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第819回:すべてのシートで快適 ブリヂストンのRV専用タイヤ「レグノGR-XIIIタイプRV」の実力をチェック

2025.02.07 エディターから一言 佐野 弘宗
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ブリヂストンが2024年12月に発表したミニバンやコンパクトSUV向けのコンフォートタイヤ「レグノGR-XIII(ジーアールクロススリー)タイプRV」。今回は報道関係者向けのイベントで行った試走の様子を報告する。
ブリヂストンが2024年12月に発表したミニバンやコンパクトSUV向けのコンフォートタイヤ「レグノGR-XIII(ジーアールクロススリー)タイプRV」。今回は報道関係者向けのイベントで行った試走の様子を報告する。拡大

ブリヂストンが「EV時代の新たなプレミアム」と位置づける商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載し、モノづくり基盤技術「BCMA」と融合させたRV専用のコンフォートタイヤ「レグノGR-XIIIタイプRV」が登場(参照)。ミニバンやコンパクトSUVにターゲットを絞った最新レグノの印象を報告する。

「ブリヂストン・レグノGR-XIIIタイプRV」は、ミニバン向けのレグノとして販売されてきた「レグノGRV II」の後継タイヤ。約10年ぶりのフルモデルチェンジとなる。GRV IIは“ミニバン専用”をうたっていたが、今回のGR-XIIIタイプRVは、対象をミニバンからコンパクトSUVにまで広げている。
「ブリヂストン・レグノGR-XIIIタイプRV」は、ミニバン向けのレグノとして販売されてきた「レグノGRV II」の後継タイヤ。約10年ぶりのフルモデルチェンジとなる。GRV IIは“ミニバン専用”をうたっていたが、今回のGR-XIIIタイプRVは、対象をミニバンからコンパクトSUVにまで広げている。拡大
新しいミニバンとコンパクトSUV向け「レグノ」の商品名は、これまでの流れをくむ「GRV~」ではなく、先に発売されたセダン向けと同じ「GR-XIII」に、その装着対象を表す「RV」を組み合わせたものとなった。
新しいミニバンとコンパクトSUV向け「レグノ」の商品名は、これまでの流れをくむ「GRV~」ではなく、先に発売されたセダン向けと同じ「GR-XIII」に、その装着対象を表す「RV」を組み合わせたものとなった。拡大
タイヤのイン側にショルダー部の剛性を高める「ダイヤモンドスロット」を導入。両サイドのショルダーブロックを大きくすることで剛性を高めてふらつきを低減するほか、耐摩耗性の向上と偏摩耗の抑制を実現するという。
タイヤのイン側にショルダー部の剛性を高める「ダイヤモンドスロット」を導入。両サイドのショルダーブロックを大きくすることで剛性を高めてふらつきを低減するほか、耐摩耗性の向上と偏摩耗の抑制を実現するという。拡大
「レグノGR-XIIIタイプRV」の価格は195/65R15 91Hの2万6510円から245/35R20 95W XLの9万9660円まで。2025年2月の販売開始時には全29サイズがラインナップする。
「レグノGR-XIIIタイプRV」の価格は195/65R15 91Hの2万6510円から245/35R20 95W XLの9万9660円まで。2025年2月の販売開始時には全29サイズがラインナップする。拡大

RV専用パターンを採用

2024年12月にブリヂストンがリリースしたミニバンおよびコンパクトSUV向けコンフォートタイヤ、レグノGR-XIIIタイプRVは、ミニバン向けのレグノとして販売されてきた「レグノGRV II」の後継機種となる。GRV IIの発売が2015年1月だったから、約10年ぶりのフルモデルチェンジということだ。

いっぽう、レグノにはもちろん、セダン=背低グルマ向けタイヤもあり、2015年にGRV IIと同時に発売された「GR-XI」、2019年初頭の「GR-XII」、そして2023年12月には「GR-XIII」へと進化してきている。

従来のGRV IIは“ミニバン専用”をうたっていたが、今回のGR-XIIIタイプRVは、対象をミニバンからコンパクトSUVにまで広げている。これは、近年の“ミニバン減少、コンパクトSUV増殖”という国内クルマ市場の変化に対応したものだろう。ちなみに、中型~大型SUV向けコンフォートタイヤは、ブリヂストンでは「アレンザ」ブランドが受け持つ。

今回は商品名のロジックも変わった。新しいミニバン/コンパクトSUV向けレグノの商品名は、これまでの流れをくむGRV~ではなく、先に発売されたセダン向けレグノと同じGR-XIIIに、その対象を表す「RV」を組み合わせたものとなった。商品名はそのときどきの流行などでも変わるものだが、少なくとも今回は、タイヤそのものの成り立ちを端的に表現したネーミングといっていい。

前身のGRV IIは同世代のレグノに対して、背が高く重心も高いミニバンの物理特性に合わせて、たとえば内部構造に部材などを追加して剛性を上げていた。また、トレッドの構造もセダン用途とは別物だったという。

しかし、今回のGR-XIIIタイプRVはタイヤの構造からコンパウンドまでセダン向けのGR-XIIIと共通化されており、ちがうのは幅広なショルダーが特徴的なトレッドパターンのみ。これはおそらく高重心なミニバンやSUVへの対応だろう。

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運転を変えていません?

今回追加設定されたタイプRVのベースとなっているレグノGR-XIIIは、国内乗用車向け市販タイヤとしては初めてエンライトンを適用して開発された。エンライトンとはブリヂストン独自の商品設計基盤技術の総称だ。

同社がこれまで培ってきた技術を総動員して、まずは「薄く、軽く、円(まる)く」というタイヤの基本技術を全方位で革新的に進化させる。そのうえで、装着するクルマやパワートレイン、市場環境に合わせて、運動性能、快適性能、サステナブル性などで個別にエッジを効かせた“究極のカスタマイズ”を施すのが、エンライトンのココロだそうである。

つまり、タイヤの基本性能・基本特性・環境性能を極限まで引き上げているからこそ、その先のキャラクターづけや味つけもやりやすい。こうしたエンライトンの手法は、クルマづくりにおけるプラットフォーム共有化やモジュール設計に似ている気もする。

エンライトンの細かい技術内容を簡単には説明しづらいが、いわゆるサステナブル性という社会的使命をクリアしつつ、タイヤを徹底的に薄く、軽く、円くするのがテーマだ。そのなかでも即座に体感できる効能は軽さで、新旧レグノを手で持ち上げただけで、新しいGR-XIIIタイプRVは従来のGRV IIより明らかに軽いことがわかる。たとえば、売れ筋となる18~19インチサイズだと、一本あたり約1kgも軽いという。

今回のメディア試走イベントでは、そんなGR-XIIIタイプRVの性能を体感できるプログラムがいくつか用意されていた。ひとつは駐車場につくられた特設コースで、前身となるレグノGRV IIとの“新旧比較”である。

特設コースに用意されていたのは、40km/hでのスラローム、60km/hのレーンチェンジ、そして10~30km/hでの段差やロープ越え……といったセクションで、まずはブリヂストンのテストドライバーが運転する「トヨタ・アルファード」の2列目シートに座っての同乗試走となった。同乗試走では、従来型のGRV IIと比較すると、新しいGR-XIIIタイプRVのほうがスラロームでの挙動は滑らかに、そして段差やロープでの突き上げが丸くなっていた。

突き上げが丸くなったのはともかく、スラロームでの挙動が変わったように感じられたのがにわかにタイヤによるものとは思えず、失礼ながら担当のテストドライバー氏に「運転を変えていません?」と聞いてしまった。もちろん、そんなはずはない。

235/50R18サイズの「レグノGR-XIIIタイプRV」を装着したフルサイズミニバン「トヨタ・アルファード」で、特設コースを試走。40km/hでのスラローム、60km/hでのレーンチェンジ、そして10~30km/hでの段差やロープ越えといった各セクションで、その走りをチェックした。
235/50R18サイズの「レグノGR-XIIIタイプRV」を装着したフルサイズミニバン「トヨタ・アルファード」で、特設コースを試走。40km/hでのスラローム、60km/hでのレーンチェンジ、そして10~30km/hでの段差やロープ越えといった各セクションで、その走りをチェックした。拡大
40km/hでスラロームを行う「アルファード」の走行シーン。タイヤの真円度には伝統的に定評のあるブリヂストンだが、より静かで動きだしが軽いため、以前にも増してタイヤの円(まる)さを感じた。
40km/hでスラロームを行う「アルファード」の走行シーン。タイヤの真円度には伝統的に定評のあるブリヂストンだが、より静かで動きだしが軽いため、以前にも増してタイヤの円(まる)さを感じた。拡大
225/55R19サイズの「レグノGR-XIIIタイプRV」を装着した「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。従来モデル「レグノGRV II」との比較試走では、スラロームでの挙動が滑らかになり、段差やロープでの突き上げが抑えられていた。
225/55R19サイズの「レグノGR-XIIIタイプRV」を装着した「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。従来モデル「レグノGRV II」との比較試走では、スラロームでの挙動が滑らかになり、段差やロープでの突き上げが抑えられていた。拡大
ロープを一定間隔で並べた特設コースを走行。凹凸を乗り越える際のフラット感や、「レグノGR-XIIIタイプRV」のセリングポイントとされる揺れの残りづらさをチェックした。
ロープを一定間隔で並べた特設コースを走行。凹凸を乗り越える際のフラット感や、「レグノGR-XIIIタイプRV」のセリングポイントとされる揺れの残りづらさをチェックした。拡大
ブリヂストンのテストドライバーが運転する「アルファード」の2列目シートに座って、従来型の「レグノGRV II」(写真)と新しい「レグノGR-XIIIタイプRV」の走りを比較することもできた。
ブリヂストンのテストドライバーが運転する「アルファード」の2列目シートに座って、従来型の「レグノGRV II」(写真)と新しい「レグノGR-XIIIタイプRV」の走りを比較することもできた。拡大

スッとおさまる収束感も好印象

続いて、同じアルファードのステアリングを握って走らせると、新しいGR-XIIIタイプRV装着車は、走りだしからとにかく“円い”感じがした。タイヤの真円度には伝統的に定評のあるブリヂストンだが、以前にも増して円く感じるのは、より静かで、動きだしが軽いからだろう。続いて「トヨタ・クラウン クロスオーバー」でも新旧レグノを体験すると、GR-XIIIタイプRVはスラロームでステアリングがリニアに利いてくれるのが印象的だった。

聞けば、今回のタイプRVを含むレグノGR-XIIIの開発には、レーシングドライバーの立川祐路氏も参加しており、ブリヂストンが市販コンフォートタイヤの開発ドライバーにレーシングドライバーを起用するのは初とのこと。こうしたことからも、新しいレグノのハンドリングへのこだわりがうかがえる。

ただ、アルファードでもクラウンでも、自分でステアリングを握るかぎり、転がりやハンドリングの進化は実感できたものの、同乗走行で感じたような突き上げの改善は、正直いって実感できなかったのも事実だ。

最後のプログラムは、GR-XIIIタイプRVを履かせたアルファードとコンパクトSUVの「メルセデス・ベンツEQB250+」による公道試走である。公道試走では、なによりロードノイズの低さに感心したのはいかにもレグノらしい。と同時に、旋回時のステアリングのしっかりした手応えのほか、そのステアリングを戻したときに、スッとおさまる収束感も好印象だった。

試走を終えて、特設コースでの運転を担当していただいた開発ドライバー氏にあらためてたずねると、突起物に突き上げられたときの進化が、同乗走行で如実に実感できたのは、GR-XIIIタイプRVの開発で強く意識した“おさまりの良さ”によるところが大きいのだろう……とのことだった。ステアリングも握っていないのにスラロームでの挙動にちがいが感じられたの理由も、同じである。

というのも、純粋な突き上げ感の低減は、まさにレグノの真骨頂でもあり、前身のGRV IIでもいまだにかなり高いレベルにあるので、筆者のようにあまり敏感でないドライバーだと、その部分の進化には気づきにくい。ただ、いったん突き上げられて縦横に揺すられた後のおさまりは、新しいGR-XIIIタイプRVのほうが明らかに進化しており、ステアリングフィールなどの雑音(?)にとらわれない後席のほうが、それをより鮮明に体感できたということなのだろう。

ちなみに、ハンドリングに直結するステアリングの応答性と、その後のおさまりの良さ……でタイヤに求められる性能要件は基本的に変わらない。ハンドリングが良くなれば、おのずとおさまりも良くなるのだという。なるほどね。やっぱりタイヤは奥が深い。

(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

「レグノGR-XIIIタイプRV」を履かせたアルファードで一般道と自動車専用道を試走。良好な乗り心地とロードノイズの低さは、いかにもレグノらしい仕上がりだと感じた。
「レグノGR-XIIIタイプRV」を履かせたアルファードで一般道と自動車専用道を試走。良好な乗り心地とロードノイズの低さは、いかにもレグノらしい仕上がりだと感じた。拡大
235/55R18サイズの「レグノGR-XIIIタイプRV」を装着した「メルセデス・ベンツEQB250+」の走行シーン。旋回時におけるステアリングのしっかりした手応えと、そのステアリングを戻したときにスッとおさまる収束感も好印象だった。
235/55R18サイズの「レグノGR-XIIIタイプRV」を装着した「メルセデス・ベンツEQB250+」の走行シーン。旋回時におけるステアリングのしっかりした手応えと、そのステアリングを戻したときにスッとおさまる収束感も好印象だった。拡大
「レグノGR-XIIIタイプRV」では、耐摩耗性の向上と偏摩耗の抑制も実現。ミニバンに装着して行った社内テストにおいては、セダン用の「レグノGR-XIII」に対して19%の摩耗寿命の向上が確認されたという。
「レグノGR-XIIIタイプRV」では、耐摩耗性の向上と偏摩耗の抑制も実現。ミニバンに装着して行った社内テストにおいては、セダン用の「レグノGR-XIII」に対して19%の摩耗寿命の向上が確認されたという。拡大
タイヤの内部構造を知ることができるカットモデル。上から順に「レグノGRV II」「レグノGR-XIIIタイプRV」そして「レグノGR-XIII」。GR-XIIIの2モデルにはブリヂストンが「EV時代の新たなプレミアム」と位置づける商品設計基盤技術「エンライトン」が用いられ、補強材や骨組みといったプラットフォームを共通化している。
タイヤの内部構造を知ることができるカットモデル。上から順に「レグノGRV II」「レグノGR-XIIIタイプRV」そして「レグノGR-XIII」。GR-XIIIの2モデルにはブリヂストンが「EV時代の新たなプレミアム」と位置づける商品設計基盤技術「エンライトン」が用いられ、補強材や骨組みといったプラットフォームを共通化している。拡大
1981年に発売された初代モデルから40年以上にわたって、ブリヂストンは「レグノ」を綿々と進化させてきた。タイヤ単体の性能を向上させるだけでなく、近年では再生資源や再生可能資源を原材料の一部に用いるなどし、カーボンニュートラル化およびサーキュラーエコノミーの実現を推進している。
1981年に発売された初代モデルから40年以上にわたって、ブリヂストンは「レグノ」を綿々と進化させてきた。タイヤ単体の性能を向上させるだけでなく、近年では再生資源や再生可能資源を原材料の一部に用いるなどし、カーボンニュートラル化およびサーキュラーエコノミーの実現を推進している。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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