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プジョー508プジョースポールエンジニアード(4WD/8AT)

わかる大人のスポーツセダン 2022.05.29 試乗記 嶋田 智之 プジョーのモータースポーツ部門が開発したハイブリッドセダン「508プジョースポールエンジニアード」。フランスでステアリングを握った筆者は、プジョーらしさに満ちたアツい走りに、思わずほほをゆるめるのだった。

鋭いけれど滑らか

プジョーのスポーツモデルには昔から、無理めなチューニングをしていないのに速いし楽しい、という印象がある。「205GTi」しかり、「106 S16」しかり、「RCZ R」しかり、「プジョー308GTi by PEUGEOT SPORT」しかり。ほかにも多々あるけれど、いずれもピーキーなそぶりなどみじんも見せず、大人の味だ。そしてフランス本国には設定がある508プジョースポールエンジニアードも、ばかっ速だけどやっぱりその延長線上にあるクルマだった。

ベースとなったのは、日本にも導入されている「508 GTハイブリッド」。フロントに備わる最高出力110PSのモーターはそのままに、1.6リッターターボのピュアテックエンジンを180PSから200PSにまでチューンナップし、新たにリアへ113PSのモーターを設けたものだ。システム全体では最高出力360PS、最大トルク520N・mと、プジョーのプロダクションモデルとしては史上最強の数値だ。

となれば、それを堪能してみたくなるというもの。走行モードをスポーツにしてアクセルペダルを踏み込んでいくと、モーターの強力な後押しに気持ちよくパワーを膨らませていくエンジンが見事な連係プレイをみせて、メキメキとスピードを伸ばしていく。スタートダッシュも中間加速も、「360PSで0-100km/hが5.2秒」というのはずいぶん謙遜しているんじゃないか? と感じられるほど。間髪入れずに立ち上がる電動ブースターの効きめが加速感を強調してるからなのだろうけれど、だからといって荒さや粗さがあるわけでもなく、素早く鋭いけれど滑らかさを失わないのが、いかにもプジョーらしい。

とはいえ、そういうクルマだけにシャシーはかなりハードだ。慣れてくるとガチンとはね返す類いのハードさじゃなく、鍛え上げられた筋肉のように強靱(きょうじん)さのなかにしなやかさがあって、ほかのプジョーと同じように路面をしっかりつかみ続けている様子が感じられるのだけれど、いずれにせよ、同乗者が内心では閉口しそうなくらい引き締められているのは確かだ。それだからしてコーナリングスピードも通常の508と比べて明確に速い。スポーツドライビングが好きな人なら間違いなく楽しいと感じられるはずだ。

2020年9月にデビューした、プジョーのハイブリッドセダン「508プジョースポールエンジニアード」。ワゴンバージョンもラインナップされている。
2020年9月にデビューした、プジョーのハイブリッドセダン「508プジョースポールエンジニアード」。ワゴンバージョンもラインナップされている。拡大
ダーククロームのエンブレムが添えられ、精悍(せいかん)さを増したフロントまわり。差し色のライムグリーンも目を引く。
ダーククロームのエンブレムが添えられ、精悍(せいかん)さを増したフロントまわり。差し色のライムグリーンも目を引く。拡大
0-100km/hの加速タイムは5.2秒。最高速はリミッターで250km/hに制限される。EV走行モードでは、一充電あたり45km(WLTPモード値)の航続が可能。
0-100km/hの加速タイムは5.2秒。最高速はリミッターで250km/hに制限される。EV走行モードでは、一充電あたり45km(WLTPモード値)の航続が可能。拡大
外装に見られるライムグリーンがポイントの「プジョースポールエンジニアード」専用液晶メーター。写真のように、エネルギーフローも表示される。
外装に見られるライムグリーンがポイントの「プジョースポールエンジニアード」専用液晶メーター。写真のように、エネルギーフローも表示される。拡大
20インチの鍛造アルミホイールの奥には、「PEUGEOT SPORT ENGINEERED」ロゴ入りの4ピストンブレーキキャリパーがおさまる。
20インチの鍛造アルミホイールの奥には、「PEUGEOT SPORT ENGINEERED」ロゴ入りの4ピストンブレーキキャリパーがおさまる。拡大
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高性能モデルとあって、足まわりの設定はなかなかハード。それでも、適切なロールを伴うプジョー独特の旋回フィーリングが味わえた。
高性能モデルとあって、足まわりの設定はなかなかハード。それでも、適切なロールを伴うプジョー独特の旋回フィーリングが味わえた。拡大
ナッパレザーとファブリック、アルカンターラで仕立てられたシート。前席にはヒーターのほかマッサージ機能も備わる。
ナッパレザーとファブリック、アルカンターラで仕立てられたシート。前席にはヒーターのほかマッサージ機能も備わる。拡大
海外では2020年10月中旬に受注が開始された「508プジョースポールエンジニアード」。日本市場への導入については未定となっている。
海外では2020年10月中旬に受注が開始された「508プジョースポールエンジニアード」。日本市場への導入については未定となっている。拡大

“獅子足”には要注意

さすがだと感心したのは、それでも味つけを変にシャープにしているわけでもなく、ハードながらもクルマを適切にロールさせて、ロールの深まりとともにリアの追従性を高めながら正確に曲がっていくようなプジョー独特のフィールを失っていなかったこと。リアのモーターの押し出し感がそれを巧みに強調している感覚もあって、ここはプジョーのファンにはたまらないところだろう。

ただし、この“猫足”というより完全な“獅子足”の楽しさは、あくまでもひとりで走るときのものと考えるべし。走行モードをコンフォートに切り替えれば通常の508のスポーツモードくらいの快適さは得られるから、誰かを乗せるときにはそれで知らんぷりを決め込むのが、大人としての体面を保つ手段だ。

ルックスとしては控えめな空力パーツなどの技が加わって508の色気に静かな迫力を与えてはいるが、幼稚さのないその雰囲気が素直にカッコいいと感じられた。こうした成熟した男(と女)がサラッと転がしたくなる色気と快感を持ったスポーツセダン、そういえば日本にはないよな、と思い至る。気になる人も、少なからずおられることだろう。けれどこのクルマ、実は日本導入の予定はないのだという。その理由には誰もが思い当たることだろう。好事家にとっては生きにくい世の中になったものだな……。

(文=嶋田智之/写真=ステランティス/編集=関 顕也)

プジョー508プジョースポールエンジニアード
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【スペック】
全長×全幅×全高=4750×1860×--mm/ホイールベース=--mm/車重=1850kg/駆動方式=4WD/エンジン=1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:200PS/6000rpm、最大トルク:300N・m/3000rpm)/フロントモーター:交流同期電動機(最高出力:110PS/2500rpm、最大トルク:320N・m/500-2500rpm)/リアモーター:交流同期電動機(最高出力:113PS/1万4000rpm、最大トルク:166N・m/0-4760rpm)/システム最高出力360PS/システム最大トルク520N・m/トランスミッション=8段AT/燃費=2.3リッター/100km(約43.5km/リッター、WLTPモード)

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