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トヨタとレクサス、ずばりどちらがお買い得?

2022.09.07 デイリーコラム 渡辺 陽一郎

高級車からスタートしたトヨタ

海外、特に北米における日本の自動車メーカーは、1970年代のオイルショックで販売を急増させた。ガソリン価格が高騰して「日本車は低燃費かつ低価格で壊れにくい」と評判になったからだ。日本車は優れた実用車として人気を得た。

従って海外での日本車は、高級車の印象が弱い。そこで高級車市場に進出するには、別のブランドを立ち上げる必要に迫られ、トヨタはレクサスを、日産はインフィニティを、ホンダはアキュラを用意した。

ところが日本国内の事情はまったく違う。トヨタは1955年に発売された高級セダンの初代「クラウン」で認知度を高め、次にミドルサイズの「コロナ」、コンパクトな「カローラ」と普及を図った。実用車も扱うが、高級車で始まった総合自動車メーカーだ。

日産も1960年に初代「セドリック」を発売して、1973年には“ケンメリ”の愛称で親しまれた4代目「スカイライン」が1カ月平均で1万3000台も登録された。今は「ノート」+「ノート オーラ」が1カ月平均で1万台弱だから、日産は古くからスポーティーカーのブランドだった。ホンダも「シビック」「インテグラ」「プレリュード」など走りの印象が強い。国内市場には、高級車ブランドなど不要なのだ。

1955年に発売された「トヨペット・クラウン」。純国産設計で名をはせ、現在もラインナップされているトヨタ車では最も歴史ある車名だ。
1955年に発売された「トヨペット・クラウン」。純国産設計で名をはせ、現在もラインナップされているトヨタ車では最も歴史ある車名だ。拡大
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国内と国外では役目が違うレクサス

それなのにレクサスだけは、北米での立ち上げから16年も経過した2005年に、日本で開業した。その狙いはメルセデス・ベンツやBMWなど、海外ブランドの販売増加を阻止することだった。北米などの海外市場では、トヨタブランドでは不可能な「高級車市場を攻めること」がレクサスの使命だが、日本では「トヨタの高級車市場を守ること」が目的になる。完全に逆だ。

言い換えればレクサスは国内でメルセデス・ベンツを迎え撃つ立場だが、成功しているとは言い難い。2022年上半期(1~6月)におけるレクサスの登録台数は、全車を合計して1カ月平均が約3600台だ。メルセデス・ベンツは4000台少々になる。今は納期の遅延でメルセデス・ベンツも苦戦しているが、それでもレクサスより多い。

レクサスが伸び悩む背景には、トヨタ車との競争もある。かつてクラウンのユーザーは、フルモデルチェンジを受けると、実車を見ないで注文した。トヨタというメーカーとクラウンという商品、トヨタ店という販売店とそのセールスマンに、絶大な信頼を置いていたからだ。

つまり日本では、トヨタこそが崇高なブランドだ。レクサスは必要不可欠な存在ではなく、位置づけも中途半端になる。クラウンについては、トヨタ店とセールスマンの信頼は今も同じだが、商品開発はブレ気味で、新型ではセダンであることを貫けなかった。

それでもトヨタのブランド力が強い日本では、レクサスはトヨタとの違いを明確に打ち出せていない。従って売れ行きは伸び悩み、プラットフォームなどを共通化したトヨタブランド車と競ってしまう。

レクサスブランドが立ち上げられたのは1989年のこと。「LS」(写真)と「ES」の2車種でのスタートだった。
レクサスブランドが立ち上げられたのは1989年のこと。「LS」(写真)と「ES」の2車種でのスタートだった。拡大

NXとハリアーを比べてみる

例えば「レクサスNX」と「トヨタ・ハリアー」は、両車とも「GA-K」プラットフォームを使って、ホイールベースも2690mmで等しい。直列4気筒2.5リッターのハイブリッドも、モーターは「NX350h」のほうがパワフルだが、基本的なメカニズムは共通だ。

そして2.5リッターハイブリッドを搭載するNX350hの価格は520万円(2WD)、装備水準の近い「ハリアー ハイブリッドZ」は452万円(2WD)になる。正確にはハリアー ハイブリッドZには、JBLプレミアムサウンドシステムが標準装着される。そこで条件を合わせるため、NX350hにもマークレビンソンプレミアムサラウンドサウンドシステムをオプション装着すると、24万4200円が加算されて合計価格は544万4200円だ。

両車の価格を比べるとNXが92万4200円高いが、レクサスには3年間のメンテナンスプログラムやGリンクなどのサービスが標準付帯され、これが約20万円に換算される。そうなると内外装の質感や乗り心地、静粛性、走行性能といった車両本体の正味価格差は約72万円に縮まる。

「レクサスNX」。「トヨタ・ハリアー」と同じ「GA-K」プラットフォームを使うが、より入念なボディー補強を実施するなどしてプレミアムブランドのSUVらしい乗り味を実現している。
「レクサスNX」。「トヨタ・ハリアー」と同じ「GA-K」プラットフォームを使うが、より入念なボディー補強を実施するなどしてプレミアムブランドのSUVらしい乗り味を実現している。拡大
ボディーの手当てこそ「NX」に譲る「ハリアー」だが、単体で乗れば立派に高級車の乗り味だ。
ボディーの手当てこそ「NX」に譲る「ハリアー」だが、単体で乗れば立派に高級車の乗り味だ。拡大

優れたトヨタらしさを

2010年ごろまでのレクサスとトヨタ車を比べると、車両本体の正味価格差が35万円前後に収まっていたが、今はほかの組み合わせも含めて70万円前後にまで拡大している。その理由は、レクサスが以前に比べて高コストなクルマづくりをしているからだ。正味価格差は35万円から70万円に拡大したが、そのぶんだけレクサスを選ぶ満足度も高まった。いまだにレクサスは中途半端な位置づけではあるが、改善されつつある。

むしろ今後のレクサスの課題は販売体制だ。日本ではトヨタこそがブランドだから、レクサスもトヨタ車と同じく購入のしやすさが大切だが、実際には岩手県や秋田県、山形県など、一県に1カ所しかレクサスの店舗がない地域も残る。これはトヨタにはない不公平だ。

また点検などで訪れた時に利用する「レクサスオーナーズラウンジ」は、新車や認定中古車で購入したユーザーしか入れない。一般の中古車販売店で買うと、レクサスのユーザーでありながら、ラウンジへの立ち入りを断られるのだ。これも不公平だから、当然に反感を買う。その結果「今回はレクサスを中古車で買ったから、次は新車にしよう」と考えていたユーザーを逃している。レクサスが日本で成功するための本当の秘訣(ひけつ)は「優れたトヨタらしさ」を身につけることだ。

(文=渡辺陽一郎/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

今後のレクサスのカギになるのは、サービス面でも「優れたトヨタらしさ」を身につけることだ。
今後のレクサスのカギになるのは、サービス面でも「優れたトヨタらしさ」を身につけることだ。拡大
渡辺 陽一郎

渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。

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