トヨタRAV4 PHVブラックトーン(4WD/CVT)/三菱アウトランダーP(4WD)
未来はひとつじゃない 2022.04.27 試乗記 「トヨタRAV4 PHV」と「三菱アウトランダー」、2台のプラグインハイブリッド車を徹底比較する。後編ではアウトランダーに注目。長年にわたって車両運動統合制御システムと4WDにこだわってきた、三菱ならではの走りの楽しさをリポートする。モーター走行が基本
アウトランダーもRAV4 PHVと同様に発進はモーター駆動である。というより、普通に街乗りしていればモーターで走行することがほとんどだ。複雑な制御でエンジンとモーターを協調させるRAV4 PHVのシステムとは異なり、アウトランダーはモーター走行が基本になっている。エンジンの主たる役割は発電なのだ。ボディー側面の「PLUG-IN HYBRID EV」のバッジのEVの部分が目立つようになっているのは、ゆえなきことではない。
バッテリー容量は13.8kWhだった先代モデルから20kWhにアップしていて、18.1kWhのRAV4 PHVを上回る。EV走行換算距離は若干及ばないものの、83kmと十分な数値だ(RAV4 PHVは95km)。日常の使用では、ほぼガソリンを使わないだろう。前後にモーターを装備するのはRAV4 PHVと同様で、フロントが85kW(116PS)、リアが100kW(136PS)。後輪を積極的に駆動させる配置である。エネルギーフローモニターを見ていると、多くの場面でバッテリーから前後両方のモーターに電力が供給されている様子が分かる。
発電のためにエンジンが始動しても車内では甲高いモーター音が大きく聞こえていて、電気自動車感が強い。運転していてエンジンの存在をあまり感じなかった。強い負荷をかけた場合にはエンジンも駆動に貢献するが、シリーズハイブリッドの「日産ノート」に近い運転感覚だ。静粛性も高いはずなのだが、タイヤの特性なのかロードノイズが大きめなのが気になった。停車して外に出るとエンジンルームからはにぎやかな音が聞こえる。システムが何やら複雑な仕事をしているようで、電気が主役であることをひしひしと感じる。
走行モードは全7種類。センターコンソールのダイヤルスイッチで選ぶ。通常は「ノーマル」「エコ」「パワー」を使い分ければいい。オフロード走行用に「グラベル」「スノー」「マッド」というモードも用意されている。RAV4 PHVに比べて路面状況に対する選択肢が広い。
三菱のプライド
もうひとつ、「ターマック」というモードが用意されている。オンロードに対応するものだが、旋回性を高めているのが特徴だ。モードを選んだ時にモニターに映し出されるグラフィックがノーマル、エコ、パワーの場合は直線走行なのに、ターマックはコーナリングの様子である。旋回性と安定性を向上させているのが、三菱の誇る車両運動統合制御システム「S-AWC(スーパーオールホイールコントロール)」だ。
S-AWCは前後駆動力、左右輪間トルク、4輪ブレーキの3要素をトータルでコントロールする。アウトランダーではツインモーターのレスポンスのよさを生かして精密な制御が可能になる。先代では前輪だけだったAYC(左右輪間トルクベクタリング)を後輪でも行うようにして、効果を高めたという。実際には公道の舗装路面で高い旋回性能を求められる機会はあまり多くないと思われる。それでもあえてターマックというモードを設定したことには、「ランサーエボリューション」からS-AWCの開発と熟成を進めてきた三菱のプライドが感じられる。
ステアリングホイールにはパドルが装備されていて、回生ブレーキの強度を変えることができる。シフトセレクターの横に配置されているスイッチは、さらに減速度を高めるためのボタンだ。「イノベーティブペダルオペレーションモード」を発動させる。長ったらしい名称だが、要するにワンペダルドライブのモードだ。日産ノートなどのモーター駆動のモデルに採用例が多いが、SUVでこのモードを使うのは初めてだった。重いボディーを減速するためにかなり強力に作動する。短い試乗時間では慣れることができなかったが、使いこなせば街乗りで便利な機能になるだろう。
イノベーティブペダルオペレーションモードのボタンの隣にあるのがEVモード切り替えスイッチ。「ノーマル」「EVプライオリティー」「バッテリーセーブ」「バッテリーチャージ」の4モードをボタンで選択する。エンジンとバッテリーの優先度をドライバーが選ぶことができるのは、RAV4 PHVと同じである。
人気は3列シートの7人乗り
同じミドルサイズSUVのジャンルに属するが、アウトランダーはRAV4 PHVより少しだけ大きい。見た目の印象はサイズ以上で、エクステリアデザインの迫力と威厳のせいだろう。先代の後期モデルで控えめに採用されたダイナミックシールドが新世代に進化し、インパクトを高めている。試乗車のボディーカラーはツートーンだったが、濃色同士の組み合わせという地味なところに奥ゆかしさを際立たせる効果があった。
インテリアの上質感はRAV4 PHVに引けを取らない。ソフトパッドとピアノブラックやメタルパーツが組み合わされてモダンな印象を与える。オレンジを差し色にした内装も用意されているが、試乗車は黒一色だった。シートは上質な本革で、ダイヤモンド型のキルティング仕立てになっている。新たに採用されたデザインコンセプトは「BOLD STRIDE」で、内外装ともに堂々とした力強さを目指しているという。
居住性の高さは、2台ともに優秀だ。運転席はしっかりとした肉厚なつくりでサポート性が高く、心地よい包まれ感がある。2列目のシートは広々として乗員をくつろがせる空間だ。リクライニング機構やシートヒーターが装備され、USBソケットや1500Wのコンセントが設置されていることも共通点である。高級感のある都会派SUVという同じジャンルに属するから、似通った部分が多くなるのは当然である。
アウトランダーが持つRAV4 PHVに対する大きなアドバンテージが、3列目シートの存在だ。5人乗りの2列シート仕様もあるが、7人乗りが圧倒的な売れ筋になっている。先代モデルの「PHEV」は5人乗りしかなかったので、大幅に商品力が高まった。全長は4710mmなので、3列目に与えられる空間は限定的だ。大人が乗ると2列目や運転席を前に動かさなければならないので、子供用と考えたほうがいい。
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オフロード走行は安全性重視
主に市街地や高速道路を走ったが、オフロードも少しだけ試すことができた。どちらも本格的なオフロード走行を想定したクルマではないので、ちょっとした砂利道を走っただけである。RAV4 PHVは特別なモードを持たないので、ノーマルモードで走行した。メーター内に示される4WD作動状況は、オンロードとははっきり違う。リアに配分される駆動力が多くなり、安定性を保とうとしているのが分かる。コーナーで滑りそうになるとそれ以上パワーをかけることが抑えられるので、安心感は抜群だ。
アウトランダーでは、グラベルモードを選んで走った。S-AWCが働いて前後駆動力の配分とAYCのブレーキコントロールが細かく変化する様子がモニターに映し出され、自動的に安定性を確保していることが示されていた。コーナーでは後輪がわずかに横滑りするように感じられることもあったが、安全性を重視した設定で破綻する状況は訪れない。
プラグインハイブリッドシステムを持つSUVとして共通点の多い2台だが、キャラクターは大違いだった。パワー、燃費、静粛性、乗り心地などの面では、RAV4 PHVの熟成度に感心することが多かった。長年にわたって培ってきた電動化技術は、このモデルでも存分に生かされている。優等生であり驚きは少ないが、従来のクルマと同じような操縦性でプラグインハイブリッドの長所を享受するにはうってつけだ。
対するアウトランダーは荒削りなところもあるが、先進的なクルマに乗っていると実感する場面が多い。基本性能を押さえたうえで、豊富なトッピングが用意されている。7種類もの走行モードがあり、ワンペダルドライブも可能だ。3列シートは子育てファミリーにはうれしい。急速充電に対応しているところも、ユーザーにとってはありがたいだろう。
自動車の電動化は、まだ始まったばかりだ。プラグインハイブリッドは現時点では有力なシステムだが、状況の進展によっては評価が変わるだろう。アウトランダーとRAV4 PHVに新世代に向けての異なるビジョンを見ることができ、自動車の未来について考えさせられた。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタRAV4 PHVブラックトーン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1855×1690mm
ホイールベース:2690mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:219N・m(22.3kgf・m)/3600rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:306PS(225kW)
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ヨコハマ・アビッドGT)
ハイブリッド燃料消費率:22.2km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:95km
充電電力使用時走行距離:95km
交流電力量消費率:155Wh/km(WLTCモード)
価格:539万円/テスト車=586万9820円
オプション装備:ボディーカラー<アティチュードブラック×エモーショナルレッドII>(9万9000円)/パノラマムーンルーフ<チルト&スライド連動>(14万3000円)/寒冷地仕様<タイマー付きウインドシールドデアイサーなど>(1万7600円) ※以下、販売店オプション T-Connectナビキット(10万6700円)/ETC2.0ユニット<ビルトイン&ナビキット連動タイプ>(3万3000円)/前後方ドライブレコーダー(4万4220円)/フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万6300円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1906km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:338.8km
使用燃料:18.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:18.3km/リッター(満タン法)/18.9km/リッター(車載燃費計計測値)
三菱アウトランダーP
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1860×1745mm
ホイールベース:2705mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:133PS(98kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/4300rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)
フロントモーター最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)
リアモーター最高出力:136PS(100kW)
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)
タイヤ:(前)255/45R20 101W M+S/(後)255/45R20 101W M+S(ブリヂストン・エコピアH/L422プラス)
ハイブリッド燃料消費率:16.2km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:83km
充電電力使用時走行距離:85km
交流電力量消費率:239Wh/km(WLTCモード)
価格:532万0700円/テスト車=554万1434円
オプション装備:ボディーカラー<ブラックダイヤモンド/ディープブロンズメタリック>(13万2000円)/レザーシート<ブラック>(-2万2000円) ※以下、販売店オプション ETC2.0車載器<スマートフォン連携ナビゲーション用>(4万6882円)/フロアマット<7人乗り用>(5万4252円)/三角表示板(3300円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:7187km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:328.0km
使用燃料:30.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.9km/リッター(満タン法)/10.9km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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