第236回:モテない永久機関
2022.07.11 カーマニア人間国宝への道待ち合わせは手前の広いところで
担当サクライ君より、久しぶりにメールが届いた。
「近いうちに『ジープ・グラディエーター』をご用意できますが、お乗りになりますか」
もちろん乗る乗る~!
グラディエーターについては、日本導入のニュースを見て以来、ひそかに胸をときめかせていた。なぜならそれは、いま世界で一番モテそうなクルマに思えたから!
なぜグラディエーターが世界一モテそうなのか? 理由は、次のようなものである。
その1:現在の若い女子がクルマに求めるのは、繊細な美ではなく、自分を守ってくれそうなデカさや頑丈さだ。グラディエーターほどデカくて頑丈そうなクルマはない。ゆえに世界一。
その2:なんとなく、岩城滉一氏が乗りそうな予感がするから。
すべては私の妄想だが、とにかくグラディエーターは世界一モテる(推定)。カーマニアとして、そういうクルマに乗ってみないテはない!
ただ、グラディエーターの全長は5.6mに達する。いつものように自宅前の路地で切り返すのは危険な気がしたので、サクライ君とは、手前の広いところで待ち合わせすることにした。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
乗っちゃうと意外と小回りが利く
当日、午後8時。自宅を出て歩くこと約100m。そこには巨大な青いマシンが待ち構えていた。
サクライ:今日は、ほったも一緒です。
オレ:えっ! なんとぉ!
ほった:こんばんは。ご無沙汰してます。
うおおおお! webCG編集部のほった君! ホンモノのほった君だぁ!
ほった君は、数年前に私の主催イベントで行った「モテないカーマニア選手権」のチャンピオン。つまり世界一モテないカーマニアである。世界一モテるクルマに、世界一モテないカーマニアが乗ってやってきたなんて、なんてステキなんでしょう!
私はウキウキしながらグラディエーターを発進させた。まずは方向転換だ。
グラディエーターのホイールベースは3490mm。ミリ単位で呼ぶ必要があるとは思えないほど長い。方向転換がどれくらい大変なのか想像もつかないが、実際やってみると、意外と簡単にできてしまった。
案外乗りやすいなぁと思いながら、首都高に向かう。路地を曲がる時は、いつもより遅めにハンドルを切りながら、ミラーを確認しつつ通過したが、ボディーの見切りが抜群にいいせいか、「うわ、ギリギリ!」という事態がまったく起きない。
1990年代、岩城滉一氏は「ハマーH1」を住宅街で転がしつつ、「乗っちゃうと、意外と小回り利くんですよ」的なことをテレビでのたまったらしく、知り合いの女性(当時24歳くらい)はそれを見て「ステキ!」と思ったというが、私もグラディエーターのオーナーとなり、同じことをつぶやけば、「ステキ!」と思ってもらえるのだろうか。
取りあえず助手席のほった君は、ステキとは言ってくれず、ただひたすらよくわからないアメ車のうんちくを語っているが、ほった君もあの「ダッジ・バイパー」を売り払って、コレに乗り換えればモテるのだろうか!?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
問題は荷台に何を載せるか
ほった君の機関銃のようなウンチク話に耳を傾けている間に、グラディエーターは首都高に乗り入れていた。
アクセルを深く踏み込むと、3.6リッターV6とは思えないほど加速がイイ。そして乗り心地もイイ! ついでに直進安定性が驚くほどイイ! さすが超ロングホイールベース! かといってコーナリングが「どっこいしょ」なわけでもなく、ハンドルを切れば特段の遅れなく曲がってくれる。
現行型の「ラングラー」は、本格的オフロード4WDとは思えないほど快適性が高いが、そのなかでもグラディエーターが一番快適性が高いかも!? 見た目はウルトラハードなのにこんなに楽チンだなんて、さすが世界一モテるクルマは奥が深い! オーナーはラクしてモテるって寸法か! うらやましいなぁ。
オレ:ほった君もさ、こういうクルマに乗り換えたらどうかな。
ほった:でもこれじゃラクすぎません?
オレ:確かにラクすぎて書くことはないかもしれないけど、今よりシアワセになれそうだよ。
ほった:そうですかねぇ。
オレ:ほった君はバイパー以外、どんなクルマが自分に似合うと思うの。
ほった:うーん、「ウニモグ」とかですか?
オレ:ウニモグはとってもよく似合うよ! でも、最高速が遅すぎない?
ほった:いろいろありますが、おおむね70km/hくらいですよね。
オレ:それじゃシアワセは遠のく一方だよ。
そのような話をしているうちに、グラディエーターは辰巳PAに到着。バック駐車も楽チンで、一発で枠にビタッと収まってしまった。
グラディエーター、なんて取り回しがいいんだろう。このクルマを買えば、どんなカーマニアもシアワセになれるのかもしれない……。
ただ、私の場合、荷台に載せるものがない。セクシージャンボこと愛車の「ダイハツ・ハイゼット トラック ジャンボ」も、まったく載せるものがなかった。ほった君には、載せるものがあるのだろうか。
ほった:載せるとしたらバイクくらいでしょうか。でもバイクは自走できますから、載せる意味がないですね。
モテないカーマニアは、モテるクルマとは縁遠い宿命なのだった。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第343回:おやじ、涅槃で待つ 2026.8.31 清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない?
-
第342回:どうしてこんなに高いんですか 2026.8.17 清水草一の話題の連載。BYDが日本の軽自動車市場に向けて独自開発した電気自動車「ラッコ」が上陸した。早速、愛車「ダイハツ・タント」の後継として検討すべく、近所のディーラーで試乗することに。果たしてその印象は?
-
第341回:「スカイアクティブZ」は大丈夫か 2026.8.3 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「マツダCX-5」で出撃した。マイルドハイブリッドのパワートレインと進化したシャシーが織りなす走りを確かめつつ、ディーゼルエンジンがラインナップから消えた3代目CX-5について考えた。
-
第340回:一にエンジン、二にカッコ 2026.7.20 清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは?
-
第339回:駆けぬけるヨロコビは安くない 2026.7.6 清水草一の話題の連載。いつもの首都高で試乗した「BMW 120d Mスポーツ」の価格が540万円ってマジか! と思っていたら、本国ではなんと4万1750ユーロ(邦貨約770万円)⁉ 安かったころ、もっと小さかったころのBMWに思いをはせた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。








































