ポルシェ・マカン(RWD)
絶妙のバランス 2025.07.07 試乗記 電気自動車(BEV)として生まれ変わった2代目「ポルシェ・マカン」。536kmの一充電走行距離と、オーバーブースト時で360PSの最高出力をうたう後輪駆動のエントリーモデルを“天下の険”越えのロングドライブに連れ出し、さまざまなステージでその仕上がりを確かめた。2代目はフル電動
ポルシェジャパンの公式ウェブサイトをのぞいてみると、モデルラインナップの下から2番目にマカンが記されていて、“エレクトロ”と“ガソリン”の2タイプが用意されているのがわかる。ところがドイツ本国のウェブサイトではマカンのガソリン仕様は見当たらず、すでにBEV版のマカンしか手に入らない状況だ。
日本でもそう遠くない将来、マカンはBEVに一本化されるだろう。ただ、ドイツなどでは予想に反してBEVの販売が伸び悩んでいることもあり、ガソリンエンジン仕様の新型マカンが追加されるといううわさも出ているくらいで、これから新型を手に入れようという人は、決断の時期をいつにするか、決めあぐねているかもしれない。
一方、BEVに抵抗がない人や、新しいミッドサイズSUVタイプのBEVを待っていた人にとっては、ポルシェの人気モデルであるマカンがBEVとして生まれ変わったのは朗報のはずで、かくいう私もそんなひとりである。
フル電動化された新型マカンが、BEV専用に新開発されたプラットフォームを採用するのも、見どころのひとつだ。このマカンは、ポルシェとアウディが共同で開発したPPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)の上に成り立っていて、これまでの両社の経験が詰め込まれているかと思うと、その仕上がりに期待せずにはいられない。
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エントリーモデルは1モーターのRWD
ふたたびポルシェジャパンのウェブサイトをチェックすると、BEV仕様のマカンには、「マカン」「マカン4」「マカン4S」「マカン ターボ」の4モデルが用意されているのがわかる。ネーミングがこれまでのガソリン版と変わらないのはポルシェらしい。エントリーモデルのマカンが1モーターのRWDであるのに対して、他の3モデルはすべて2モーターの4WDとなる。
そのうち、今回試乗したのはエントリーモデルである“素”のマカンで、車両本体価格は、BEVのマカンでは唯一1000万円を切る998万円。ちなみにこの試乗車は、エクステンドレザーパッケージをはじめ、アダプティブエアサスペンションやオフロードデザインパッケージなどさまざまなオプションが装着され、それを加えると総額1418万3000円である。
新型マカンをじっくり眺めるのは今回が初めてで、これまでのガソリン版と比べてクーペらしさが強調されたフォルムがとてもスタイリッシュだ。サッシュレスドアが採用されたのもこの新型からである。
個人的に一番気に入っているのがフロントマスクで、リアエンジンの2ドアポルシェのようにラジエーターグリルのないデザインが、4灯式デイタイムランニングランプとともに、最新のポルシェらしい表情をつくり上げているのがたまらない。
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親しみやすい性格
ドアを開け運転席に移ると、現代的なドイツのプレミアムモデルらしく、3つのディスプレイを備えたコックピットが新鮮な印象だ。デジタル化を進める一方、メーター中央にパワーメーターを大きく表示できたり、センターパネルのスイッチを一部物理スイッチにしたりと、見やすさや操作のしやすさに配慮しているのがうれしいところだ。
メータークラスターの右横にスタートボタンがあるが、これを押さなくても、運転席に座り、ダッシュパネルのシフトレバーを操作すれば発進の準備は完了。ブレーキから足を離すと、マカンはゆっくりと動き始める。まずはアクセルペダルを軽く踏むと、マカンは穏やかな加速をみせた。アクセル操作に対して、マカンの加減速に過敏さはなく、ゆったりと運転できるので実に扱いやすい。
一方、アクセルペダルを大きく踏み込めば、通常時で340PS(オーバーブースト時は360PS)の最高出力を誇る電気モーターにより、2.2t超えのボディーとは思えないほど素早く力強い加速が得られる。アクセルペダルをいっぱいに踏み込んでも背中が押されるほどの勢いはないが、街なかから高速道路、さらにワインディングロードを走るうえでも十分に速い。
アクセルペダルを緩めたときに利く回生ブレーキはさほど強くなく、減速したいときはブレーキペダルを使えというのがポルシェの主張なのだろう。なお、回生ブレーキは車両メニューでオン/オフが可能である。
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ポルシェらしさを味わいたいなら
マカンは、標準ではスチールスプリングが組み合わされたサスペンションが搭載されるが、この試乗車には、ダンピングコントロール付きのエアサス「ポルシェアクティブサスペンションマネジメント(PASM)」が装着されていた。ホイールは標準の20インチからオプションの22インチに変更され、路面によっては鈍いショックが伝わることもあるが、それでも不快さはなく、やや硬めの乗り心地と重厚で落ち着いた挙動は、実にバランスのよい仕上がりだ。
ワインディングロードでペースを上げてもピッチングはよく抑えられ、また、コーナーでもロールは小さい。接地感も高く、安心してコーナーを駆け抜けることもできたが、ガソリンエンジン版に比べると、ハンドリングの俊敏さが弱まり、その部分にかぎってはポルシェらしさが足りないように思えた。ひょっとすると、オプションのリアアクスルステアリングを選ぶと、いつものポルシェらしいハンドリングが楽しめるのかもしれない。
パッケージングについても触れておくと、ガソリン版よりもホイールベースが86mm長くなったおかげで後席はより広くなり、足元には十分なスペースが確保されている。一方、ラゲッジスペースは先代とほぼ同じサイズで、このクラスのSUVとしては十分な広さ。ボンネット下には“フランク”と呼ばれる収納も用意され、使用頻度の少ない道具類を収めるには好都合だ。
今回は早朝に出発し、夜帰京するという長距離試乗だったが、扱いやすいパワートレインと洗練された走りには好感が持てる。ポルシェらしいスポーティーさを求めるなら、さらに上のモデルがふさわしいかもしれないが、バランスのよさという意味ではこのエントリーモデルは実に魅力的である。
(文=生方 聡/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一/車両協力=ポルシェジャパン)
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テスト車のデータ
ポルシェ・マカン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4784×1938×1623mm
ホイールベース:2893mm
車重:2220kg(DIN、空車重量)
駆動方式:RWD
モーター:永久磁石同期式電動モーター
最高出力:340PS(250kW)<オーバーブースト時:360PS(265kW)>
最大トルク:563N・m(57.4kgf・m)
タイヤ:(前)255/40R22 103Y XL/(後)295/35R22 108Y XL(ブリヂストン・ポテンザ スポーツ)
一充電走行距離:536-341km(WLTPモード)
交流電力量消費率:19.8-17.0kWh/100 km(約198-170Wh/km、WLTPモード)
価格:998万円/テスト車=1418万3000円
オプション装備:ボディーカラー<アベンチュリングリーンメタリック>(43万4000円)/エクステンドレザーインテリアパッケージ<ブラック/チョークベージュ>(60万5000円)/モデルバッジ<electricロゴ、シルバー塗装>(0円)/ポルシェアダプティブエアサスペンションマネジメントシステム<アダプティブエアサスペンション、レベルコントロール付き>(39万8000円)/フルカラーポルシェクレスト付きホイールセンターキャップ(2万5000円)/エアクオリティーシステム(6万4000円)/電動充電ポートカバー(8万6000円)/アルミニウムルーフレール(0円)/シートヒーター<フロント&リア>(6万3000円)/リラクゼーション機能&シートベンチレーション<フロント>(22万7000円)/22インチMacan Styleホイール(61万7000円)/サイドブレード<エクステリア同色>(0円)/インテリアパッケージ<レザー>(23万円)/マトリクスLEDヘッドライト(16万4000円)/ダッシュボードコンパスディスプレイ(5万6000円)/アドバンスドクライメートコントロール<4ゾーン>(6万5000円)/BOSEサラウンドサウンドシステム(17万7000円)/ラゲッジルーム100Vソケット(2万2000円)/シートベルト<チョークベージュ>(7万4000円)/ポルシェエレクトリックスポーツサウンド(6万8000円)/パッセンジャーディスプレイ(21万4000円)/コンフォートシート<フロント14Way電動調整>(17万3000円)/サイドウィンドウトリム<シルバー>(3万1000円)/オフロードデザインパッケージ<エクステリアカラー塗装>(29万6000円)/PORSCHEロゴLEDドアカーテシーライト(4万3000円)/右ハンドル仕様(0円)/プライバシーガラス(7万1000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2842km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:417.9km
参考電力消費率:5.8km/kWh(車載電費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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