タマ不足でも問題なし!? 迷える若者にすすめたい中古車5選
2022.06.29 デイリーコラム欠かせなかった“電話帳”
昔々……といっても1990年代くらいの話ですが、中古車情報は電話帳みたいな分厚い本をペラペラとめくりながらほじくり出す、そんな時期がありました。車歴のほとんどが中古車である僕は、当然それを毎週コンビニで購入していたわけです。
あれ、恐らく一冊あたり2kgくらいはあったでしょうか。もちろんそれ一冊でコンビニ袋は引きちぎれんばかり、一緒に買ったものは別のコンビニ袋に入れてもらうという体たらくです。もし後ろにグレタさんが並んでいたらローキックのひとつもお見舞いされていたのかもしれません。
そして引っ越しの際には、積み上げたら家ができるんじゃないかというくらいの中古車情報誌が出土し、清掃局から「これは個人ゴミでは処理できません」と言われて2万円払ったという苦い思い出もあります。まぁサステイナブルとは程遠い人生を歩んできたものだと、しみじみさせられますね。
あれから二十幾年の時がたち、中古車情報はデジタル化され、ガジェットからサクッとアクセスできるようになりました。もちろんネットだってスマホだってCO2フリーではありませんが、現物を津々浦々まで流通させる必要がなくなったことや、なんならそこで決済もできるという圧倒的利便を前にしては、電話帳には立つ瀬がありません。
でも近ごろ、中古車情報が電話帳の時代を知らない世代と話をしていると、こう言われることがあるんですよね。
「クルマは欲しいんですけど、何買っていいか分かんないんすよね」
あーなるほど、と思いました。今は検索スキル如何(いかん)で望む情報にたどり着ける時代ではあるものの、その大海原の中で一体何をしるべに進めばいいのやらという迷いもたくさんあるわけです。電話帳の時代は切手のような物件写真が並ぶページを目的もなく眺めるだけでも気づきが落っこちていた、一覧性にたけるがゆえの良さがあったんだなぁと思った次第です。
ここではそんな迷える若者たちに、ひとヒネリ利かせた選択肢を提示してみようと思ったのですが、困ったことに現在は中古車全体がとんでもない売り手市場と化しています。昭和から令和まで、40年近くにわたる中古車ウオッチ歴のなかでも、これほど隅々まで値ごろ感のない状況は間違いなくありませんでした。折からの新車供給不足に加えて地政学リスクも加わっているので、この状況は恐らく今年、来年に収まる話ではないかなとも思います。
それでも託したいものがある、と思うのは、ほんの5年くらい前までやれ若者の〇〇離れうんぬんという話が世間に跋扈(ばっこ)していて、そのなかに当然「クルマ」というキーワードも含まれていたからです。あのころに比べると、今の若者たちはクルマに対して夢のようにホットに接しているという実感は日々感じます。やっと世代が変わってくれたかという安堵(あんど)は、何より自動車メーカーのマーケティングの方々が肌身で実感しているのではないでしょうか。
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個性が際立つ5モデル
でも、このイレギュラーな相場状況でせっかくのテンションがなえてしまっては元も子もない。そこで今の時点でもぼちぼち手軽に手に入り、乗って楽しく心地良く、後々に携えられる思い出がいっぱいできそうな、一芸に秀でた2桁万円中古車を5つほどチョイスしてみました。
【トヨタiQ】
登場から15年近い時がたつと、キリが淘汰(とうた)され始めて残ったピンがぐいぐい値段を上げていく。典型的な中古車の通例において、既に上昇傾向が始まっているのが「iQ」です。コロナ禍前までは不人気車らしい順当な値落ちぶりに私も手ぐすね引いていたのですが、それ以降は個食ならぬ個車ニーズの高まりとともにその特異性がいよいよ注目を浴びることになったようで、程度のいい個体は3桁万円に入っています。異様な運動性能を知ってしまうとちょっと癖になりますよ。
【スズキ・エスクード】
さすがに初期型はタマに巡り合うこともないかもですが、4代目に至るところまで貫かれているのは高い悪路走破性です。なにせ「ジムニー」を擁するブランドですから、さすがに適当なものはつくれない。それがゆえのアナログ的な調律のこだわりは現行型に至るまで貫かれています。現行型は初期の1.6リッターNAでも効率と能力のバランスポイントが見事でしたが、燃費はさておき悪環境で光るメカニズムの頼もしさや積載力、車中泊適性なんてところまでみていくと、2桁万円で余裕で買える先代のプレゼンスも捨て置き難いものがあります。
【トヨタ・プロボックス】
登場から20年が経過するも、いまだ戦闘力は一線級と実用車のかがみです。元がコマーシャルユースゆえ堅牢(けんろう)で維持費も安い。小さくてもカッチリたくさん積めることが大前提のクルマですから、キャンプでも引っ越しでも車中泊でも大活躍です。後席は緊急用みたいなものですから基本2人乗車と割り切る必要はあるものの素直で骨太、まっとうなドライブフィールがそれを補ってくれます。オッさんが乗っててもシャレになってくれないクルマなので、ぜひ若さで乗りこなしていただきたいと思います。
【フォルクスワーゲンup!】
車格的にはAセグメント、軽自動車に毛が生えたようなサイズなので後席を頻繁に使う人にはあまり向かない選択肢です。何がいいのかといえばクルマの素地(そじ)。実用的な特性のエンジンや抜群のスタビリティーを誇るシャシー、シンプルながらも絶品のシートと、ドイツ車ってなんでそんなにありがたがられるわけ? という素朴な疑問に対する答えが乗りながら見つけられるのではないかと思います。日本で売れなかった最大の理由はシングルクラッチ式のATだと思いますが、MT車に乗るつもりで扱えばその癖も操る楽しみに変わると思いますよ。
【ルノー・ルーテシア】
3ペダルMTに乗りたい! と思っても、物件を探すのは至難の業。見つけても値段が高くて……というのが現在の中古車市場の悩ましいところ。でも好事家のお歴々が好んでMTを買ってくれていたおかげで、「ルーテシア」はタマが比較的豊富、かつ値ごろ感もあります。最後の自然吸気版「R.S.」も2桁万円の範囲に入っていますし、普通のモデルなら低走行・高年式も十分狙えます。先代の「ゼン」あたりはMTを駆使して小さな排気量をしっかり使い切って走るという欧州的様式を楽しむのにピッタリの選択です。こういうのをしっかり乗り込んでおくと、クルマがどんどん好きになるんじゃないかと思います。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車、スズキ、フォルクスワーゲン、ルノー/編集=藤沢 勝)
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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