・m強力な185PS/228N・mに向上。システム最高出力も3PS高い309PSを発生する。このプラグインハイブリッドはリアモーターも含めたシステムなので、NX450h+は4WDのみの設定となる。

強化されたエンジンに加えてRAV4 PHVより車重が重く、タイヤも太いこともあって、NX450h+の88kmというEV航続距離、そして19.8km/リッターという燃費はRAV4 PHV(95kmと22.2km/リッター)より少し落ちる。

最後に紹介する2.4リッターターボのNX350は、新型NXのパワートレインで技術的にもっとも新しいもので、今回が世界初登場となる。シリンダーブロックは他のA25Aと共通ながら、ストロークを短縮して2.4リッター化したうえで、ツインスクロールターボを組み合わせる。型式名は「T24A-FTS」。2.5リッターのまま過給しなかったのは「過給エンジンとしての理想的なボアストローク比を追求した」からという。

279PS/430N・mという最高出力/最大トルクは、トヨタおよびレクサスの現行エンジンとしては屈指の高性能である。変速機は8段ATで駆動方式は4WDのみ。4WDシステムはNX250と同じく油圧多板クラッチ式(ただし、ユニットはちがう)だが、フルグリップ時でもリアに25%の駆動力を配分するフルタイム式であり、トルク配分制御は可変ダンパーやパワーステアリングとも協調して、レクサスの目指す「すっきりと奥深い走り」を実現しているという。

【ボディーサイズ/デザイン】
新世代のレクサスデザインを採用

新型NXのスリーサイズは4660×1865×1660mm。先代と比較すると、全長で30mm、全幅で20mm、全高で15mm大きくなっただけで、実質的なサイズ感はほぼ保たれているといっていい。先述のとおり、2690mmというホイールベースは同じプラットフォームを使うトヨタRAV4/ハリアーと同寸で、全長はRAV4とハリアーのちょうど中間くらいだ。全長とホイールベースがともに30mm延びたいっぽうで、リアオーバーハングは17mm短縮しており、よりロングノーズのどっしり構えたプロポーションとなっている。

注目なのは、全幅が最近の日本車でひとつのボーダーラインとなっている1850mを超過した1865mmであることだ。開発チーム内でもかなりの議論があったというが、今回はワイドトレッド化による“走り”の向上とビジュアル上のバランスを優先したとか。ただ、ジャーマンスリーの競合車はさらに幅広で、1890~1900mmである。

幾何学的モチーフが特徴的だった先代とは正反対に、サイドのプレスラインを極力排したカタマリ感が新型NXのエクステリアデザインの特徴だ。NXの意匠はレクサスデザインの新しいチャプターともうたわれており、先述の、途中で折れずに直立したフロントグリルや、リアゲートの新しいLEXUSロゴのほか、「機能的本質や動的パフォーマンスに根ざしたプロポーションや独自性と、テクノロジーに根ざした“シンプリシティ”の追求」が新レクサスデザインのテーマだという。

たとえば直立したフロントグリルは冷却性能でも有利であり、モールを排したサイドラインは気流を整えて操縦安定性を向上させるなど、新デザインモチーフのいくつかには機能的な裏づけもある。またドアアウターハンドルは、一見すると一般的なバー式だが、実際にはハンドル裏に電磁スイッチを組み込んだ「e-ラッチ」=電磁開閉式ドアである。万が一のために、手動ハンドルもバーの下に隠されている。

新型「NX」のフロントビュー。ベースグレードや「バージョンL」のフロントグリルには、やや珍しい縦方向の変則ハニカム模様(U字模様?)が用いられている。(写真:花村英典)
新型「NX」のフロントビュー。ベースグレードや「バージョンL」のフロントグリルには、やや珍しい縦方向の変則ハニカム模様(U字模様?)が用いられている。(写真:花村英典)拡大
サイドビューでは、既存のモデルとは趣を異にするパネルの造形が特徴。プレスラインを減らし、大きな面の変化で抑揚を表している。(写真:花村英典)
サイドビューでは、既存のモデルとは趣を異にするパネルの造形が特徴。プレスラインを減らし、大きな面の変化で抑揚を表している。(写真:花村英典)拡大
文字間の開けられた「LEXUS」のロゴも、新しいレクサスデザインのひとつとして挙げられる。(写真:花村英典)
文字間の開けられた「LEXUS」のロゴも、新しいレクサスデザインのひとつとして挙げられる。(写真:花村英典)拡大
ボディーカラーは全11種類と豊富。そのうち「ヒートブルーコントラストレイヤリング」「ホワイトノーヴァガラスフレーク」は「Fスポーツ」の専用色で、逆に同グレードでは「ソニッククォーツ」が選択不可となっている。(写真:花村英典)
ボディーカラーは全11種類と豊富。そのうち「ヒートブルーコントラストレイヤリング」「ホワイトノーヴァガラスフレーク」は「Fスポーツ」の専用色で、逆に同グレードでは「ソニッククォーツ」が選択不可となっている。(写真:花村英典)拡大

【インテリア/荷室/装備】
飛躍的に進んだデジタル化とADASの機能拡充

インテリアデザインもレクサスとしては新しいフェーズに入ったそうで、クルマとの一体感を追求したTazuna(手綱)コンセプトをうたう。同コンセプトの具体的な特徴としては、ドライバー側に傾斜した大型センターディスプレイや、ステアリングホイールからシフトレバーへの手の動線に主要スイッチを置き、コンパクトにまとめられた操作系などがある。

これまではジャーマンスリーに対して出遅れ感があったデジタル化も、新型NXで飛躍的に進んだ。メーターパネルは全車カラーTFT液晶で、センターディスプレイには14インチという大画面のタッチスクリーンを採用(下級グレードは9.8インチ)。多様な機能や携帯端末のアプリを、アイコンで操作できる。

また、頻繁に操作するステアリングスイッチはタッチセンサー式となっている。操作するごとにスイッチ配列がヘッドアップディスプレイに映し出されるほか、ワンタッチでボタン機能を切り替えられるのが興味深い。

室内空間はよくも悪くもRAV4やハリアーと選ぶところはない。つまり、大柄な大人4人でも不足ない居住空間で、ヘッドルームもたっぷりあるのがうれしい。同じく荷室も奇をてらったギミックはないが、ハンズフリーパワーテールゲートは全車標準となるほか、一部グレードには電動のシートバック格納機構も用意される。トノカバーが軽量な折り畳み式で、不要なときは床下に収納できるのは、ちょっと感心する便利ポイントである。

先進運転支援システム(ADAS)も、このNXからトヨタ/レクサスは最新世代に切り替わっており、現時点では世界最高レベルの充実ぶりといっていい。新機能としては前方の青信号を検知して発進を促してくれる「トラフィックムーブメントノーティフィケーション」や、前方のクルマやカーブを検知して、さりげなくブレーキをかけてくれる「プロアクティブドライビングアシスト」などがある。さらには自動駐車システムの「アドバンストパーク」に車外からスマホで操作できるリモート機能も追加された。自宅ガレージがドアも開けられないくらいせまい場合にはとても便利だ。

従来モデルから大幅にデジタル化が進んだインストゥルメントパネルまわり。メーターはフル液晶となり、ダッシュボード中央には巨大なタッチスクリーンが装備された。
従来モデルから大幅にデジタル化が進んだインストゥルメントパネルまわり。メーターはフル液晶となり、ダッシュボード中央には巨大なタッチスクリーンが装備された。拡大
空間効率に優れる「GA-K」プラットフォームをベースとするだけに、車内空間に不満を覚える箇所はない。レクサス製クロスオーバーSUVに共通する、ルーフの頂点を後席の直上に持ってくるボディー形状もあって、後席でも頭まわりに圧迫感を覚えることはない。
空間効率に優れる「GA-K」プラットフォームをベースとするだけに、車内空間に不満を覚える箇所はない。レクサス製クロスオーバーSUVに共通する、ルーフの頂点を後席の直上に持ってくるボディー形状もあって、後席でも頭まわりに圧迫感を覚えることはない。拡大
荷室容量は5人乗車時で520リッター、後席をたたんだ状態で1141リッター。床下収納や3WAYのデッキボード、小物収納用のサイドネットなどを備えており、実用性は高い。(写真:郡大二郎)
荷室容量は5人乗車時で520リッター、後席をたたんだ状態で1141リッター。床下収納や3WAYのデッキボード、小物収納用のサイドネットなどを備えており、実用性は高い。(写真:郡大二郎)拡大
ADASの充実ぶりも新型「NX」の魅力。「NX350h」「NX450h+“バージョンL”」にオプション設定される「アドバンストパーク」機能は最新のものとなっており、専用のアプリを使えば、携帯端末を介してリモートで並列・縦列駐車、駐車枠からの出庫が可能となる。
ADASの充実ぶりも新型「NX」の魅力。「NX350h」「NX450h+“バージョンL”」にオプション設定される「アドバンストパーク」機能は最新のものとなっており、専用のアプリを使えば、携帯端末を介してリモートで並列・縦列駐車、駐車枠からの出庫が可能となる。拡大

【バイヤーズガイド】
“グレード選び”とならんで注意すべき問題が……

ADASについては、アドバンストパークだけはNX350h全車とNX450h+“バージョンL”のみで選択可能なオプションだが、それ以外の安全性に関わる主要機能にグレード差はない。よって、まずは豊富なパワートレイン群から、自分の嗜好や用途に合わせたひとつを選び出すのが第一歩だ。

プラグインハイブリッドや2.4リッターターボは価格や性能から考えても「これしかない!」という強い思い入れをもって選ぶべきもので、これらを所望する好事家に、ここでとやかく申し上げることはない。逆に、この時点で迷っているようなら、2.5リッターハイブリッドのNX350hか2.5リッター自然吸気のNX250のどちらかを選ぶのが無難だ。どこでも十二分に走って乗り心地もよいNX250は買い得感が高いが、それより65万円高のNX350hも、有利であろうリセールや燃費を考えれば、トータルでは高くない。

また両車には4WDの選択肢もあるが、どちらも舗装路での操縦安定性に明確な影響を及ぼすほどでもない。積雪地に住んでいたり、ウインタースポーツをたしなんだりするのでもなければ、FFで問題ないと思われる。

高級ブランドのレクサスゆえ、NX250、NX350hともに素のベースグレードでもいわゆる“フル装備”であり、外観にも廉価感はほとんどない。ただ、NXの大きな特徴である14センターディスプレイはバージョンLとFスポーツにしか備わらず、ベースグレードではカラーヘッドアップディスプレイもオプションあつかいとなる。またステアリングヒーターにシートヒーター、そしてシートベンチレーターなどの、一度使ってしまうと手放せなくなる装備も、やはりバージョンLとFスポーツでしか手に入らない。さらに両グレードでは20インチ(ベースグレードは18インチ)ホイールと本革シートも追加されるので、ベースグレードの88万円高という価格も、予算さえ許せば割高感はない。

そんなNX最大の問題は、納期である。2022年2月中旬現在、NXのホームページには「これからご購入をいただく場合は、おクルマをお届けするのに、1年以上の期間お待ちいただく状況です」とある。注文する際には、今乗っているクルマの車検再取得、あるいはつなぎのクルマの調達なども含めた検討が必要だ。

(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車、花村英典、郡大二郎/編集=堀田剛資)

注目度の高い「NX350」と「NX450h+」だが、いずれもキャラクターの立ったモデルなのは事実。「これが欲しい!」と決め打ちする人以外は、「NX250」や「NX350h」を選ぶほうが無難だろう。
注目度の高い「NX350」と「NX450h+」だが、いずれもキャラクターの立ったモデルなのは事実。「これが欲しい!」と決め打ちする人以外は、「NX250」や「NX350h」を選ぶほうが無難だろう。拡大
装備面でのベースグレードと「バージョンL」「Fスポーツ」の差はかなり大きく、ベースグレードではヘッドアップディスプレイもオプション扱いとなる。
装備面でのベースグレードと「バージョンL」「Fスポーツ」の差はかなり大きく、ベースグレードではヘッドアップディスプレイもオプション扱いとなる。拡大
「バージョンL」「Fスポーツ」に装備される14インチのセンターディスプレイ(上)と、ベースグレードに装備される9.8インチのセンターディスプレイ(下)。
「バージョンL」「Fスポーツ」に装備される14インチのセンターディスプレイ(上)と、ベースグレードに装備される9.8インチのセンターディスプレイ(下)。拡大
他のモデルでは「バージョンL」と「Fスポーツ」は同価格だが、「NX450h+」の場合のみ後者のほうが24万円高となる。装備の設定も若干異なり、他モデルではバージョンL以外オプション扱いとなる3眼フルLEDヘッドランプが、NX450h+“Fスポーツ”には標準装備される。(写真:郡大二郎)
他のモデルでは「バージョンL」と「Fスポーツ」は同価格だが、「NX450h+」の場合のみ後者のほうが24万円高となる。装備の設定も若干異なり、他モデルではバージョンL以外オプション扱いとなる3眼フルLEDヘッドランプが、NX450h+“Fスポーツ”には標準装備される。(写真:郡大二郎)拡大
新世代レクサスの旗手として注目を集めている「NX」。目下最大の問題は、実に1年以上にもなるという納期の長さだ(2022年2月18日時点)。
新世代レクサスの旗手として注目を集めている「NX」。目下最大の問題は、実に1年以上にもなるという納期の長さだ(2022年2月18日時点)。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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