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ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ(RWD)

新しい風が吹いてきた 2022.02.22 試乗記 生方 聡 2種類の電動車を引っさげ日本に再上陸を果たしたヒュンダイ改めヒョンデの100%電気自動車「IONIQ(アイオニック)5」に試乗。ゆとりある室内空間と四角い前後ランプが特徴的な、クロスオーバーEVの走りやいかに。

よみがえる記憶

約12年ぶりに日本で復活したヒョンデ(Hyndai)。“ヒュンダイ”と呼ばれていたころ、最後に乗ったクルマは何だろう……なんて考えながら、日本に上陸したばかりのアイオニック5を運転していたら、雨が降っているわけでもないのにワイパーを動かしてしまった。そうそう、コンパクトカーの「i30」に乗ったときにも同じことをしたなと、遠い日の記憶がふとよみがえる。

ヒョンデの日本仕様車は、ウインカーレバーが右、ワイパーのレバーが左で日本車と同じ。その伝統はこのアイオニック5にも受け継がれていて、輸入車だからと、ウインカーを出すつもりで左のレバーを操作してしまったのだ。

電気自動車(EV)のアイオニック5と燃料電池車の「NEXO(ネッソ)」の2モデルで日本に再上陸したヒョンデ。このうち、販売の中心になるのがアイオニック5だ。シャープなエクステリアデザインが目を引くこのクルマ、遠目にはコンパクトな5ドアハッチバックに見えるが、実際には全高が1645mmもある、背の高いクロスオーバー。3000mmと長いホイールベースと全高とのバランスが、目の錯覚を生み出しているのだろう。

EV専用に開発したという「E-GMP」プラットフォームを採用するアイオニック5は、前後アクスル間の床下に駆動用のリチウムイオンバッテリーを搭載し、1基の電気モーターで後輪を、または前後合わせて2基の電気モーターで4輪を駆動する。バッテリー容量はベースグレードが58KWh、それ以外は72.6kWhで、今回試乗する後輪駆動の「アイオニック5ラウンジ」の場合、一充電走行距離のカタログ値(WLTCモード)は618kmに及ぶ。

2022年2月に、日本の乗用車市場への再参入を発表したヒョンデ(旧ヒュンダイ)。今回試乗した100%電気自動車の「アイオニック5」(写真)と燃料電池自動車「ネッソ」で勝負をかける。
2022年2月に、日本の乗用車市場への再参入を発表したヒョンデ(旧ヒュンダイ)。今回試乗した100%電気自動車の「アイオニック5」(写真)と燃料電池自動車「ネッソ」で勝負をかける。拡大
「アイオニック5」のインテリア。日本仕様車は、ウインカーレバーが右、ワイパーのレバーが左で日本車と同じレイアウトになっている。
「アイオニック5」のインテリア。日本仕様車は、ウインカーレバーが右、ワイパーのレバーが左で日本車と同じレイアウトになっている。拡大
オートライトコントロールやハイビームアシストが組み込まれたLEDヘッドランプは、「アイオニック5」全車に標準装備となる。
オートライトコントロールやハイビームアシストが組み込まれたLEDヘッドランプは、「アイオニック5」全車に標準装備となる。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4635×1890×1645mm、ホイールベースは3000mm。遠目にはコンパクトな5ドアハッチバックに見えるが、「レクサスNX」に近いフットプリントを有している。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4635×1890×1645mm、ホイールベースは3000mm。遠目にはコンパクトな5ドアハッチバックに見えるが、「レクサスNX」に近いフットプリントを有している。拡大
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装備の充実もセリングポイント

背の高いボディーと直線基調のエクステリアのおかげで、路上では実に存在感のあるアイオニック5。格納式のドアハンドルを操作して室内をのぞくと、シャープな外観とは対照的に、ラウンジのような心地よい空間が広がっている。

いまどきのクルマらしく、インストゥルメントパネルは2つの大型液晶ディスプレイで構成され実にシンプル。一方、エアコンの操作には物理スイッチが残されており、見た目の新しさと操作性を両立しているのがうれしいところだ。

EV専用プラットフォームを用いることでフラットなフロアを実現するアイオニック5は、フロアトンネルがなく足元がすっきりしている。ロングホイールベースの恩恵で後席のレッグスペースは楽に足が組めるほど広い。また、前席はスライド式のセンターコンソールを後ろに下げれば横の移動も可能である。

装備が充実しているのもこのクルマの魅力のひとつで、アダプティブクルーズコントロールや衝突防止ブレーキシステム、リモートパーキングシステムなどの運転支援システム、リモート操作に対応するコネクテッド機能、ナビゲーションシステムの地図自動更新、BOSEプレミアムサウンドシステムなどが標準で装着されている。この内容で549万円というプライスは、かなり魅力的だ。

エクステリアデザインは、1974年のトリノショーで発表された「ヒュンダイ・ポニー コンセプト」へのオマージュと説明されている。
エクステリアデザインは、1974年のトリノショーで発表された「ヒュンダイ・ポニー コンセプト」へのオマージュと説明されている。拡大
12.3インチサイズのメーターパネル。淡いカラーリングのベゼルに、同サイズのナビゲーション一体型総合ディスプレイと並ぶように埋め込まれている。
12.3インチサイズのメーターパネル。淡いカラーリングのベゼルに、同サイズのナビゲーション一体型総合ディスプレイと並ぶように埋め込まれている。拡大
前席左右の間にスライド式のセンターコンソールを配置。可動範囲は140mmで、後ろに下げると左右座席間で行き来ができるほどのスペースが出現する。
前席左右の間にスライド式のセンターコンソールを配置。可動範囲は140mmで、後ろに下げると左右座席間で行き来ができるほどのスペースが出現する。拡大
5人乗車時の荷室容量は527リッター。60:40の分割可倒式シートバックをすべて前方に倒すと、荷室容量を1016リッターに拡大できる。
5人乗車時の荷室容量は527リッター。60:40の分割可倒式シートバックをすべて前方に倒すと、荷室容量を1016リッターに拡大できる。拡大

CEV補助金は80万円にアップ

外出先で急速充電するときは、車内で待機することもよくあるが、広い後席はメールをチェックするなど仕事をするにも快適な環境だし、スイッチひとつで大きく倒せる前席でリラックスできるのもいい。

見逃せないのは、輸入EVには珍しく車載バッテリーから電力を取り出すV2L(ヴィークルトゥロード)機能を標準で搭載し、V2H(ヴィークルトゥホーム)にも対応すること。

V2Lは室内のコンセントや充電コネクターにつないだコネクターからAC100V/最大1600Wの電力が取り出せるのだが、これがあるおかげで、令和3年度クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)は、通常の上限額が60万円のところ、このアイオニック5は80万円に引き上げられ、その満額が獲得できる予定だ。冒頭のウインカーレバー同様、日本の事情に即した対応は、カスタマーとしてはうれしいかぎりである。

前置きはこのくらいにして、早速試乗といこう。ステアリングコラムの右側にあるシフトダイヤルでDを選び、ブレーキから足を離すとアイオニック5はゆっくりとクリープを始める。パドル操作で、アクセルペダルをオフしたときの回生ブレーキレベルが0から3まで選べるが、さらにいわゆるワンペダルドライブが可能な「i-PEDAL」を利用することも可能。その場合は、クリープはしない。

EV専用に開発したという「E-GMP」プラットフォームが採用された「アイオニック5」。前後アクスル間の床下に駆動用のリチウムイオンバッテリーを搭載している。
EV専用に開発したという「E-GMP」プラットフォームが採用された「アイオニック5」。前後アクスル間の床下に駆動用のリチウムイオンバッテリーを搭載している。拡大
充電中にくつろげるようレッグレストを標準装備した「リラクゼーションコンフォートシート」を前席に採用。本革シートの表皮加工は環境に配慮し、植物性オイルが用いられている。
充電中にくつろげるようレッグレストを標準装備した「リラクゼーションコンフォートシート」を前席に採用。本革シートの表皮加工は環境に配慮し、植物性オイルが用いられている。拡大
前席と同様に、後席にも電動スライド機能を内蔵。フロアカーペットやマット、ヘッドライニングなどは、サトウキビを原料とした糸からつくられている。
前席と同様に、後席にも電動スライド機能を内蔵。フロアカーペットやマット、ヘッドライニングなどは、サトウキビを原料とした糸からつくられている。拡大
「ビジョンルーフ」と名づけられた電動ブラインド付きの固定式ガラスルーフは、「ラウンジ」以上のグレードに標準装備となる。
「ビジョンルーフ」と名づけられた電動ブラインド付きの固定式ガラスルーフは、「ラウンジ」以上のグレードに標準装備となる。拡大

期待以上にパワフルな走り

発進時から最大トルクの350N・mを発生可能なモーターは出足から力強く、アクセルペダルを軽く踏むだけで1990kgのボディーを軽々と加速してみせる。EVだけに加速は静かでスムーズ。アクセルペダルを強く踏みつければ、一般道でも高速道路でもワインディングロードでも、期待以上の素早い加速が楽しめる。

このクルマには「ミシュラン・プライマシー4 SUV」タイヤが装着されているが、ロードノイズがよく抑えられていることもあって、さらに印象をよくしている。重量のかさむバッテリーを床下に収める低重心設計や前950kg、後1040kgという重量配分のおかげで、ワインディングロードでのハンドリングはなかなか軽快。

乗り心地そのものはやや硬めで、クロスオーバースタイルにもかかわらずロール方向の動きは気にならない。ただ、路面によってはピッチングが収まりにくく、また、目地段差を越えたときにショックを伝えがちなど、サスペンションのセッティングは煮詰める余地がありそうだ。

短時間の試乗ということで、電費をチェックしたり、実際に充電したりなど、細かい確認はできなかったものの、全体的には期待以上の仕上がりと高いコストパフォーマンスが確認できたアイオニック5。日本市場で成功するかどうかは未知数だが、少なくともライバルにとっては脅威になるに違いない。

(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)

フロントボンネット下に備わる荷室の容量は、後輪駆動車(写真)が57リッター、4輪駆動車が24リッター。
フロントボンネット下に備わる荷室の容量は、後輪駆動車(写真)が57リッター、4輪駆動車が24リッター。拡大
今回試乗した後輪駆動の「アイオニック5ラウンジ」には、235/55R19サイズの「ミシュラン・プライマシー4 SUV」タイヤが装着されていた。
今回試乗した後輪駆動の「アイオニック5ラウンジ」には、235/55R19サイズの「ミシュラン・プライマシー4 SUV」タイヤが装着されていた。拡大
ボディー右のリアフェンダーに充電口を配置。車載バッテリーから電力を取り出すV2L(ヴィークルトゥロード)機能を標準で搭載し、V2H(ヴィークルトゥホーム)にも対応している。
ボディー右のリアフェンダーに充電口を配置。車載バッテリーから電力を取り出すV2L(ヴィークルトゥロード)機能を標準で搭載し、V2H(ヴィークルトゥホーム)にも対応している。拡大
今回試乗した車両の外板色は、「サイバーグレーメタリック」と呼ばれる5万5000円のオプションカラー。これを含め「アイオニック5」では、全6色から選択できる。
今回試乗した車両の外板色は、「サイバーグレーメタリック」と呼ばれる5万5000円のオプションカラー。これを含め「アイオニック5」では、全6色から選択できる。拡大

テスト車のデータ

ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1890×1645mm
ホイールベース:3000mm
車重:1990kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:217PS(160kW)/4400-9000rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/0-4200rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105W XL/(後)235/55R19 105W XL(ミシュラン・プライマシー4 SUV)
一充電走行距離:618km(WLTCモード、自社測定値)
価格:549万円/テスト車=554万5000円
オプション装備:ボディーカラー<サイバーグレーメタリック>(5万5000円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:538km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

ヒョンデ・アイオニック5ラウンジ
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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