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三菱アウトランダーP(4WD)【試乗記】

磨けば光るスリーダイヤ 2022.03.14 試乗記 「やれることは全部やりました」とばかりにすべてが刷新され、先代モデルとは別物のように進化した新型「三菱アウトランダー」。まさにフルスイングだ。ただし、野球の心得がある人ならご存じの通り、フルスイングには多少の欠点がつきものでもある。

待望のPHEV×3列シート

新型アウトランダーは、2016年春に締結されたルノー・日産とのアライアンス下で開発された初の本格的な三菱車である。軽自動車の「eK」シリーズも、現行モデルはアライアンス締結後の商品だが、その開発は日産によるもので、三菱の担当はeKのエクステリアデザインと生産のみだ。

対して、新型アウトランダーはアライアンス用に日産が開発を担当した「CMF-C/D」プラットフォームを土台としつつも、クルマそのものの企画、デザイン、設計、開発、生産、販売はすべて三菱の独自プロジェクトである。つまり、完全な三菱製品だ。アライアンスのCMF-C/Dに、先代アウトランダーや「エクリプス クロス」でおなじみの2.4リッタープラグインハイブリッドシステム(の改良型)を搭載している。

ただ、新型アウトランダーの企画はアライアンス以前にスタートしていたといい、当初は独自のプラットフォーム開発を前提に、その基本的な図面が形になるところまで進んでいたとか。しかし、アライアンスを機に独自プラットフォームの計画は白紙撤回された。新たなプラットフォームとなるCMF-C/Dもすでに開発中だったが、新型アウトランダーでは「プラグインハイブリッドと3列シート」はどうしても外せない要件であり、三菱側の要求でそのための設計変更が加えられたという。ちなみに、先代になかったプラグインハイブリッド車(PHEV)の3列シート仕様を強く望んだのは、ほかでもない日本市場だ。

新型アウトランダーの開発途中には、あの「パジェロ」も姿を消したことで、アウトランダーが押しも押されもせぬ三菱のフラッグシップとなった。今後のプラットフォーム開発はすべてルノーと日産が担当するようだが、PHEVだけはアライアンス内でも三菱がリードする分野とされている。……ということもあって、新型アウトランダーはとにかく三菱のすべてを注ぎ込んだ力作の感が強い。

2021年10月28日の受注開始から約3カ月で1万台以上のオーダーがあったという新型「三菱アウトランダー」。先代モデルの年間最高販売台数1万1000台を軽々と上回る勢いで売れている。
2021年10月28日の受注開始から約3カ月で1万台以上のオーダーがあったという新型「三菱アウトランダー」。先代モデルの年間最高販売台数1万1000台を軽々と上回る勢いで売れている。拡大
フロントマスクには最新世代の「ダイナミックシールド」デザインを採用。頰の部分にある四角いユニットがヘッドランプで、ボンネットはスリーダイヤバッジ周辺のメッシュ部分から開く。
フロントマスクには最新世代の「ダイナミックシールド」デザインを採用。頰の部分にある四角いユニットがヘッドランプで、ボンネットはスリーダイヤバッジ周辺のメッシュ部分から開く。拡大
エントリーグレード「M」以外では20インチのタイヤ&ホイールが標準。今回の試乗車は最上級グレード「P」で、ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックDM-V3」を履いていた。
エントリーグレード「M」以外では20インチのタイヤ&ホイールが標準。今回の試乗車は最上級グレード「P」で、ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックDM-V3」を履いていた。拡大
プラグインハイブリッド車でありながら急速充電にも対応しているのが「アウトランダー」の特徴。
プラグインハイブリッド車でありながら急速充電にも対応しているのが「アウトランダー」の特徴。拡大

統一されたクリック感

インテリアも先代からの質感向上が著しいが、注目すべきは、新型アウトランダーが「三菱タッチ」を全面的に適用した最初の量産車でもあることだ。三菱タッチとは、三菱全体で操作性や触感を統一する取り組みだそうで、エクリプス クロスのビッグマイナーチェンジから部分的に取り入れられた。とくにドライバーが触れる部分について、三菱タッチの基準に合致しているかを専門のチームが確認してチューニングしていった。

たとえば、ドライブモードセレクターからエアコン、オーディオのツマミにいたるまで、指先が触れる部分にはアルミ風メッキと凹凸のダイヤモンドカット処理が施されている。さらに回転時には統一されたクリック感となっており、実際、この部分はすべて三菱専用にチューニングされているそうだ。

ただ、こうしたスイッチ類の設計もプラットフォーム領域の話となるので、内部構造を三菱の希望に合わせる、お互い妥協したところに落とし込む、あるいはどうしても譲れなければ専用部品を使う……と、開発を担当する日産との折衝が一つひとつ必要だったという。さらに細かく見ると、ダイヤル式のツマミだけでなく、パワーウィンドウスイッチもアルミ調メッキでダイヤモンドカット風成形となるなど、この分野への開発陣の思い入れはとても強い。

ステアリングホイールも三菱タッチの一環で、今回まったく新しいものに切り替えられている。リムはこれまでよりわずかに太目で握りがいのあるものになっており、新型アウトランダーの、中立付近では意外なほどゆったりとしたレスポンスにもマッチしているように感じられた。

駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は先代比で約1.5倍の20kWh。満充電からのEV航続可能距離は83kmと公表されている(「P」の場合)。
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は先代比で約1.5倍の20kWh。満充電からのEV航続可能距離は83kmと公表されている(「P」の場合)。拡大
「P」ではブラック×サドルタンの専用内装が標準のところ、試乗車はライトグレーレザー内装のダウングレードオプション(-2万2000円)をチョイスしていた。「ホワイトダイヤモンド」のボディーカラーとのマッチングはこちらのほうがいいかもしれない。
「P」ではブラック×サドルタンの専用内装が標準のところ、試乗車はライトグレーレザー内装のダウングレードオプション(-2万2000円)をチョイスしていた。「ホワイトダイヤモンド」のボディーカラーとのマッチングはこちらのほうがいいかもしれない。拡大
側面にダイヤモンドカット処理が施されたドライブモードセレクターはセンターコンソールのアルミ調化粧パネル上にレイアウトされている。
側面にダイヤモンドカット処理が施されたドライブモードセレクターはセンターコンソールのアルミ調化粧パネル上にレイアウトされている。拡大
コンソールのピアノブラック部分にはワンペダルドライブを可能にする「イノベーティブペダルオペレーションモード」のスイッチと、プラグインハイブリッドシステムの電力管理モード切り替えスイッチが並んでいる。
コンソールのピアノブラック部分にはワンペダルドライブを可能にする「イノベーティブペダルオペレーションモード」のスイッチと、プラグインハイブリッドシステムの電力管理モード切り替えスイッチが並んでいる。拡大

安定したままクルリと曲がる

三菱のプラグインハイブリッドは非常に電気感の強いシステムだ。低負荷高速巡航などではエンジンも直接駆動に参加するが、そのほかはフルパワー時も含めて、ほぼ全面的にバッテリーもしくはシリーズ充電によるモーター駆動で走る。4WDパワートレインの基本構造は先代やエクリプス クロスと同じだが、リチウムイオン電池は容量が拡大して、モーターも前後とも明確にパワーアップしている。

フロントよりリアのモーターのほうがパワフルなのも三菱PHEVの特徴で、それを使って前後トルクを自在に配分しつつ、ときには4つのブレーキを制御して左右のトルク配分もコントロールする。潜在能力としてはエクリプス クロス以上に、クルマをグリングリン曲げることも可能なはずだが、舗装路での回頭性を重視した「ターマック」モードでも、エクリプス クロスより明らかに安定している。

これは新プラットフォーム効果だろう。基本的なグリップ能力や安定性が大きく向上しているので、極端なトルク配分やブレーキ制御を入れずともきっちり曲がる。逆に思い切った制御を入れても、クルマ自体の動きがエクリプス クロスほど大げさにならない。実際、新型アウトランダーの開発担当氏も「CMF-C/Dは最初に乗ったときから素性の良さが印象的でした。基本的には最初からリニアなフィーリングで、ステアリングの振動もよく抑えられていました」と語っている。

サスペンションは意外なほどにソフトな仕立てで、ストローク感のある乗り心地である。なのに、旋回時にはエクリプス クロスほどロールせず、安定した姿勢のまま思ったとおりの軌跡をトレースしてくれるのは新型プラットフォームの恩恵だろう。高速でも上下動こそ押さえが利いているものの、最近のクルマとしては前後に揺れるピッチングが少し多めだ。500万円級の上級SUVとしては、ここだけはもう一歩落ち着かせたいところだが、もしかしたら、2705mmというホイールベースが、DセグメントSUVとしては平均以上でも、2.1t強という重量に対しては短いのかもしれない。また、自慢の20インチもピッチングに影響している可能性はある。

駆動用モーターの最高出力はフロントが116PSでリアが136PS。充電した電気やエンジンが発電した電気、回生で発生した電気などによって、ほとんどの状況でモーター駆動となるのが特徴だ。
駆動用モーターの最高出力はフロントが116PSでリアが136PS。充電した電気やエンジンが発電した電気、回生で発生した電気などによって、ほとんどの状況でモーター駆動となるのが特徴だ。拡大
内装のダウングレードオプションはライトグレーのほかにブラックも選べる。ダッシュボードが水平基調のため、運転席からの眺めは非常に良好。
内装のダウングレードオプションはライトグレーのほかにブラックも選べる。ダッシュボードが水平基調のため、運転席からの眺めは非常に良好。拡大
2列目シートにもヒーターが標準装備。中央席の背もたれそのものがアームレストとして機能するため、倒すと左右独立シートのような雰囲気になる。
2列目シートにもヒーターが標準装備。中央席の背もたれそのものがアームレストとして機能するため、倒すと左右独立シートのような雰囲気になる。拡大
3列目シートは子供専用ともいうべきスペース感で、2列目を倒して撮影しても足元空間はこれくらいしかない。
3列目シートは子供専用ともいうべきスペース感で、2列目を倒して撮影しても足元空間はこれくらいしかない。拡大

機能が増えたゆえの問題点も

自慢のドライブモードセレクターは中立の「ノーマル」から右に回すと「ターマック」「グラベル」「スノー」「マッド」と路面による選択肢が、左に回すと「エコ」「パワー」というパワトレ特性の選択肢がある。エコやパワーは「日常使いのときにお好みで……」という想定らしいが、そもそも前提が異なる選択肢を、ひとつのダイヤルで選ばせられるのは、ちょっと違和感がある。ドライバーとしては「グラベルをパワーモードで走りたい」みたいに思うこともあるのだ。

ただ、このシステムはすべてのモードごとにアクセル特性も最適化しているので、技術者目線では、今のままで自然なのだろう。また、一つひとつの安全性を実地検証しなければならないから、やみくもにパターンの組み合わせを増やしづらいことも理解できる。

しかし、たとえば舗装された山坂道を元気よく走りたいときには、ドライブモードをターマックにすべきか、パワーにすべきかは迷うところだ。両モードは、実際の加減速特性だけなら体感的には区別がつきにくいくらい似ているが、コーナーでは積極的にトルク配分するターマックが明らかに曲がって、パワーモードは良くも悪くも安定したアンダーステア感が強い。ただ、ターマックでも今やさほどクセがあるわけではなく、個人的にはどちらかに統一してくれたほうが使いやすいと思う。

また、新型アウトランダーには減速度を「B0」から「B5」まで設定できるパドルシフトのほか、いわゆるワンペダルドライブを可能とする「イノベーティブペダルオペレーションモード」を作動させるボタンがコンソールにある。こっちを作動させると減速感度はB5以上に強力となるが、完全停止にまではいたらず、同時にシフトパドルは無効になる。どちらも減速度を任意にコントロールする機能なのに、作動させるにはパドルとボタンという別物の操作を要して、しかも両立しないのはやはり違和感がある。

ドライブモードは「ノーマル」「ターマック」「グラベル」「スノー」「マッド」と多彩。ターマックは後輪への駆動力配分を高めるなどしてワインディングロードをキビキビと走れるモード。
ドライブモードは「ノーマル」「ターマック」「グラベル」「スノー」「マッド」と多彩。ターマックは後輪への駆動力配分を高めるなどしてワインディングロードをキビキビと走れるモード。拡大
未舗装路やぬれた路面向きの「グラベル」モードはトラクション性能を高めて加速時やコーナリング時の安定性を向上させる。
未舗装路やぬれた路面向きの「グラベル」モードはトラクション性能を高めて加速時やコーナリング時の安定性を向上させる。拡大
直進加速能力を高める「パワー」モード。加速の力強さとアクセルレスポンスを最大限に高める。
直進加速能力を高める「パワー」モード。加速の力強さとアクセルレスポンスを最大限に高める。拡大
ドライブモードに加えて、プラグインハイブリッドシステムの電力管理モードが「ノーマル」「EV」「セーブ」「チャージ」の4種類ある。
ドライブモードに加えて、プラグインハイブリッドシステムの電力管理モードが「ノーマル」「EV」「セーブ」「チャージ」の4種類ある。拡大

ハイブリッドも見てみたい

電動パワートレインは良くも悪くも、それ以前には考えられなかったような走りが実現できるし、今回は新生三菱の新フラッグシップということで、各部に「やれることは全部やりました」的なエンジニアの思いがほとばしっている。クルマ好きにとって、それはとても好ましい。ただ、今のままではその思いが空回りしている感がなきにしもあらずで、ドライブモードといい、シフトパドルとイノベーティブペダルオペレーションの関係といい、あらためて機能の交通整理をお願いしたいところだ。

今回の試乗では、満タン・満充電状態でスタートして、市街地・高速・ワインディングロードを満遍なく280km弱走って、23.9リッターのレギュラーガソリンを飲み込んだ。総合的な平均燃費は満タン法で11.6km/リッターとなるが、そのうち70kmくらいはEV走行だったので、そのぶんを差し引いた純粋なハイブリッド車としての燃費は9km/リッターを切る計算となる。

今回の試乗車がスタッドレスタイヤを履いていたことを考慮するにしても、やはりPHEVは日常的に外部充電を使ってこそ……というほかない。そういう環境にないユーザーには、新型アウトランダーを無条件ではオススメしづらいのも正直なところだ。

というわけで、容量20kWhという電池を大幅縮小して、クルマを軽量化して、非プラグイン燃費も価格もより手軽にしたアウトランダーPHEVならぬ「アウトランダー(ただの)ハイブリッド」が登場すれば、間口はもっと広がるだろうとは思う。まあ、三菱には普通のハイブリッド車の経験はなく、実際につくるのは簡単ではないだろう。そうなると、走りも今のようなモーターパワーで押しまくる豪快なファン・トゥ・ドライブとは異なる味つけになるかもしれない。けれど、それもまた見てみたい。

(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

3列目を起こした状態のラゲッジスペース。奥行きはそれほどないが、床面が一段深くなるため、意外に積載力がある。
3列目を起こした状態のラゲッジスペース。奥行きはそれほどないが、床面が一段深くなるため、意外に積載力がある。拡大
3列目シートは畳んで床下に格納可能で、跡地がフラットになるのもうれしいところ。この状態でゴルフバッグが4個、またはスーツケースが3個積める。
3列目シートは畳んで床下に格納可能で、跡地がフラットになるのもうれしいところ。この状態でゴルフバッグが4個、またはスーツケースが3個積める。拡大
2列目シートを前に倒した状態。荷室長は2040mmにも達する。
2列目シートを前に倒した状態。荷室長は2040mmにも達する。拡大
荷室の側面には2列目シートを格納するためのレバーと、駆動用リチウムイオンバッテリーの電力を取り出せるAC100V・1500Wのコンセントが備わっている。
荷室の側面には2列目シートを格納するためのレバーと、駆動用リチウムイオンバッテリーの電力を取り出せるAC100V・1500Wのコンセントが備わっている。拡大

テスト車のデータ

三菱アウトランダーP

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1860×1745mm
ホイールベース:2705mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:133PS(98kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/4300rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)
フロントモーター最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)
リアモーター最高出力:136PS(100kW)
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)
タイヤ:(前)255/45R20 101Q/(後)255/45R20 101Q(ブリヂストン・ブリザックDM-V3)
ハイブリッド燃料消費率:16.2km/リッター(WLTCモード)
価格:532万0700円/テスト車=564万5134円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトダイヤモンド>(7万7000円)/レザーシート<ライトグレー>(-2万2000円)/電動パノラマサンルーフ<スライド・セーフティー機能付き>(14万3000円) ※以下、販売店オプション ETC2.0車載器<スマートフォン連携ナビゲーション用>(4万6882円)/フロアマット<7人乗り用>(5万4252円)/トノカバー(2万2000円)/三角表示板(3300円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:3116km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:278.3km
使用燃料:23.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:11.6km/リッター(満タン法)/12.2km/リッター(車載燃費計計測値)

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