ボルボV60アルティメットB4(FF/7AT)
褒めずにはいられない 2022.12.15 試乗記 新しいガソリンエンジンの48VマイルドハイブリッドパワートレインとGoogleを搭載した「ボルボV60」の2023年モデルが上陸。オヤジ世代がかつて憧れたボルボのステーションワゴンは、SUVやEV全盛のいまにあっても、色あせない魅力にあふれていた。最新世代にアップデート
いまでこそSUVのラインナップが目に留まるボルボも、かつては「ボルボといえばステーションワゴン」という時代があった。そのころは……と語り始めると、ノスタルジーにすがるしがないオヤジっぽさが全開になるので言葉をぐっと飲み込むが、こうしてV60を前にすると、ステーションワゴンがどことなく上品で嫌みのないスポーティーな雰囲気をまとっていることにあらためて気づく。
車高が高く走破性にアドバンテージのあるSUVは、存在感もキャビンの広さもステーションワゴンの上をいく。それはわかっているが、舶来モノのステーションワゴンに「ファミリー」や「バカンス」といったゆとりあるカーライフを憧れとともに投影してきた多くのオヤジ世代では、私も含め、車高や面構えで存在感を主張するSUVよりもステーションワゴンに親近感を抱いてしまう場合もある。
とはいえそうしたボルボのステーションワゴンも、いまやV60と「V90」 の2モデルだけ。「40シリーズ」と呼ばれるエントリーラインは、クロスオーバーとボルボが呼ぶ電気自動車の「C40」も含めてSUVのみのラインナップである。
今回の主役となるFWDのV60は、2018年に上陸したV60の2代目モデルにあたる。2022年7月にフェイスリフトが行われ、Googleのインフォテインメントシステムが標準装備となったほか、ドライバーディスプレイが「XC60」などと同じデバイスにアップデートされている。同時にグレードが整理され、新しいネーミングになったのもニュースだ。従来型には簡単には覚えられそうもない「リチャージ プラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション エクスプレッション」というグレード名もあったが、インスクリプションは「アルティメット」に、「モメンタム」は「プラス」へと呼び名が変更された。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
地味な改良を積み重ねてこそボルボ
もうひとつ、今回試乗した「B4」においては大きなトピックがある。ミラーサイクルエンジンの採用だ。エンジン自体はボア×ストロークが82.0×93.2mm、排気量が1968ccで従来型からの大きな変更はないものの、その最新ユニットでは可変バルブタイミング機構の採用に伴い、圧縮比が10.5:1から12.0:1に高められた。さらにエンジン回転数に応じて排ガスの流速をコントロールするVNT(バリアブルノズルタービン)ターボを搭載。吸排気の両方で徹底した効率化を図っている。
このエンジンには、従来と同様に48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされるが、エンジンのアップデートにあわせ、トランスミッションも8段ATから7段DCTに変更されている。新開発の7段DCTはボルボ内製で、湿式デュアルクラッチと電子制御の機械式ギアシフトアクチュエーターを採用。一定の条件下におけるアクセルオフによるコースティング時にはエンジン休止システムも作動し、燃費の改善を図る。参考までに燃料消費率は、従来の13.7km/リッターから15.4km/リッター(いずれもWLTCモード)へと12.4%も向上している。
パワートレインの変更自体は2021年12月に行われたもので、ボルボ社内ではこのモデルをMY22.5と呼んでいたという。今回、Googleの搭載や内外装の変更、グレードの整理とあわせて、晴れて2023年モデルを意味するMY23に進化。地味な改良ではあるがこうした積み重ねを行うのがボルボである。
電気自動車(EV)のC40やプラグインハイブリッド車(PHEV)のリチャージといった電動化モデルに注目が集まるボルボにあっても、内燃機関の進化やマイルドハイブリッド車(MHEV)をないがしろにしているわけではなく、しっかりとした改良が加えられているところに好感が持てる。電動化を推し進めつつも、今ある技術の改良にも手を抜かず磨き続けるのが、自動車メーカーとしての責任と矜持(きょうじ)なのだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
シャシーの熟成にも感心
コックピットに収まると、見なれたV60の内装でありながら、メーターデザインが一新されていることに気づく。シフトレバーのそばにあったドライブモードセレクターはMY22で姿を消したが、スウェーデンのオレフォス社が手がけるクリスタル製のシフトノブは健在で、「アルティメット」グレードに標準で装備されている。
今回の変更で、最高出力250PSの「B5」は廃止された。しかし、両者を乗り比べしない限りは、最高出力が197PSとなるB4のパフォーマンスに不満はない。ATが7段DCTに換装されても前述のようにスターターと発電機の役割を担う48V駆動のISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)が組み合わせられており、市街地走行レベルであればそのパワーの違いを言い当てることは難しい。
ISGMの最高出力は13.6PSで、最大トルクは40N・m。加速時にはブーストシステムとして機能し減速時には回生を行う。しかし、その作動を体感するのは難しく、エンジン車としての自然なふるまいに終始する。せっかくのハイブリッドなのだから、加速時のアシスト効果を期待したくなるが、それとわかるものは少なくとも今回の試乗では確認できなかった。
むしろ、ターボ車でありながら7段DCTと相まったシームレスな加速シーンこそが、ISGMの仕事によるものなのかもしれない。息継ぎのない気持ちのいい加速を味わっていると、車重2t近いステーションワゴンを排気量わずか2リッターの直4エンジンが御しているとは思えなくなる。と同時に、路面のうねりを軽くいなす、4年にわたるシャシーの熟成にも感心する。あとはもう少し小回りが利けば文句ナシなのだが。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
Googleの精度と扱いやすさに舌を巻く
MY23のハイライトでもあるGoogleの搭載は、普段からスマホやタブレット端末でGoogleを利用している人であれば、大歓迎だろう。周辺のガソリンスタンドや駐車場検索、天気予報チェック、ラジオのオン/オフやエアコンの温度設定などをひと通り試してみても、ほぼ一発で希望の操作が行えた。運転中にステアリングホイールから手を離すことなく音声コマンドだけでスマホ感覚の操作が行えるのだから便利だし、安全性の面からもありがたい。
たまたま直前に乗っていたドイツ車の音声アシスタンスは何度試しても目的地は表示されずストレスがたまるだけだったので、さすがGoogleと感心しきり。もっとも車両側にも発声者の音声が認識しやすいかどうかといった相性的なものもあるだろうから、即座に出来が悪いと非難するつもりはない。ただそれを考慮しても、このGoogleの精度と扱いやすさは同様の音声アシタンスのなかでも頭一つ抜けている印象。誰彼構わず「ほらほら試してみて」と言いたくなる。
電動化にまっしぐらという欧州ブランドの動向を軽視するわけにはいかないが(ボルボも2030年までに新車販売車両をすべてEVとする目標を掲げている)、こうして電動化されたとはいえ内燃機関がパワートレインのイニシアチブを握るボルボのステーションワゴンに乗ると、こなれたその走りを褒めずにはいられない。人類が130年以上も磨き続けてきたエンジンにはまだまだ可能性が残されている気がする。
現実問題、日本において既存の集合住宅にEVの充電設備を設置することは簡単ではないだろうし、充電時間に対するハードルがいま以上に下がらない限りEVの普及には時間がかかるだろう。となれば、外部充電非対応のMHEVにも活躍の場は残されているはずだ。続々と登場するEVや流行のSUVを興味深く眺めつつも、昭和生まれのオヤジ世代にとってボルボらしさが色濃く残るエンジン搭載のステーションワゴンは、まだまだ十分にまぶしい存在だった。
(文=櫻井健一/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ボルボV60アルティメットB4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1850×1435mm
ホイールベース:2870mm
車重:1730kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:197PS(145kW)/4750-5250rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1500-4500rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/3000rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)235/45R18 98W/(後)235/45R18 98W(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:15.4km/リッター(WLTCモード)
価格:639万円/テスト車=723万1650円
オプション装備:メタリックペイント<ブライトダスクメタリック>(9万2000円)/チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ(21万円)/ラミネーテッドサイドウィンドウ(11万円)/Bowers & Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー、サブウーハー付き>(34万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<フロント&リアセット>(8万9650円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1898km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
-
フェラーリ849テスタロッサ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.2.3 フェラーリの新型スーパースポーツ「849テスタロッサ」は、スペシャルモデル「F80」に通じるデザインをまとい、歴史的な車名が与えられている。期待高まる、その走りは? スペインで試乗した西川 淳の第一報。
-
レクサスRZ550e“Fスポーツ”(4WD)【試乗記】 2026.1.31 レクサスの電気自動車「RZ」が大型アップデートを敢行。特に今回連れ出した「RZ550e“Fスポーツ”」は「ステアバイワイヤ」と「インタラクティブマニュアルドライブ」の2大新機軸を採用し、性能とともに個性も強化している。ワインディングロードでの印象を報告する。
-
スズキ・ワゴンR ZL(FF/5MT)【試乗記】 2026.1.28 スズキの「ワゴンR」がマイナーチェンジ。デザインを変更しただけでなく、予防安全装備もアップデート。工場設備を刷新してドライバビリティーまで強化しているというから見逃せない。今や希少な5段MTモデルを試す。
-
スバル・ソルテラET-HS(4WD)【試乗記】 2026.1.27 “マイナーチェンジ”と呼ぶにはいささか大きすぎる改良を受けた、スバルの電気自動車(BEV)「ソルテラ」。試乗を通して、劇的に改善した“BEVとしての性能”に触れていると、あまりに速いクルマの進化がもたらす、さまざまな弊害にも気づかされるのだった。
-
ホンダ・シビック タイプR/ヴェゼルe:HEV RS 純正アクセサリー装着車【試乗記】 2026.1.26 ホンダアクセスが手がける純正パーツを装着した最新ラインナップのなかから、「シビック タイプR」と「ヴェゼルe:HEV RS」に試乗。独自のコンセプトとマニアックなこだわりでつくられたカスタマイズパーツの特徴と、その印象を報告する。
-
NEW
第101回:コンパクトSUV百花繚乱(後編) ―理由は“見た目”だけにあらず! 天下を制した人気者の秘密と課題―
2026.2.4カーデザイン曼荼羅今や世界的にマーケットの主役となっているコンパクトSUV。なかでも日本は、軽にもモデルが存在するほどの“コンパクトSUV天国”だ。ちょっと前までニッチだった存在が、これほどの地位を得た理由とは? カーデザインの識者と考えた。 -
NEW
社長が明言! 三菱自動車が2026年に発売する新型「クロスカントリーSUV」とは?
2026.2.4デイリーコラム三菱自動車が2026年に新型クロスカントリーSUVの導入を明言した。かねてうわさになっている次期型「パジェロ」であることに疑いはないが、まだ見ぬ新型は果たしてどんなクルマになるのだろうか。状況証拠から割り出してみた。 -
NEW
日産エクストレイル ロッククリークe-4ORCE(4WD)【試乗記】
2026.2.4試乗記「日産エクストレイル」に新たなカスタマイズモデル「ロッククリーク」が登場。専用のボディーカラーや外装パーツが与えられ、いかにもタフに使い倒せそうな雰囲気をまとっているのが特徴だ。高速道路とワインディングロードを中心に400km余りをドライブした。 -
第55回:続・直撃「BYDラッコ」! 背が15cmも高いのに航続距離が「サクラ」&「N-ONE e:」超えってマジか?
2026.2.3小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ2026年の発売に向けて着々と開発が進められている「BYDラッコ」。日本の軽自動車関係者を震え上がらせている中国発の軽スーパーハイト電気自動車だが、ついに大まかな航続可能距離が判明した。「これは事件だ!」ということで小沢コージが開発関係者を再直撃! -
クルマの進化は、ドライバーを幸せにしているか?
2026.2.3あの多田哲哉のクルマQ&A現代のクルマは、運転支援をはじめ、さまざまな電動装備がドライバーをサポートしてくれる。こうした技術的な進化は、ドライバーを幸せにしていると言い切れるだろうか? 元トヨタのチーフエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
フェラーリ849テスタロッサ(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.2.3試乗記フェラーリの新型スーパースポーツ「849テスタロッサ」は、スペシャルモデル「F80」に通じるデザインをまとい、歴史的な車名が与えられている。期待高まる、その走りは? スペインで試乗した西川 淳の第一報。


















































