第684回:電動バイク普及の第一歩となるか!? 「ヤマハE01」に込められたメーカーの本気
2022.04.27 エディターから一言 拡大 |
ヤマハが電動スクーター「E01」を用い、一般ユーザーも巻き込んでの実証実験をスタート! 環境に優しいとされる一方で、依然として航続距離の短さや充電のわずらわしさなどが指摘される電動二輪。その普及のカギを見つけることはできるのか?
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開発者の苦労に思いをはせる
雨のなか、広い駐車場でヤマハE01に乗る。E01は、125ccクラスに相当する同社のピュア電動バイク。容量4.9kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、航続距離は約100km。通勤・通学での日常使いを考慮して、最高速度は100km/hとされる。
電気モーターのアウトプットは、最高出力が8.1kW(11PS)/5000rpm、最大トルクが30N・m(3.1kgf・m)/1950rpmである。E01の母体となった「NMAX」のそれらが9.0kW(12PS)/8000rpmと11Nm(1.1kgf・m)/6000rpmだから、E01の電動モデルらしい力強さが想像できる。
実際、E01のスロットルをひねった際の、「オッ」と思わせる出足のよさ、その後のスムーズで直線的な加速力は、いかにもモーター駆動といった感じ。一方、速いけれども軽快感とは無縁のライドフィールが、これまたeバイクらしい。
このように、ある意味四輪のEVと共通の運転感覚を持ちながら、ヘルメット越しに耳に入ってくるタイヤが発するロードノイズ、ボディーのかすかなきしみ音などが、電気自動車以上に、意外なほど気になった。言うまでもなく電動モデルの静粛性の高さの裏返しで、普段使いするようになれば、おそらく街の喧騒(けんそう)に紛れ、またすぐに慣れてしまうと思われるが、電動バイクの開発にあたって、いわゆる官能評価に対応しなければならない現場は大変だろう。
100年前から変わらない利点と欠点
ヤマハE01の開発にあたっては、通常の内燃機関のバイクから乗り換えても違和感のないよう、例えば回生ブレーキについては、エネルギーの回収効率より制動フィールに配慮したという。感覚の鈍さにおいて人後に落ちない自分の場合、E01のシートにまたがって試乗しながら「これなら普通のNMAXから乗り換えても違和感なかろう」と心の中で太鼓判を押していたが、比較用に用意されたNMAXに乗らせてもらったとたん、笑ってしまった。
単気筒エンジンの音、振動、遠心クラッチとベルト駆動を介しての走り出しや速度の上がり方。言葉を選ばずに正直な感想を述べると、「なんとまぁ、野蛮な乗り物だろう」と思ってしまった。いや、スクーターはともかく、個人的には単気筒バイクの鼓動感は大好きなんですけどね。
内燃機関と電気モーターを比較したこうした感想は、二輪四輪を問わず、実は内燃機関を積んだ乗り物がこの世に登場した黎明(れいめい)期から変わらない。ことにセルモーターが発明される以前は、車外から力を込めてクランク棒を回す危険な行為が必要だったからなおさらで、スイッチひとつで起動して、走りがスムーズかつクリーンな電気自動車は、「ご婦人方に最適」とされていた。同時に、航続距離の短さや時間がかかる充電といった電気自動車の欠点もまた、100年以上前から変わることがない。
ハナシがさかのぼり過ぎました。1991年から継続的に電動モデルのリリースを行っているヤマハの場合、バッテリーそのものの性能向上、動力系の効率アップはもとより、このバッテリー問題(!?)に2つの方法で対応している。ひとつは、電動アシスト自転車のように脱着式のバッテリーを使用する方法。もうひとつは、今回のE01のようにボディーにバッテリーを組み込んで、ケーブルを用いて充電する方法だ。前者は都市内移動、つまり短距離での使用を想定していて、電池の重さは片手で持ち運べる10kg程度。後者は、より長い距離を走ることを考えて、相対的に大容量のバッテリーを搭載する。ヤマハE01の場合、アルミケースを含めてバッテリー重量は38kgにもなるという。
eバイク普及へ向けた世界的な実証実験
さて、やたらと前置き(!?)が長くなってしまったが、今回のE01は、電動バイクの本格普及をにらんでの実証実験に投入されるモデルなのだ。リアルワールドのお客さまに使ってもらって、生の声を集めようという試みだ。それも、電動バイクの普及や使われ方、環境の違いを考慮して、温帯の日本・欧州、亜熱帯の台湾・タイ、そして熱帯のインドネシア・マレーシアと、6つの国と地域で実施されるグローバルな実験となる。
日本では、100台がリース契約で貸し出される。料金は2万円/月。利用期間は3カ月だ。小型限定普通自動二輪免許(AT含む)以上を保有している20歳以上のユーザーが対象となり、もちろん各種保険も月額リース料金に含まれる。
今年2022年5月9日からリース希望者の応募が始まる。「なにしろ初めてのことなので、どの地域からどのくらいの人数が、また年齢層や男女比などもわからない」とのこと。おそらく短期間のリースを何度か繰り返すことになろう。実証実験全体の期間は3年をみているという。
いざ、電動バイクを自分のアシとして使うとなると、気になるのは充電環境だ。ヤマハでは、シート下に収納できる100V用のポータブル充電器(充電時間は14時間)、自宅に取り付ける200Vの普通充電器(同5時間)、そして急速充電器(90%までの充電時間が1時間)の3種類を用意する。
普通充電器は設置・撤去に約13万円かかるというから、3カ月間のリースバイク用としては、現実的ではない。ポータブル充電器の充電時間14時間は「あまりに長い」と思われがちだが、開発陣は、「実際に0%まで使い切る例は少ない。いわゆる使用の合間にちょっとずつ充電する“継ぎ足し充電”になるので、実用上は問題ないのではないか」と考えている。
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「テスト用車両だから」という妥協はない
とはいえ、本当のところどのように使われ、充電されるのか。地域や年齢、男女差はあるのか、を検証するのが、この実証実験の目的でもある。電動バイク本格普及への第一歩である。E01には、各種車両情報を収集、ウェブサーバーへ送る仕組みが搭載される。実証実験からのデータフィードバックが、今後の電動バイクの開発に役立つわけだ。
本格普及といえば、今回、ヤマハとユーザーが直接リース契約することになる一方、窓口やメンテナンスは「YSP」ことヤマハの販売店が務める。サービス側としても電動バイクに接する機会が増え、経験値を上げるいい機会になろう。
ヤマハE01は、独自のデザインをまとい、バッテリーはもとより専用の電気モーターが開発され、アルミのサスペンションアームを持つぜいたくなスクーターだ。駆動系をボディーに載せるので、アームがエンジンやトランスミッションから独立している点も見逃せない。電動モデルらしく、「パワー」「スタンダード」「エコ」という走行モードの違いもハッキリしている。そのうえ、微速後退するリバースモードまで備える。
スクーター乗りに限らず、モノ好きの人にとっても気になる存在ではないでしょうか。今後、市販の予定は「ない」というから、ヤマハE01と日常を過ごしたい人は、当選の幸運を祈りつつ、リースに応募するしかない!?
(文=青木禎之/写真=webCG/編集=堀田剛資)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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