MINI ONE(FF/6MT)【試乗記】
レトロじゃなくてサンプリング? 2011.02.01 試乗記 MINI ONE(FF/6MT)……285万8000円
「アウディA1」「シトロエンDS3」などの好敵手を迎え撃つ「MINI」は、マイナーチェンジでどのように変わったか。エントリーモデルに試乗した。
ライバル大歓迎
自分が「MINI」の立場だったら、「アウディA1」や「シトロエンDS3」といったライバルの登場で、ちょっとホッとしたかもしれない。いままでは、高級コンパクトカーへの期待をMINIがひとりで引き受けてきた。だから「レトロなデザインが後ろ向き」というような批判も浴びた。
でも、あたりまえですが1台ですべての要求に応えることはできないわけです。音楽だってファッションだって60年代のテイストが好きな人っているじゃないですかっ、と、自分がMINIの立場だったら言いたいところ。それがいまなら、「だったらあちらへどうぞ」と言うことができる。ライバルが現れたことで、MINIの立ち位置がはっきりしたのだ。
2010年にMINIの全シリーズがマイナーチェンジを受け、すべてのモデルにブレーキエネルギー回生システムを装備するようになった。また、MT仕様にはアイドリングストップ機構が備わるようになっている。なかでも注目したいのが、エンジン排気量が1.4リッターから1.6リッターへと拡大したベーシックモデルの「MINI ONE」だ。もろもろの改良によって今回試乗した6MT仕様の10・15モード燃費は、20.5km/リッターへと向上しているという。
ただし排気量がアップしたとはいえ、「おおっ、速くなった」と驚くことはなかった。それもそのはず、最高出力は従来の95psから98psへと3ps増しただけ。両車のパワーの違いは、おそらく同条件で乗り比べてみないとわからないだろう。そもそも95psのマイチェン前でも力不足を感じなかったわけで、今回の排気量拡大の目的はパワーアップより効率アップなのだ。「ボロロン」という飾り気のない排気音の盛り上がりとともに健康的に吹け上がる美点もそのままだ。
エンジンの違いより大きかったのは、乗り心地の変化だ。
手触り抜群
「MINIってこんなに乗り心地がよかったっけ?」路上に一歩踏み出した瞬間、路面からのショックがまろやかになっていることがわかる。サスペンションが巧妙に上下運動することで、地面からの突き上げを「まぁまぁ」といなしている。プレス資料には触れられていないけれど、足まわりのセッティングに少しずつ改良が加えられていることは間違いない。
落ち着きが増してつまらなくなったかというと、そんなことはない。 “ゴーカートフィーリング”と称される小気味よい身のこなしはそのまんま。落ち着きが増したというより、「洗練された」という表現のほうが適切かもしれない。やや重めだけれどタイヤの動きを正確に伝えるステアリングホイールの手応えも良好で、タバコ屋の角を曲がるような場面でも「いいクルマだなぁ」としみじみ感じさせる。
手応えがいいといえば6MTの感触も抜群。シフトする時にスコン、スコンと無抵抗に次のギアに入るのでなく、ちょっとした重みを感じさせる。この重みは引っかかる感じの抵抗とは別モノで、しっとりとした印象を与えるものだ。だから、ついつい意味のないシフトを繰り返す。エンジンは低回転域から力持ちで、3000rpmも回っていれば十分走る。だから頻繁にシフトしたからといって速く走れるわけでもないけれど、純粋にシフト行為が楽しい。
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MINIは「ONE」に始まり……
山道でちょっと飛ばしても、力不足だとか遅いといった不満は感じない。あり余るパワーを御する楽しみもあるけれど、手応えのいいシフトを操りながらエンジンの力をフルに発揮していると、こっちまで元気が出てくる。運転している自分まで機敏で小回りの利く人間になったと錯覚できるのが、よく出来たコンパクトカーのいいところだ。
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アイドリングストップシステムにも違和感なし。停止するとスッとエンジンが停止、再始動するときの音や振動を上手に抑えた。楽しいシフト、朗らかなエンジン、スマートで機敏な足まわり。219万9000円という値段もあわせて、MINIのラインナップの中でも「MINI ONE」が個人的にはイチオシだ。「釣りはフナに始まりフナに終わる」というけれど、MINIはONEに始まりONEに終わる。
勝手な希望を言わせていただくと、ぜひ「MINI ONE コンバーチブル」という仕様を設定してほしい。「MINI ONE」と「MINIクーパー」の価格差が約50万円。「MINIクーパー コンバーチブル」が302万5000円だから、「MINI ONE コンバーチブル」はきっと250万円(だったらうれしい)。
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新しい「MINI ONE」は、燃費や快適性などをイマ風にアップデイトさせながら、メカメカしいフィーリングを巧妙に味わわせてくれる。MINIって、「レトロでほのぼのとした懐かしモノ」だと思われがちだけれど、ホントは違うのかもしれない。昔の楽曲のおいしいところを引用して最新の音を作る、ヒップホップでいうところの「サンプリング」的なとがったクルマだと思えてきた。ま、そんなことを考えるのもライバルが増えてMINIの存在が相対化されたから。オシャレ高級コンパクトが面白くなってきた。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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