インディアン・パースート ダークホースwithプレミアムパッケージ(6MT)/BMW K1600GT(6MT)/ハーレーダビッドソン・ローライダーS(6MT)
デッカイことはいいことだ 2022.05.06 試乗記 個性豊かな輸入バイクが一堂に集結するJAIA二輪輸入車試乗会。その会場から、まずは「インディアン・パースート」「BMW K1600GT」「ハーレーダビッドソン・ローライダーS」の走りをお届けする。3台合わせて5339cc(!)という、大排気量マシンの夢の競演をご覧あれ。キモチいいって、なんだろう?
インディアン・パースート ダークホースwithプレミアムパッケージ(その1)
どんなバイクに乗ってるの? と聞かれたら、「インディアン・パースート」と答えればいい。どういう意味? と問われたら、「インディアンの追跡って意味らしいよ」と投げ返そう。たぶん違うけど。あとは相手をさっさとタンデムシートに乗せてしまって走りだす。そうすれば車名のことなんてすぐに忘れてしまうだろうし、そのうち後方から歓喜の声が聞こえてくるかもしれない。「キモチいい! ヤッホー!!」ってね。
声を上げたくなるほど気持ちいい。パースート ダークホースの価値は、ライダーもタンデマーも等しく味わえるキモチよさにあると試乗の後半で思い至った。前後ふたつのシートが繭のような、もとい鎧(よろい)のような外装で囲まれていて一体感があるから? ソロライドもタンデムライドもそれぞれ分けて意識することなくイージーだから? キモチよさの根っこをパースートのなかに探してみよう。
まず416kgもあるウェイトのバイクを動かすのがイージー? といぶかしがる方がいるかもしれない。もちろん虚勢で言っているわけではないし、そもそも自分は「250ccこそ地上で最高の排気量」をほうぼうで言いふらしている等身大二輪ライターだ。1768ccものキャパシティーがある、高身長米国人向けモーターサイクルをして「俺さまってば余裕だし~」と強弁するつもりなんて毛頭ない。そんなオイラでもダイジョウブ! となるのには理由があって、パースートの車体の重心位置とシッティングポイント、ハンドルのグリップ位置の三角形が絶妙にバランスしていて、スペックほどには車体の重さを感じないのだ。シートそのものの造りもいいし、クラッチやブレーキなどの操作系もフレンドリー。走りだす前から好感度が高いのが青毛のサラブレッド、パースートだ。
キモチいいって、なんだろう?
インディアン・パースート ダークホースwithプレミアムパッケージ(その2)
そんなパースートの一番の“推し”はエンジンだと断言しよう。名前は「パワープラス」。水冷V型2気筒というエンジン型式にはなんら新味はないものの、その味たるや絶品。濃いか薄いかでいえば明らかに濃いが、古風かモダンかでいえばそのどちらともいえる。ラフな素性をオブラートで包んでいるというよりは、そもそもの出自がいいし洗練のされ方もイヤミがない。ワイルド・バット・フォーマル。(おぼえてますかー)
日本仕様の最高出力は公表されていないが、最大トルクは3800rpmで178N・mを発生する。フルスロットルからの加速はさすがに強烈だけど、どっかに飛んでいってしまうほど無謀ではないし、ライダーの指揮下を勝手に離れることもない。低回転でのしつけも素晴らしく、西湘バイパスで6速、50km/hからという意地悪な加速を試みても、パースートは何も文句を言わずに「ドゥララララッ」と加速を始めた。調教はすみずみまで行き届いている。
デッカいピストンがシリンダー内壁をすりながら上下するさまが想像しやすいのがハーレーのツーリングシリーズだとすれば、インディアン・パースートはその摺動感をキープしつつ、内壁におさまるウオータージャケットがしっかり雑み(という名の振動)を取り除いてくれるイメージ……と表現すればわかってもらえるだろうか。そこにはいくばくかの透明感さえ見え隠れしているのだから、奥が深い。
エンジンの醸すキモチよさの大軸が“わかっている”エンジニアによって味つけされたパースートで、ひとつだけ忘れてはいけない大切なことがある。それはエンジンの美点を裏からしっかり支えている頑健無比な高性能シャシーの存在だ。供される料理の素材への解説はていねいでも、それが載せられる皿のうんちくは声高にアピールしない。まるで老舗高級料亭のように洗練されたあしらいを、最新ツアラーのパースートに感じてしまった。
それにしても、いまどき楽しいからってヤッホーなんて言うのだろうか? とうとう五十路(いそじ)に差しかかったモヒカンおじさんの私は、思いのほかガラ空きだった西湘バイパスでスロットルをワイドに開けた瞬間、たまらず雄たけびを上げてしまいましたよ。
「ヤッホー!!!」
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
その巨体に臆すべからず
BMW K1600GT(その1)
いやー、ごりっぱ。頭のてっぺんからつま先までいろいろが正論すぎて、プラモがちゃんと最後まで作れない自分にとっては後光がまぶしすぎるK1600GT。それがいま目の前にいる。黄門さまの印籠よろしくドドン! とね。1648cc、160PS、350kg、335万5000円。この成功者にまつわる真実を捉えて文章にまとめるなんて、ハンパ者の自分には荷が重い……とここまで書いて、「この卑屈さこそ諸悪の根源」とすみやかに反省する50歳の自分。ファイト!
K1600GTは、BMWのフラッグシップモデル「K1600」シリーズ4機種のイメージリーディングを担う班長さんだ。日本での初お目見えがK1600GTLの2011年だったので、直列6気筒エンジンを積んだこの大型ツアラーは国内ですでに11年が経過していることになる。そしてこの2022年モデルでの大きなトピックはリファインされた直6で、エンジン制御の見直しにより排出ガスのクリーン化と燃費向上の両方を実現しているという。最高出力こそ従来の160PSから変わらないものの発生回転数は1000rpm低い6750rpmとなり、最大トルクは175N・mから180N・mへとアップした。
走る前からライダーをビビらせるに十分なマッシブボディーだが、落ち着いてじっくりと車体を見渡せば、各部の質感≒緊張感がBMWクオリティーであることを実感する。光りモノに頼らない機能美をたたえたクリーンデザインはどこにも手抜きがなくて、ちょっと息苦しいくらいかもしれない。深みのある外装ペイント、理知的にレイアウトされたインターフェイス。日本車ともアメリカ車とも違うドイチェラントの美意識を感じる。
その巨体に臆すべからず
BMW K1600GT(その2)
エンジンを始動し、ウオームアップもそこそこにオートチョークが落ち着くのを待たないで発進すると、スロットルを開けないままに巨体をやすやすと前方に滑り出させることができた。ヒュンヒュンと鳴るエンジン音はファーストインプレッションこそ「線が細いな」「6発なんだから当たり前か」だったが、ひとたび走りだしてしまえばそんなものは30秒で霧散してしまう。低速からトルクは厚く、排気音はキメが細かいだけで芯は太かった。
もっともっと回したくなるエンジンの俊敏な回転上昇に加え、情報量が多い前後ブレーキの制動フィール。ぶ厚い胸板とデカい肺活量、タフな足腰をいきなり同時にプレゼンされてしまった感じだ。中速以上でハンドリングはニュートラルを極め、可変ウインドシールドをハイレベルにセットすると「ノーヘルでもイケるんじゃね?(ダメです)」というくらいに前方からの風がシャットアウトされる。そうそう、10.25インチのフルカラーTFTディスプレイを備えたメーターパネルの見やすさは自分史上イチバンだったよ。
あらゆる局面で自制心に乏しい自分の頭を次によぎったのは、「アウトバーンで250km/h巡航とかしてみたいなー」という時代にそぐわないセリフ。いやいやいやいや。いま走っている西湘バイパスの制限速度は高いところで70km/h。あの大山倍達先生も「刀を抜かないところに侍の価値がある」と言っているじゃないか。
市街地の県道、自動車専用道路、JAIA試乗コースの隘路(あいろ)……いくつかのシチュエーションをこなしていくうちに、カラダがどんどんK1600GTの豊穣(ほうじょう)かつ大胆なリズムに合ってくる。低速なり高速なり、前進してさえいればこの巨体、恐るるに足らず。自重、たしなみ、品位。いつも平常心を忘れず、懐刀のごとくK1600GTは走らせるべし──。そして勝負は走りだす前が9割と心得よ!(特にオイラのような平民はね)
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
このまま旅に出たくなる
ハーレーダビッドソン・ローライダーS
「ほぼ2リッターかぁ」と感心しながらハーレーダビッドソン・ローライダーSのシートにまたがる。なにはともあれシート高710mmと短足フレンドリーなのがうれしいが、バーハンドルのグリップを握って起こそうとすると、車重308kg。なかなか重い。「こんなところもハーレーだね」などと言ったら、本当の鉄馬乗りに笑われるだろうか。
2020年に、ダイナ改めソフテイルフレームを得てラインナップに戻ってきたローライダーS。その2022年モデルは、ただでさえ大きな1801ccVツインを1923ccに拡大して市場に投入された。ミルウォーキー114ユニットが、同117ユニットになったわけだ。
世間的には、大きなカウルを備え後部左右にサイドケースをつるした、いわゆる“バガースタイル”を採る「ローライダーST」が注目を集めているようだが、重厚なツーリングモデルと軽快なスポーツスターの間を埋める本来の立ち位置を考えると、小ぶりなカウルを持つローライダーSのほうがわかりやすい。
軽く足を前に出したアメリカンスタイルで走り始めると、想像はしていたが、117キュービックインチから湧き出るトルクにたまげる。軽くスロットルをひねるだけで、腹の底からしっかり構えていないと、その場に置いていかれそう。
一方、回転が少し上がればVツインのビートがそろってきて、にわかライダーのハミングを引き出させる。回せば回るけれど4000rpmから先はさほどパワーが伸びないので、シングルメーターの針を3000~4000rpmにとどめておくと、168N・mの悠々とした駆動力を感じながらの“らしい”走りを楽しめる。
ストローク大きめのギアレバーをガチャコン、ガチャコンと操作しながら「このまま旅に出たい」などとありがちな感想を抱くが、1時間に満たない試乗時間はアッという間に終わってしまう。返却時には、誇らしげに「117」と描かれたギアボックスのケースがすっかり熱くなっていて、そういえば「空冷だったな」と思い出す。手元のメモで価格を確認すると、281万8200円。水冷または電動化されてしまう前に、1台、どうでしょう?
(文=青木禎之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
インディアン・パースート ダークホースwithプレミアムパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2609×990×1444mm
ホイールベース:1668mm
シート高:672mm
重量:416kg
エンジン:1768cc 水冷4ストロークV型2気筒SOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:122HP(北米仕様参考値)
最大トルク:178N・m(18.2kgf・m)/3800rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:398万9000円
BMW K1600GT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2310×1000×1440-1600mm
ホイールベース:1620mm
シート高:810-830mm
重量:350kg
エンジン:1648cc 水冷4ストローク直列6気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:160PS(118kW)/6750rpm
最大トルク:180N・m(18.4kgf・m)/5250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:16.95km/リッター(WMTCモード)
価格:335万5000円
ハーレーダビッドソン・ローライダーS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2365×--×--mm
ホイールベース:1615mm
シート高:710mm
重量:308kg
エンジン:1923cc 空冷4ストロークV型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:--PS(--kW)/--rpm
最大トルク:168N・m(17.1kgf・m)/3500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:281万8200円

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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